内側銀河に対する GLIMPSE サーベイデータを自動探査して新しく 59 星団 を検出した。これらは GLIMPSE 点源カタログの中で有意な密度超過として 見つけられた。これらを視察で確認し、さらに深く埋もれていて、自動プログ ラムで見出されなかった 33 星団を加えた。総計 92 星団である。 | これらは、深く埋もれているものから、はっきり見えているものまで様々で ある。半数以上の星団は 35 星以上を成員とし、ほぼ全ては直径 3' 以下であ る。銀緯分布からこれらの星団は銀河面に密着していると考えられる。 銀河中心面下側の星団数が多いという非対称が存在する。また、南銀河の方が 北銀河の2倍あるという非対称も存在する。 |
GLIMPSE は銀河面 |l| [10, 65], b [-1, 1] を 3.6, 4.5. 5.8, 8.0 μm で掃き、3 107 個の高信頼度点源カタログ GLMC と 5 107 個の点源アーカイブ GLMA を生み出した。また、内側銀河系 のモザイク画像を製作中である。 | この点源カタログとモザイク画像を用いれば、これまでになく正確な星形成 領域の全数調査を内側銀河系に対して行える。 |
GLMC GLMC = GLIMPSE point-source catalog は GLIMPSE 220 deg2 からの high-reliability 天体を載せている。信頼度 99.5 % を得るには、 各天体は4バンドのどれかでは 2回、その隣のバンドでは1回検出されなければならない。 |
GLMA GLMA = GLIMPSE point-source archive は GLIMPSE からの, どれかのバン ドで S/N ≥ 5 天体を載せている。GLMA の方が基準が緩く、天体数が多い。 |
小区間 まず、l, b で 1°x1° 領域を取り、そこを正方形の小区間に分割す る。1 領域中の天体数は 105, 小区間を例えば 0.1°x0.1° とすると、小区間内の星数は 10 個内外となる。 一様統計モデル 小区間内の星数の平均値が大体一定な場合、 (妙な言い方と思うがそのまま訳す。 ) 計数は「一様」統計モデルに従う。これは単一ポアソン分布である。この場合、 平均から例えば 4 σ より大きい小区間は星団候補と見做される。 このような一定背景モデルで探してみたが、既知の 15 星団と新規の 15 星団 しか見つからなかった。したがって、方法の改善が必要である。 非一様ポアソンモデル GLIMPSE データは銀河面から離れると、また銀河中心から遠ざかると、星数 が減るという大局的変化を示す。しかし、1°x1° 程度の大きさでは、 星密度は高減光部分の存在により大きく影響される。そのような場所には 非一様ポアソンモデルが適している。これは、小区間の星計数を最もよく表現 する多重ポアソン分布である。 (減光で設定される中間スケールの 領域ごとに区間平均数を決めて、そのポアソン分布を設定と言う意味か。 それとももっとしゃれた仕掛けか分からない。) この非一様モデルでは、背景の一定密度はやや小さい、例えば 5'x5', 星数 8000 個、くらいの中区間毎に決められる。そこではその平均密度に対する 単一ポアソン分布が適用される。 |
標準化 "raw image" では異なる中区間には異なるポアソン分布が適用される。 ("raw image" は観測画像ではなく、 ポアソン分布が適用される小区間の星数の行列のことらしい。) すると、中区間ごとに平均ノイズが異なることになる。 それは不便なので "raw image" を変換して、異なるポアソン分布を持つ中区間 が同じノイズを持つようにしたい。そのための手順を「標準化」と呼ぶ。 これは、各小区間の星数から中区間での平均星数を引き、それを中区間標準偏差 で割ったものである。ポアソン分布では分散が平均と等しいから、問題は中区間 平均値の決め方である。これは、each raw image を半径 0.05° のメディ アンフィルターで平滑化して行う。この平滑化画像=平滑化格子(?)を引いた 差を平滑化星数のルートで割る。これが、標準化である。 標準化画像による星団探索 この標準化画像(行列?)は平均ゼロ、分散1を持つ。この標準偏差 σ0 は1じゃないのかなあ? この標準化画像で星団を探した結果、新規星団の数は3倍に増えた。 等級、カラーカット 等級やカラーで分割したグループ毎に星数を標準化して星団を探したが、 [3.6] = [3.5, 13.0] のグループのみが星団を生み出した。 |
3.2.星団の特徴星が立体角 A の中の (x, y) にある確率密度は以下の式で与えられる![]() ![]() で、まあ左の式をフィットして星団パラメターを決める。式立てが 大げさでちょっと。 3.3.星団の検出3.4.シミュレイション星団 |
![]() 図1.星団検出シミュレイション |
91 星団を検出 我々は 91 星団を検出した。その内 32 個は既知なので、新発見は 59 個に なる。その大部分は基準の緩く、星数の多い GLMA の方で検出された。こちら の方が密度超過が出やすいらしい。 2MASS を自動検出に掛けたら 同じ自動検出アルゴリズムを GLIMPSE 領域の 2MASS データに掛けてみた。 GLIMPSE が発見した 59 星団中 6 星団が 2MASS で検出された。GLIMPSE で検 出した既知の 32 星団に対しては、自動検出プログラムは 2MASS において半数 以上を検出した。 |
4.1.目視の結果GLIMPSE 星団を目視すると表1の場所で、GLIMPSE 画像モザイクを視察すると、確かに星団またはアソ シエイションが目視された。一方、 2MASS 画像上では 59 の新星団のうち、 明かな星の集団が目視で観察されたのは 24/59 であった。GLIMPSE 新星団で は分子雲に埋もれた星団は拡散光が見えないが、露わに現れている星団は周囲 に拡散光が広がっている。図2には埋もれた星団の例を示す。 目視で深く埋もれた星団発見 GLIMPSE モザイク画像を視察して、深く埋もれていて自動検出ソフトが見逃 した星団を探した。その結果、新たに 33 星団が発見された。この場合は 星団星の数はフィールドの混入無しとして計数した。 4.2.カタログこうして得られた新星団 92 個を表1に示す。 |
図3=銀河面上の分布 図3に星団の銀河面上の分布を示す。GLIMPSE 領域内で、南銀河で見出され た GLIMPSE 星団の数は北銀河の倍である。同様の非対称性は 可視銀河星団で も 2MASS 星団でも見られる。同様の非対称性は銀緯方向にもある。 図4=銀経分布 図4には GLIMPSE, 2MASS, 可視星団の銀経分布を示す。北銀河では星団数は 銀系と共に減っていく。しかし南銀河では、 l = 330 と 313 にピークがある。 2MASS 星団も l = 330 と 北銀河の l = 47 にピークを示す。これは腕の 接線方向に当たる。可視星団は滑らかな変化を示す。 図5=銀緯分布 GLIMPSE 星団と 2MASS 星団の銀緯分布の標準偏差は殆ど同じである。 一方、可視星団の標準星団は大きく、近距離にあることを示す。 |
![]() 図4.星団の銀経分布。 (a) 新発見の 92 GLIMPSE 星団と GLIMPSE GC-01。(b) 既知 2MASS 星 団。(c) 可視で既知の銀河星団。(d) 全星団。 実線= 北銀河。破線=南銀河。 |
![]() 図5.星団の銀緯分布。 (a) 新発見の 92 GLIMPSE 星団と GLIMPSE GC-01。(b) 既知 2MASS 星 団。(c) 可視で既知の銀河星団。(d) 全星団。 実線= 銀河面の上側。破線=銀河面の下側。 |
![]() 図6.全星団の銀緯分布。スケール高を出すため、指数関数でフィット。 |
![]() 図7.自動検出された 59 星団の成員数のヒストグラム |
![]() 図8.自動検出された 59 星団の直径のヒストグラム |
2MASS に適用したが不成績 Bica et al. (2003), Dutra et al. 2003 は 2MASS 画像から 346 赤外星団のカタログを発表した。 (半数は減光効果という批判あり。 ) 今回の GLIMPSE 領域には 130/346 個があるが、我々の自動検出アルゴリズム から認識された星団はその内 15 % であった。どうも目視より性能が劣るらしい。 不完全だが前のよりは良い GLIMPSE はコンフュージョン限界なので、どんな自動プログラムでも完全では ないだろう。今までのよりはましである。 |
埋もれた星団 埋もれた星団は自動プログラムで見つけにくかった。それらは目視によって のみ発見された。減光のため成員数が減って、星団基準に達しなかったためでも ある。 NIR との比較 今回の探査で、 MIR のみでは SFR の検出に十分でないことが分かった。 拡散光によるコンタミがないので NIR の方が適しているようだ。 今回の発見で多くの疑問が出てきた。 |
自動検出 GLIMPSE カタログから自動検出プログラムで 59 の新しい赤外星団を発見した。 35/59 個は埋もれた、または拡散光に包まれた星団であった。残りは MIR で 明るい散開星団である。 目視 更に目視により 33 の埋もれた星団を発見した。 |
l, b 分布 赤外星団の l, b 分布には非対称がある。 成員 多くの星団は 35 個以上を含む。 疑問 多くの疑問が問われる。 |