Galactic Center Gasdynamics: A One-Armed Spiral in a Keplerian Disk


Lacy, Achtermann, Serabyn
191 ApJ 380, L71 - L74




 アブストラクト

 銀河系中心 3 × 4 pc 領域を [Ne II] 12.8 μm ラインの空間分解能 2″, 速度分解能 30 km/s で撮像観測した。電離ガスの形態は1本腕の r ∝ θ 渦で説明できる。腕に沿ってのガスの運動は近似的にケプラー円運動で説明できる。そのため の中心質量は 2±0.5 × 106 Mo である。

 1.イントロ 

 銀河系中心の数パーセク領域 
 銀河系中心の数パーセク領域は二つに分かれる。

(1)R > 1.5 pc 領域。主に分子ガスで円盤状に分布。回転曲線は 110 km/s でほぼ平坦。

(2)R < 1.5 pc 領域。電離ガスが数本の流れやフィラメントを成す。名前が付いているのは、 西腕(western arm), 北腕(northern arm), 東腕(eastern arm), バー(bar) で図1に見える。

西腕は分子円盤の内側の縁で、主に 110 km/s の円運動をしている。北腕は潮汐力で引き伸ばされた雲で 銀河系中心(Sgr A* ?)の背後 0.4 pc のところを通過する離心軌道上を運動している。

 論文目的 
 ここでは、[Ne II] の新しい観測結果を議論する。

 2.観測 

 IRTF/MIR エシェル分光器/10×64 Si:As 検出器により、10 点での 64 点スペクトルを撮った。 スペクトルは 16.5 km/s/ピクセルの分解能を持つ。0″.6×1″.0 分解能で 75″×90″ が撮像された。


図1.[Ne II] 輝線等高線マップ。レベルは 3, 6, 10, 20, 30, 40, 60 × 10-2 erg s-1 cm-2 sr-1.



図2.(a) [Ne II] 輝線画像。対数輝度表示。(b) 渦面上に投影した [Ne II] 輝線画像。 黒点=フィット渦パターン。 (c) ケプラー運動の ±40 km/s 以内のみの光で作った画像。 (d) 円盤速度成分を除いた後の輝線画像。

 3.形態学 

 フィラメント 
 Sgr.A West にある多数の電離フィラメントは相互に関連するのではないかと考えられていた。 今回、"西のアーク" と "北腕" の間、IRS 8 の下で輝線の橋がつながっていることが見えた。 また、北の腕はバーにつながり、Sgr A* の 2″ 南で終わる。"西のアーク" と "北腕" の 関連は運動学的モデルでもそれらとさらに分子円盤も同じ平面上に置かれることで支持される。

 傾き角 
 Seraby,Lacy 1985 のフィットでは、北腕は i = 60° - 70°, 天球と軌道面との交線の 位置角 p.a.= 20° で、西アークに関しては i = 60° - 70°, p.a.= 12° である。 分子円盤の Seraby et al 1986 向きは i = 60° - 70°, p.a.= 0° - 30° で 大体一致している。



図3.HCN J=1-0 輝線の等高線マップ(Wright et al 1987) を Lo,Claussen 1983 の 5 GHz 画像に重ねた。[Ne II] にフィットした渦も電離ガスの外まで外挿して示す。 HCN のピークは電離ガスの外側にある。
 正面向き画像 
 正面向き画像、図2bを見ると、
(1)西腕は Sgr A* を中心とする円軌道では上手く記述できず、離心円または Sgr A* からは画像の上で 20″, 底で 40″ 離れた渦と看做される。
(2)西アークと北腕は組み合わせると r ∝ (θ - θo) で表される 渦状模様に合致する。




図4.渦に沿った [Ne II] のスペクトル θ - v 図。3種類のフィットを 重ねた。実線=質点の周りの円運動。点線=等温恒星系の周りの円運動。 破線=点源+等温恒星系のポテンシャル中で腕に沿った運動。