マゼラン星団中の Mbol < -3.6 の C-, M-型星を選び、星の質量毎に 対応する進化ステージの寿命に制限を付けた。 Mi = [1.5, 2.8] Mo 区間で、 炭素星は 2 - 3 Myr の寿命を示す。LMC から SMC へと移ると、炭素星寿命 ピークは 2 Mo の少し上から少し下へと、低下する。 | M-巨星の寿命ピークは LMC では 2 Mo で約 4 Myr である。一方、SMC では M-星の寿命はもっと短いが、データからその制限は難しい。これらの寿命は 理論モデルに対する有用な制限である。 |
星団光度の最大 40 % が TP-AGB 起源 Frogel,Mould, Blanco (1990) はマゼラン雲星団中の C-, M-星の数と光度から、星団総輻射の最大 40 % が Mbol < -3.6 の TP-AGB 星から来ると結論した。この結論は銀河の 観測スペクトルの解釈に重大な影響を持つ。このため、種族合成モデルから 恒星進化モデルに至る様々な分野で、この結果を再現する試みがなされた。 星計数から寿命へ。 この問題への最善のアプローチは、無矛盾な TP-AGB 進化経路を計算し、 LMC, SMC の観測でそれを較正することである。この論文では、 Frogel,Mould, Blanco (1990) データを使い勝手の良い物理量=寿命へと再解釈し、それを LMC, SMC メタル量での TP-AGB 進化経路の直接較正に役立てる。 |
新しいモデルを較正する必要がある この仕事のきっかけは Marigo (2002) が、それまでの TP-AGB モデルは全て不適切な低温オパシティを使用していた ことに気づいたことである。彼女は相対太陽比率元素組成に対するオパシティ を TP-AGB 進化に応じた組成に対するオパシティに置き換えた。その結果 炭素星の有効温度が大幅に下がり、超星風の開始が早まり、寿命が短くなる という効果が生まれた。M-型星ではそれほど大きな効果は生まれなかった。 これらの結果は新しい進化グリッドを適切な C-, M- 星寿命でチェックする 必要性を物語る。 |
星団総光度を使う理由 星団の C-, M- 星を寿命とつなげるには、各星団の大きさを知る必要がある。 しかし、星団総質量の正確な値を得ることは難しい。それより、星団総光度を 使う方が実際的である。その理由は、 (i)V バンド光度 Lv は年齢に対し滑らかに変化し、メタル量依存が低い。 (ii)Lv は主に数の多い、主系列先端部とコアヘリウム燃焼期の星の寄与が 大きい。このため、ストカスティックな変動が小さい。I や K を使うと、 年齢、メタル量に対し、非単調変化を示し、かつストカスティック効果が大きい。 NC/L と NM/L 寿命を得るスタートは各星団ごとに、 NC, NM を LV で割った値である。この値は寿命に直接比例する。 M-星に関しては、 RGB 先端より上、つまり Mbol < -3.6 に 制限する。LMC と SMC の距離指数を 18.5 と 18.9 とすると、見かけ輻射等級 は mbol < 14.9, mbol < 15.3 である。 表1=星団データ 表1は星団データを示す。我々は Frogel, Mould, Blanco (1990) に載っていた星団は全て扱う。ただ、 log t ≤ 8 以下の非常に若い星団 と SMC 星団で主系列ターンオフ年齢がない幾つかは省いた。表に載せたのは (i) ターンオフ年齢 t。 LMC では Girardi,Chiosi, Bertelli, Bressan (1995) SMC では Da Costa, Hatzidimitriou 1998, Mighell et al 1998 から採った。 (ii) 年齢パラメター S. LMC 星団だけ、 Girardi,Chiosi, Bertelli, Bressan (1995) による較正を載せた。LMC の最も大きくて、若いから中年の星団に対して、 t と S の関係は、 log t = 6.227 + 0.0733 S となる。誤差は 0.15 dex である。 SMC 星団に対しては t から決めた S を載せた。 (iii) [Fe/H]. 分光からまたは分光で較正された方法で決められた最新値。ただ、 原典が色々なので、精度も一様でない。 (iv) Mbol < -3.6 の NC と NM. Frogel, Mould, Blanco (1990) の表1に習い、直径 1' の円内にある分光で決まった C-, M-型星の数。 彼らの 表で分類が怪しいとされた星も含めた。 (するとまだ未観測か? ) (v) 積分 V 等級。 LMC 星団は Bica, Claria, Dottori, Santos, Piatti (1996) から、SMC 星団は Bica, Claria, Dottori, Santos, Piatti (1996) から採った。MVsol = 4.847 と DM(LMC) = 18.6, DM(SMC) = 19.0 から積分光度に直る。 (vi) σC = フィールド炭素星の表面密度 Blanco, McCarthy 1983 の isopleth map から定めた。 |
NGC 419 と NGC 152 Frogel, Mould, Blanco (1990) には、NGC 419 と NGC 152 に多数の明るい mbol < 15.3 星が スペクトル分類なしで収録されている。一様性のため、それらは含めなかった。 それらは O-リッチ TP-AGB 星ではないかと思う。このように、SMC 星団では Mbol = -3.6 より明るい O-リッチ TP-AGB 星のデータは不完全か も知れない。LMC では距離が近いことと、メタル量が高いので Teff が低いた め、そのようなことは起こらない。LMC 星団内の mbol < 14.9 星は暗い方でも M0 - M2 星に分類されている。 AGB 星の少なさの問題 距離と赤化に一定値を採用したことに問題はあるが、現在一様で最新の形で、 そのようなデータを集めたものは存在しないので、その措置は必要であった。 それよりも、AGB 星の少なさが問題である。 |
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