New Star Clusters Discovered in the GLIMPSE Survey


Mercer + 19
2005 ApJ 635, 560 - 569




 アブストラクト 

 内側銀河に対する GLIMPSE サーベイデータを自動探査して新しく 59 星団 を検出した。これらは GLIMPSE 点源カタログの中で有意な密度超過として 見つけられた。これらを視察で確認し、さらに深く埋もれていて、自動プログ ラムで見出されなかった 33 星団を加えた。総計 92 星団である。  これらは、深く埋もれているものから、はっきり見えているものまで様々で ある。半数以上の星団は 35 星以上を成員とし、ほぼ全ては直径 3' 以下であ る。銀緯分布からこれらの星団は銀河面に密着していると考えられる。 銀河中心面下側の星団数が多いという非対称が存在する。また、南銀河の方が 北銀河の2倍あるという非対称も存在する。


 1.イントロダクション 

 GLIMPSE は銀河面 |l| [10, 65], b [-1, 1] を 3.6, 4.5. 5.8, 8.0 μm で掃き、3 107 個の高信頼度点源カタログ GLMC と 5 107 個の点源アーカイブ GLMA を生み出した。また、内側銀河系 のモザイク画像を製作中である。  この点源カタログとモザイク画像を用いれば、これまでになく正確な星形成 領域の全数調査を内側銀河系に対して行える。


 2.GLIMPSE データ 

 GLMC 

 GLMC = GLIMPSE point-source catalog は GLIMPSE 220 deg2 からの high-reliability 天体を載せている。信頼度 99.5 % を得るには、 各天体は4バンドのどれかでは 2回、その隣のバンドでは1回検出されなければならない。
 GLMA 

 GLMA = GLIMPSE point-source archive は GLIMPSE からの, どれかのバン ドで S/N ≥ 5 天体を載せている。GLMA の方が基準が緩く、天体数が多い。


 3.星団の自動検出 

 小区間 

 まず、l, b で 1°x1° 領域を取り、そこを正方形の小区間に分割す る。1 領域中の天体数は 105, 小区間を例えば 0.1°x0.1° とすると、小区間内の星数は 10 個内外となる。

 一様統計モデル 

 小区間内の星数の平均値が大体一定な場合、
(妙な言い方と思うがそのまま訳す。 )
計数は「一様」統計モデルに従う。これは単一ポアソン分布である。この場合、 平均から例えば 4 σ より大きい小区間は星団候補と見做される。 このような一定背景モデルで探してみたが、既知の 15 星団と新規の 15 星団 しか見つからなかった。したがって、方法の改善が必要である。

 非一様ポアソンモデル 

 GLIMPSE データは銀河面から離れると、また銀河中心から遠ざかると、星数 が減るという大局的変化を示す。しかし、1°x1° 程度の大きさでは、 星密度は高減光部分の存在により大きく影響される。そのような場所には 非一様ポアソンモデルが適している。これは、小区間の星計数を最もよく表現 する多重ポアソン分布である。
(減光で設定される中間スケールの 領域ごとに区間平均数を決めて、そのポアソン分布を設定と言う意味か。 それとももっとしゃれた仕掛けか分からない。)
この非一様モデルでは、背景の一定密度はやや小さい、例えば 5'x5', 星数 8000 個、くらいの中区間毎に決められる。そこではその平均密度に対する 単一ポアソン分布が適用される。
 標準化 

 "raw image" では異なる中区間には異なるポアソン分布が適用される。
("raw image" は観測画像ではなく、 ポアソン分布が適用される小区間の星数の行列のことらしい。)
すると、中区間ごとに平均ノイズが異なることになる。 それは不便なので "raw image" を変換して、異なるポアソン分布を持つ中区間 が同じノイズを持つようにしたい。そのための手順を「標準化」と呼ぶ。 これは、各小区間の星数から中区間での平均星数を引き、それを中区間標準偏差 で割ったものである。ポアソン分布では分散が平均と等しいから、問題は中区間 平均値の決め方である。これは、each raw image を半径 0.05° のメディ アンフィルターで平滑化して行う。この平滑化画像=平滑化格子(?)を引いた 差を平滑化星数のルートで割る。これが、標準化である。

 標準化画像による星団探索 

 この標準化画像(行列?)は平均ゼロ、分散1を持つ。この標準偏差 σ0 は1じゃないのかなあ? この標準化画像で星団を探した結果、新規星団の数は3倍に増えた。

 等級、カラーカット 

 等級やカラーで分割したグループ毎に星数を標準化して星団を探したが、 [3.6] = [3.5, 13.0] のグループのみが星団を生み出した。


 3.2.星団の特徴 

 星が立体角 A の中の (x, y) にある確率密度は以下の式で与えられる





 で、まあ左の式をフィットして星団パラメターを決める。式立てが 大げさでちょっと。

 3.3.星団の検出 

 3.4.シミュレイション星団 


図1.星団検出シミュレイション





図2.星団 14 の画像の比較。(a) GLIMPSE 3.6 μm. (b)2MASS H. (c) GLIMPSE 点源。黒丸=GLMC. 白丸と黒丸=GLMA. 大丸=星団サイズ。 (d) DSS B-バンド

 表1.新発見の GLIMPSE 星団 







 4.結果 

 91 星団を検出 

 我々は 91 星団を検出した。その内 32 個は既知なので、新発見は 59 個に なる。その大部分は基準の緩く、星数の多い GLMA の方で検出された。こちら の方が密度超過が出やすいらしい。

 2MASS を自動検出に掛けたら 

 同じ自動検出アルゴリズムを GLIMPSE 領域の 2MASS データに掛けてみた。 GLIMPSE が発見した 59 星団中 6 星団が 2MASS で検出された。GLIMPSE で検 出した既知の 32 星団に対しては、自動検出プログラムは 2MASS において半数 以上を検出した。

 4.1.目視の結果 

 GLIMPSE 星団を目視すると 

 表1の場所で、GLIMPSE 画像モザイクを視察すると、確かに星団またはアソ シエイションが目視された。一方、 2MASS 画像上では 59 の新星団のうち、 明かな星の集団が目視で観察されたのは 24/59 であった。GLIMPSE 新星団で は分子雲に埋もれた星団は拡散光が見えないが、露わに現れている星団は周囲 に拡散光が広がっている。図2には埋もれた星団の例を示す。

 目視で深く埋もれた星団発見 

 GLIMPSE モザイク画像を視察して、深く埋もれていて自動検出ソフトが見逃 した星団を探した。その結果、新たに 33 星団が発見された。この場合は 星団星の数はフィールドの混入無しとして計数した。

 4.2.カタログ 

 こうして得られた新星団 92 個を表1に示す。





図3.(a) 新発見の 92 GLIMPSE 星団と GLIMPSE GC-01。(b) 既知 2MASS 星 団。(c) 可視で既知の銀河星団。(d) 全星団。細線= GLIMPSE 領域。

 4.3.星団分布 

 図3=銀河面上の分布 

 図3に星団の銀河面上の分布を示す。GLIMPSE 領域内で、南銀河で見出され た GLIMPSE 星団の数は北銀河の倍である。同様の非対称性は 可視銀河星団で も 2MASS 星団でも見られる。同様の非対称性は銀緯方向にもある。

 図4=銀経分布 

 図4には GLIMPSE, 2MASS, 可視星団の銀経分布を示す。北銀河では星団数は 銀系と共に減っていく。しかし南銀河では、 l = 330 と 313 にピークがある。 2MASS 星団も l = 330 と 北銀河の l = 47 にピークを示す。これは腕の 接線方向に当たる。可視星団は滑らかな変化を示す。

 図5=銀緯分布 

 GLIMPSE 星団と 2MASS 星団の銀緯分布の標準偏差は殆ど同じである。 一方、可視星団の標準星団は大きく、近距離にあることを示す。

図4.星団の銀経分布。 (a) 新発見の 92 GLIMPSE 星団と GLIMPSE GC-01。(b) 既知 2MASS 星 団。(c) 可視で既知の銀河星団。(d) 全星団。 実線= 北銀河。破線=南銀河。



図5.星団の銀緯分布。 (a) 新発見の 92 GLIMPSE 星団と GLIMPSE GC-01。(b) 既知 2MASS 星 団。(c) 可視で既知の銀河星団。(d) 全星団。 実線= 銀河面の上側。破線=銀河面の下側。  

図6.全星団の銀緯分布。スケール高を出すため、指数関数でフィット。  



図7.自動検出された 59 星団の成員数のヒストグラム  

図8.自動検出された 59 星団の直径のヒストグラム  


 5.議論 

 2MASS に適用したが不成績 

  Bica et al. (2003), Dutra et al. 2003 は 2MASS 画像から 346 赤外星団のカタログを発表した。
(半数は減光効果という批判あり。 )
今回の GLIMPSE 領域には 130/346 個があるが、我々の自動検出アルゴリズム から認識された星団はその内 15 % であった。どうも目視より性能が劣るらしい。

 不完全だが前のよりは良い 

 GLIMPSE はコンフュージョン限界なので、どんな自動プログラムでも完全では ないだろう。今までのよりはましである。
 埋もれた星団 

 埋もれた星団は自動プログラムで見つけにくかった。それらは目視によって のみ発見された。減光のため成員数が減って、星団基準に達しなかったためでも ある。

 NIR との比較 

 今回の探査で、 MIR のみでは SFR の検出に十分でないことが分かった。 拡散光によるコンタミがないので NIR の方が適しているようだ。 今回の発見で多くの疑問が出てきた。


 6.まとめ 

 自動検出 

 GLIMPSE カタログから自動検出プログラムで 59 の新しい赤外星団を発見した。 35/59 個は埋もれた、または拡散光に包まれた星団であった。残りは MIR で 明るい散開星団である。

 目視 

 更に目視により 33 の埋もれた星団を発見した。
 l, b 分布 

 赤外星団の l, b 分布には非対称がある。

 成員 

 多くの星団は 35 個以上を含む。

 疑問 

 多くの疑問が問われる。