Characteristics of OH Emission from Infrared Stars


Wilson, Barrett
1972 AA 17, 385 - 402




 アブストラクト 

 晩期型変光星からの OH 放射の性質を調べた。 456 赤外線星と他のタイプの 18 天体を調べ、 25 天体から OH を検出した。他の観測者により既に発見さ れている4つを加え、赤外天体からの OH 源は29となった。さらに8 OH 源 では未だに対応赤外星が発見されていない。  OH, IR, 可視の性質から OH/IR 星は次の3つに分類される。1612 MHz OH 放射が最強になり、スペクトルに二つのピークを持つグループには 19 天体が 含まれる。それらは M-型長期変光星でおそらく星周ダストシェルからの 5 - 10 μm 超過を持つ星であろう。OH 放射は赤外光により励起され、OH 雲は非対称的な膨張を行っているのではないか。


 1.イントロダクション 

 OH サーベイ 

 ここ数年、赤外源からの OH ラインの観測が行われた。総計 456 赤外星と 18 の関連天体が 1612 MHz で観測された。内、 82 天体は 1665 MHz で、 194 が 1667 MHz で、44 が 1720 MHz でも観測された。赤外天体の大部分 はカルテック2ミクロンサーベイから採られた。OH ラインは 25 赤外天体で 検出された。これは全体の 5.5 % に当たる。さらに、他の観測者の 5 天体 を含め、8天体では対応赤外源が見つかっていない。

 赤外星の位置が一致 

 OH 源の干渉計観測で位置を測定した結果は、 OH 電波が正に赤外線星の位置 から出ていることを示している。OH/IR 星は次の3つに分けられる。
 (1) タイプII 

 ダブルピークの 1612 MHz ライン。主ラインより 1612 MHz が強く、偏光は ない。分類された天体は19 個全て、赤外超過のある M-型ミラであった。その 他に 8 個の天体では対応赤外線星が見つからなかったが、 OH の特性が似ている ので晩期型星から出ていると考えられる。

 (2)超巨星 OH/IR 星 

 VY CMa, VX Sgr, NML Cyg は ピーク間隔 30 km/s 以上の OH メーザーを 放射している。主ラインは 1612 MHz より弱い。この 3 天体は赤外超過が 大きく、水メーザーも検出されている。

 (3)タイプ I OH/IR 星 

 1665/1667 MHz ラインが最強。10 μm 超過がない M-ミラ型星である。 それらはまた水メーザーを出している。



 表1.タイプ II OH/IR 星 




 表2.タイプ II OH/IR 星の各ピークのフラックス 






 2.観測 

 観測は NRAO 43 m 望遠鏡で 1969 August/September と 1970 February に行われた。  赤外線星はカルテック2ミクロンサーベイから I-K が赤い天体を 選んだ。


 3.結果 

 IRC+10011 

 IRC+10011 はタイプ II OH/IR 星の典型と言える。図1のスペクトルは 時間変化をはっきりと示している。

 OH 1649-41 

 この強い OH 源は赤い R CrB 型星 NGC 6231-92 の観測の際に偶然発見された。



 OH 1735-32 

 IRC-30305 の OH を観測しようとしていて、偶然発見された。ピーク間隔 は知られている中では最大である。

 OH 1837-05 

 3C 387 近くで Staelin 1968 が報告した OH 源を確認しようとしていて 偶然発見された。 1612 MHz しか検出されない。この星はピークの巾が広い ことから、おそらく超巨星であろう。



 W 43A 

 連続電波源 W 43 arc の 10' 北にあり、Goss 1968 が発見した。その視線 速度は W 43 本体より 60 km/s 低いので物理的なつながりはない。IRC カタログ に対応赤外線源はないが、ダブルピークの形から OH/IR 星と看做される。

 R Aql (IRC+10406) 

 R Aql は大きな赤外超過を示し、H2 ラインもある唯一のタイプ II OH/IR 源である。通常 H2 ラインはタイプ I OH/IR 星に特有であり、 この星はタイプ I に分類されるべきかも知れない。



 OH 2026+38 

 この星は Ellder et al 1969 により発見された。Neugebauer, Becklin 1971 は その位置に弱い赤外源を発見した。その IR 性質は通常の OH/IR 星と大きく異 なる。新しいタイプなのかも知れない。OH の H ラインと可視吸収線の視線速度 が相関している。可視吸収線は恒星速度 Merrill 1940 を表すと考えられている。 これは H ラインが星に対して止まっており、L ラインのみが動いていることを 意味する。



表3.可視輝線、電波 OH 線の視線速度



 NML Tau 





 IRC 50137 



 IRC 40156 





 IRC-20197 



 WX Ser 





 IRC 30292 



 IRC-10381 





 OH 1821-12 



 IRC-10434 





 IRC 10365 



 IRC-10450 





 OH 1854+02 



 IRC-20540 





 RR Aql 



 IRC-10529 





 4.議論 

 4.1.タイプ II OH/IR 星の OH の性質 

 1612 MHz 最強 

  1612 MHz ラインが強い。1720 MHz は見えない。

 1612 MHz のプロファイル 

 外側が急峻なダブルピーク。内側は緩やか。R Aql と IRC-10529 は 一本 ピークという点で例外。

 ピーク比 

 強いピークが H 側か、 L 側かに差はない。弱い/強い = 1/2 が多い。
 主ライン 

 11/19 で 1665/1667 MHz 主ラインが見えた。

 偏光 

 偏光はないか < 25 % で弱い。

 変光 

 赤外と大体同期して変光する。

 連続光 

 連続光は検出されない。


 4.2.赤外光 

 統計 

 観測した天体の 90 % 以上は IRC 天体で、I-K カラーが赤い、 つまり K < 3, I-K > 3.5 である。図25には、全観測星 456 個と OH が検出された 17 星の K と I-K ヒストグラムを示す。下段の点線は 各区間での OH/IR 星の割合である。検出率と K に相関はないが、 I-K とは ある。I-K < 4.7 では OH は検出されない。



図25.タイプ II OH/IR 星の赤外性質