アブストラクト2000 個の対物プリズムスペクトルから、銀河系内の OB と 超巨星 O7 - F2 標準星、 SMC の 195 O9 - F8 星 の Hγ 線等値巾を得た。銀河系の星から、等値巾と MK 分類との相関を調べた。それを用いて、SMC の 青い星 172 個の 光度クラスを 与えた。 |
1.イントロSMC の対物プリズム観測SMC の距離と構造を決定することを目標に La Silla 40cm 対物プリズム アストログラフ観測が行われた。その第1段階は SMC の青く明るい星のスペクトル型 を決めることであった。 Hγ 線等値巾 この論文では対物プリズムデータを全体として表示し、 Hγ 線等値巾を用いて 172 個の SMC 青色超巨星の光度クラスを 決める方法について述べる。その結果は SMC 星カタログとして、 Azzopardi, Vigneau 1982 に載せられた。この方法は、より高分解能で波長域も広いのスリットスペクトルほど MK-分類の信頼度は高くない。しかし、数が多いので将来の研究の足掛かりに有用である。 |
2.1.観測法観測には ESO 40 cm 対物プリズムアストログラフ (Frhrenbach 1966) は 121 A/mm, f = 4m を用いた。 λC = 4350 A, Δ λ = 250 A の干渉フィルターにより Hγ 線を選択した。視野は 3 平方度である。この装置で B = 14 mag まで Hγ 線観測が可能となった。2.2.観測データフィールド 23, 25 は SMC バー上に、フィールド 30 はウィングにある。 表1に使用された乾板のリストを載せる。2.3.適用される星種族SMC 構造を調べるために、青色超巨星と OB 星が選ばれた。SMC の星に銀河系で 確立された MK 分類を適用するのは化学組成の違いを無視するという問題がある。 しかし、メタル量の違いの影響を評価できない。 |
![]() 表1.乾板リスト |
スリット分光と比べると、対物プリズムによる分光はシーイングの影響が大きい。
で、シーイング 2 arcsec 以下のデータのみ使用。
3.1.標準星干渉フィルターありとなし銀河系標準星 33 個の Hγ 等値巾を干渉フィルターありとなしとで観測し、 その相関を調べた。図1の結果は WHγ(FS) = (0.98±0.01)WHγ(US) + 0.51±0.27 であった。相関係数 r = 0.998 で系統誤差はない。 ESO と OHP 観測が ESO, OHP の2か所で行われたのでその関係を調べた。結果は WHγ(OHP) = (1.05±0.04)WHγ(ESO) - 1.05±0.93 であった。サンプル数が少ないが系統誤差はないと看做せる。 ![]() 図1.33 銀河系標準星の Hγ 等値巾の、WFS = 干渉フィルター使用 と WUS = 干渉フィルター不使用の比較。実線=線形フィット。破線=エラー 無しの関係。 |
他著者との比較 他の著者による等値巾との比較を図2に示す。我々の結果は他とよく一致している。 標準星の等値巾 銀河系内標準星の等値巾を表3に示した。 ![]() 図2.銀河系標準星の Hγ 等値巾の、我々と他著者との比較。 (a)Kopylov, (b)Williams,(c)Petrie,(d)Sinnerstad, (e)Crampton, (f)Balona |
3.2.SMC 星の等値巾選択視察からまず 304 星を選び、 3000 スペクトルを PDS で測定し、輝線星や 特異星を除くと、 195 星が残った。測定に用いる連続光のデンシティは 0.2 < D < 1.2 のみとする。D = 0.2 の基準から露出時間は 45m(B=12), 1h30m(B=13), 3h(B=13.6) 必要である。露出時間同士の測定結果の比較を 論じているが、影響ないという結論なので省略。 195 SMC 星の等値巾 195 SMC 星の等値巾を表5に示す。スペクトル型は O9 - G0 である。 他著者との比較 図4には Huchings 1966, Dubos 1982 の結果との比較を示す。一致は大変に良い。 それにも拘わらず、相関係数は標準星の場合ほど良くはない。これは主に SMC が 標準星より暗く S/N が悪いためと考えられる。Hutchings 1966 の結果は我々の値に比べ 系統的に大きい。 |
![]() 図4.(上)我々の等値巾と Hutchings 1966 との比較。 (下)我々の等値巾と Dubos 1982 との比較。実線=最少二乗フィット。 破線=エラーなし。 |
MK スペクトル型と Hγ 線等値巾の関係 バルマー線の何本かと光度の間に強い関係があることはよく知られている。(Tully, Wolff 1984) 図5には 表3から採った MK スペクトル型と Hγ 線等値巾の関係 をプロットした。図からはスペクトル型と等値巾が分かれば、光度クラスが決められる ことが判る。しかし、同時に 19 個の星、つまり 18 % はフィットに従わないことも 示されている。それらの星のデータとフィット線との間隔は等値巾のエラーで説明する には大きすぎる。 |
フィットから外れる理由 (i) 近くの星の混入 (ii) 連星効果 (iii) 大気の異常 |
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