The Initial Mass Function for Massive Stars


Garmany, Conti, Chiosi
1982, ApJ 263, 777 - 790




 アブストラクト

 大質量星の IMF 
 カタログから 750 個の 銀河系 O-型星をまとめた。このカタログはおそらく 2.5 kpc まで完全である。この体積限界データから 20 Mo 以上の IMF を作った。その形は dN/dM = 2.3 10-3 M-3 である。この形は Miller and Scalo や Lequeux と異なる。
太陽円の内側では勾配が緩やか 
 我々の IMF では質量の増加と共に急激な数の低下は起きない。サンプルを 太陽円の外側と内側に分けると、 IMF に大きな違いがあることが分かる。銀河中心 方向では大質量星の割合が大きい。IMF の傾きは WR 星の空間密度と 関係しているだろう。
http://heasarc.gsfc.nasa.gov/W3Browse/star-catalog/ostars.html


 1.イントロダクション 

 大質量星カタログの作成 

 WR-星への進化、CNO 元素の合成、連星の形成等を念頭に、20 Mo 以上の星の IMF を導いた。集めたカタログには 780 星が載っていた。そこから体積制限の 424 星を選んだ。

 Miller, Scalo IMF

 Miller, Scalo 1979 は 太陽から 1 kpc 以内の近傍星サンプルから IMF を、 ψ(M) = (dN/dlogM) (kpc-2 yr-1 log(M/Mo)-1) の形で決めた。彼らのエラーは ±0.5 と比較的大きい。これは 1 kpc 以内の O-型星が 45 個と数が少ないためである。この数だと、O7 より早期型の星は 僅か 5 個しかない。

 Lequeux 1979 の IMF

  Lequeux 1979 の方法は一様なサンプルを使い、定量的な H-R 図を作る。 次に主系列星の質量光度関係、温度、輻射補正を使い光度と温度を得る。 IMF は星密度を主系列寿命で割って得られる。Lequeux は見かけ等級 7.5 等まで 完全なサンプルを選び、 2.5 ≤ M/Mo ≤ 100 の IMF を導いた。
古い円盤種族星? 

 Lequeux はサンプル中の O-型星の半数は進化した古い円盤種族星と考え、 IMF の計算から排除した。これは Carrasco et al 1979 による OB 暴走星 の研究から来た。彼らは速度分布から O-型星の 47 % は低質量の古い種族星 であると考えた。しかし、それらが銀河円盤に集中していることなどから この結果には疑問が多い。

 新しい IMF

 したがって、IMF を新しいデータで調べることには意味がある。我々は等級限界 でなく、体積限界サンプルを用いる。こちらの方が空間密度を正しく導けるからである。


 2.O-型星カタログ 

 2.a. データ源 

 サンプル 

 サンプルの多くは Cruz-Gonzales et al 1974, Humphreys 1978 から 来た。それに加え、Garrison, Kormendy 1976, Garrison, Hiltner, Schild 1977, Feinsteinm Marraco, Muzzo 1973, Feinstein, Marraco, Forte 1976, Moffat, Fitzgerald, Jackson 1979 のデータを用いた。 星団メンバーシップの同定には Conti, Alschuler 1971, Moffat, Vogt 1975 を用いた。スペクトル分類には Garrison, Hiltner, Schild 1977 を用いた。カタログは ADC から得られる。

 カタログ項目 

 カタログには HD, BD, 星団メンバー、V, B-V, スペクトル型、l, b, を載せた。星団・アソシエイションメンバーでない星はフィールド星とした。 絶対等級は Conti 1975 のスペクトル型による較正を用いた。 Av = 3 E(B-V) で減光を定めた。温度スケールには Conti 1975 を、輻射補正は Morton 1969 を用いた。

 スペクトル分類 

 カタログには 781 個が載っていた。内、50 個は UBV カラーがない。 140 は スペクトル型はあるが光度クラスがない。この 140 個の再分類観測が 進行中である。

 2. b. 完全度 

2.8 kpc までは完全度が高い 

 図1には距離に対する O-型星の累積個数を示した。2.8 kpc までは 累積個数は距離に対し、指数 2.3 のべき乗則に従うことが分かる。これは 不完全性の影響が 2.8 kpc から先で現れてくることを意味する。 ただし、腕などの非一様な成分の影響があるのでこの見積もりは不確かである。

 腕が見える 

 図2の銀河面上分布を見ると、腕の影響が大きいことが分かる。図から アソシエイションを除いても腕の形が見えるので、フィールド O-型星の距離は 比較的良く決まっており、つまり、これらは Carrasco et al 1979 のいう ような古い種族星ではないことを示している。

 分子雲内の星 

 分子雲内の星はカタログから逃れている可能性がある。しかし、どのくらいが 雲に埋もれているかは分からない。


 光度クラス 

 IMF には光度クラスが必要であるが、2.5 - 2.8 kpc のクラスター O-型星には この情報が欠けているものが多い。したがって、 IMF の解析には 2.5 kpc までの 星を用いる。それらは 424 星であり、表1に載せた。 36 フィールド星には (B-V) または光度クラスが欠けている。しかし、結果を大きくは変えない。

 平均 Z 

 まず銀河面と直交する分布を見てみよう。表2から銀河面から 200 pc 以内の星の 銀河面距離の平均値は太陽から 3 kpc 以内では一定で、その先増加していく。これは 銀河面に近いほど検出不完全度が高くなるためと考える。したがって、 O-型星の 平均 Z 距離は 45 pc と考えてよい。

 高 Z 星 

 では、Z が 200 pc より大きい星ではどうだろう? 2,5 kpc 以内にはそのような 星が 18 個ある。内 5 個は暴走星である。


図1.距離に対する O-型星の累積個数。0.6 - 2.8 kpc の間勾配は 2.3 で データの完全度が高いことを示す。



図2.銀河面上 3 kpc 以内の O-型星分布。白丸=アソシエイションメンバー。 バツ=フィールド星。

 表1.IMF を作るのに使用した星 
1次資料に絶対等級、距離が載っていたらそのまま使用。 星団・アソシエイションに属していたらその距離を使用。
フィールド星の絶対等級は Conti 1975 のスペクトル型ーMv 関係から決めた。





 表2.銀河面と直交方向の O-型星分布 




 3.初期質量関数 

 3.a. 初期質量関数の導出 

 、Mbol - Teff 図を作った 

 表1のデータを用いて、Mbol - Teff 図を作った。図3がそれである。 標準的な Mv, B.C., Teff 較正をフィールド星に対しても行い、そのため、 固まりあい効果が生じ、H-R図は滑らかでなくなっている。観測 H-R 図の 下限縁とモデル ZAMS との一致はきれいである。

 Sct OB2 と Cam OB2 の距離 

 ただし、Sct OB2 と Cam OB2 に属する 8 星は ZAMS より 0.4 mag 程度下に来る。 これは二つの距離(Humphreys 1978) が小さく与えられているからではないか?

 モデル進化経路 

 比較用に3種類の進化経路 X=0.7, Z=0.02 を作った。吸収係数は Cox,Stewart 1970 を用いた。
(a)質量一定。
(b)輻射圧マスロスあり。ケース α=0.98
(c)マスロス+オーバーシューティング


 進化経路で決まる区間星数 

 3つのどれもコア水素燃焼期の経路は図3の範囲より低温度側まで伸びる。 そこで、O-型から B-型までたどり着くまでの時間を寿命として用いること にした。考えている中で最小質量の星を除いて、これは水素燃焼全期間の 80 - 100 % をカバーする。質量区間内の星の数(これは区間端に対応する 進化経路に挟まれた領域内の観測星数?)と区間寿命は三つのケースごとに 表3に載せてある。

 IMF の定義 

 IMF には色々な定義があるが、ここでは

     ψ(M) = dN/dlog M = A M-B

とする。単位は、stars kpc-2 yer-1 (log M/Mo)-1 である。

図3.2.5 kpc 以内 O-型星のモデル HR-図。有効温度は Conti 1975, 輻射補正は Morton 1969 を使用。黒点=単独星。黒丸= 6 - 10 星。黒三角= 11 - 19 星。 黒四角= 20 - 40 星。長破線=マスロスなしの進化モデル。短破線=マスロスあり (Chiosi, Olson 1981)。実線=対流核オーバーシューティング(Bressan et al 1981)。 モデル初期質量= 100, 80, 60, 40, 30, 25, 20 Mo.


 IMF の作成 

 表3の値を ψ(M) と合わせて決めた A と B を表4に示す。 モデル毎に差が付いた理由は、
(1)寿命が違う
(2)質量区間がカバーする HR-図上の領域が違う
ためである。図4には、得た IMF を Miller,Scalo 1979 と    Lequeux 1979 の IMF と比較した。


表3.質量間隔に対応する星数と寿命。


表4.IMF パラメタ― A, B。



図4.太陽から 2.5 kpc 以内の O-型星 IMF . 単位は、stars kpc-2 yer-1 (log M/Mo)-1. 実線=表4の組み合わせ。一点鎖線= Lequeux 1979 の IMF を O-型準矮星を入れた場合 と除いた場合について。点線= Miller, Scalo 1979.


 3.b.エラーの原因 

 Miller, Scalo 1979 との比較 

 Miller,Scalo 1979 の IMF は log スケールで ±0.5 のエラーを含んでいる ため、比較自体が無意味であろう。

Lequeux 1979 との比較 

 Lequeux 1979 はケース(b)と似た勾配を持つが、我々の IMF はファクター2大きい。 Lequeux(private communication) によると、彼の減光評価が小さすぎてサンプル の領域面積が大きくなったためであろう。 Lequeux 1979 は CGO カタログから O-型星を選んだ。CGO = Catalogue of Galactic O Stars and the Ionization of the Low Density Interstellar Medium by Runaway Stars 1974 by Cruz-Gonzalez + 4. 彼はこのカタログを ミシガンカタログ Houck, Cowley 1975 と参照し、 V = 7.5 まで 完全であると判断した。我々も CGO カタログから 7.5 等より明るい O-型星を選び出し、 そのカタログにある距離で、銀河面上に配置した。約 130 星が D = 2.5 - 3.5 kpc に 分布した。その表面密度は、130/π(3.52 - 2.52) = 7 stars kpc-2 である。この値は Lequeux が与えた密度に近い。

 

 
進化した O-型準矮星 

 進化した O-型準矮星に関して言えば、表1の少なくとも 60 % は星団か アソシエイションに属していることを注意したい。残りのフィールド星に ついては、そのうちいくつかは未登録の星団メンバーであろう。さらに、 それらのみでも渦状パターンを示している。したがって、進化した O-型準 矮星がサンプル中に占める割合は大きくても 10 % であろう。

 分子雲中の O-型星 

 IMF に関してもっと大きなエラーの原因は分子雲中の O-型星がサンプルに 含まれていないことである。Mezger 1976 はその割合を 20 % とした。

 光度クラス 

 光度クラス不明の星約 30 個はクラス V と仮定した。このためいくつかの星、 それらの約 30 % 程度、はHR-図上で光度を人工的に押し下げられているだろう。 しかし、 IMF に対する影響は小さい。


 4.BC - Teff 関係が IMF に及ぼす影響 

Boem-Vitense の Teff 

 我々は Conti 1975 のスペクトル型対有効温度関係と Morton 1969 の 輻射補正を用いて IMF を導いた。
( 本文ではあまり触れられていないが、 絶対等級の決定方法も大事だと思う。)
Bohm-Vitense 1981 はスペクトルタイプと Teff の関係をレビューした。彼女の Teff はここで採用した Conti 1975 の Teff よりかなり低い。図5には Teff(Voem-Vitense) と Morton の B.C.(Teff) を使って作った 2.5 kpc より 近い O-型星の HR-図を示す。図には Bressan, Bertelli, Chiosi 1981 のZAMS と 進化経路も載せた。最高光度ではZAMSとその後の進化状態にある観測星に比べ、 モデルは高温で両者の一致は悪い。この不一致は、(1)計算を見直すか、(2) ZAMS は観測にかからないとみなすか、と考えることもできる。

 Stothers, Chin 1977 の計算 

 Stothers, Chin 1977 は Carson 1974 の新しい吸収係数を使って計算し直した。 しかし、この吸収係数の正しさに関しては疑問がある。

 ZAMS は見えないのか? 

 Mezger 1976 は ZAMS 期間は数 Myr で母分子雲が散逸する時間とほぼ等しく、 星が可視光で見えるようになるまでに中心部の核反応はかなり進行してしまっている と考えた。したがって、これら大質量星は ZAMS を離れるまで目に触れないのである。 図5を見ると、最青の星のラインは、大質量星(M> 25-30 Mo) は全て 2 Myr 以上 の年齢であることを意味している。これが分子雲が蒸発する時間 &tau:E に相当するかどうか現時点でははっきりしないので IMF に関してはフリーパラメタ― として扱う。

 分子雲が蒸発する時間 &tau:E 

 分子雲が蒸発する時間 &tau:E は 1 - 3 Myr であろう。ケース(c) について、 幾つかの &tau:E に対して決まるパラメタ― A, B を表5に載せた。予想される 通り、 &tau:E の増加に伴い IMF は平坦になっていく。表6には Ni = 見えない星と Nv = 見える星の比率 Ni/Nv を &tau:E の関数として示した。 Ni/Nv は 0.2(&tau:E=1Myr) から 1.3(&tau:E=3Myr) へと変化する。 この数字は M = 25 -80 Mo の星について積分して求めたもので、 25 Mo はその先で 雲に隠れている星の数の割合が無視できないほど大きくなる質量である。

 赤外天体 

 表6を見ると、O-型星の 20 - 50 % は分子雲内部に埋もれている。それらは 赤外観測でのみ検出可能である。 &tau:E = 1 Myr は    Mezger 1976 の結果と一致するが、赤外調査はまだ予備的段階である。しかし、このシナリオなら Bohm-Vitense の低い有効温度と折り合いがつく可能性がある。これは将来の 重要な課題であろう。


表5. Bohm-Vitense の低い Teff を採用した時の IMF パラメター A, B と 分子雲蒸発時間の関係。



図5.Teff(Voem-Vitense) と Morton の B.C.(Teff) を用いて作った、 2.5 kpc 以内 O-型星の HR-図。破線=Bressan et al 1981 の進化経路。一点鎖線 = 1 Myr と 2 Myr 等時線。太い破線=Stothers,Chin 1977 が Carson 1974 吸収係数を用いて計算した mixing length parametaer λ=2 のZAMS.


表6.M = 25 - 80 Mo 星の表面密度と分子雲散逸時間の関係。





図6.3 kpc 内 WR-星の分布。距離は van der Hucht et al 1981 より。

 5.W-R 星の問題 


図2(縮小).O-型星の分布

 5.a. W-R 星の進化シナリオ 

 Conti 1976 シナリオ 

 O-型星がマスロスを起こして WR-星に進化する。ただし、マスロスのメカニズムは 幾つかの説があり、確定していない。

 5.b. W-R 星の銀河面上表面分布 

 絶対等級 

 WR-星は分光的に発見が容易であるが、絶対等級の較正が出来ていないので 距離が決まらない。図6には Sixth Catalog of Galactic Wolf-Rayet Stars (van der Hucht et al 1981) に基づき、Hidayat et al 1981 が再計算した WR-星距離を プロットした。彼らは WR-星の検出は 5 kpc まで完全であると考えている。 距離の不確かさに拘わらず、渦状腕パターンが見えていることに注意。

 5.c. W-R 星の銀河面上表面分布 

W-R 星の分布が銀河中心方向に集中 

 Roberts 1962 は W-R 星の分布が銀河中心方向と反中心方向で大きく差があること を報告している。2.5 kpc 以内の W-R 星は太陽円外側で4個、内側で 31 個である。

 O-型星 IMF の銀河中心と反中心方向での差 

 太陽円内側 IMF は

     ψ(M) = dN/dlog M = 1.1 10-3 (M/Mo)-1.3

 太陽円外側 IMF は

     ψ(M) = dN/dlog M = 8.4 10-3 (M/Mo)-2.1

二つの大きな違いは、内側ではカリーナ, シグナス方向に 40 Mo 以上の大質量星が存在する 事である。これは、内側渦状腕における最近の星形成爆発を反映しているのであり、 IMF が銀河中心距離により真に変化するのとはちょっと違うのかも知れない。

図6(縮小).WR-星の分布。




図7.太陽円の内側と外側での IMF. 四角=太陽円内側。丸=太陽円外側。 点線= Miller,Scalo IMF.


 6.まとめ 

 IMF  

 2.5 kpc 以内 O-型星サンプルに、マスロス+オーバーシューティング恒星 モデル進化経路を組み合わせて、大質量星の新しい IMF を導いた。これを Miller,Scalo 1979, Lequeux 1979 の IMF と比べた。

 低い有効温度 

 より低い温度となるスペクトル型ー有効温度関係を使用した場合の効果を調べた。 もしこの温度スケールが正しければ、観測される O-型星は ZAMS から抜け出したもの であることになる。おそらく 20 % 程度の O-型星は未だに分子雲に埋もれているのでは ないか。別の方向から Mezger 1976 も同じ結論に達している。
 W-R 星分布の非対称性 

 Roberts 1962 は反中心方向に W-R 星が見つからないことを注意した。これは W-R 星の分布に銀河中心距離による勾配があることを意味する。我々は IMF に 銀河中心距離により変化することを確認した。



 最大質量星の IMF が銀河系距離と共に変化することは銀河進化モデルに 重大な影響がある。これは銀河の元素勾配の原因の一部であるし、II型超新星 の割合にも影響する。