Spectrophotometry of OH 26.5+0.6 from 2 to 40 μm


Forrest, Gillett, Houck, McCarthy, Merrill, Pipher, Puetter, Russell, Soifer, Willner
1978 ApJ 219, 114 - 120




 アブストラクト 

 航空機と地上からの観測で OH 26.5+0.6 に強い 10 μm 吸収と弱い 18 μm 吸収が示された。フラックスレベル、カラー温度、吸収深さ は 2 年間の観測の間変化した。  天体を晩期型変光星が光学的に厚いダストシェルを放出したモデルが 示唆される。マスロス率は 10-5 Mo/yr 以上に達する。 4 - 7 μm 区間での放射フラックスが高いことは高酸素ダストはこの 波長帯で高いオパシティを持つ証拠である。


 1.イントロダクション 

 発見 

 OH 26.5+0.6 は Andersson et al. 1974 により明るい 1612 MHz 源として 発見された。独立にこの天体は CRL 2205 (Walker, Price 1975) という 明るい 10 μm 赤外源として発見された。
 その後の研究 

  この天体はアリゾナ大学のグループにより UOA 19 と名付けられ、 Low et al 1976, Evans, Beckwidth 1977 が研究した。 ここでは  2 - 40 μm 分光測光観測の結果を報告する。





表1.観測ログ

 2.観測 

 観測ログ 

 観測は 1974 May 3 - 1976 June 25 まで様々な装置と人により行われた。 表1に観測ログを示す。2 - 4, 4 - 8, 8 - 13 μm 観測は Gillett, Forrest 1973 によるフィルター回転分光測光器を使用し、 16 - 40 μm 観測は Forrest, Houck, Reed 1976 の冷却グレーティング分光測光器 が用いられた。分解能は Δλ/λ = 0.01 - 0.02 である。 望遠鏡は Mt. Lemmon 1.5 m, Kitt Peak 1.3, 2.1 m, KAO 0.9 m である。

 図1= 1976 年スペクトル 

 図1には、1976 May 21 - 1976 June 25 に得られた 2 - 40 μm スペクトルを示す。スペクトル= 375 K 黒体+ 10 μm 吸収 + 18 μm 吸収、である。

 シェルの光学厚み 

 図2に示されるように、2 - 4 μm 帯にも吸収がある。これは CO と H2O で、恒星大気起源であろう。このバンドで大気吸収された フラックスは、大気連続光の下限値を与える。2.5 μm において、この 値は、F(2.5) の下限値を与える。一方、 1.65 μm での 3σ 上限は 1.7 10-19 W cm-2μm-1 である。光球温度= 2000K として、上の限界値になるには E(1.65-2.5) = 5.8 mag が必要である。 これは Av - 70 mag に相当する。
 変光 

 図1から分かるように OH 26.5+0.6 は変光している。図1の下側スペクトルは 1975 Apr - May に取られ、上スペクトルは 1976 May に取られた。この間に 8 μm フラックス は約2倍に上がった。 2 - 4 μm でのフラックス上昇はもっと激しい。また、 2 - 4 μm カラー温度も 350 K から 375 K に上がっている。

 吸収強度の変化 

 10 μm 帯の深さは低光度期の方が光学深さにして 0.4 深い。これは、あとで議論するが シェルモデルと合致する。  図3には 8 - 13 μm スペクトルの 2 年間に亘る変化が示されている。フラックスが 上がるに連れて、 10 μm 吸収帯の深さが減少するのが見て取れる。



図1.OH 26.5+0.6 の 2 - 40 μm スペクトル。




図2.1976 May - June における OH 26.5+0.6 のスペクトル。実線= B(375K) を 2 - 4 μm データにのみフィットさせたもの。左上のプラス印= 2 - 4 μm データを Av = 105 mag で赤化補正したもの。 細線=赤化補正データにフィットした黒体。これらは単に 2.4 と 3.1 μm 吸収を見やすくするための表示で Av は適当。




図3.色々な時期の 8 - 13 μm スペクトル。暗くなった時に吸収帯が深くなる傾向 が見える。観測日は I: 1975 May 3, 21. II: 1974 Oct. III: 1975 May 1, 21. IV: 1976 June 25.

 3.議論 

 3.1.10-, 18-μm 吸収帯 

 光度が上がると吸収が浅くなる 

 OH 26.5+0.6 の赤外光度が上がるにつれ 10 μm 吸収深さが浅くなる。 我々の解釈は、光度が変化するとダスト温度を変え、それが 10 μm 吸収 深さに影響するというものである。しかし、 18 μm 放射は 10 μm 吸収 ダストも寄与している。従って、10-, 18-μm 吸収の解析には Jones, Merrill (1976), Sciville, Kwan 1977 のような輻射輸達モデルの使用が不可欠である。

 モデルによる説明 

  Jones, Merrill (1976) による予備的解析に依れば、τ(10μm) > 6 のダストシェルは観測スペクトル と合う。また、吸収帯深さの変化も説明できそうだ。

 3.2.シェルの光学的深さ 

 減光の計算 

 Ωs = 中心星の立体角、Ts = 中心星有効温度、Fλ = 観測フラックス、 とする。短波長でのダストシェルの減光は以下の式で決まる。

   Aλ ≥ 2.5 log[ΩsBλ(Ts) /Fλ]    (1)

   (σ/π)Ωs Ts4 = ∫Fλ

Ts = 2000 K と仮定する。 (1) 式が負等号なのは、ダスト放射の効果を考慮したからである。 Ts の値は結果にあまり響かない。
(B(Ts) と実際のSEDとの違いは実は大きい のではないか? )
OH26.5+0.6 の減光は A2.2 = 7 mag となった。これは Av = 80 mag, τ9.7 = 6 に相当する。


 3.3.マスロス 

 Salpeter 1974 の式(2) 

 マスロス率は Salpeter 1974 の式を用い、次の式で評価する。

   dM/dt = (τs/Vc)L   (3)

ここに τs = シェルの有効光学的深さである。 0.4 τ2.2 < τs < τs 程度であろうと推定し、 L = 104 Lo, V = 13 km/s から、 dM/dt = 4.5 10-5 Mo/yr が得られる。

 Salpeter 1974 の式(1) 

   dM/dt = 2π(τλ/fκλ)RoV

から、 1.5 10-5 Mo/yr が得られる。

 3.4.ダストの性質 

 地上シリケイトは λ < 7 μm で非常に透明である。 従って、何らかの付加オパシティが必要となる。

 3.5.まとめ 

 OH26.5+0.6 はマスロス晩期型星のようである。