Modeling the Alumina Abundance of Oxygen-Rich Evolved Stars in the LMC


Jones, Kemper, Srinivasan, McDonald, Sloan, Zijlstra
2014 MN 440, 631 - 651




 アブストラクト 

 O-リッチ AGBs の星周外層中ダストの成分を決めるために、ダスト成分、 マスロス率、シェル内径、星パラメターのグリッド上で MODUST 輻射輸達モデ ルを作った。モデルのカラーを SAGEーSpec LMC サンプルと比較して、良い一 致を得た。5 - 37 &mu:m Spitzer IRS スペクトルと 可視 - MIR の測光が与 えられた 37 O-リッチ AGB 星をフィットした。  モデルフィットから得たマスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr である。観測スペクトルに合うダスト組成は 非晶質シリケイトが主成分 で、それに非晶質アルミナ、金属鉄が加わる。AKARI の[11-15]-[3.2-7] 二色図 からアルミナの割合を決めることも出来る。





図1.天文シリケイトと実験室シリケイトを使ったモデルフィットの比較。 Dorschner95 の実験室光学定数が最も良いフィットを与える。

 2.モデル 


図2.アルミナ比率の変化によるスペクトル変化。マスロスは 7.5 10-7 Mo/yr 固定。

 星 

 Teff = 3715 K (M1), 3396 K (M5), 2667 K (M9) とした。L = 7000 Lo.

 Rin を様々にグリッド 

 ダスト温度 Td は次の式で決める。



s = 1 (Olofsson04), Tcond = 1000 K (Gail, Sedlmayr 1999) とした。 しかし、アルミナの Tcond = 1400 K である。しかし我々は各成分毎に 異なる内径を設けることはせず、Rin = 2.5, 3, 5, 7, 15 Rs のグリッドを計 算した。中心星のスペクトルは Flux et al. (1994) を使用した。

 Vexp = 10 km/s  

 Vexp = 10 km/s, ダスト/ガス1=0.005 とした。

 星周ダスト 

 10-7 Mo/yr 以下では単純な金属酸化物が主成分 Cami02, Posch02 である。それより上ではシリケイトが主役になる。金属鉄 Kemper02、McDonald10 も寄与してくる。図1では Ossenkopf92 の O-rich (Orich) 、O-poor(Opoor) シリケイト, Suh99 の "warm", "cool" シリケイト、Draine, Lee 1994 の "astronomical" シリケイトの五種に Jager03 と Dorschner95 の非晶質 オリビンの二つでモデルを作り観測と比べた。その結果、Dorschner95 の非晶質 オリビンが最も良く再現することが分かった。近赤外でのオパシティを上昇さ せるために金属鉄 Ordal88 が必要である。Kemper02, de Vries10 に倣いその 質量比を 4 % とする。球形のダストは非現実的な共鳴効果(Min03)を持つので、 細長い楕円体形状で continuous distribution of ellipsoids (CDE) モデル を用いる。

表1.モデルパラメター  

 星周ダスト 

 10-7 Mo/yr 以下では単純な金属酸化物が主成分 Cami02, Posch02 である。それより上ではシリケイトが主役になる。金属鉄 Kemper02、McDonald10 も寄与してくる。図1では Ossenkopf92 の O-rich (Orich) 、O-poor(Opoor) シリケイト, Suh99 の "warm", "cool" シリケイト、Draine, Lee 1994 の "astronomical" シリケイトの五種に Jager03 と Dorschner95 の非晶質 オリビンの二つでモデルを作り観測と比べた。その結果、Dorschner95 の非晶質 オリビンが最も良く再現することが分かった。近赤外でのオパシティを上昇さ せるために金属鉄 Ordal88 が必要である。Kemper02, de Vries10 に倣いその 質量比を 4 % とする。球形のダストは非現実的な共鳴効果(Min03)を持つので、 細長い楕円体形状で continuous distribution of ellipsoids (CDE) モデル を用いる。





図3.Spitzer IRAC/MIPS 二色図。灰色点=モデル。3つのピンク星= Flux et al. (1994) による M 型巨星スペクトル。SAGE-Spec の星を分類して示す。




図4.SAGE-Spec からの O-AGB(青三角) と RSG(赤菱) サンプル二色図。 左:2MASS-WISE 右:WISE




図5.SAGE-Spec からの O-AGB(青三角) と RSG(赤菱) サンプル二色図。 AKARIカラー。緑丸=非晶シリケイトのみ。茶丸=アルミナのみ。紫丸=半々。




図6.今回のモデル二色図を GRAMS モデルと比較。

 3.モデルの結果 

 図3左=IRAC 二色図 

 図3左=IRAC 二色図はまずモデル大気点が 3396 K (M5) と 2667 K (M9) の 間で [3.6-4.5] が飛び過ぎる。このため、中間域がカバーされない事となった。 サンプルは [3.6-4.5] < 0.7 で C/M 分離が悪い。

 図3右=IRAC/MIPS 二色図 

 5.8-8-24 の二色図は C/M 分離が良く、 Kastner08, Boyer12 などによって、 O-リッチと C-リッチ AGBs の識別に使用されている。

 図4左 = 2MASS/WISE  

 ダストが薄い [4.6-12] < 1.6 までは主に Teff の違いにより、 M-星と C-星 の (J-Ks) は分離している。RSGs は M1 モデルで良く再現されている。 J-Ks が青い方にはみ出る星がある。 Whitelock03 は非対称性構造による散乱光 の効果か、脈動によるカラー変化とした。
 図4右 = WISE 二色図 

 図3左と似た配置となる。[3.6-4.5] は暖かいダスト、[12-22] は冷たいダスト の指標と考えると図を理解しやすい。[3.6-4.5] > 0.5, [12-22] > 1.5 の 星は、金属鉄が多い星かも知れない。

 図5=AKARI 二色図 

 [7-11] カラーは縮退しているが、[11-15] カラーはアルミナの量により 分離することが分かる。したがってこのカラーはアルミナ量の推定に 使える。

 GRAMS  

 Sargent10 と Srinivasan11 は GRAMS モデルグリッドを開発した。 O-リッチモデル(Sargent10)は  Ossenkopf et al. (1992) の O-欠乏型シリケイトグレインを使用している。一方 C-リッチモデル (Srinivasan11) は炭素と 10 % 炭化ケイ素の混合ダストを使用している。 彼らは Ueta, Meixner 2003 の 2DUST コードを使用して輻射輸達を解いた。 大気モデルには Kucinskas05, 06 のPhoenix モデル 14 個を使っているので Teff が細かい利点がある。





図9.アルミナ比率とマスロスの関係。SE強度別に示す。

 3.2.SE 指数 


図7.点線= Sloan,Price95 のシリケイトダスト系列。 F10/F12 = 1.32(F10/F11) 1.77 赤、青点=今回のモデル。黒菱= LMC O-AGBs.

 SE 指数 

 SE = silicateemission 指数は Sloan, Price (1995), Sloan,Price 1996 が提案したスペクトル分類法である。 定義は、

   SE = 10*(F11/F12) - 7.5

10 μm 放射が殆どないときは SE = 1 - 3, 細くて強い 9.7 μm 帯は SE = 7 - 8 である。 光学的に薄い O-リッチ AGB シェルにおける 8 - 12 μm 放射の変化を表す。

 図7と図8  

 図7は F10/F12 対 F10/F11 を示す。図8には SE の分布。

図8.モデルグリッドの SE 指数分布。色分けは M9 大気の各モデルで使用さ れた Rin/Rs の値を示す。色分布が均一なことは、 SE 指数がダスト温度に 依存しないことを意味する。


図10.LMC AGBs の SE 分布


 図11. 黒線=観測と青線=モデルの比較。 

黒菱=測光観測。赤菱=スペクトル値。緑丸=モデルフラックス。














表2.フィットの結果




図12.SAGE-Spec サンプル中の AKARI と SAGE 測光値 8 星へのフィット




表3.図12フィットの結果。

 4.アルミナ量を測る 


図13.SSID 182 へのフィット。青=金属鉄を含むモデル。 赤=金属鉄を含まないモデル。これは鉄を入れるとフィットが悪くなる 唯一の例である。

 サンプル星 

  LMC AGBs のアルミナ量を調べるために、Kemper10 のSAGE-Spec サンプル から選んだ 54 O-リッチ AGBs にモデルフィットを行った。光学的に厚い星 ではアルミナは観測されていないので、自己吸収のある星は除外した。また、 大気がそのまま見えている星も除いた。残ったのは 37 星である。 フィットの結果を図11と表2に示す。 また、その中の 8 星は AKARI 測光値があったので、図12に示すフィットを 行い、結果を表3に示す。

 10 ミクロン帯 

 モデルフィットは 10 ミクロン帯の再現には成功してる。AKARI データを 組み合わせるとアルミナ量の推定に役立つことも分かった。

 λ > 16 μm フィット 

 長波長 λ > 16 μm でのフィットはそれほど良くない。18 μm 放射帯ではシリケイト光学定数が強すぎる放射帯を生み出す。また実験室データの ピークは短波長過ぎる。

 鉄なし星 

 実験シリケイトは NIR のオパシティが小さいため鉄グレインの追加が必要で ある。しかし、SSID 4329 では図13に示すように鉄が不要である。

図14.二つのサンプル星におけるスペクトル変化。

 スペクトル変化 

 IRAS 04544-6849 (SSID 4076-4081) と HV 2446 (SSID 4324-4329) は複数 回の IRS 観測が行われた。図14に示すように、どちらも 10μm/20μm 比が変光位相と共に変化する。これはダスト温度の変化によるもので、 Monnier98 が示すように光度変化に関係する。ただ、10 μm 帯のピーク波長 が変光と共に変化することは、ダストオパシティの光学的性質が温度と共に 変化することを示唆する。

 明るい星 

 サンプル中最も明るい星 RS Men (SSID 4287) は距離 4.75 kpc の前景星 とされている。この星はアルミナ比率 60 % と最も高い。


 5.議論 


図15.我々のモデルと, Groenewegen 09, Riebel12 とのマスロス率の比較。

 他研究との比較 

 図15には Riebel12 による GRAMS グリッドを使用した結果、Groenewegen09 のマスロス率を我々のマスロスと比べた。我々の値は GRAMS より少し低目 である。

図16.アルミナ量とマスロスの関係。黒四角=今回。青三角= バルジ星 (Blommaert06)

 アルミナ量 

 図16にはアルミナ量とマスロスの関係を調べた。両者の間には逆相関が 見られる。


 6.結論 

 ダストシェル輻射輸達モデルのグリッドを作成した。アルミナとシリケイト の組成を変化させて最適組成を求めた。 LMC 37 O-リッチ AGBs のフィット を行った。  マスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr であった。 AKARI [11-15] - [3.2-7] 二色図がアルミナ比率の決定に有効である。