Evolved Massive Stars in the Local Group I. Identification of Red Supergiants in NGC6822, M31, and M33


Massey, P.
1998 ApJ 501, 153 - 174




 アブストラクト

 矮星の混入 

 近傍銀河の赤色超巨星を観測する際の障害は矮星の混入である。大気モデル によると、同じ V-R で比べると低重力超巨星の B-V は矮星より十分の数等赤い。 これを利用し、NGC6822, M33, M31 とコントロール領域での BVR 観測から RSG 候補を決めた。

 高メタル量ほど晩期スペクトル型 

 観測は Mv = -4.5 (Mbol = -6.3) まで完全である。130 星の CaT スペクトル 観測から、上の測光法は V < 19.5 で 96%, V = 19.5 - 20.5 で 82% 成功率 であった。多くの星に対しては分類用スペクトルも撮られた。その結果、高メタル な系ほど晩期型になることが判った。これは Elias, Frogel, Humphreys が MW と LMC の間に見出した結果と一致する。
 メタル量と RSG の割り合い 

 メタル量と共に高光度の赤色超巨星の割合が変化する。これは "Conti scenario" の予言、すなわち、高メタルになると質量放出率が上がり、 与えられた光度では He 燃焼期を WR 星として過ごす割り合いが超巨星より高くなる、 と一致する。光度関数が高光度側に長い尾を引くという事実は(高光度 RSG が一つ しかないM31 は例外)WR 星が RSG 期を経ることを示唆する。

 最も明るい RSG の質量

 NGC 6822 から M31 までメタル量は5倍変わるが、最も明るい RSG の質量は 2 倍 しか変わらない。それは NGC6822 で 25 - 30 Mo, M33 で 18 Mo, M31 で 13 - 15 Mo である。これらの質量は WR 期の進化で予想される限界質量より低い。しかし、 それは未進化の O-, B- 型星の数とは、もしHe 燃焼期が RSG と WR に分かれるなら 矛盾しない。



 1.イントロ 

大質量星の進化 

 現在の理解では大質量星は H 燃焼期の後、He 燃焼期は質量に応じて 60 Mo より 思い星は初めは WN, 後に WC 星となる。それより少し軽いと WN 星で終わる。 赤色超巨星になるのは 10 - 30 Mo である。したがって、OB アソシエーションを 調べると、 3 Myr では WC と WN 星が見つかり RSG はないだろうし、 5 Myr では WN だけで WC はなく、もしかすると少数の RSG が見つかる。 7 Myr になると RSG だけだろう。
 Conti シナリオ 

 Conti 1976 によると、強い星風で H-燃焼生成物質が外層に出ると WN 星、 He-燃焼生成物だと WC 星が現れる。同じ光度では高メタルほど輻射を吸収して 強い星風となるし、同じメタル量では光度が高いほど強い星風になるだろう。 マスロスを入れた進化の計算が Maeder,Conti 1994 などにより行われているが Luminous Blue Variable の位置付けなど未解決の問題が多い。

 メタル量と赤色超巨星出現率の関係 

 この論文はメタル量が5倍異なる NGC6822, M33, M31 の大質量星を サーベイし、その進化に観測的情報を与えるものである。ここでは RSG の同定を 扱う。次論文で WR 星を扱う。



 1.1 赤色超巨星同定の問題 

 赤色矮星の混入 

 Humphreys,Sandage 1980 の M33 写真乾板サーベイで不思議だったのは 青い星の分布が固まっているのに、赤い星が一様な事であった。これは同じ雑誌 に載った Bahcall,Soneira 1980 に解答があった。 すなわち、MW 円盤の K-, M-矮星のスケール高は 300 pc であるので、600 pc より 遠方の天体を見る時は赤い矮星の雲を透かして見ることになる。絶対等級は Mv = +6(K0), +12(M5) であり、600 pc (m-M=8.9)では V=15 - 21 となる。M33 では 40 Mo (Mbol=-9.5) の RSG は V = 15.5 - 18 で見つかるし、15 Mo では 18 - 20.5 程度である。したがって、前景矮星は赤色超巨星と完全に重なるのである。

 BVRシステムでの赤色超巨星と赤色矮星の分離 

 モデル大気(Buser,Kurucz 1992)による表面重力効果を眺めると、BVR システムに より低重力の超巨星を分離する可能性が見えた。図1には Kurucz 1992 ATLAS9 モデルによるカラー変化を示す。同じ Teff に対し超巨星と矮星ではほぼ同じ V-R であるが、矮星(log g = 4.5)に比べ赤色超巨星(log g = 0)の B-V は十分の数等大きい。 矮星に対しては薄い円盤に相当する log(Z/Zo)=0.0 と 厚い円盤に対する log(Z/Zo) =-0.5 の二つの場合を与えた。赤色超巨星には log(Z/Zo)=-0.5, 0.0, +0.3 を採用 したが、これは NGC6822, M33, M31 を想定しての値である。低メタルになっても 依然として矮星との対比は判然としている。赤化ベクトルは各系列に平行なので 通常の赤化量ならこの方法に影響しない。

 分離の説明 

Jacoby,Hunter,Christian 1984 のスペクトルライブラリーとモデル大気との比較から、この分離は冷たい超巨星で は、同じ有効温度だが表面重力の大きい星に比べて B バンドフラックスが全体的 に低下するためである事が判る。これは低重力の超巨星ではラインブランケッ ティングの効果が強まり、 B バンドに多数の弱い金属線が存在するためにこの 影響が強く表れたと考えられる。この説明は低メタルになると分離が弱まること とも合致する。

 JHK観測 

 赤色超巨星のサーベイは伝統的に赤外で行われてきた。 JHK 二色図上での分離は BVR 二色図上の分離と似ている。しかし、現在のところ可視の方が観測がしやすい。 しかし、将来は赤外観測の方が良くなるかもしれない。

図1.超巨星(log g = 0.0)と矮星(log g = 4.5) ATLAS9 モデル大気 の B-V-R 二色図。記号の大きさがメタル量に対比。矢印=赤化ベクトル。


 前景巨星の混入 

 表面重力が中間値の巨星は超巨星と分離することが難しい。そこで、前景巨星の 混入は考察の必要がある。
 K-M III の Mv は +0.7 ∼ -0.6 でスケール高 100 pc 程度である。V = 15 では 巨星は 10 kpc 程度円盤の上にあることになる。銀緯の低い NGC 6822 でさえ最も 暗い赤色巨星が V = 11 で受かる程度である。この等級は我々が対象とする等級範囲 より遥かに明るい。LMC では最も明るい超巨星に対して問題になるかも知れない。

 CCD測光 

 この分離を実際の星で実証することが必要である。しかし、完全なデータは現在 得られていない。また、これまでの写真測光の精度ではこの分離を検出するのに 不十分である。そこで、我々は CCD 撮像により RSG を見出す観測に乗り出した。 それから分光で、カラーとスペクトル型の較正を行う予定である。



 2.赤い星を求めて 

 観測 

 キットピーク 2.1 m 望遠鏡 + Tektronix 1kCCD (0".3/pixel)を使い、 1993 年 9 月 18-22 日 B(600秒)V(300秒)R(90秒) 撮像が行われた。シーイングは 1".1 であった。限界等級は V で 20.5 mag(σ=0.02)である。


図2.STScI DSS 画像上の NGC6822 5'.2 × 5'.2 3領域。



図4.M31 南側の 2 領域。
選択 

 早期 K 型超巨星まで含めるため、選択基準は V < 20.5, B-V > 1.20, V-R > 0.65 とした。12 Mo までの超巨星が選ばれたことになる。


図3.M31 北側の 3 領域。



図5.M33 6 領域。


 矮星と超巨星の区分線 

 コントロールフィールド二色図の矮星を最小二乗フィットして次の式を 得た。

B-V=-1.599×(V-R)2+4.18×(V-R)-1.04

そこに 0.1 を加えたのが図6に示した実線の境界ラインである。この線の上は 超巨星候補、下は前景星候補である。


図6. コントロール領域の二色図。黒=B-Vカラーのエラーが 0.02 以下。




図7.(上)観測全データの二色図。(下)B-Vカラーエラー 0.01 以下の星。
 観測星での矮星と超巨星の分離 

 図7にはコントロールフィールドを除く、全観測領域内の星を重ねた。図6と 違い、図7a では区分線の上にも下にも星が集まっている。星の分布に谷がなく、 連続しているのは測光エラーのためである。もし、エラーの小さな天体のみを プロットすれば図7b のように分離した系列が現れる。




図8.区分線までの (B-V) 距離分布。(上)コントロール領域。(中)全観測 サンプル星の分布。ボーダーにいるのは主に高温度星。(下)V-R>0.8 の 低温度星に限ると分離がクリアになる。




表2.NGC6822 の分光サーベイ。Δ(B-V) と Class の関係に注意。 表3と重なっている星も表3にはない星もあり、二つの表の関係不明。

 3.分光によるチェック 

 分光の理由 
表2の分光は次の理由で行われた。

(1)測光的分離法が有効かどうかをチェックする。CaT 強度は
    log g に鋭敏で超巨星で強い。赤い星では Te による
    CaT 強度の変化は小さい。ただし、
    メタル量効果 (Armandroff, Da Costa 1991) がある。
    しかし、Mallik 1997 によると超巨星と矮星間の光度クラス
    差による CaT 強度差はメタルの効果より大きい。
(2)CaT は強いので系外星の検出に重要な視線速度の検出が
    容易である。
(3)赤い星なので長波長側での観測が有利。
(4)カラー V-R と有効温度との関係を確立する。まだ低温巨星の
    良いモデルがない。低温巨星では輻射補正が大きいので、
    輻射等級の決定は重要である。

 3.1.分光観測 

 観測は 1995 年から 1997 年まで, KPNO 4m, WIYN 3.5m, MMT を使い、分解能 3.0 - 3.5 A で行った。スペクトル標準星は Morgan,Keenan 1973 のリスト から選んだ。

 3.2.分光観測の結果 

 CaT 等値幅 

 表3に 130 星の CaT スペクトルの結果を示す。この結果、128 星について 前景矮星か系外超巨星かを決める事が出来た。残りの二つは視線速度とライン強度 との間に矛盾があった。(逃散星かな?)


図9.CaT λλ8498, 8542, 8662 スペクトル。
    (上)矮星。(下)赤色超巨星。ob69, ob78 RSG の強い
     ドップラーシフトに注意。
ライン強度は3本合計の等値幅で、"weak" = 8 A 以下、"moderate" = 8-10 A, "strong" = 10-20 A, "very strong" = 20 A 以上、を意味する。Mallik 1997 の 光度クラス効果の研究によると、矮星は EW = 4-8 A で超巨星は EW = 10-15 A で、有効温度に依らない。もっとも幾つかの低メタル超巨星は EW = 8-10 A となる。 この基準は Humphreys et al 1988 が M31 を調べた時の、EW < 9 A は矮星、 EW > 11 A は赤色超巨星、に似ている。

 視線速度と等値幅の比較 
 矮星か超巨星かの区分に関して、視線速度と等値幅は大体同じ結果を与えた。 ただし、 NGC6822c, M31ob102 のような領域では視線速度での区別ができない。 図9に超巨星と矮星のスペクトル例を載せた。当初は NGC6822 や M31 外周部 のような低メタル領域では矮星と超巨星の区分が困難になると予想していた。 しかし、実際には超巨星のライン強度に大した変化は起きなかった。

 カラーと等値幅の比較 
 矮星か超巨星かが決まった 128 星のうち、 119 星は測光カラーからの予測と 一致した。不一致の9星は全て測光では矮星とされていたが、分光から超巨星と なったものである。サンプルの約半数が矮星、半数が超巨星であった。

 測光法による区分 

 図10には二色図と、区分線までの垂直距離Δ(B-V)分布を示した。外れた 分布の星は測光エラーが大きかったり、分光が不確かであったり、混んだ領域に 伴う混乱が見られる。V = 19.5 より明るい星では 96 %, V = 19.5 - 20.5 では 82 % の正解率であった。



図10.分光で確定した矮星と超巨星の分布。
     (上)二色図。(下)区分線までの垂直距離Δ(B-V)分布。




 分類用スペクトル 

 21 個の星の分類用スペクトルが取られた。それらは図11に示されている。 Elias 1985 は晩期型超巨星のスペクトル型は、 SMC から LMC, MW へと高っメ タルになるに連れ、平均してより晩期型になると述べた。今回のサンプルからでは はっきり確認は出来ないが、赤化補正したカラーを用いてメタルの影響が存在 することを次節で示す。
 スペクトル型とカラーの関係は? 

 スペクトル型とカラーの関係は銀河毎に異なるのだろうか?図12にはスペクトル型 と固有カラーの関係を示した。図を見ると、スペクトル型と(V-R)o の関係は (B-V)o より分散が小さい事が判る。図12には減光フリーな指数 Q = (V-R) - 0.53(B-V) との関係も示したが、やはり分散があり、減光補正は完ぺきでない可能性がある。






 3.3.他の研究との比較 

 NGC6822 では Humpherys 1980, M31 では Humpherys et al 1988, の結果と 比較している。





図11.分類用スペクトルの代表例 

図12.スペクトル型とカラーの比較。




表3.分光観測の結果。









 4.結果  

 銀河毎の赤色超巨星の見かけ等級とカラー差の関係

 図13には V 対 Δ(B-V) の関係を銀河毎にプロットした。直ちに判る のは M31 が明るい赤色超巨星を欠いていることである。この問題をより 定量的に扱うため、Mv から Mbol へと変換しよう。このため以下の関係式を 使う。

     (V-R)o = (V-R) -0.53 E(B-V)
     Av = 3.2 E(B-V)
     Mv = V - Av - (m-M)o



 銀河毎の赤色超巨星の絶対等級とカラー差の関係

 この関係式で絶対等級に直し、色等級図を作ったのが図14である。これを見ると銀河毎に 著しい違いがある事が判る。


 それらを列挙すると、

(1)平均カラーが違う(表6)。図12を使うと対応するスペクトル型
   が判る。Elias et al 1985 によると、晩期型超巨星の平均スペ
   クトル型は SMC で M0, LMC で M1, MW では M2 よりやや
   晩期であることを見出した。酸素量 12 + log(O/H) は SMC
   で 8.13, LMC で 8.37, 太陽付近で 8.70 である。表6の
   NGC6822, M33, M31 の平均スペクトル型の変化は Elias
   et al と一致する。
   この傾向の説明としては、同じ有効温度でも高メタルだと
   TiO 量が多く、吸収線強度が強くなって晩期型に分類される。
   また、高メタルだと進化が先まで進むのかも知れない。

(2)絶対等級で高メタルほど赤色巨星は暗くなる。
   この傾向は図14でも明らかであるが、図15に示すヒストグラ
   ムでは、測光完全性限界 Mv = -4.5 より明るい部分に,
   NGC6822, M33, M31 への変化がはっきり見せる。






















図14.絶対等級 Mv と固有カラー (V-R)o の関係。

図13.NGC6822, M33, M31 に対する V と Δ(B-V) との関係。


図15.図14の星のヒストグラム。Mv = -5 は完全性限界である。


表6.赤色超巨星の平均カラーと赤外スペクトルタイプ

 赤色超巨星の数 

 図15では -5 < Mv ≤ -4.5 ビンの数を揃えてある。面白いのは、 そうすると、 NGC6822-M31-M33 と総数が下がって行くに拘らず、全ての銀河 で共通の最高光度まで分布が伸びていることである。

 輻射補正 

 さらに進んで、輻射等級を求めよう。図12に示した (V-R)o とスペクトル型 の関係、Humphreys,McElroy 1984 のスペクトル型の関数としての輻射補正を使い、 (輻射補正をスペクトル型の関数とせず、カラー の関数とするとメタル量の影響が大きくなるのか?不思議!) (V-R)o >, 1.2 では輻射補正を M3 に対する -1.7 と固定する。図14を 見ると、 M31 には (V-R)o=1.2 より赤い星が数個ある。しかし、M31 の最も 赤い星のスペクトル型は M2.5-3 であり、かつ仮に M4 になっても BC は -0.7 増えるのみである。



図16.輻射等級とカラー(V-R)o の関係
 輻射等級で見る超巨星の数 

 図16には輻射等級と (V-R)o との色等級図を示す。それに対応するヒスト グラムは図17にある。このサンプルは Mbol = -6.3 まで完全と信じる。 ここでもメタル量が増加するに連れ、明るい赤色超巨星の数が減って行くこと が明らかである。

 SMC, LMC, MW の組 

 この点で不思議なのは、SMC, LMC, MW の組に関して同様の調査が行われて いないことである。Elias et al 1985 の論文の中では絶対等級に関しては触れ られていない。Prevot et al 1983 は LMC の超巨星が SMC に比べ約1等暗いと 述べている。これはここでの結果にマッチする。一方 Rozanski, Rowan-Robinson 1994 は SMC, LMC の最も明るい超巨星の Mv が似ているが、MW のそれに比べ 0.4 等暗いとした。ただ、前景の星の混入が問題を複雑にしている。視線速度 が得られるまでは解決が難しいだろう。


図17.図16の星のヒストグラム。



 5.結果 

 メタルによる進化経路の変化 
 ここで得た数字は次の進化シナリオを示唆する。

(1)Mbol < -7.5 星は M31 では WR になる。
(2)Mbol < -8.5 星は M33 では He 燃焼期の大部分を WR で
   過ごす。
(3)より低メタルの NGC 6822 では Mbol < -9.0 Mbol < -9.0 星
   のみが WR になれるが、それも He 燃焼の大部分を赤色超
   巨星として過ごしてからである。


 進化モデルの予言 
 これらの制限を質量の制限に変換する際に面倒なのは、進化モデルによる と、赤色超巨星時代に星の光度が増加することと、モデルが実は赤色超巨星 ほどの低温度にまで拡張されていないことである。そうではあるが、 Schaller et al 1992 モデルを使うと、NGC6822 (メタルでは SMC に近い)では最も明 るい赤色超巨星になる星の初期質量は 25 - 30 Mo となった。LMC に近い メタル量の M33 では、それが 18 Mo, 太陽より高メタルの M31 では 13 - 15 Mo である。このように、メタル量の 5 倍の変化に応じて、 赤色超巨星 になる星の質量範囲は 2 倍変化する。

 系統誤差による誤った推測? 
 系統誤差による誤った推測が高メタルになると赤色超巨星の数が減るという 結論に導いたのだろうか? M31 赤色超巨星のより赤い色は、本当に有効温度が低い ためなのか、それとも高メタルのためより晩期型になったためなのだろうか?我々は 前者の立場を取り、赤いのは本当に有効温度が低いためで、銀河系と同じ輻射補正を 他の銀河にも適用できると考える。もし、仮にこの仮定が間違っていたとしたら、 それは却って M31 星に過大な輻射補正を施していたこととなり赤色巨星を暗くする 方向に働く。これは銀河間の差をさらに強めることになる。
 初期質量関数 
 初期質量関数が異なる可能性は排除できない。しかし、多くの証拠がその傾は メタル量に依らないことを指し示している。SMC, LMC, MW ではそれは確立している。

 星形成史 
 Humphreys et al 1988 も同じく、 M31 で赤色超巨星が少ないことを見出し、それを 最近大質量星の形成率が減少したためではないかとした。しかし、それは ありそうにない。O-型星や WR 星が多く見つかっている。

 恒星進化への意味 

 恒星進化への意味はなんだろうか?

(1)中間光度 (Mbol ∼ -6.5) 赤色超巨星の数と相対的に比べた最高光度 (Mbol < -8) 赤色超巨星の数は銀河により大きく変化した。直截な解釈は 同じ光度で比べると高メタル環境中の星はより高い質量放出率を持ち、その結果 より速く WR 星へと進み、He 燃焼期を赤色超巨星として過ごす期間はより短くなる。 図15や17に見られる高光度側への長い尾は、短期間ではあるが高光度の星にも 赤色超巨星の時代がある事を示唆している。これは Maeder et al 1980 の提案 とも一致する。

(2)赤色超巨星を経ずに WR 星となる最小質量はいくつであろうか? OB 星、 WR 星の観測に基づき、Massey et al 1995 はこの限界値を LMC で 30 Mo, SMC で 50 Mo と定めた。しかしこの研究は、He 燃焼の全時期が WR 星として 過ごされるという仮定に基づいていた。もし赤色超巨星が He 燃焼期の普通の あり方であり、メタル量が変化すると WR 期と赤色超巨星期の相対比が変わる ということなら、ここで述べた低い限界質量はターンオフが B0 型星の 幾つ かの星団で 時々 WR 星が見られる事とも矛盾しない。

 WR星 

 次の論文では WR 星成分を比べる。