The Radio Content of GLIMPSE


Giveon, Becker, White
2008 AJ 135, 1697 - 1707




 アブストラクト 

 l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] で VLA 5 GHz - MSX6C - GLIMPSE v1.0 マッチングを行った。GLIMPSE の高解像度と高感度により、埋もれた星形成域 の同定を改善し、中心星、電離ガス、ダストの関係をより深く調べる役に立っ た。GLIMPSE カタログは数が多すぎて 5 GHz 天体との同定が困難であるが、 GLIMPSE 天体を、「赤」(m3.6-m8>2.5)と 「青」(m3.6-m8<2.5) に分けると解決した。 GLIMPSE の高い感度にも拘わらず、GLIMPSE-5GHz マッチの数は予想外に 少なかった。  双方が重なる領域=(l=[10,42],b=[-0.4,0.4])に GLIMPSE-5GHz マッチ 132 天体中 55 個が MSX とマッチした。マッチングは期待したほどでは 無かった。しかし、それでも幾つかの結果が得られた。(1) 電波位置付近 では 「青」天体数が減る。それらの平均見かけ明るさは上昇し、カラーは 著しく赤くなる。これは不透明な雲の背後で背景星が消えるという描像に 合う結果である。(2) 選ばれた天体は近赤外および中間赤外カラーの条件 を定めた。それを用い、GLIMPSE 全領域中から 849 GLIMPSE 天体を MSX マッチがあり、かつ選択天体と同じ性質の天体として同定した。 それらの 15 % のみがこれまでに HIIR, メーザー天体、YSO、MC として同定されていた。


 1.イントロダクション 

 MSX の感度は IRAS と同程度だが、空間分解能は IRAS が 1', MSX が 18" である。その結果 MSX は |b| < 6° に 43 万天体を検出した。 そのバンドは 8, 12, 15, 21 μm である。しかしこの分解能では銀河面の 高い天体密度にはまだ十分に対応できない。このために、より高分解能の 2MASS, VLA 天体との同定に問題が生じ、天体形態の研究を妨げている。  GLIMPSE は |l| = [10,65] b = [-1,1] で空間分解能 2" で 3.4, 4.5, 5.8, 8 μm 像を提供する。その v1.0 カタログには 47 M の天体が載っている。 感度も 8 μm で MSX が 0.1 Jy に対し、 GLIMPSE は 0.4 mJy である。 GLIMPSE は銀河系円盤恒星成分の研究には最強である。しかし、深く潜っている 天体にはより長波長が必要である。今回は GLIMPSE 領域内のそれらの星を MSX と電波データをつなげて調べる。


 2.GLIMPSE-5GHz マッチ 

 2.1.選択 

 スタートサンプルは、 Giveon et al. (2005) の, 電波 1.4, 5 GHz VLA カタログと MSX のマッチングで得た UCHIIR リスト である。5 GHz 観測は分解能 4" で感度 2.5 mJy であり、埋もれた O-型星の 90 % 以上が銀河系の向こう端まで引っ掛かっているはずである。マッチングの 結果 687 星が残った。その後の画像処理の向上で現在は 740 である。

 2.2.マッチング 

 494/740 MSX-5GHz 天体が GLIMPSE 領域にある。GLIMPSE 天体の数が多すぎ る。


図1.黒=GLIMPSE 平均天体密度とマッチ電波源位置からの距離の関係。 白=わざと位置を 10' 動かした mock catalog を使った時の関係。 黒分布は 距離ゼロでは密度 0.0273 (arcsec-2) のピーク を持つが図からスケールアウトしている。マッチ位置の周りで GLIMPSE 密度が低下するのは広がった雲の遮光が原因。

図2.マッチ天体による遮光効果を図示。黒丸=6個のマッチ電波源位置。 周囲の GLIMPSE 密度が低下していることに注意。白丸= 1/6 のみが マッチ GLIMPSE 天体を持つ。白四角= mock カタログのマッチ電波源位置。 5/6 が 3" 半径で見かけのマッチ GLIMPSE 天体を持つ。  



図3.電波源の周囲で失われる GLIMPSE の割合を評価するためのプロット。 上:3.6 μm スカイレベルの最小 3.6 μm フラックス値による変化。 下:GLIMPSE 天体 3.6 μm フラックス値による累積比率の変化。  

図4.白棒= GLIMPSE 点源カタログから決めた GLIMPSE サーベイ全域での 3.6 μm 背景レベルのヒストグラム。 黒棒= IRAF で測った GLIMPSE-MSX-5GHz マッチの周りの背景レベル。 電波源の周りの背景光レベルが高い。  



図5.電波源の周りの平均 GLIMPSE 数密度の距離による変化。 黒丸= MSX-5GHz マッチ天体。白三角=限界背景光レベルが 10 MJy sr-1. 白丸=限界背景光レベルが 7 MJy sr-1.  

図6.上:494 MSX-5GHz マッチの周りでの GLIMPSE 数密度の距離による変化。 黒丸=全部の GLIMPSE 天体。白丸=「赤」GLIMPSE. 三角=「青」GLIMPSE. 下:近距離での拡大図。  



図7.左上:MSX-5GHz マッチ位置からの距離による平均 GLIMPSE 等級の変化。 左下:MSX-5GHz マッチ位置からの距離による平均 GLIMPSE カラーの変化。 右側:背景光が低い 155 マッチに対する同じ図。  

表1.「赤」GLIMPSE 天体のマッチング確率。  




 表2.高信頼度マッチ天体の電波と近赤外パラメター 



 表3.高信頼度マッチ天体の中間赤外パラメタ― 



 3.結果 


図8.l = [19, 20] 天体の二色図。上:GLIMPSE 天体。下:マッチ天体。 白丸= GLIMPSE-MSX-5GHz マッチ。黒丸=高信頼度 GLIMPSE-MSX-5GHz マッチ。 高信頼度マッチは M3.6-M8>2.5 で GLIMPSE-5GHz 間隔 3" 以下を選んだ。  

 3.1.マッチ周囲での等級とカラーの変化 

 電波位置の近くでは天体の見かけ性質が遠方天体と違うという仮説を 検証した。図6では M3.6 と M8, M3.6-M8 の平均値の変化を示した。その結果は図7 に示す。明らかに平均等級は明るくなり、赤くなる。これは遮光の結果 暗い背景天体が消えるために平均して明るく見えるようになるのである。 カラー変化は消える天体が「青」GLIMPSE であることが原因である。

図9.黒丸=「青」GLIMPSE 天体数密度の MSX-5GHz マッチからの距離による変化。 白丸=「青」GLIMPSE 天体数密度の GLIMPSE-MSX マッチからの距離による変化。 黒三角=NIR カラー制限内 GLIMPSE 天体からの距離により変化。 3種類の点は皆近傍での密度低下を示すが、低角は MSX-5GHz マッチ。 が一番深い。  


 3.2.マッチ周囲での等級とカラーの変化 

 図8に高信頼度マッチ天体のカラーを示す。高信頼度カラー範囲を図から 決め、次に GLIMPSE カタログからそのカラー範囲内にある天体 13,007 個 を選び出した。その内 3017 個は MSX マッチがある。さらにその内 849 個 が 1.4 GHz, 5 GHz 電波源とのマッチングカラー範囲にある。 その 849 「赤」GLIMSE-MSX 天体中 242 星が最初の 5GHz サーベイの領域 内にある。その中の僅かに 31 天体のみが GLIMPSE-MSX-5GHz 天体である。  図9には 「青」GLIMPSE 天体密度が中心星からの距離でどう変化するかを 示す。白丸は 849 GLIMPSE-MSX マッチからの距離による変化、黒三角は 近赤外カラーカットのみの 13007 GLIMPSE 天体である。

 GLIMPSE 領域内にある 5 GHz 天体にマッチングしたが、新たな天体は わずかに 77 個だけであった。それらの等級は暗く、 MSX で検出限界以下 だったのであろう。  図10にはマッチ天体の等級図を示す。二つのグループの境は MSX の限界等級 m8.3 = 7.5 に対応している。

 表4には追加された 77 個の GLIMPSE-5GHz マッチのリストを示す。

図10.黒丸=55 個の GLIMPSE-MSX-5GHz マッチ天体の等級図。 白丸=追加の 77 GLIMPSE-5GHz 天体。追加天体が暗いことが判る。  


 表4.GLIMPSE-5GHz 高信頼度マッチの電波と近赤外パラメタ― 



 3.3.選択天体の性質 


図11.GLIMPSE二色図。実線の上側には PNe が存在せず、 低温の MC, YSO, HIIR で占められている。

図12.GLIMPSE-MSX 二色図。MSX マッチのため総数は 849 個に減った。 既知天体の赤い側は HIIR で占められている。


 4.結論 

 GLIMPSE が高感度で高空間分解能を有するに拘わらず、 5GHz と MSX との マッチングの結果は驚くほど少数であった。それでも幾つかのことが 分かった。

(1)l=[10, 42], b=[-0.4,0.4] での GLIMPSE-5GHz マッチは 132 個しか 無かった。MSX マッチも加えると、MSX の低い感度の結果さらに減って 55 個 しか残らない。

(2)GLIMPSE-MSX-5GHz マッチ天体の周辺では GLIMPSE 天体の密度が低い。 平均密度波中心天体に向かって減り、一方見かけ光度は明るくなり、赤くなる。 これは背景の 「青」GLIMPSE 天体が遮光されるからである。
(3)赤い [3.6-8] > 2.5 GLIMPSE 天体をマッチさせることで MSX-5GHz 天体とのマッチングを可能とした。

(4)NIR, MIR カラーを選択基準に用いて、GLIMPSE-MSX の全マッチを 選び、全てが遮光効果を持つことを示した。 13007 「赤」GLIMPSE 天体の内 MSX とマッチしたのは 849 個であった。GLIMPSE-MSX-5GHz マッチ の内 15 % がこれまでに分類されていた。

(5)Simbad 分類を用いると、異なるタイプの天体が二色図上でどこを 占めるかが分かる。[3.6-21] ≥ 12, [8-21] ≥ 8 領域は HIIR のみ しか存在しない。