特異 A-, F-型超巨星 HD 101584, 89 Her, υ Sgr, R CrB は大きな 赤外超過を持つ。HD 101584 (F2e Iap)では可視よりも赤外放射の方が強い。 我々は、赤外エネルギーが M-型超巨星から放射されるのであり、星周ダスト 起源ではないと考える。HD 101584 は振幅 20 km/s の視線速度の変動をも示 す。Hδ は P Cyg 型線輪郭を持ち、2年間の観測期間の間、 H, K 線の 視線速度は他の線に比べ 30 km/s マイナスであった。 | 89 Her (F2e Ia) と υ Sgr (cApe) は HD 101584 と似た赤外超過を持ち、やはり非常に 低温の星からの赤外光であろう。特異炭素星 R CrB (F8pep) は Cydnid 型赤外 星と似た赤外超過を示す。 R CrB は 3.5 μm で長周期変光星と似た変光を 示す。この星の可視域での乱れた振る舞いには赤外伴星が関与しているのかも 知れない。 |
Humphreys, Ney (1974) で我々は HD 101584 の赤外放射が低温伴星に起因すると考えた。ここでは、 その考えをさらに完全に述べる。特異 F-型超巨星 89 Her, υ Sgr, R CrB も同じような連星系として説明する。 |
![]() 図1.Av = 1 mag の通常 F-型超巨星 HD 97534 と赤化なしだが 大きな赤外超過を持つ HD 101584 のスペクトル。 HD 101584 は CTIO において1年間隔で4年間観測された。表1に測光観測 の記録を載せた。遠赤外測光はラスカンパナス 1 m 反射鏡 + ボロメターで行 われた。 2.1.赤外放射SED 図1に HD 101584 と HD 97534 の 0.4 - 18 μm SED を示す。 HD 101584 は 7000 K BB + 1.6 - 8 μm の赤外超過 + 11, 18 μm 放射 帯から成る。シリケイト帯の強度以外では図2の 89 Her とよく似ている。 HD 97534 は典型的な F-型超巨星 SED で、BB + 可視減光を示す。 星周ダスト Humphreys, Ney (1974) で述べたように、HD 101584 の赤外放射をダスト起源とすることは難しい。 地球で観測される 7000 K BB の放射量は 4.7 10-15 W cm-2 であるが、赤外放射の量は、 5.7 10-15 W cm-2 である。 この赤外放射をダストからの熱輻射とするなら、星は実際には可視域で 1 mag 明るいことになる。HD 101584 は赤化が殆どないから、シェルの減光はグレイ ということになるが、それはダストサイズが極めて大きいことを意味する。 Gilman 1969 に依れば 900 - 1000 K 以上でダストグレインが形成されること は難しい。まして、1100 K で大きなサイズに成長するほど長く生き延びること は一層考えにくい。 伴星 HD 101584 の 1.6 μm 以上の赤外超過は Taurids (Strecker, Ney, Murdock 1974) と呼ばれる種類の低温度星からの放射であり得る。それらの星 は 2 - 8 μm で f-f 放射を、11, 18 μm でシリケイト放射を示す。 2.2.スペクトル特異性HδHδ は P Cyg 型の線輪郭を示す。 H, K 線視線速度 H, K 線視線速度は他の線と比べ 30 km/s のマイナスである。 2.3.光度と距離 |
![]() 図2.89 Her と υ Sgr のエネルギー分布。 ![]() 図3.吸収線と CaII ラインの視線速度変化 |
![]() 図4.R CrB のSED. |
![]() 図5.R CrB の可視と 3.5 μm での変光曲線。. |