アブストラクトMSX の MIR, 地上の NIR データを結合し、銀河面 MIR 種族の特性を 調べた。分子雲中の YSO のカラーは星周雲内の晩期型星のカラーと異なる。 MSX により大質量 YSO (MYSO) 約 1000 個の無バイアスサーベイを目標と した。簡単な解析から MSX には銀河系内の全ての MYSO が含まれている ことが判った。 | カラー選択から銀河系中心領域を除き、 MYSO 候補 3071 個が選ばれた。CHIIR や他の種類の混入を除くための追尾観測について 簡単に述べる。また、 MSX + NIR から O-リッチと C-リッチ星を区別する 基準も見つかった。また、このデータから主系列星の周りの星周塵、 つまり低質量前主系列星やベガ型星を区別するのにも使えるかも知れない。 |
MYSO の無バイアスサンプル Prusti, Adorf, Meurs 1992 は IRAS PSC から洗練された方法で低 質量 YSO を選び出した。我々は MYSO の無バイアスサンプルを作る。 MYSO の典型例として BN 天体 L > 104Lo (早期 B 型) の埋もれた天体で、まだ HIIR を産み出していない、を考えた。 この天体の内部では核反応が開始しているが、ガス降着がまだ継続して いると考えられる。通常、強い電離星風を伴い、強力な分子双極流を 示す事が多い。しかし MYSO の発見は偶然の産物で、より一様なサン プルが必要である。 MYSO の予想数 一体銀河系内には幾つの MYSO があるだろう。現在の銀河系星形成率 を 6 Mo/yr とし、サルピーターの IMF を仮定すると 15 - 100 Mo の 星の形成率が出る。YSO 期を O 型星で 104 yr、中間質量 の Herbig Be-型星で 105 yr とすると、MYSO 数として 約 1000 個が得られる。 IRAS カラー選択 深いダスト雲の中の天体はどれも似たカラーになる。Campbell, Persson, Matthews 1989 は 明るく、混入がない未同定 400 天体を調べた。彼らは 近赤外観測に基づき、厚い星周塵による K バンド超過のある 115 天体を YSO 候補とした。最近の Ishii et al 2001 の分光観測によるとその 幾つかは Bγ 線の等値幅から HIIR か PN らしいとされている。 追尾観測は極めて重要である。 Chan, Henning, Schreyer 1996 は 類似のカラー選択から 254 MYSO 候補を選んだ。しかし、CHIIR を 除く仕事が抜けている。実際、 100 個以上が強い電波源としてリスト に載っている。それらは星風からの放射よりずっと強い。多分 HIIR で あろう。 Palla et al 1991 はそうして HIIR を除いた IRAS 天体 260 個の表を与えた。 |
CHIIR 勿論、カラーで選んだ CHIIR サンプルにも多くの MYSO が含まれている。 Wood, Churchwell 1989 は VLA で検出した UCHIIR の 12-25-60 μm カラーを調べ、類似のカラーを持つ 1646 天体を選び出した。しかし、 Codella, Felli, Natale 1994 は通常の HIIR も CHIIR と同じカラーを 持つ事を示した。さらに、Ramesh, Sridharan 1997 は Wood, Churchwell サンプルには低質量星がコアを加熱している場合が多数含まれていることを 示した。Kurtz, Churchwell, Wood 1994 はサンプル中から 69 天体を VLA で観測し、 80 % が CHIIR である事を確認した。しかし、幾つかは 弱くて MYSO と判明した。Sridharan et al 2002 は Wood, Churchwell 基準を満たす北半球天体から、 濃いガスに特有な CS が検出され、かつ 電波連続波の単ディッシュ観測では検出されなかった 69 の明るい MYSO 候補を選んだ。後の基準は CHIIR を除く為だったが、後に VLA で観測 した結果 1/3 が CHIIR である事が判った。彼らのサンプルは高分解能 観測を可能にするため意識的に孤立した MYSO に重点がかかっている。 メーザー MYSO にはしばしば メタノール、水、OH メーザーが付随する。問題は MYSO なら必ず存在するメーザーはないということである。MYSO からの 連続電波は弱くてどれでもマップ可能とは言えない。 MSX 赤外探査が望ましいが、問題は IRAS ビーム径が 12 μm でも 45" × 240" と大きく、混入効果が妨げになることである。その点 最近の MSX サーベイは 18" という高分解能で 8, 12, 14, 21 μm サーベイを |b| < 5° で行って好都合である。 |
2.1.MSX PSC性能6 バンドだが天文で実用になるのは、
MSX 検出 300,000 天体の内多くは 8 μm でしか検出されず、 IRAS 天体と重ならない。 A, D, E でクオリティフラッグが 2 以上 14,897 天体を選んだ。IRAS PSC とは 9303 天体 (62 %) で重なる。多くは単波長 側で重なっており、12 μ が欠けているのは 296, 25 μm が欠けている のは 218, 双方が欠けているのは 20 である。これに反し、60 μm では 145 が上限、100 μm では 2794 が上限、5373 が両方で上限である。 これは IRAS のビーム巾が長波長ほど大きくなり混入効果が効いてくるため である。IRAS 60 μm は天体分類で重要な波長であるが、 60 % しか信頼 できる精度を有していない。 ![]() 図1.MSX と ヒッパルコスの位置の差 |
MSX の位置精度 ヒッパルコスと重なる 192 星について位置の差を図1に示した。大部分は 図から判るように小さな誤差に収まるが、個々の例では特に非常に明るい 場合 F(8) > 100 Jy にオフセットが見られる。同様に例えば W75N のように 非常に有名な MYSO で 30" も位置がずれる例がある。 フラックス 14, 21 μm で検出されているのに 8 μm で非検出の例を調べたが カタログの間違いが多数見つかった。明らかな例は V1489 Cyg である。 この天体は MSX では 8 μm 非検出だが、 ISO の SWS では 1000 Jy である。この場合はサチュレイションが原因である。この他混入が原因で 8 μ が載らない場合がある。それらを表2にまとめた。MSX フラックス には注意が必要なのである。 ![]() 表2.MYSO サンプル。"=" は MSX で非検出だが MSX 側に問題 |
86 % は詳しく調べられていない 文献検索上 MSX 天体は3種に分かれる。(1)分類が確定していて、 あちこちで引用される。(2)分類が不確定で、引用文献一個か、単に IRAS で検出報告があるだけ。(3)初検出。SIMBAD によると、 4896/14897 (33 %) は 10" 以内に同定天体がなかった。表1には SIMBAD 天体タイプを基にした分類を示す。文献上の分類が複数個あった 場合は(SIMBADで?)最初に現れたものを採用した。残りの半数は単に赤外 天体であったり、メーザー源、電波源で天体の本来の性質は不明である。 こうして、 86 % は詳しく調べられていなく、その多くはタイプ分類も 未定であることが判った。 |
中間赤外恒星種族は未分類 これはある程度は研究された天体を調べるとよりはっきりする。文献 引用が 10 個以上の天体 4363 個を調べると、 3/4 は単に赤外源として しか認識されていない。ここでのサンプルの 6 % 以下がタイプがよく 確定した天体である。これは中間赤外で明るい恒星種族は、大きなフラッ クスに限っても未分類である事を示す。 |
分類に使用したカタログ 分類に使用したカタログは大別すると2種類になる。一つは進化した マスロス星、もう一つは若い未進化の星である。実際に使用したカタログは、 可視炭素星 : Alksnis et al 2001 OH/IR 星 : Chengalur et al 1993 PN : Acker et al 1992 Hebig Ae/Be : The, de Winter, Perez 1994 CHIIR :Wood, Churchwell 1989, Kurtz et al 1994, Walsh et al 1998 MYSO : 表2.自分たちで集めた。 IRAS LRS の分類を Kwok, Volk, Bidelman 1997 が与えている。これは中間赤外分類を独自の方向から行っている。特に、 9.7 μm 放射帯により O-リッチ星を分類する基準はダストオパシティの 明確な基準を与える。彼らのサンプルは又、赤外炭素星の有用なリストを 提供している。 内側銀河系と外側銀河系の二色図 図2は、内側銀河系 20° < l < 30° と外側銀河系 100° < l < 260° での二色図を示す。太い実線は黒体である。 矢印は Drain, Lee 1974 の減光曲線を使用した。図2の F21/F14 カラーを見ると、確かに減光が進むと青くなって行く。これは 14 μm フィルターが 9.7 と 18 μm のシリケイト帯の中間の窪みに位置して いるためである。 星間減光の形を変える 図2には幾つかの特徴がある。天体の大部分は分布の青端部に集まっている。 それらは後に見るように大部分が進化した星である。これらの星は銀河系内側 と外側とで二色図上の位置が異なる。幾分かは星間吸収の差だろうが、減光 ベクトルの方向と、位置の差の方向は異なっている。星間減光曲線の形を変える 必要がある。 赤い MSX 天体 F21/F8 を図2右側で見ると、赤い MSX 天体が 主な集団の右に伸びている。これらは深く埋もれた星である。 |
![]() 図2.(上)内側銀河系、 20° < l < 30° と (下)外側銀河系、100° < l < 260° の二色図。 厚い星周層の星 光球放射光が見えない星のカラーはダスト層の温度とオパシティで 決まる。ダストの吸収帯の存在によりある波長帯では様々な変化が 期待される。それらはシリケイトの 9.7, 18 μm 吸収/放射帯、 PAH の 7.7, 8.6, 11.3 μm 帯、SiC 11.3 μm 帯である。 放射星雲では 8.99 μm [Ar III], 12.8 μm [Ne II], 15.56 μm [Ne III] がスペクトルに現れる。 |
若い天体の二色図 図3には既知の若い大質量星、Herbig Ae/Be 星、MYSO、 連続波を伴わないメタノール電波源、CHIIR の二色図を示す。 Herbig Ae/Be 星は星周層が最も薄い。それはカラーが青い事に 現れている。我々が集めた MYSO は HIIR、メタノールメーザー より少し青い。これは、MYSO サンプルの光学的厚みが薄いため というよりは、 MYSO サンプルは見かけが明るく、近傍天体 が多いのに対し、電波で見つかった HIIR, メーザー源は遠い天体が 多く、その分強い星間減光を受けているからかだろう。 これら若い天体は晩期型星とははっきり区別できるほど離れている。 F21 > F8 なのに、F14/F12 < 1 の天体 図3の若い天体の幾つかは F21 > F8 なのに、F14/F12 < 1 である。HIIR の 場合にはこれは [Ne II] 12.8 μm 輝線の影響かも知れない。 その良い例は S106 IR である。この天体は多くの点で、MYSO の 性質を共有しているが双極 HIIR を有している。MYSO は電離放射は 示さず、従って F14/F12 > 1 である。 CHIIR は MYSO と似たカラーを持つが輝線がスペクトルに乗るため、 カラーの分散が大きい。 |
![]() 図3.既知の若い大質量星の二色図。X = Herbig Ae/Be 星。+=MYSO, ●=連続波を伴わないメタノール電波源。○= CHIIR |
既知進化星の二色図 図4は既知進化星、炭素星、OH/IR、PN の二色図を示す。図を 見るとタイプ間の分離がはっきり見える。PN は HIIR と似たカラー 領域を占めている。これは、ダストの中間赤外放射が Lα による 加熱であることから予想されることである。PN の中心星温度は HIIR より巾が広く、輝線の種類も多い。特に、14 μm 帯での [Ne III] と [Ne V] がカラーの巾に大きく影響する。 OH/IR 分布が減光ベクトルに沿う OH/IR はやや穏やかな赤さを示す。その分布は減光ベクトルの方向に 沿っている。プロットの分散方向が炭素星よりも減光ベクトルの方向に あっている事に注意せよ。 ( 通常の K, M 巨星、 O-リッチミラは? ) |
![]() 図4.既知進化星の二色図。●=炭素星。+=OH/IR。*=PN。 |
Kwok 分類の系列 減光ベクトルの方向と天体の分布の関係をもっと調べるため、図5には Kwok, Volk, Bidelman 1997 の与えた分類に従って、タイプ E (シリケイト放射)、タイプ A (シリ ケイト吸収)、タイプ C (SiC 放射)、タイプ P (PAH 放射だが電離輝線なし) をプロットした。図4の傾向がよりはっきり確認されている。 OH/IR 星の シリケイト帯は黒体ラインの付近で放射から吸収に変化する。 Sevenster 2002 は OH/IR 星の MSX カラーを調べた。彼女の結果は 大体ここでの結果と一致する。違いは PN 領域にある星の存在である。 炭素星 炭素星は進化した星の中では最も青い。二色図上での位置も黒体に近い。 炭素星は 13.6 μm に強い C2H2 バンド, 同じ帯域に HCN 吸収帯を持つ。 C2H2 吸収は 赤外炭素星では一層強まる。赤外炭素星の二色図は光球のレーリー テイラーテイルに冷たいダストの放射を重ねたものよりは、数百度の 黒体という近似の方がフィットがいい。 SiC 放射はおそらく自己吸収に より、赤い天体ほど弱くなる。 SiC 放射の効果は C2H2 で相殺されので、F14/F12 はダスト温度の 良い指標であろう。図4と図5の炭素星は可視炭素星である。星周層 の最も厚い炭素星でさえも全てその延長上にある。ISO SWS 炭素星スペクトル を調べたが、Aoki et al 1999 が post-AGB かも知れないとした二つのみが その領域内に収まった。 種族の差 今や図2で見えた、内側銀河系と外側銀河系との差は恒星種族の差に よることが明らかである。内側銀河系では炭素星種族が顕著に少ない。 その代わり、O-リッチな種族が減光ベクトルの向きに黒体ラインを横 切って伸びている。反銀河中心方向で炭素星が多いことは Jura, Joice, Kleinmann 1989 が既に注意していた。 |
![]() 図5.進化星の二色図(II)。Kwok et al 1997 IRAS LRS による分類。 ●=炭素星。+=シリケート放射帯星。X=シリケイト吸収帯星。 *=電離輝線なしの PAH 放射星。見やすさのため、 Kwok et al カタログ中の 1/5 のみを示す。右図で、シリケイト放射から吸収へと減光ベクトルの 方向に移動している事に注意せよ。これに対して、炭素星の赤化はべき乗則 オパシティに合致して黒体に沿って移動している。 |
3.1.近赤外データ「あかり」に期待これまでの解析から MSX データだけでは MYSO を PN から分離する 事は難しいことが判った。ASTRO-F の MSX と同等の空間分解能での FIR データが出るまでこれ以上の発展は難しい。それまでの間、2MASS の NIR データの利用を試してみよう。 2MASS との同定 2MASS と MSX との同定は 10" で行った。MSX が NIR では見えず、 代わりに隣にある近赤外天体を拾う可能性が存在する。星形成域 のように赤外天体が混んでいる所では特にあり得る。 図6には2MASS と 赤外カタログ (Gezari) の等級を比較した。カタログ の多くは単素子でアパーチャが大きいと光度が上がっている。複数個の 観測がある場合は最も小さなアパーチャのデータを使用した。 |
![]() 表6.2MASS と 赤外カタログ (Gezari) の等級比較。2MASS 1st release では 5 等でサチっている。 |
3.2.近-, 中間-赤外二色図と天体の分類3.2.1. 8 μm でのみ検出された MSX 天体8 μm でのみ検出された MSX 天体の二色図MSX 天体の多くが 8μm でのみ検出されている。その大多数はダスト 放射を持たない。そのテストとして、図7には 240° < l < 250°, 10° < l < 11° で、 8μm で検出、 14μm で非検出の 1780 星、 8μm で検出、 14μm で非検出の 2068 星をプロットした。 左側の図 (J-K, K-8) は LMC での同様な図 (Egan et al 2001) と較べてみる とよい。外側銀河系の星の大部分は低温巨星か主系列星と考えられる。 黒体ラインの右側の天体 興味深いのは黒体の右にかなりの星が位置することである。これらは光球 のカラーに較べ中間赤外の超過を示している。これら外側銀河系赤外超過 天体の 83 % は近赤外では青い。これらが何かの同定はなされていないが、 恐らく温かい(∼ 200 K) 光学的に薄い、星本体から離れたシェルでは ないか。候補としては孤立した低質量前主系列星、Be 星などである。ヴェガ 型星の可能性もある。 |
![]() 図7.8 μm でのみ検出された MSX 天体の二色図。実線=黒体。 (上) 内側銀河系。10° < l < 11° (下) 外側銀河系。240° < l < 250° |
3.2.2.MSX 多色データ種類毎の二色図我々の関心は 8 μm 以外でも検出のある MSX 天体にある。図8には 図2と同じサンプルを、内側銀河系と外側銀河系で近・中間赤外カラー二色図を プロットしたものである。図9には若い天体、図10には進化した天体 を選んでプロットした。右側の図の方がいつも数が少ないのは それらが Gezari et al 1999 赤外カタログのデータを使用していてそれら はしばしば J データを欠くためである。 炭素星と OH/IR 星 図8(下)には二つの集団が離れて存在する。一つは黒体カーブに沿って 伸び、もうひとつは F21/F8 の赤い方にずれている。 図10を見るとそれらがなんであるかが判る。黒体ラインに沿っていたのは 炭素星であった。そして赤い天体は OH/IR 星であった。 炭素系と酸素系の分離 図11には図8の天体を Kwok et al 1997 の分類に従ってマークした。 OH/IR 星のシリケイト帯を見ると、 F8/FK が小さい ときには放射帯である。その系列の頂点で放射から吸収に変わる。Aoki et al 1999 や Volk et al 2000 が研究した厚いダストシェルを持つ炭素星も やはり炭素星系列の頂点付近にある。このような明白は系列が出現したのは 近赤外データを加えた利点である。 ( AGB の分離はよいが、 post-AGb-PN で二系列がどう融合または分離するかがはっきりしない。) IRAS での分離 炭素系と酸素系の分離は Epchtein et al 1987 が IRAS と地上近赤外を 組み合わせて、[K-L, 25-12] 二色図で示した。どちらの場合も、それを ダスト光学深さの系列で理解できる。 K バンドは吸収を受けた光球からの光、 8 μm は暖かいダストの放射と考えてよい。明らかに近赤外カラーのみ ではこの傾向を追い切れない。(?)例えば、シリケイトが吸収帯となる星が 放射帯の星より常に赤い [J-K] を持つわけではない。(?) PN の分離 図9、10を見ると、PN は近赤外で青いために、 HIIR や MYSO から 分離する事が判る。これは PN は厚いダスト雲に埋もれてはいないため である。 ![]() |
![]() 図9.MSX 若い天体の近・中間赤外二色図。実線=黒体。 X = Herbig Ae/Be 星。+=MYSO, ●=連続波を伴わないメタノール電波源。○= CHIIR ![]() 図10.MSX 進化した天体の近・中間赤外二色図。実線=黒体。 ●=炭素星。+=OH/IR。*=PN。 ![]() 図11.図8の天体を Kwok et al 1997 の分類に従ってマークした。 ●=炭素星。+=シリケート放射帯星。X=シリケイト吸収帯星。 *=電離輝線なしの PAH 放射星。 その他のタイプも参考のため黒点で示した。 それらは、黒体ライン付近の通常星、PN, HIIR 等の赤い輝線天体である。 炭素系天体と酸素系天体のはっきりした分離は著しい。 図8.MSX 天体の近・中間赤外二色図。実線=黒体。 (上) 内側銀河系。10° < l < 11° K-検出が少ないのは 2MASS 2nd Release のスカイカバレッジが悪いためである。 (下) 外側銀河系。240° < l < 250° |
MYSO の選択 この論文の主要な関心は MYSO の完全な人口調査を行うことである。 IRAS を使った以前のサーベイから、 MYSO の第1基準は 1 - 100 μm の間デコボコのない右上がりの SED を持つことである。従って、 MSX に おいてはまず、F8 < F14 < F21 がスタート点になる。 6838/14,897 天体がこの基準を満足する。表2の 典型 MYSO は全て F21/F8 > 2 である。 そこで、第2に F21/F8 > 2 条件を入れると、 4215 天体が残った。第3に -10° < l < 10° を除く。 ここでは混入が激しいからである。これで 3071 個に減った。 図4を調べると、これでは依然として多くの進化した星や PN の混入が あることが判る。 近赤外カラーを MYSO 選択に導入する 図9を見ると、既知の MYSO は全て F8/FK > 5, FK/FJ > 2 である。この制限を掛けると PN の 2/3、 それに中間赤外のネットを潜り抜けた OH/IR と炭素星が落ちる。近赤外 だけの二色図 (J-H, H-K) では MYSO と HIIR の分離は達成されない。 上の 3071 個の中で NIR 等級が知られているのは 736 個しかなかった。 その内でJ, H, K, 8μm を使った上の制限を通過したのは 472 天体であった。 NIR 等級のない天体もこの割合で制限を通過できると仮定すると、約 2000 個が MYSO のカラーを持っていると推測される。 |
文献調査 これら 472 個に対しさらに文献調査を行った。その結果は表1に載っている。 見出された進化星の数は大幅に減少した。そしてこのサンプル内でメーザー源 を MYSO に連続電波源を HIIR に振り分ける。使用できる分類を持つ天体として 221 個が残った。その内 165 個は星形成域にある。その内半分は 多分 HIIR であろう。メーザは MYSO か CHIIR のどちらかである。 IRAS 12, 25, 60 μm サーチの穴 さっきの 3071 天体を改めて IRAS との相関を調べた。 1605 個が IRAS PSC にあった。内 43 は 60μm が上限のみ、 560 は 100μm が上限のみ、 408 個が 60, 100 μm 両方で上限のみであった。つまり、43+560+408=1011 個 は 60 か 100 μm が使えない。 1011 + 1466(PSCにない)= 2477/3071 個 がIRAS ビームで混入障害を受けている。そして、1466 + 43 + 408 = 1917 個が 前の IRAS 12, 25, 60 μm フラックスを使った MYSO サーチでは最初から 考慮の対象となっていなかったのである。 |
MYSO 候補の銀経・銀緯分布 中間赤外選択を通った MYSO 候補の銀経・銀緯分布も調べた。近赤外データは 不完全なのでここでは用いなかった。図12銀経分布を見ると、Wood, Churchwell 1989a の結論と一致して、大部分は近傍の星形成複合体と渦状腕の天体である。 |l| < 10° のバルジ天体密度が高いことがこのカラー選択天体でも はっきり見える。このサンプルの銀緯方向スケール高は 0.8° である。この 値は Wood, Churchwell 1989a の 0.6° と似ている。これに対し、 多色 MSX サンプルのスケール高は 1.6° である。0.8° は 8.5 kpc では 120 pc に対応する。これは OB 星の 65 pc, HIIR の 30 pc に較べると 少し大きい。多分混入星のためだろう。 ( サンプルが Wood, Churchwell の 言う近傍の天体なのか、銀河系全体から採った MYSO なのか、どっち?) 21 μm でのみ検出? 21 μm と 14 μm で検出され、8 μm では非検出の天体は 2.1 節に述べたように殆どが人工的な偽天体であった。しかし、21 μm のみで受かった天体が 5431 天体ある。殆どは 21 μm 検出限界、 F(21) ∼ 2 - 4 Jy 近くである。従って、 F(8) 限界 0.1 Jy 以下になるには F(21)/F(8) > 20 - 40 が必要となる。これはまさに MYSO に要求される 性質である。しかしながら、 14 μm での検出限界 1 - 2 Jy をも下回る ことを考えると、図2で見るようにその範囲に落ちる天体は少ない。したがって、 21 μm のみで受かり、短波長では非検出であるような非常に赤い天体の 数はとても少ないと判断する。 すべての MYSO を載せたか? 本論文のリストにすべての MYSO を載せたか? 2.3 節にある既知 MYSO と HIIR を使って想定される MSX フラックスを当たってみよう。まず、 Emerson 1988 から遠赤外フラックスを F(FIR)=(20.6F12+7.54F25+4.58F60+1.76F100)10-14 W m-2 で求める。次に E バンドフラックスを F(E)=4.04F21 10-14 W m-2 で求める。すると、典型的には F(FIR)/F(E) = 5 - 40 である。MYSO 光度 104 Lo を仮定すると、D=10 kpc で、 F(FIR) = 10-12 W m-2 となる。従って F(E) = 2.5 - 20 10-14 W m-2 で、これは F21 = 0.6 - 5 Jy となる。Egan et al 1999 の完全度調査によると、第1、第4象限では 2.5 Jy で 50 %, 第2、第3章象限では 3.5 Jy である。よって、 10 kpc で MYSO の半数を検出していると考えてよいだろう。 |
![]() 図12.中間赤外カラーで分離した MYSO 候補の分布。 (a) 銀緯分布。(b) 銀経分布。(c) MYSO 銀緯分布と多色 MSX 天体の銀緯分布の比。 |
MSX と 2MASS の結合の有用性 MSX と 2MASS の結合は埋もれた天体の分類に強力である事が 示された。これは Egan 1999 が以前示したことでもある。特に、 両者の結合は 進化星と YSO を分ける。進化星は Epchtein et al 1987 と類似の形態で O-, C-リッチの二つに分離する。 |
MYSO サンプル カラー選択をさらに進めて 2000 個のサンプルを作った。その中には MYSO と CHIIR の大部分が含まれる。この値は現在の星形成率と大体 合う。 |