銀河系中心核星団の基本パラメタ―を得た。第1に、 VISTA, WFC3/IR, VLT/NACO データから減光を補正した古い星の計数を用いて、中心 1000" の個数 マップを作成して、構造を調べた。データは2成分で記述される。内側のやや 平坦な (軸比 q = 0.80±0.04) 成分は中心核星団である。外側は核周辺 部の恒星成分にあたる。中心核星団の半光度半径 = 178 ±51" = 7 ±2 pc で MKs = -16.0±0.5. 第2に、外側 4 pc まで の詳細な運動を調べた。AO データから 10,351 固有運動、VLT/SINFONI データ から 2513 視線速度を得た。 | 我々は等方的球対称ジーンズモデルを使い、星団質量を定めた。我々は銀河 中心距離を決め、超巨大ブラックホールの質量を決めた。クラスターのモデル を M/L 一定および、べき乗則の仮定で星団をモデル化した。後者の場合、 我々は勾配 1.18±0.06 を得た。我々は 100" 以内の星団質量 M100" = (6.09±0.53fixRo±0.97 Ro)×106 Mo を双方の仮定に対して得た。 観測されている中央平坦部を含むモデルは 47 % 大きな質量を与える。われわれ の結果は尖頭よりは中心核の方に幾分か合う。8" 以内の非拘束星の数を最小化 することで、星の軌道からの Ro - MSMBH 関係を使い、我々は銀河 中心距離 Ro = 8.53-0.15+0.21 kpc を得た。我々の 結果を合わせると、 M/L = 0.51±0.12 Mo/Lo を得た。これは Chabrier IMF と合致する。 |
減光 中心核星団のレビューは Genzel, Eisenhauer, Gillessen 2010 を見よ。 観測最大の問題は強い減光である。 Fritz et al. (2011) は AKs = 2.42 を得た。このため、輝度プロファイルの不定性が 大きい。 中心の光超過 Becklin, Neugebauer 1968, Haller et al 1996, Philipp et al 1999 は バルジの輝度プロファイルの上に、中央 400" に輝度の超過を認めた。一方、 Graham, Spitzer 2009, Schodel et al 2011 は??? transit ? 上のスケール もっと大きいスケールで Launhard et al 2002 は中心核星団とバルジの間に もう一つ別の恒星成分があることを見出した。それは長さ 3° の横向き 円盤、つまり中心核円盤である。その軸比は5である。この円盤は大体 CMZ = central molecular zone に対応している。その平坦度は定性的には Catchpole et al 1990, Alard 2001 が確認していた。内側になると、平坦度 の不定度が増す。 Vollmer et al 2003 は 200" 長で 1.4 : 1 を、Schodel et al 2007 は中心から 70" 以内で光分布がほぼ円形であると述べた。 星成分 Blum et al 2003, Pfuhl et al 2011 は R ≤ 2.5 pc の星の大部分が 5 Gyr より古いとした。やっと 0.4 pc になって光の支配が 6 Gyr 星 Forrest et al 1987, Krabbe et al 1991, Paumard et al 2006, Bartko et al 2009 になる。そこでの IMF はトップヘビー Bartko et al 2010, Lu et al 2013 である。 |
質量 MSMBH = 4.3 106 Mo はよく決まっているが、中心核 星団の質量はそれほどよく決まっていない。 Genzel et al 2010 は R ≤ 1 pc の質量を 106 Mo とした。不定性は 50 %. 中心パーセクでの 重力場は SMBH で支配され、追加の恒星質量分寄与を決めにくい。さらに、 予期しなかった中心分布関数の核 Buchholz et al 2009, Do et al 2009, Schodel et al 2009 の発見により、最近のジーンズモデル法が破綻した。 その結果、Trippe et al 2008, Schodel et al 2009 の仕事も中心パーセク の質量に対し 50 % 不定性を残す。Haller et al 2008, Genzel et al 1996 は視線速度の数が少ないので同じくらいの誤差を含む。中心パーセクの外側 での質量決定は主に少数の晩期型星視線速度、Lindqvist et al 1992a, Deguchi et al 2004、または CO バンドヘッド Rieke, Rieke 1988, McGinn et al 1989 に頼っている。中心部の外側では固有運動データがないため速度非等方性の程度 を見積もることが難しい。 CND = circumnuclear disk ガスの視線速度を中心 パーセク外の質量決定に用いる試みを Genzel et al 1985, Serabyn, Lacy 1985, Serabyn et al 1986 が行った。 今回は大規模 このように、中心部の質量、光度分布はまだ不定性が大きい。そこで、我々は 星の3次元速度成分を定める範囲を R ≤ 4 pc に広げた。また、表面密度 分布を R = 1000" まで広げた。この両方から単純な等方速度分布のジーンズ モデル解析を行った。より複雑なモデルは Chatzopoulos et al 2015 を見よ。 |
2.1.高分解像HST WFC3/IR中心 68" を撮った。 VISTA より大きな領域では VISTA Variables in the Via Lactea Survey 公開データ を使用。中心タイル 333 を H, Ks バンドで使用。分解能は 1" . 画像は GC の周り 1° 平方以上をカバーするが、 Rbox = 1000" のみを 使った。 |
2.2.分光SINFONI積分面分光 SINFONI を H+K (分解能 1500) と K (分解能 4000)で使用。 空間スケールは、最小 12.5 mas/pixel x 25 mas/pixel から 125 mas/pixel x 250 mas/pixel である。したがって空間分解能は 70 mas から 2" の間である。 |
1. R ≤ 2" Gillessen et al 2009 と同じ位置決定法を使用する。76 固有運動。 2.R = [2", 20"] Trippe et al 2009 の方法を採用。5813 固有運動。 3.R > 20" 通常、固有運動は得られない。非常に良い AO 補正した画像から 3826 固有運動を得た。 4.北側追加領域 Gemini 2000 と NACO 2011 を使用。 633 固有運動を得た。 図1.視線速度と固有運動を測った星の分布。固有運動の測定は4種類のデータ を用いた。中心 R < 2", R = 2" - 20", R < 40", 更に北側の分離された領域。 黄色線=我々の座標系 = shifted Galactic coordinates l*/b* (Deguchi et al 2004, Reid, Brunthaler 2004) これは中心を Sgr A* にした。 |
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SINFONI R < 95" では SINFONI データを用いて晩期型星 2513 個の視線速度を測 る。速度エラーの中間値は 8 km/s である。視線方向速度散布度は、 σz = 102.2 ±1.4 km/s である。図1から分かるよ うな l* の非一様分布を考慮して、回転の影響を避けると、中心核星団の 視線速度は 6.1 ±3.8 km/s となる。定義からはこの値は 0 になるべき である。したがって、我々の速度較正はおそらく正しく、散布度はポアソンエ ラーに支配されている。 メーザー R = 110" - 3000" では文献、 Lindqvist et al. (1992) Deguchi et al. (2004) を使う。どちらもメーザー観測である。我々はこの二つを同定して、結合リスト を作り、重複を消した。 |
この同定の副産物として速度不定性は 3 km/s 以下で
あることを確認した。これは彼らも述べていた。これら電波データの位置の不
定性が大きいので、対応する赤外線源を探すことは困難である。したがって、
結合リストから、我々がスペクトルを得ている領域にあった電波源 11 個を
消した。これは速度データを二度使うことを避けるためである。こうして、中心
領域の外に 261 個の視線速度を得た。
固有速度との結合 視線速度データ星サンプルの中間等級は Ks = 13.66 であるが、 固有速度データ星サンプルの中間等級は Ks で 1.85 mag 暗い。その結果、 双方が揃った星は 1840 個しかない。両サンプルの等級差は進化段階の差で 年齢や質量の差ではない。したがって、質量に依存したバイアスはないと考えて 10,351 固有運動データと 2774 視線速度データを使用する。 |
![]() 図2.星フラックスと星数の表面密度プロファイル。NACO, WFC2/IR, VISTA 画像(視野は後ほど大きい)から作成。 |
![]() 図3.星数表面密度の銀河面に沿った変化と直交軸に沿った変化。星数に限り があるため、中心近く R < 68" ではサンプルの選択は厳密でない。 Launhardt et al 2002 のモデルを規格化して重ねた。彼らのモデルはバルジ と円盤を含まない。我々のデータにはそれらも含まれている。 |
図4.晩期型星表面密度分布への α = 1 での Nuker フィット。ここに 示すのは R < 220" の内側部分へのフィットである。折れ曲がりの先、外側 部分のデータは白印で示す。Buchholz et al. 2009 と Do et al. 2013a の フィットも示す。 |
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![]() 図5a.フラックス空間密度プロファイル。 (arcsec-3 というのは どういう意味なのか?) |
![]() 図5b.フラックス表面密度プロファイル。 |
![]() 表3.平坦度の変化 図6.rbox = 1000" 内側の星密度マップ。カラースケールは全て同じ。 左上:VISTA/WFC3/NACO 星計数データ。減光と検出率補正済み。フィットした 個数分布カラー図に等高線図を重ねた。右上:データへの GALFIT フィット。 フィットは2成分から成る。その各成分を下図に示す。左下:中心成分。 n = 1.46、平坦率 q = 0.80 の Sersic プロファイル. 右下: q = 0.26 の Nucker プロファイル。ただし、我々のマップの外側に広がるのでよく規定 できていない。 |
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![]() 図7.視線方向と接線方向の速度散布度の変化。 |
5.1.非等方速度分布![]() 図8.主(平坦/回転)軸の方向 |
![]() 図9.我々のデータと文献データからの平均視線速度、回転パターンの対称性 を仮定して、視線速度を逆転させた。メーザデータは Lindqvist et al.1992a と Deguchi et al. 2004 を用いた。Trippe et al 2008 データは |l*| < 27" ではわれわれのデータと重複する。その外側では、Trippe et al 2008 は McGinn et al 1989 データを用いている。図には Rieke, Rieke 1988 の データも示す。赤い良質データをビニングなしで多重式フィットした。 |
![]() 図10a.ジーンズモデルに用いた固有運動散布度。 |
![]() 図10b.ジーンズモデルに用いた視線運動散布度。 |
![]() 図11.ジーンズモデル化のデータとフィット。10" 以内のデータと 100" 外側の データ (灰色)はこの単純なモデルとは不整合である。他のデータは黒。 フィットは表4の第1列=緑、第3列=赤、第5列=青。 |
![]() 図12.表4モデル5のパラメタ―間の相関。パラメタ―は光度(星計数)、 内側勾配パラメタ―、コア半径(γ-成分)、100" での質量。ブラック ホール質量は固定。濃い灰色= 1σ 領域。薄い灰色= 2σ 領域。 パラメタ―相関はモンテカルロシミュレイションで決定。 |
![]() 図13.表4モデル3,4、5、6の星団質量の相関。4つのモデルは同じ 力学データ領域 (10" < R < 100") を共有している。追跡天体の分布 と外側の質量モデルで異なっている。左列は同じ追跡天体分布を使用し、 右列は同じフラックス密度を持つ。上2行は中心核星団にべき乗則が適用 された。最下段は M/L 一定。 SMBH = 4.17 106 Mo 固定。 濃い灰色= 1σ 領域。薄い灰色= 2σ 領域。 |
![]() 図14.各ビン内の中間と最大3次元速度。べき乗線で近似。エラーは 中間値星と最大値星の速度エラー。青印は Reid et al 2007 と Schodel et al. 2009 の高速度星。 |
5.5.1.最小拘束質量![]() 図15.最小拘束質量のビン内の最大値。質量エラーは速度の 1σ エラー から生じる。こうして決まる質量を Gillessen et al 2009 の SMBH 質量、お よび二つのジーンズモデル質量、表8のA,Cと較べる。3つの青丸は、 Reid et al 2007, Trippe et al. 2008, Schodel et al 2009 から。 |
![]() 図16.逃散ギリギリの星から決めた距離への拘束。図は Gillessen et al 2009 による SMBH の距離ー質量関係。二つのギリギリ星の質量ー距離関係は拘束最小 質量を表す。赤線と黒線が関係線。オレンジと灰色線は 1σ エラー線。 |
5.5.4.速度ヒストグラム![]() 図17.力学モデルサンプルの速度ヒストグラム |
6.1.中心の低散布度問題と SMBH 質量![]() 図18.表4のモデル2と29に対する MSMBN 相関。上段は星団 質量との相関。下段は内側勾配 γin との相関。 どちらのモデルも星計数を密度追跡に使用し、 L/M 一定とした。左=モデル2 は全ての距離区間を使用。右=モデル29は 27" の内側データ使用。 濃い灰色= 1σ 領域。薄い灰色= 2σ 領域。 |
6.2.文献 MSMBH との比較![]() 図19.GC周りの累積質量プロファイル。今回の仕事の結果は 4 pc にある赤 い五角形。そこを通過するべき乗則と一定 M/L モデルプロファイルを描いた。 恒星軌道からの Gillessen et al 2009 の値は 0.0002 pc にある。薄紫三角= Lindqvist et al 1992a と 緑星印=McGinn et al 1989 にはジーンズモデルを 使用した。薄緑線= Deguchi et al 2004 はボルツマン方程式を使った彼らの 拡張質量モデルを我々の MSMBH に適用した。Genzel et al 1996 と McGinn et al 1989 は除いた。0.55 pc 内側ではより正確なデータが今では 存在するからである。 |
6.4.累積質量プロファイル![]() 図20.べき乗モデルまたは L/M 一定モデルの累積質量プロファイル。 黒四角:M100" = 6.09 106 Mo で規格化した。 薄青実線= OB星種族の ZAMS 累積質量 (Bartko et al 2010). 茶丸= Etxaluze et al 2011, Genzel et al 1985, Mezger et al. 1989, Requena-Torres et al 2012 の CND. 白丸=Christopher et al 2005 の CND. |
6.5.M/L 比6.6.銀河の中心核星団との比較![]() 図21.中心核星団のサイズと光度の関係。青三角=晩期型銀河の半光度 半径(Boker et al 2004), 赤丸=早期型銀河の半光度半径(Carollo et al 2002). MW に対しては、緑四角= GALFIT 成分分解の内側成分。緑三角= γ モデルフィット。緑線=半径による累積光度。 |
付録B:視線速度![]() 図26.SINFONI サンプル星の銀河面に沿った平均視線速度。比較が良くでき るよう、負 l* の視線速度は符号を反転させた。 |
付録C:サンプルクリーニング![]() 図27.Nishiyama, Schodel 2013 の早期型星候補。ここでは 0.5 pc より外側の 星だけマークした。内側は論文で既に同定済みだから。 |