A Survey of H109α Recombination Line Emission in Galactic H II Regions of the Northern Sky


Reifenstein, Wilson, Burke, Mezger, Altenfoff
1970 AA 4, 357 - 377




 アブストラクト

 水素再結合線 H109α サーベイが NRAO 140 フィート電波望遠鏡を用いて 1967 に行われた。 120 電波源を観測し、内 82 個で検出に成功した。  予想外だったのは、約 1/3 で検出に失敗したことである。


1.イントロダクション  

 Kardashev の示唆 

 最近まで HIIR の電波観測は f-f 放射のみで距離を導くことは出来なかった。しかし、 Kardashev 1959 の示唆により再結合線が観測できることが分かった。観測から距離を 出す際の問題は、

(1)太陽円内側天体の近距離と遠距離のどちら?

(2)l = 0, 90, 180 270 方向で Vr = 0 となり、距離が決まらない

サーベイ 

 Mezger, Henderson 1967 は、再結合線とその横の連続光を測ると、天体の 密度、質量、Te 等様々な情報が引き出せることを示した。そこで、 この二つを観測するサーベイ計画が開始された。


 4.結果 

 表3.天体の観測データ 

 第1列の名前は可視天体名を優先して割と勝手に載せた。括弧は複数の成分から なる複合天体であることを示す。Cyg X 複合体では Pike,Drake 1964 が始め、Downes, Rinehart 1966 が続いた番号がリストされている。  第6列 S,7列Tc は丸め誤差を減らす ため 0.1 f,u,, 0.01 K まで載せてあるが、実際の誤差はもっと大きい。








 表4.導かれた天体パラメタ― 

  運動距離は Schmidt 1965 の銀河回転モデルから求めた。10 kpc より内側の 天体には近距離と遠距離の二つが可能である。表には両方を載せた。  第9列 - 第13列には近距離と遠距離の双方に対応した値を載せてある。








 天体名  コメント
G348.4+0.1 ラインなし。非熱的電波源?
MSH17-33G348.2+0.5,348.7+0.3 も含む?
NGC63343成分を持つ
G351.6-1.26'NW に小さな電波源あり
NGC6357(W22) 6 cm ではっきり3成分。可視距離1.0 kpc=電波距離と合う。
G353.5-0.0 Tc, Sc が小さ過ぎる。連続光位置間違い?
NGC6383再結合線なし。
W24 銀河中心領域
G4.4+0.1S22(G4.5+0.2)に近い。
M8干潟星雲。可視距離1.4 kpc.∼電波距離1 kpc
W28広がった複合体。三裂星雲も含む。運動距離 3.6-3.8 kpc は M20 の可視距離 1.5 kpc と異なるがギリギリエラーの範囲。
W30Ta = 0.28 K は検出限界以下
W31K29 も含む。
W33最も強い成分G12.8-0.2 は可視HIIR S41に近い。成分G14.6+0.1 (K30)は IC4701 にくっついているかも。       
M17オメガ星雲。励起星減光が強く未知のため、光学距離未定。       
M16光学距離は運動距離と合う 2.7 kpc.
W35可視星雲は b=2° にある。運動距離 3.2 kpc は Miller 1968 の運動距離 1.9 kpc と合わない。
W41非熱的電波源を含むらしい。
AMWW474つの成分を含む。G23.1-0.3 はラインなし。
K396 cm では6成分が見える。G24.6-0.2 は S59に近い。
 天体名  コメント
W422 cm マップがある。
W40S64 は減光が強い。
G30.0-0.1半値幅は怪しい。
W43Vr 大から 7 kpc 以上離れている。成分G30.8-0.0 は 水素吸収線から近運動距離にした。G31.1+0.0 は W43 の肩に見える。
AMWW52再結合線なし。mayuko kubo        
W44成分G34.3+0.2 は小さい熱電波源。G34.7-0.5 は著名な SNR
G34.8-0.3背景光との分離が難しく、連続光レベルが得られなかった。       
W47G37.6-0.1の再結合線は不確か。G37.9-0.4は確実。
G41.1-0.3HPW=9.8'
W492成分。W49A は CHIIR であり、W49B は 有名な非熱的電波源。水素吸収線に基づき、この研究で運動遠距離が確実な 唯一の天体。
W516cm では3成分、2cmではその倍の成分を含む。 Vr は接線速度に近く、距離 6.5 kpc となる。
G51.2-0.1基線の問題でデータ不確か。
G61.5+0.1基線の問題でデータ不確か。
Cygnus X運動近距離を採用。ただし、DR21, DR23 は Mezger et al 1967 採用。
NGC7538Schraml.Mezger 1969 が 2cm で調べた小さな HIIR で 彼らは距離 2.8 kpc とした。 Vr は負に大きく運動距離は4.9 kpc となるがこの銀経での 回転曲線は不定性が大きい。
NGC2024He/H が平均より低い。


 4.d. 重元素の再結合線 




表5.6つの HIIR での He/H データ。

 5.議論 

 5.a. HIIR の距離 


図5.シュミット回転曲線を用いた HIIR 分布。黒丸=遠近不定性のない天体。

 運動距離の二重性が解ける場合が幾つかある。それらは、  可視光同定 

 銀河面では 2 kpc 離れると可視では見えない場合が多い。従って可視光で 見えた時には運動近距離を採用する。
( 近赤外で見える場合も赤化から、近距離と 遠距離の分離が可能か。)


 銀河面からの距離 

 もし運動遠距離を採用して銀河面から 100 pc 以上離れたら運動近距離を取る。

 接点 

 この場合は一意に決まる。

 中性水素吸収線

 接点の向こう側の天体は水素吸収線を示す。

 太陽円の外側 

 この場合は一意に決まる。



図6.巨大 HIIR の分布。S(5GHz)D2 > 400 f.u.(kpc)2 の天体のみを選んだ。 非存在域 

 表4で遠近二重性が解けた場合には第8列にどの基準が用いられたかを 記した。図5には HIIR の位置をプロットした。 4 kpc の内側にはっきりと "zone of avoidance" が存在することに注意せよ。R > 12 kpc では HIIR がないこともはっきり見える。

 巨大 HIIR 

 図5には NGC2024 (励起星は多分 B0型星)のような小さな HIIR と W49 の ような巨大 HIIR が混じっている。系外銀河の観測からは、渦状腕をなぞるのは これらの HIIR であることが知られている。図6にはそれらの巨大 HIIR のみを プロットした。

 太陽近傍 

 図6からは太陽近傍の混み合った HIIR 集団が皆消え、 4 kpc < R < 11 kpc に巨大 HIIR が集中していることが分かる。


 5.b.1096α 線が検出されなかった天体 

 非検出の数 

 38/120 天体で再結合線が検出されなかった。非検出の理由は5つある:

 非熱的電波源 



 励起温度が高過ぎ 



 アンテナ温度が高過ぎ 



 光学的に厚い 



 Vr が観測範囲外 

 
今後 

 非検出の理由を含め、これらの天体の研究が重要である。