The Nuclear Cluster of the Milky Way: Total Mass and Luminosity


Fritz, Chatzpoulos, Gerhard, Gillessen, Genzel, Pfuhl, Tacchella, Eisenhauer, Ott
2016 ApJ 821, 44 - 85




 アブストラクト 

 銀河系中心核星団の基本パラメタ―を得た。第1に、 VISTA, WFC3/IR, VLT/NACO データから減光を補正した古い星の計数を用いて、中心 1000" の個数 マップを作成して、構造を調べた。データは2成分で記述される。内側のやや 平坦な (軸比 q = 0.80±0.04) 成分は中心核星団である。外側は核周辺 部の恒星成分にあたる。中心核星団の半光度半径 = 178 ±51" = 7 ±2 pc で MKs = -16.0±0.5. 第2に、外側 4 pc まで の詳細な運動を調べた。AO データから 10,351 固有運動、VLT/SINFONI データ から 2513 視線速度を得た。  我々は等方的球対称ジーンズモデルを使い、星団質量を定めた。我々は銀河 中心距離を決め、超巨大ブラックホールの質量を決めた。クラスターのモデル を M/L 一定および、べき乗則の仮定で星団をモデル化した。後者の場合、 我々は勾配 1.18±0.06 を得た。我々は 100" 以内の星団質量 M100" = (6.09±0.53fixRo±0.97 Ro)×106 Mo を双方の仮定に対して得た。 観測されている中央平坦部を含むモデルは 47 % 大きな質量を与える。われわれ の結果は尖頭よりは中心核の方に幾分か合う。8" 以内の非拘束星の数を最小化 することで、星の軌道からの Ro - MSMBH 関係を使い、我々は銀河 中心距離 Ro = 8.53-0.15+0.21 kpc を得た。我々の 結果を合わせると、 M/L = 0.51±0.12 Mo/Lo を得た。これは Chabrier IMF と合致する。


 1.イントロダクション 

 減光 

 中心核星団のレビューは Genzel, Eisenhauer, Gillessen 2010 を見よ。 観測最大の問題は強い減光である。 Fritz et al. (2011) は AKs = 2.42 を得た。このため、輝度プロファイルの不定性が 大きい。

 中心の光超過 

 Becklin, Neugebauer 1968, Haller et al 1996, Philipp et al 1999 は バルジの輝度プロファイルの上に、中央 400" に輝度の超過を認めた。一方、 Graham, Spitzer 2009, Schodel et al 2011 は??? transit ?

 上のスケール 

 もっと大きいスケールで Launhard et al 2002 は中心核星団とバルジの間に もう一つ別の恒星成分があることを見出した。それは長さ 3° の横向き 円盤、つまり中心核円盤である。その軸比は5である。この円盤は大体 CMZ = central molecular zone に対応している。その平坦度は定性的には Catchpole et al 1990, Alard 2001 が確認していた。内側になると、平坦度 の不定度が増す。 Vollmer et al 2003 は 200" 長で 1.4 : 1 を、Schodel et al 2007 は中心から 70" 以内で光分布がほぼ円形であると述べた。

 星成分 

 Blum et al 2003, Pfuhl et al 2011 は R ≤ 2.5 pc の星の大部分が 5 Gyr より古いとした。やっと 0.4 pc になって光の支配が 6 Gyr 星 Forrest et al 1987, Krabbe et al 1991, Paumard et al 2006, Bartko et al 2009 になる。そこでの IMF はトップヘビー Bartko et al 2010, Lu et al 2013 である。
 質量 

 MSMBH = 4.3 106 Mo はよく決まっているが、中心核 星団の質量はそれほどよく決まっていない。 Genzel et al 2010 は R ≤ 1 pc の質量を 106 Mo とした。不定性は 50 %. 中心パーセクでの 重力場は SMBH で支配され、追加の恒星質量分寄与を決めにくい。さらに、 予期しなかった中心分布関数の核 Buchholz et al 2009, Do et al 2009, Schodel et al 2009 の発見により、最近のジーンズモデル法が破綻した。 その結果、Trippe et al 2008, Schodel et al 2009 の仕事も中心パーセク の質量に対し 50 % 不定性を残す。Haller et al 2008, Genzel et al 1996 は視線速度の数が少ないので同じくらいの誤差を含む。中心パーセクの外側 での質量決定は主に少数の晩期型星視線速度、Lindqvist et al 1992a, Deguchi et al 2004、または CO バンドヘッド Rieke, Rieke 1988, McGinn et al 1989 に頼っている。中心部の外側では固有運動データがないため速度非等方性の程度 を見積もることが難しい。 CND = circumnuclear disk ガスの視線速度を中心 パーセク外の質量決定に用いる試みを Genzel et al 1985, Serabyn, Lacy 1985, Serabyn et al 1986 が行った。

 今回は大規模 

 このように、中心部の質量、光度分布はまだ不定性が大きい。そこで、我々は 星の3次元速度成分を定める範囲を R ≤ 4 pc に広げた。また、表面密度 分布を R = 1000" まで広げた。この両方から単純な等方速度分布のジーンズ モデル解析を行った。より複雑なモデルは Chatzopoulos et al 2015 を見よ。


 2.データセット 

 2.1.高分解像 

 HST WFC3/IR 

 中心 68" を撮った。

 VISTA  

 より大きな領域では VISTA Variables in the Via Lactea Survey 公開データ を使用。中心タイル 333 を H, Ks バンドで使用。分解能は 1" . 画像は GC の周り 1° 平方以上をカバーするが、 Rbox = 1000" のみを 使った。

 2.2.分光 

 SINFONI 

 積分面分光 SINFONI を H+K (分解能 1500) と K (分解能 4000)で使用。 空間スケールは、最小 12.5 mas/pixel x 25 mas/pixel から 125 mas/pixel x 250 mas/pixel である。したがって空間分解能は 70 mas から 2" の間である。


 3.速度 

 3.1.固有運動 

 1. R ≤ 2" 

 Gillessen et al 2009 と同じ位置決定法を使用する。76 固有運動。

 2.R = [2", 20"] 

 Trippe et al 2009 の方法を採用。5813 固有運動。

 3.R > 20" 

 通常、固有運動は得られない。非常に良い AO 補正した画像から 3826 固有運動を得た。

 4.北側追加領域 

 Gemini 2000 と NACO 2011 を使用。 633 固有運動を得た。






図1.視線速度と固有運動を測った星の分布。固有運動の測定は4種類のデータ を用いた。中心 R < 2", R = 2" - 20", R < 40", 更に北側の分離された領域。 黄色線=我々の座標系 = shifted Galactic coordinates l*/b* (Deguchi et al 2004, Reid, Brunthaler 2004) これは中心を Sgr A* にした。
 


 3.2.視線速度 

 SINFONI 

 R < 95" では SINFONI データを用いて晩期型星 2513 個の視線速度を測 る。速度エラーの中間値は 8 km/s である。視線方向速度散布度は、 σz = 102.2 ±1.4 km/s である。図1から分かるよ うな l* の非一様分布を考慮して、回転の影響を避けると、中心核星団の 視線速度は 6.1 ±3.8 km/s となる。定義からはこの値は 0 になるべき である。したがって、我々の速度較正はおそらく正しく、散布度はポアソンエ ラーに支配されている。

 メーザー 

 R = 110" - 3000" では文献、 Lindqvist et al. (1992) Deguchi et al. (2004) を使う。どちらもメーザー観測である。我々はこの二つを同定して、結合リスト を作り、重複を消した。
この同定の副産物として速度不定性は 3 km/s 以下で あることを確認した。これは彼らも述べていた。これら電波データの位置の不 定性が大きいので、対応する赤外線源を探すことは困難である。したがって、 結合リストから、我々がスペクトルを得ている領域にあった電波源 11 個を 消した。これは速度データを二度使うことを避けるためである。こうして、中心 領域の外に 261 個の視線速度を得た。

 固有速度との結合 

 視線速度データ星サンプルの中間等級は Ks = 13.66 であるが、  固有速度データ星サンプルの中間等級は Ks で 1.85 mag 暗い。その結果、 双方が揃った星は 1840 個しかない。両サンプルの等級差は進化段階の差で 年齢や質量の差ではない。したがって、質量に依存したバイアスはないと考えて 10,351 固有運動データと 2774 視線速度データを使用する。 


 3.3.サンプルクリーニング 






表1.表面密度データへの Nucker フィット。

 4.中心核星団の光度特性 




図2.星フラックスと星数の表面密度プロファイル。NACO, WFC2/IR, VISTA 画像(視野は後ほど大きい)から作成。



図3.星数表面密度の銀河面に沿った変化と直交軸に沿った変化。星数に限り があるため、中心近く R < 68" ではサンプルの選択は厳密でない。 Launhardt et al 2002 のモデルを規格化して重ねた。彼らのモデルはバルジ と円盤を含まない。我々のデータにはそれらも含まれている。


 4.2.星密度プロファイルへの球対称フィット 

 4.2.1.Necker モデル 

  









 


図4.晩期型星表面密度分布への α = 1 での Nuker フィット。ここに 示すのは R < 220" の内側部分へのフィットである。折れ曲がりの先、外側 部分のデータは白印で示す。Buchholz et al. 2009 と Do et al. 2013a の フィットも示す。    







表2.γ モデルフィットのパラメタ―

 4.2.2.γ モデル 


図5a.フラックス空間密度プロファイル。
(arcsec-3 というのは どういう意味なのか?)

図5b.フラックス表面密度プロファイル。


 4.3.星団の平坦度 


表3.平坦度の変化









図6.rbox = 1000" 内側の星密度マップ。カラースケールは全て同じ。 左上:VISTA/WFC3/NACO 星計数データ。減光と検出率補正済み。フィットした 個数分布カラー図に等高線図を重ねた。右上:データへの GALFIT フィット。 フィットは2成分から成る。その各成分を下図に示す。左下:中心成分。 n = 1.46、平坦率 q = 0.80 の Sersic プロファイル. 右下: q = 0.26 の Nucker プロファイル。ただし、我々のマップの外側に広がるのでよく規定 できていない。


 4.4.中心核星団の光度 

 5.運動学的解析 

 5.1.非等方速度分布 


図7.視線方向と接線方向の速度散布度の変化。


 5.2.回転と力学的主軸 

 5.1.非等方速度分布 


図8.主(平坦/回転)軸の方向

図9.我々のデータと文献データからの平均視線速度、回転パターンの対称性 を仮定して、視線速度を逆転させた。メーザデータは Lindqvist et al.1992a と Deguchi et al. 2004 を用いた。Trippe et al 2008 データは |l*| < 27" ではわれわれのデータと重複する。その外側では、Trippe et al 2008 は McGinn et al 1989 データを用いている。図には Rieke, Rieke 1988 の データも示す。赤い良質データをビニングなしで多重式フィットした。


 5.3.ビニング 

 5.4.ジーンズモデル 


図10a.ジーンズモデルに用いた固有運動散布度。

図10b.ジーンズモデルに用いた視線運動散布度。



表4.ジーンズモデルフィット


図11.ジーンズモデル化のデータとフィット。10" 以内のデータと 100" 外側の データ (灰色)はこの単純なモデルとは不整合である。他のデータは黒。 フィットは表4の第1列=緑、第3列=赤、第5列=青。  



図12.表4モデル5のパラメタ―間の相関。パラメタ―は光度(星計数)、 内側勾配パラメタ―、コア半径(γ-成分)、100" での質量。ブラック ホール質量は固定。濃い灰色= 1σ 領域。薄い灰色= 2σ 領域。 パラメタ―相関はモンテカルロシミュレイションで決定。  

図13.表4モデル3,4、5、6の星団質量の相関。4つのモデルは同じ 力学データ領域 (10" < R < 100") を共有している。追跡天体の分布 と外側の質量モデルで異なっている。左列は同じ追跡天体分布を使用し、 右列は同じフラックス密度を持つ。上2行は中心核星団にべき乗則が適用 された。最下段は M/L 一定。 SMBH = 4.17 106 Mo 固定。 濃い灰色= 1σ 領域。薄い灰色= 2σ 領域。  

 5.5.速度分布と高速度星 


図14.各ビン内の中間と最大3次元速度。べき乗線で近似。エラーは 中間値星と最大値星の速度エラー。青印は Reid et al 2007 と Schodel et al. 2009 の高速度星。  

 5.5.1.最小拘束質量 


図15.最小拘束質量のビン内の最大値。質量エラーは速度の 1σ エラー から生じる。こうして決まる質量を Gillessen et al 2009 の SMBH 質量、お よび二つのジーンズモデル質量、表8のA,Cと較べる。3つの青丸は、 Reid et al 2007, Trippe et al. 2008, Schodel et al 2009 から。  



図16.逃散ギリギリの星から決めた距離への拘束。図は Gillessen et al 2009 による SMBH の距離ー質量関係。二つのギリギリ星の質量ー距離関係は拘束最小 質量を表す。赤線と黒線が関係線。オレンジと灰色線は 1σ エラー線。  

 5.5.4.速度ヒストグラム 


図17.力学モデルサンプルの速度ヒストグラム  



表5.高速度星  

 6.議論 

 6.1.中心の低散布度問題と SMBH 質量 


図18.表4のモデル2と29に対する MSMBN 相関。上段は星団 質量との相関。下段は内側勾配 γin との相関。 どちらのモデルも星計数を密度追跡に使用し、 L/M 一定とした。左=モデル2 は全ての距離区間を使用。右=モデル29は 27" の内側データ使用。 濃い灰色= 1σ 領域。薄い灰色= 2σ 領域。  

 6.2.文献 MSMBH との比較 


図19.GC周りの累積質量プロファイル。今回の仕事の結果は 4 pc にある赤 い五角形。そこを通過するべき乗則と一定 M/L モデルプロファイルを描いた。 恒星軌道からの Gillessen et al 2009 の値は 0.0002 pc にある。薄紫三角= Lindqvist et al 1992a と 緑星印=McGinn et al 1989 にはジーンズモデルを 使用した。薄緑線= Deguchi et al 2004 はボルツマン方程式を使った彼らの 拡張質量モデルを我々の MSMBH に適用した。Genzel et al 1996 と McGinn et al 1989 は除いた。0.55 pc 内側ではより正確なデータが今では 存在するからである。  


 6.3.尖頭か核か?  

 6.4.累積質量プロファイル 


図20.べき乗モデルまたは L/M 一定モデルの累積質量プロファイル。 黒四角:M100" = 6.09 106 Mo で規格化した。 薄青実線= OB星種族の ZAMS 累積質量 (Bartko et al 2010). 茶丸= Etxaluze et al 2011, Genzel et al 1985, Mezger et al. 1989, Requena-Torres et al 2012 の CND. 白丸=Christopher et al 2005 の CND.  

 6.5.M/L 比 

 6.6.銀河の中心核星団との比較 


図21.中心核星団のサイズと光度の関係。青三角=晩期型銀河の半光度 半径(Boker et al 2004), 赤丸=早期型銀河の半光度半径(Carollo et al 2002). MW に対しては、緑四角= GALFIT 成分分解の内側成分。緑三角= γ モデルフィット。緑線=半径による累積光度。  


 7.結論 

 付録A:固有運動の導出 

 付録B:視線速度 


図26.SINFONI サンプル星の銀河面に沿った平均視線速度。比較が良くでき るよう、負 l* の視線速度は符号を反転させた。  

 付録C:サンプルクリーニング 


図27.Nishiyama, Schodel 2013 の早期型星候補。ここでは 0.5 pc より外側の 星だけマークした。内側は論文で既に同定済みだから。  




 付録D:輝度プロファイル 




図28.星の表面密度マップ。星数は VISTA データから得た。画像は Sgr A* の周り 1000" ボックス。銀河面は水平。左上:Ks = [11.5, 13] の検出率補 正後の星密度。右上:Ksexcor = [9, 10.5] の検出率、減光補正後 のマップ。左上と右上とでは必ずしも同じ星が現れない。等級区間は大体同じ数 の星になるようにした。左下:以上に星数が低いまたは高い領域をマスクした。 右下:ノンマスクの |l*|,|b*|同じピクセルの平均値でマスク領域を埋めた画像。  


図29.GC 内側の表面星密度マップ。星数は WFC3/IR データから得た。 画像は Sgr A* の周り 68" ボックス。銀河面は水平。左上:m153 < 18.3 の星密度。右上:減光補正後の m153,o < 12.5 の 星密度。左上と右上とでは必ずしも同じ星が現れない。等級区間は大体同じ数 の星になるようにした。左下:以上に星数が低いまたは高い領域をマスクした。 右下:ノンマスクの |l*|,|b*|同じピクセルの平均値でマスク領域を埋めた画像。