アブストラクト晩期型星用の測光指数 MgH+Mgb が DDO システムに加えられた。観測の結果、 この指数は K 型星の表面重力に鋭敏であることが判った。低メタルのハロー 巨星を円盤星から分離できるかも知れない。二つのフィルターだけから決める この指数で球状星団のメンバーシップの確定が可能かも知れない。また、較正 の後、フィールド巨星の年齢を決められる可能性もある。1.イントロ晩期型星の MgH+Mgb バンドは K 型星では表面重力に強く影響される。その上、 このバンドは晩期型星や銀河の元素量較正源として使われてきた。Mg 指数の 表面重力効果は CN バンドと逆向きで、DDO システムではこのバンドの相補的 な重要性が大きい。特に晩期Gから晩期Kにかけて、表面重力と元素量の測定 に有用である。 この論文では、55星の観測からこの指数の有用性を示す。サンプル中には McClure 1976 の DDO 標準星も含まれている。 2.フィルター透過率と観測データ2.1.フィルター特性図1は DDO 標準 "48" フィルターと新しい Mg フィルターの感度曲線である。 Mg フィルターの波長透過率は表1に載せてある。中心波長は 5130 A, 半値幅 は 154 A である。DDO システムでの呼び方に習い、このバンドを "51" と呼ぶ。 2.2.観測装置 観測はコネチカット Bethany 0.5m 望遠鏡と CTIO 1m望遠鏡で行われた。観測 装置は 2 チャンネル測光装置に "48", "51" フィルターを第1チャンネル、 UBV システムの V フィルターを空モニター用に第2チャンネルに付けて行った。 ビームスプリッターがダイアフラムからの光を両方のチャンネルに分ける。 観測結果はCerro Tololo システムに変換された。 Mg指数は下の式で定義される。 C(48-51) = 2.5 log (I51/I48) + 1.0 ここに、I51、I48 はフィルター通過後の光子カウントで ある。定数項1は指数を正に保つため便宜的に加えた。 2.3.大気減光係数 減光係数は赤、青のペアの星を毎晩数回観測して決めた。C(48-51) 指数 の平均減光係数は Bethany で 0.027, CTIO で 0.022 であった。このように 係数が非常に小さいのでこの観測は条件の悪いところでも実行可能である。 2.4.観測データ 観測結果は表2にまとめた。表の入力は、 (1).HDカタログ番号 (2).スペクトルタイプ (3)ー(5).UBV 等級 (6).Kron システムでの (R - I) カラー (7).(48 - 51) 指数 次の数字は観測夜数とエラー(0.001等単位) (8).適用したE(B-V).空欄は 0.0 の意味。 (9).Morel et al 1976 による [Fe/H] |
![]() 図1 "48", "51" フィルターの波長透過曲線。"51" は MgH + Mgb 吸収用。 ![]() 表1 "51" フィルターの波長透過率。 |
3.1.星間減光の補正 Whitford 1958, Whiteoak 1966, Nandy et al 1975, Schild 1977 の 星間減光則を使い、E(48-51)/E(B-V) = 0.22 とした。表2の E(B-V) は Janes 1977 の方法を用いて DDO 測光から求めた。表2中の超巨星は Schmidt-Kaler 1965 FitzGerald 1970 の較正による固有カラーを使って求めた E(B-V) も載せた。 これらの色超過は C(48-51) の補正に使われる。 3.2.C(48-51) 指数の特性 矮星、巨星、超巨星の分離 図2は、矮星(クロス)、巨星(白丸)、超巨星(黒丸)の C(48-51) を (B-V) に対してプロットしたものである。 矮星と巨星の間の大きな間隔、それ よりは小さな巨星と超巨星の間の間隔は Mg 指数の表面重力に対する鋭敏さを 示す。ただし、M型星になると TiO バンドが優勢になってきてこの指数の有用性 は失われる。 超低メタル星と高メタル巨星 図3は図2の平均関係の上に超低メタル星と高メタル巨星を重ねたものである。 やや驚くべきことには、C(48-51)指数とメタル量の間にはっきりした関係が 見られない。非常に低メタルの星ははっきり種族I巨星分肢から分離するが、 中程度のメタル欠乏度([Fe/H]<-0.3の巨星)は図の黒点が示すように、 [Fe/H]>0.0 の星と区別できない。 巨星の指数が低いのを低メタルのためと考えるか、表面重力効果と看做すべきか は判断できない。Deeming 1960 は彼の Mg に対する γ 指数が弱- と強-ライン 星で変わらないことを見出した。この点で γ 指数と C(48-51) は似ている。 Mould 1978 は Mg 吸収は銀河のメタル量と良い相関があると主張している。しかし、 それは低メタルになった時に表面重力が下がる結果であるらしい。 表面重力と年齢の分離 もし、表面重力が Mg 指数にこんなに効くなら、この種の測光から巨星の年齢を 決めるという興味をそそる可能性がある。この試みではCMDに星を置くための 距離を知らなくて済む。この方法の原理は、メタル量が与えられた時、古くて、 つまり小質量の巨星ほど表面重力が強い(Sweigert,Gross 1978)ことを用いる。 メタル量効果と年齢効果を選別するためには年齢と組成の異なる星団を観測する のが良い。 M67の観測 そこで我々は古い散開星団M67の巨星を観測した。図3はそれら巨星の C(48-51) 指数である。彼らはかなりタイトな系列を形成している。おそらくより古い星団、 例えば NGC 188、はこれより上の系列を、もっと若いヒアデスは下に並ぶであろう。 ハロー観測での前景星の処理 球状星団の観測に際し、前景の矮星を除くために Searle, Zinn 1978 は MgH 指数を 用いた。図2を見ると、我々の C(48-51) 指数もまたこの目的に利用できることが 判る。非常に低メタルのハロー巨星の観測には 48-, 51-フィルターの観測だけで 全ての前景矮星と巨星を除去できるであろう。M 型星、これは球状星団巨星枝に 乗る星では問題にならない、それに種族 I 超巨星、これは低銀緯にならないと 観測されない、を除くと、極端ハロー巨星、HD 122563 や HD 165195 のような、 だけが C(48-51) > 0.65 となる。2チャンネル測光器で C(48-51) を観測 することは分光観測で視線速度を測る方法に較べ遥かに高速である。もっと多くの 観測が低メタルハロー巨星に対しなされるべきである。 |
![]() 図2 Mg指数 C(48-51)対(B-V). クロス=矮星、白丸=巨星、黒丸=超巨星 ![]() 図3 黒丸=低メタル星([Fe/H]<-0.3)の C(48-51) 対 (B-V). 白丸=高メタル星([Fe/H]> 0.0) プラス=M 67 中の巨星 超低メタル星は名前を打ってある。実線は矮星、巨星、超巨星の平均線。 |