MW 中の CO 分布を Rg = 3 - 7 kpc の分子リングと見做さずに、中央部が 欠けた指数関数型円盤と考えると、恒星円盤の進化を理解しやすくなる。 単位分子ガス質量当たりの星形成率は銀河系動径距離に対して一定であり、 水素分子の減少時間はハッブルタイムの数パーセントに過ぎない。 | この非常に短いタイムスケールは、活発な星形成領域ガスに対して、原子 ガスが貯蔵庫の役を果たすことを要求する。HI の分布が分子と大きく異なる 分布を示すので、銀河系外側からのガス落下か、円盤中の HI ガスが角運動 量を失う高効率な方法があるに違いない。CO 円盤の中心部が駆けるのはバー のせいである。 |
図1を見ると水素分子と原子の分布に大きな違いのあることがわかる。 X 因子は Tadv を N(H2) に変換する際の定数である。図1 では X = 2.3 1020 cm-2(K km/s)-1 が使われた。 最近は X = (1.7 - 1.9) 1020 cm-2(K km/s) -1 が使われ、そうするとN(H2) は円盤至るとこ ろで HI 以下になる。水素原子の量は 5 109 Mo で分子の 5倍となる。 |
![]() 図1.H2 と HI の動径分布。Dame1993による。 総質量は M(H2)= 1.0 109 Mo 最近の CO/H2 変換 X ファクターの値を使うと H2 密度は図の 25 % 減となる。 |
中欠けの指数関数円盤 全ての渦状銀河で CO と HI の分布は MW と同じように異なっている。 「分子リング」という命名はミスネームである。図2の様に密度分布 を半対数表示すると、指数関数分布が正しい表現であると分かる。 つまり、中欠けの指数関数円盤が正しい表現である。 スケール長 図2から分かる CO 分布のスケール長は 2.8 kpc である。 この値は、 HIIRs や パルサーなどの天体のスケール長 3 kpc と良い 一致を示す。CO を含むガスがそれらの種族 I 星の前駆天体であることを 考えるとこの一致は当然である。しかしながら、Spergel96 によると、より 高齢の天体の分布を反映すると考えられる COBE のデータも同じスケール 長を与えた。つまり、過去数 Gyr まで遡って星形成のスケール長は変わ らなかったのである。 疑問 これは面白い疑問に導く。ガスは星により決められたポテンシャルに 従って分布しているのか、それともその逆なのだろうか? |
![]() 図2.図1の H2 データを半対数表示。 |
分子ガスの寿命 星形成率の推定には多くの研究があるが、比較的信用できる Miller, Scalo (1979) に頼ると、太陽近傍での星形成率は 3-7 10-9 Mo pc-2yr-1 で、銀河円盤全体では 2-4 Mo yr-1 となる。 銀河面の H2 質量を 109 Mo とすると、 水素分子の寿命は 2.5 ^ 5 108 yr となる。これはハッブル時間 の数パーセントである。星形成と分子分布のスケール長は同じだから この寿命は銀河面全体で一定値を取る。死んでいく星からのガスが 星間空間における水素分子の消費を補っているのだろうか? 恒星から星間空間へのガス注入の4つの型は、 (1)AGBsの星風, (2)大質量星の高速度星風、(3)超新星、(4)主系 列星からの太陽風のような風、に分けられる。それらを表1にまとめた。 |
![]() 表1.恒星からのガス再補給のモード |
3.1.水素原子HI で補給?HI の量は H2 の 5 - 10 倍ある。もし、HI 全てが 水素分子になれるなら、その寿命は 1.5 - 5 Gyr に伸びる。 これはハッブル時間よりうんと短いとは言えない。しかしながら HI と H2 の比は動径距離で変わり、中欠け半径付近では 寿命は 5 - 10 108 yr に留まる。 流入 それを回避するため、Lacey,Fall 1985 は HI の落下または流入を考えた。 しかし流入を実現するには外側ガスから効率的に書く運動量を抜く機構が 必要である。その上、この機構は観測される HI と H2 の 異なる分布を実現するよう、両者間に相対的な運動を起こさなくては ならない。流入速度は大雑把に 4 kpc を 500 Myr で渡ると考えて 8 km/s 程度である。この速度は観測可能である。 |
3.2.指数関数円盤円盤形成時間現在の恒星円盤は Gould 1996 によると 35 Mo pc-2 で ある。 Miller, Scalo (1979) の星形成率 3 - 7 10-9 Mo yr-1 だと、 円盤形成に 7 - 12 Gyr かかる。 妥当な値と言えよう。 ガス円盤が先 別の言い方をすると、恒星円盤が指数関数型なのはガス円盤が 指数関数型だからである。 |
4.1.バー二つの軌道族Binney91 はバーが存在するならそのポテンシャル内で、非交差ガス流が 存在可能であることを示した。二つの軌道群に存在するガスは長期間 安定に滞在可能である。軌道外のガスはショックの結果角運動量を失い 中心にん落下して行く。 HI ガスの分布は何が決めた? こうしてバーは内側ガスの再分布を行う。では、何が円盤外側の HI ガスの運動量分布をきめたのだろうか? |
4.2.落下、内向き運動の証拠落下ガスHVCs は落下ガスの直接の証拠である。 内向き運動 内向き運動の証拠としては、銀河系反中心方向で星に対し負の相対運動 が CO と H2 に対して発見されている。 |