アレシボ望遠鏡で、赤外超過が大きな早期型輝線星 23 個の OH 1612, 1665, 1667 MHz 観測を行った。Vy 2-2 で新しく OH 検出に成功した。また、Fix, Mutel による M 1-92 における OH 検出を確認した。Vy 2-2 の 1612 MHz は 10 km/s 幅の単一ピークであった。Vy 2-2 は赤外源であり、電波熱連続波源でもあり、 点源 PN に分類されている。 | もし PN 分類が正しければ、これは OH が検出された最初の PN である。 OH の励起は FIR 放射であろう。双極型星雲 M 1-92 の強度は 1973 年以来 変化していない。その進化段階は不明である。 HK Ori, LkHα 208 からは OH が検出されなかった。 |
Allen 1973 は輝線を持つ早期型星 237 個の近赤外測光を行い、その中でも 赤いカラーの天体を D タイプと名付けた。Lo, Bechis 1973 は早期型輝線星 V1057 Cyg に OH を発見した。Lepin, Rieu 1974 は 38 個の早期型輝線星の OH サーベイを行い、 M 1-92 と HD 200775 からの OH 1667 MHz を検出した。 | われわれはアレシボで観測可能な Allen D 天体の OH サーベイを計画した。 |
1612 MHz メインラインは非検出で、サテライトラインの 1612 MHz でのみ検出。スペ クトルの形は非対称で、負速度側が急で鋭い。 Wilson, Barrett (1972) はタイプII OH/IR の特徴として以下の3つを挙げた。 (1)OH が 1612 MHz で最強。 (2)スペクトルが双峰型で外側の縁が内側より急で鋭い。 (3)二つの峰の強度比は典型的には 2 : 1 で、正峰、負峰どちらが高いか はばらばら。 彼らは強度比の例外として、 R Aql で 正:負 = 18 : 1, IRC -10529 では 逆に負峰が圧倒的であることを指摘した。Vy 2-2 はこの非対称ピークを持つ OH/IR 星の仲間と言えるだろう。 距離 Vy 2-2 の距離は不明である。輝線の視線速度 Vlsr = -70 km/s からは運動 距離 19 - 20 kpc が出る。ただし、視線速度が膨張効果を含んでいると、この 距離は大きな過大評価となる。 (Gaia EDR3 では Plx なし。 ) ダスト質量 Cohen, Barlow 1974 が与えたダスト質量の式 Md = (ρLirλ)/(6πσT4) ここに ρ = ダスト物質の密度、λ = ピーク波長。 に、ρ = 3 g cm-3, λ = 20 μm, T = 190 K, Lir = 4.9 10-9 ergs s-1 cm-2 を代入して、 Md = 1.4 10-6 (D/kpc)2 Mo である。ダスト/ガス比は Cohen, Barlow 1974 によると非常に低く 5 10-5 であるが、 真偽不明。 電離ガス Vy 2-2 は電波連続波源で、そのスペクトルはフリーフリー放射の特徴を 示す。1.4 - 25 GHz までは光学的に厚い。その電離域は電子密度 n = A r-2、e = 10,000 K 、rin = 1.3 1015 (D/kpc) cm, rout = 6.0 1015 (D/kpc) cm, A = 3.2 1036 (D/kpc)3/2 cm-1 でフィットされる。それから電離 ガスの質量を評価すると M = 1.6 10-4 (D/kpc)5/2 Mo となる。 この値は FIR から求めたガス質量と同程度である。しかし、ダ ストが電離シェル内に分布しているのか、その外側の中性ガス領域に限られる かは不明である。 赤嶺ラインの吸収? Vy 2-2 は中央に光学的に厚い電離ガス星雲があり、その外側に中性ガスと ダストの層が広がっているのであろう。 |
![]() 図1.(a) Vy 2-2 の全1004 チャネル 1612 MHz スペクトル。 (b) 上の拡大図。 OH/IR 星のモデルでは、メーザーは動径方向に放射される。 恐らく、電離域の向こう側からの赤峰メーザー線は光学 的に厚い星雲で吸収されるのであろう。光学的に厚い端の周波数 25 GHz で τ = 1 と仮定すると τ(1612 HGHz) = 320 である。 進化段階 Vy 2-2 はVyssotsky, Miller, Walter 1945 に発見され、PN と分類された。 スペクトルは [OIII], [NeIII], HeI, [SII], [OI], [NII] 輝線からなり、 かなり高温と思われる。Vy 2-2 は強い熱電波源でもある。 Marsh 1975 は恒星状の外観と高い電子密度とから、 形成途上の PN ではないかと述べた。 この天体から通常は AGB 星に限られる OH メーザーが検出されたことは、 Vy 2-2 が外層を放出し、しかしまだ外層を完全には電離しきっていない 過渡的段階にあることを窺わせる。 |
M 1-92 とは Minkowski 1946 はその発見論文でこの天体の輝線スペクトルが P Cyg 型 で、多数の Fe II および [FeII] 線を含むと述べた。かれはこの星雲は輝線 星雲ではなく、反射星雲であろうと結論した。Herbig 1975 は星雲が人の足跡 に似ていることに注意した。星雲は位置角 131° 方向に伸びている。 二つの突起の中間に赤く淡い星が見え、おそらく光源である。Herbig は星の 周りに濃密な円盤があり、その外側に薄い雲が広がっているという配置を考え た。円盤の透明な極方向に漏れ出た光が広がった雲で反射するのである。 スペクトル 1667 MHz スペクトルを図2に示す。それは -15, -8, +6, +20 km/s の4成 分からなる。これらの成分は双極性ハローから来るのではないか。 進化段階 M1-92 の進化段階は不確実である。 図2.(a) M 1-92 の全 504 チャネル 1667 MHz スペクトル。 (b) 724/1004 チャネル 1612 MHz スペクトル。 |
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Allen D 天体を23個 OH 観測したが受かったのは二つ。Vy 2-2 は OH が 受かった最初の PN である。1612 MHz は青いピークしか見えない。 恐らく内側に電離ガス、外側に中性層の二重構造で、赤ぷーくは電離ガスにより 吸収されたのであろう。 | もう一つ、 M 1-92 は特異な 1667 MHz スペクトルを示す。恐らく流出流から のメーザー線であろう。または回転円盤かも知れない。 |