A New Catalog of Radio Compact HII Regions in the Milkt Way


Giveon, Becker, Hefand, White
2005 AJ 129, 348 - 354




 アブストラクト 

 MSX6C カタログから選んだ天体の VLA 5, 1.4 GHz, l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] コンパクト HIIRカタログを示す。Becker et al 1994 は以前この 領域のサーベイをしているが、今回の結果は 5 GHz 電波源の数を3倍に増やした。  新しい 5 GHz 天体と MSX5C 銀河面カタログ(8 μm)との比較では 687 マッチがあった。 偶然一致の予想数は 15 である。一致天体は赤い MSX カラーと熱電波源スペク トルを示した。それらの銀河内分布のスケール高は 16' = 40 pc と小さい。 これ等の性質はサンプルが、これまで未発見であった若い UCHIIR で占められて いることを示す。


 1.イントロダクション 

 2.VLA 5 GHz 銀河面サーベイ 

 5 GHz 観測の改良 

 初めの 5 GHz 観測は Becker et al 1994 に詳説されているが、l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] を分解能 4", 感度 2.5 mJy で観測した。大部分は C 配列だが、 CnD 配列部分もあった。最近 C 配列で再観測し、また解析法も 改良した結果、 1272 検出から 3283 検出へと3倍に増えた。新しい 5 GHz カタログは Becker et al 2005 に示される。この
 検出限界 

 F5GHz ≥ 3 mJy で 90 % 完全性を示す。Sternberg et al 2003 の恒星フラックスを適用すると、銀河系向こう側の縁 20 kpc で光学的に薄い フリーフリー放射星雲を持つ B0 星 (F5GHz = 30 mJy) から 光学的に厚い O9 星 (F5GHz = 3 mJy) を検出できる。  表1に予想される電波、赤外フラックスを高温主系列星に対して示す。 赤外フラックスは総光度の 1 % が MSX 8 μm バンドで再放出されると仮定 して計算した。



表1.スペクトル型による電波と赤外フラックス(距離 20 kpc)の変化

 3.電波と赤外のマッチング 

 α = 保守的なマッチング 

 赤外源と電波源の位置の違いが 12 arcsec 以内。

 β = 少し緩いマッチング 

 赤外源と電波源の位置の違いが 25 arcsec 以内。
 β = 少し緩いマッチング 

 赤外源と電波源の位置の違いが 25 arcsec 以内。



表2.マッチングの基準と結果




表3.バンド検出情報を用いたマッチングの信頼度




表4.信頼度が高いマッチング天体のリスト

 4.マッチ天体の性質 

 4.1.赤外カラー 

 MSX の二つの種族 

  Lumsden et al. (2002) は古い MCS5C カタログの解析から赤外光分布が2つの集団に分かれることを 指摘した。「赤」集団は星雲で HIIR, PNe, メーザー源、 YSO である。 それらは雲中に埋もれていて、励起星でなくダスト放射のカラーを見ている。 もう一つの「青」集団は進化した星である。
 マッチングは「赤」種族 

 図1の左を見ると、5 GHz 源のとマッチングで「青」種族がふるい落され、 「赤」種族が残されたことが判る。われわれのサンプルの内、29/687 = PNe, と同定されているが、我々は75/687 PNe が含まれると考える。大部分は HIIR であろう。 





図1.MSX6C 天体の赤外二色図。左: MSX6c-5GHz マッチ天体。右: 同じ領域の MSX5C 天体全て。

 4.2.空間分布 

 図2に 687 マッチ天体の分布を示す。その銀緯分布は一般の電波カタログ よりも狭く、 FWHM = 16' である。距離 8.5 kpc を仮定すると 40 pc と なる。これは天体が第1種族に属することを意味する。銀緯依存性の低い 分布も重なっており全体の 20 % を占める。恐らく PNe か銀河であろう。  銀緯平均は 0.00 (l=[350, 0]), -0.01 (l=[0, 10]), -0.05 (l = [10,42]) で、 Hammersley et al 1995 の主張する円盤の傾きに合致する。 



図2.マッチ天体の空間分布。上:銀緯分布。中:銀経分布。下:2次元分布。 銀経分布の二つのピークは GC(l = 0) とサジタリウス腕の接点方向 (l = [25, 30]) である。

 4.3.電波スペクトル指数 

 

図3.1.4 - 5 GHz 間のスペクトル指数。白棒=全体サンプル。黒棒= MSX マッチのあるサンプル。

 我々は Zoonematkermani et al 1990 の 1.4 GHz カタログの観測データを 再解析した。その結果、562 天体が 5 GHz と 1.4 GHz の双方で検出されて いることが判った。228/562 天体が MSC6C 天体とマッチされていた。 図3にそれらの 1.4 - 5.6 GHz スペクトル勾配 α (Fν ∝ να) の分布を示す。 フリーフリー放射の場合 α ≥ -0.1 である。実際、図3の 黒棒サンプルはその領域を占めている。それ以外の電波源は非熱的な 放射である可能性が高い。
 1.4, 5 GHz 双方で受かり、α > -0.1 であるが。 MSX6C カタログに載っていない天体が 52 個ある。それらの 5 GHz フラックスは 一般に弱い。恐らくそれらは単に弱すぎるために MSX カタログに載らなか ったのであろう。それらの b 分布から多くは銀河ではないか?

 4.4.形態 


図4.5 GHz サイズヒストグラム。白棒=全体。黒棒=マッチサンプル。  


 5.結論 

(1)MSX-5GHz マッチ天体は銀河面にへばりついている。これは種族I の特徴である。ただし、MSX-Radio データでは HIIRs と PNe の区別は できない。

  (2)「青」MSX 天体は 5GHz 源とマッチしない。マッチ天体は「赤」MSX である。

  (3)5GHz - 1.4 GHz マッチ天体のスペクトル指数分布が双峰性だったのは 非熱的電波源と熱的電波源の重なりのためだった。

 
(4)MSX6C は銀河面内の熱電波源全てを検出したわけではない。比較的弱い 5 GHz 源で勾配が平坦なものの中には MSX で検出されなかったものがある。 銀緯分布からそれらは銀河起源の割合が高い。熱源の 80 % は MSX で検出 されていると考えられる。

 

   以上の性質から、マッチ天体は主に若い CHIIRs である。 その大部分はこれまでそう分類されて来なかった。電波線の観測が 重要であろう。