HIIR と星形成率 銀河系 HIIR の電波観測とそれらの平均年齢が 0.64 Myr という評価とから 星形成率を 4.2 Mo/yr と見積もった。その内 71 % は渦状腕で生まれ、 17 % は主腕の間にある分子雲複合、 12 % が中心 200 pc である。 |
星形成率の表面密度依存性 銀河系からは 3.3 E+53 s-1 の Lyc-光子が放出されている。これは 以前の見積もりの約 4 倍である。星形成率は表面密度に比例することが分かった。これは 表面密度の二乗に比例するという以前の考えと反する |
星形成の場所 星形成が起こる場所は、 (1)DWA = 主渦状腕。密度波で形成されている。 (2)MA = 物質腕(material arm). DWA の間にある。 (3)中心核円盤(中心から 800 pc まで広がるガス円盤)の内側 場所による星形成の違い 太陽は物質腕(MA)であるオリオン腕の中にある。最も近い主渦状腕(DWA) は ペルセウス腕とサジタリウス腕である。太陽近傍での観測から、物質腕(MA) での星形成に関してはある程度理解されてきた。主渦状腕(DWA) での様子は 断片的である。中心核円盤での星形成は全く分かっていない。 初期の埋もれた HIIR O-型星は中性ガス+ダストの雲の中で主系列へと近づいていく。 n(H) < 105 cm-3 になると、非常に小さな HIIR が作られる。 図1にはそれら分子雲に埋もれた小さな HIIR の例として W3(A), W3(OH) の SED を示す。赤外 SED から総光度、電波フラックスから励起星の Lyc 光度が 出る。 隠された O-型星 HIIR が進化すると、周囲の雲が全て電離されて吹き飛んでしまう。 電離域は ne = 100 cm-3 に低下するまで 強い電波源である。この状態では可視光は強い減光を受け、励起星は可視光では 見えない。O-型星の 15 - 25 % はこのような状態で隠されていると考える。 |
![]() 図1.W3(A) と W3(OH) は W3 複合体中のコンパクト HIIR である。 実線と破線はモデルフィット (Krugel, Mezger 1975)。 |
![]() 図2.電波 f-f 放射の等高線(角分解能 2')をパロマ― レッドプリント上に重ねた。 電波が最強の区域は可視写真では完全に隠されていることに注意。 物質腕(MA)中星形成 Blaauw 1964 は物質腕(MA)中の OB-アソシエイションでは星形成はより小さな、 数千Moの星を含むサブユニット毎に進行することを示した。このサブユニットの中 では O-型星は最後に(Ibenm Talbot 1966) 形成される。サブユニットの年齢は 10 Myr を越える散らばりを見せる。 主渦状腕(DWA) での星形成 主渦状腕(DWA) での高角分解能電波観測によるとそこでの星形成も MA と同様の形態 で進むらしい。しかしながら、DWA では、サブユニットの年齢幅は 0.5 Myr 以内に収まる。 このような差の違いが生じる原因としては、DWA では星形成が例えば星間空間の衝撃波圧縮 のような大規模事件をきっかけに起こるが、一方 MA では例えば熱不安定性のように、 もっと乱雑に個々のサブユニットで発生するのではないか。 W3 を例にして DWA における非常に若い OB-アソシエイションの例として、ペルセウス腕上巨大 HIIR 系列では第4番目に大きく、かつ最も若い W3 を例に考えてみよう。図2にはパロマ― レッドプリント上に電波連続波等高線を重ねた。Hα で見える星雲は IC 1795 である。W3 はダストで隠されている領域に存在することが分かる。図3は同じ 領域だが電波観測の分解能がより高い。こちらでは、電波源が幾つかの成分に分解 していることが分かる。各成分毎に一つの O-型星が対応する。これ等の小さい成分の 一つ一つが OB-アソシエイション W3 のサブユニットを表す。それらは数十万年の内には 可視で見えるようになるだろう。 W3(OH) と W3(A) はそれらサブユニットの内の二つである。 M 51 での発見 星間物質の圧縮開始から O-型星の出現までに 6 Myr かかる。 |
![]() 図3.角分解能 30" (Sullivan, Downes 1973) 電波等高線を写真に重ねた。 T Tau アソシエイション T Tau アソシエイションは長い間中間質量星の生まれる場所として知られていた。最近、 IR と 炭素再結合線の観測から、 T-アソシエイション中に可視ではまだ見えない B-型星 が存在することが分かった。一方では、HIIR 中、例えばオリオン星雲中に、 T Tau 星が 共存していることが知られている。 Lyc 光子数と星形成率 物質腕 (MS) 中の星の全質量分布を考えると、光度、特に Lyc 光度の大部分 は O-型星に、質量の大部分は低質量星に含まれる。電波観測から HIIR の電離 に必要な Lyc 光子数が分かる。もし、質量関数が分かれば Lyc 光子の数を 総星形成率を導くことが可能である。 サルピータ IMF を用いて、星形成 1 Mo に Lyc 光子 2.23E46 個が対応する。(Mezger et al 1974) サルピータ IMF NGC 2264 (オリオン腕) と NGC 6530 (サジタリウス腕) の IMF は共にサルピータ 型であった。従って MA と DWA とで IMF は同じなのではないか?銀河系中心円盤 での IMF に関しては何も分かっていない。 質量比 HIIR には分子雲がつきものでその質量は電波分子線観測から決められる。OB- アソシエイション内サブユニットの中では、星にならず残っていたガスは全て電離 されていると仮定する。電離ガスの質量は電波フラックスから決まる。HIIR に付随 する星の総質量は Lyc 光度から決まる。こうして得た結果は、 Mcloud : Mstar : M 星形成の効率 星形成の効率は、星の総質量とそのすぐ近傍に残された電離ガスの質量を比べると 分かる。これは 90 % になり、非常に高い値である。一方、星質量をガス雲の質量 と比べると 10 % となる。実際には、似た方法を主渦状腕 (DWA) に適用して、 僅かに 1% という値を得た。 |
![]() 図4a.HIIR の分布と渦状腕。電波連続波と再結合線で観測された全て。 3.1.観測による現在の星形成率( ここで Lyc-光子と言うときは電波 HIIR だけでなく、 の O-型星からの Lyc-光子と考えるべきらしい。) 電波源 HIIR は若い 電波源として観測される HIIR は ne ≥ 100 cm-3 の 高密度の若い HIIR であり、可視域では減光により隠されている。可視で見える HIIR は電波では弱く、しばしば検出限界以下である。 HIIR サーベイ 図4a には北天 Reifenstein et al. 1970 と、南天 Wilson et al. 1970 の電波再結合線サーベイで検出された HIIR をプロットした。HIIR 密度は 太陽付近で最高で距離と共に下がっていく。これはオリオンや NGC2024 のような 弱い電波源は遠方では検出限界以下になるための自然な結果である。図4b では オリオン星雲の4倍より強い HIIR のみを選んだ。分布の均一性は改善されたが、 銀河中心の向こう側は検出が不完全である。図4c には HIIR 全てと Yvonne Georgelin 1975 a, b の渦状腕を重ねてプロットした。 巨大 HIIR 巨大 HIIR は主渦状腕(DWA) と銀河中心円盤にのみ存在する。HIIR 内部での Lyc-光子のダストによる吸収と電波探査の不完全度を補正して、DWA における Lyc-光子放出率を次のように表した。 ΣNc(巨大 HIIR, DWA) = 4.2×1052 s10-1 銀河中心 l x b = 1.5° x 0.5° の 6 cm 電波連続波観測は、 ΣN'c = 0.7 ×1052 s10-1 を与える。この数字は 銀河系中心付近で強いと考えられるダストによる Lyc-光子吸収の補正が必要である。 しかし、一方では 6 cm 波のかなりは非熱的と言う観測もある。この二つがキャンセル すると考え、銀河中心半径2kpc 以内からの Lyc-光子の放出率を ΣNc(銀河中心) = 0.7×1052 s10-1 とする。 弱小 HIIR 太陽近傍 2 kpc 以内には多数の弱くて小さな HIIR が存在することが電波観測 から分かっている。それらは S5D2 < 400 (f'.u') kpc2 である。太陽近傍を主渦状腕間空間の典型例とみなし、それら からの Lyc-光子を計算すると、 ΣNc(小さいHIIR)/ΣNc(巨大 HIIR) = 0.25 つまり、腕間空間と物質腕(MA)では小さい HIIR が支配的で ΣNc(小さな HIIR) = 1×1052 s10-1 Lyc-光子と誕生中の星の総量 サルピータ IMF を仮定すると、1太陽質量当たりの Lyc-光子放出量は、 2.23 1046 s-1 Mo-1 である。銀河系全体で放出される Lyc-光子の総量は ΣNc = (4.2 + 0.7 + 1.0) = 5.9 1052 s-1 である。 ( Lyc-光子数を電波 HIIR からの放出数に 定義していることに注意。) したがって、 誕生中の星の総量は (5.9/2.3) = 2.7 106 Mo である。 ( 誕生中の意味は電波 HIIR の寿命期間に ある若い星。) |
![]() 図4b.巨大 HIIR のみの分布。 ![]() 図4c.主渦状腕の位置。 星形成率の計算 電離に一番効くのは O5 - O7 星である。その寿命は 3.1 - 3.6 Myr, 平均 3.2 Myr である。 ただしその 20 % はダスト雲に埋もれて、電波 HIIR を形成している。したが って、電波 HIIR の寿命は 3.2 x 0.2 = 0.64 Myr となる。 現在の銀河系星形成率は 2.7×106 Mo/0.64 Myr = 4.2 Mo yr-1 となる。 (上のように電波 HIIR 期間限定で話が完結している。) その内、 12 % が中心 200 pc, 71 % が主渦状腕、17 % が腕間領域(多分その中でも MA で)である。 Terzian との比較 太陽近傍の O-型星の数密度を銀河系の体積を厚さ 200 pc 半径 4 kpc と 15 kpc のリングないの典型値として、 Terzian 1974 は O-型星から放出される Lyc-光子の数を ΣNc = 7.5 1052 s-1 と見積もった。 我々は O-型星は寿命の 20 % を埋もれていると仮定した。従って、埋もれた O-型星と 可視光で見える O-型星を足すと、腕間空間(MA)からの Lyc-光子の放出率は、 1x5 = 5x1052 s-1, 主渦状腕 (DWA)からは 4.2x5 = 2.1x1053 s-1 である。Terzian の 評価は我々の MA Lyc 放出率 にかなり近い。しかし、銀河系全体では 5.9 x 5 = 3.0x1053 s-1 で Terzian 野評価の約 4 倍になる。 ( 本文では 3.0 でなく 3.3 ) |