IRAS 1983 年中の LRS スキャンデータに基づいて、Oリッチミラ型星 AU Cygni の星周シェルからの赤外シリケイト放射に変化が存在する証拠を示す。 AU Cyg の光学的に薄いシェルからの放射帯コントラストは可視極大で強く、 極小期で弱い。 | 星周シェルは微小グレインが多数を占めるモデルを提案する。それらは、 極大期により大きいグレインの蒸発により生まれ、連続光に対するバンド放射 の相対強度を増加させる。バンド形状の変化は小さい。 |
1983 年の IRAS ミッションでは、 8 - 22 μm で 2 Jy 以上の天体の スペクトルが得られた。一天体当たり数回スキャンされたデータは平均化 されて、明るい約 7000 天体の LRS スペクトルアトラスが出版された。 しかし、それらは 50,000 天体に対する 150,000 スキャンの部分データなの である。 | この論文では、その中の一つの星、 AU Cygni, で光学的に薄いシェルに生 じた 10 μm 放射帯が可視変光と共に変化することを示す。以前地上観測 に基づいたダスト放射の時間変化はフラックス全体の変化を指していた。 今回の観測データは放射帯の形状、強度を分離できた点が特徴である。 |
![]() 表1.AU Cygni の観測データ。 データ入手 AU Cygni = IRAS 20165+3413, RA1950 = 20h16m35.6s, Dec1950 = 34° 13'49", l = 75.9°, b = -0.85°, M6e, Mira P = 435 d. の LRS アトラスのスペクトルは 5 スキャンの平均である。これらのデータは 最初 extended database の VMS/point source version から Paul Wesselius at SRON, Groningen を通じて入手された。IPAC からは時間付けされた PSC フラックスが得られた。 スキャン較正 図1には AU Cyg の LRS スキャンスペクトル 5つを示す。 フラックスがファクター2の変化を示しているのは明らかである。 表1には AU Cyg の観測データを示す。IPAC は second- と hour-confirmed データは結合して公表している。従って PSC フラックスは Φ 0.18 と 0.58 の一組みに対してのみ与えられる。 LRS スキャンは間違えて較正されている。特に短波長側では較正用の α Tau の SiO 吸収帯を無視した影響が大きい。我々は、個々のスキャンを Cohen et al の示した処方に従い再較正した。 |
![]() 表2.データ コントラスト 星の赤外連続光は黒体で近似した。 > 2 μm の大きなグレインも この波長帯では平滑な連続光を放射する。一方小さなグレインは強い放射帯 を生み出す。第1近似では、黒体輻射を LRS の放射帯外域にフィットして、 差し引いて Fλ-Fcont を得る。次に, コントラスト=(Fλ-Fcont/ Fcont コントラストは 10 μm で評価する。 |
コントラスト低下 図3と表1から、F(12) とコントラストが可視変光曲線と共に変化すること が明らかである。ピークフラックス密度 (10-12 W m-2 μm-1)は 4.8 から 2.4 へ、一方同じ波長での連続光フラックス密度は 2.2 から 1.3 へと変化する。従って、連続光の低下以上に輻射帯の強度が低下していて、 それがコントラスト低下の原因である。 極小時のダスト ミラ型星は極小時に低温である(Strecker 1973, Hoffmeister, Richter, Wenzel 1985)から ダスト凝結半径は小さくなるはずである。従って、極小時にはより多くのダス トが視線上に現れ、 τ10 は上昇する。しかし、これは我々の 観測と反対である。 サイズ分布の変化 > 2 μm の大きなグレインは連続光を作り、小さなグレインはバンド 放射を生み出す。変光に伴うグレインの蒸発と凝集の過程を通じて、ダスト シェルのサイズ分布は変化する。光度と温度が上がると、シェル内縁付近にある 大きなグレインはマントルが蒸発して小さくなる。このため、極大付近では 小さなグレインからの放射が支配的となり、コントラスト=(放射帯光/連続光) が上がる。 他のミラ型星でも Little-Marenin, Staley, Stencel (1993) は IRAS 観測期が極大と極小付近だった約 30 のミラ型星で、 F(12), コント ラストが可視変光と同じような変化を示すことを見出した。一般に 10 μm での変光幅は 8.4, 12.7 μm でのそれよりも大きい。これは輻射帯の強度変化 が連続光よりも大きいためであろう。 干渉計観測 Bester et al 1991, Danchi et al 1994 の干渉計観測から極小付近 で新しいダストの形成が判った。彼らは、シリケイトダストが 3 Rs (Td = 800 - 1300 K)以内にまで広がっていることを見出した。 |
![]() 図3.破線= AAVSO 可視等級 AU Cygni 変光曲線。実線= IRAS F(12) の変化。 極小時には 大部分のミラ型星でそれよりさらに内側で新しいダストの形成が見られた。 干渉計観測は視線方向にあるダストの量が極小期に増加することを示す。 一方我々や Le Betre 1993 のデータは極小期に輻射帯のコントラストが 減少することを示す。Le Betre 1993 はこれがシリケイトグレインの性質が 変化するためとした。我々はそれに対して、極大期に小さいグレイの比率が 高まることがコントラスト変化の原因と考える。 |
ミラ型変光星の極小期にはダストシェル内縁半径が縮小し、より多くのダス トが形成されそうである。そうなるとコントラストは極小期に大きくなると 予想される。しかし、我々が見出したのはその逆である。我々の説は極大と 極小の間にダストグレインのサイズ分布がかなり変わり、極大時には蒸発の 結果、小さいサイズのグレインの比率が高まることがコントラスト変化を説明 するというものである。シェルの光学的深さが大きく変わった証拠は見出さ れていない。 | 観測結果を理解するには、極大、極小の両時期に対する輻射輸達 モデルを走らせる必要がある。モデルにはダスト放射率の変化、 ダストサイズ分布の変化も組み込まれる必要がある。さらに、 変光周期の全位相でのスペクトルを観測から得る必要がある。 |