Analysing Observed Star Cluster SEDs with Evolutionary Synthesis Models: Systematic Uncertainties


Anders, Bissantz, Fritze-v, Alvensleben, de Grijs
2004 MN 347, 196 - 212




 アブストラクト

 星団 SED 解析に伴う系統誤差を調べた。バンドの種類、組み合わせ、観測エラー、 モデルパラメターの離散性による効果を調べた。 UBVRIJH バンドから出発し、幾つかを 抜いた組み合わせによるフィットの結果と比べた。

 U, B バンドが最も重要であることが判った。V, J, H はそこに更なる制約を掛ける。

 1.イントロ 

 これまでに、進化合成モデルは幾つか公表されている。例えば、GLEV (Fritze-v, Alvensleben, Gerhard 19949, PEGASE (Fioc, Rocca-Volmerange 1997, STARBURST (Leitherer et al. 1999 など。Worthy 1994 はそれらのコードを比較 した。
Yi 2003 はモデルパラメター、オーバーシューティングの扱い、 マスロスレート、星スペクトルのライブラリー、の効果を調べた。Yi 2003 は 年齢によって適切なフィルターの組み合わせがあることを注意した。ここでは、 解析の誤差を系統的に調べる。

 2.モデル 

 Schulz et al 2002 の SSP モデルを採用した。これはパドヴァグループの 等時線を使っている。それらは Z = 0.0004, 0.004, 0.008, 0.02, 0.05 から なる。モデルは以下からとれる。
  http://www.uni-sw.gwdg.de/~galev/panders/.
IMF はサルピータの関数を使用した。

年齢は 4 Myr 間隔で 4 Myr - 2.36 Gyr, 20 Myr 間隔で 2.36 Myr - 14 Gyr, メタルは Z = 0.0004, 0.004, 0.008, 0.02, 0.05 、減光は ΔE(B-V) = 0.05 で E(B-V) = 0.0 - 1.0 を用意した。こうして作った 標準星団として、Z = Zo, E(B-V) = 0.1, t = 8 Myr(星団1)、60 Myr(星団2)、 200Myr(星団3)、1 Gyr(星団4)、10 Gyr(星団5)とした。この標準クラス ターに観測誤差を模倣する統計的なノイズを加え、10,000 星団を作って実験した。





図1.Z = 0.0004, 0.004, 0.008, 0.02, 0.05 と t = 8Myr, 60 Myr, 200 Myr, 1 Gyr, 10 Gyr の組み合わせ 25 セットに対する SED。

 3.モデルフィットの正確さ 

 下に示すグラフの結果からバンドの選択に関し幾つかの結論が出た。
(1)U,Bバンドは必須。
(2)バンドはなるべく広い範囲に渡るべきである。近赤外に一つは欲しい。


図2.白四角=人工星団の UBVRIJH バンドデータを解析した結果の分散。 他のマーク=一つだけ抜いたバンドセットでの解析結果。あらゆる年齢で U バンド の重要性が浮き彫りになった。B バンドもかなり影響する。これは、メタル量決定 が不正確になるための波及効果である。 t > 1 Gyr ではV バンドが欠けると年齢決定に影響する。


図3. J, H のバンドが欠け、可視バンドだけの場合。やはり、U バンドが入るか どうかがキーである。U がないとメタル量を過小評価し、補償のため減光と年齢を 過大に評価する。古い星団では B バンドが年齢決定に決定的である。最も古い 星団になって V バンドが効いてくる。 ( UBVR は 好成績に見えるが推奨されていない。)

(3)年齢、メタル、赤化、マスを指定するに必要な最低数4バンドしか使えないなら、 UBIH か, もし古い星団なら UBVH がよい。もし NIR がないなら UBVI。
(4)若い星団の U フックと古い星団の BV キンクを検知せよ。
(5)メタル量をよく決めるためには NIR バンドが決定的。若い星団では U/B。
(6)メタル量は種族合成の一番弱い所である。


図4. 可視+近赤外のバンドセットでも状況は似ていて、Uバンドが 最重要で、次が B である。一般に近赤外が入ると、入力値とのかい離が 小さくなる。K でなく H を重視したのは HST では H 観測が多いからである。



図5. WFPC2の UBVR システムでの結果。

 UBVRIH 全てを使った時の安定性 



 図6では観測誤差が大きくなった時の解の安定性を調べた。誤差が大きくなると、 年齢を少し若く見積もり、それを保証するため赤化を強める傾向がある。しかし、 その影響は小さい。

 図7では、減光量が変わっても得られる解にはあまり影響しないことが示されて いる。例外は最も古い星団の年齢である。

 図8では、メタル量を変えた時に解の精度が変わらないことを示している。




図6.観測エラーが 0.0 から 0.3 まで変わった時の結果精度。

図7.減光量を E(B-V) = 0.0 から 0.3 まで変えた場合の精度。


図8.メタル量が [Fe/H] = -1.7 から +0.4 まで変えた時の精度。

 4 フィルターを使った時の安定性 

 最低数4個のフィルターでは精度はどうなるだろう。図9では推奨セット UBIH で観測エラーの影響を試した結果が載っている。 10 Gyr 星団の年齢を 1 Gyr ヘと 非常に若く見積もる結果となった。

 図10では E(B-V) 入力を変えた時にどう再現するかを見た。10 Gyr 星団の成績が 悪い。他は UBVRIJH とそう変わらない。

 図11.は入力メタル量を変えた時の再現性を示す。今回も 10 Gyr 星団の 成績が悪い。

 古い星団の成績が悪いのは、年齢とメタル量が縮退しているからである。

 4バンド UBIH の結果は 6 バンド UBVRIH の結果とそう変わらない。


図9.観測エラーの影響。

図10. E(B-V) の再現性。


図11.メタル量の再現性。

  幾つかの量が既知の場合  

 図12にはメタル量が太陽と判っている場合の推定である。明らかに精度は グンとよくなっている。 U, B バンドの重要性はこの場合でも変わらない。 古い星団では年齢と赤化の縮退のため誤差分散が大きい。

 図13では、減光を規定してメタル量と年齢のみを変数とした時の解を 示す。中間値のズレは図2に比べて格段に小さい。特に注目すべきは古い星団 での縮退が解けて、解の精度が無拘束の場合より大きく向上したことである。 古い星団では一般に内部減光は無視できるほど小さいのでこの仮定は有効である。 U, B バンドの必要性は変わらない。特に若い星団の年齢に関しそうである。

 図14にはメタル量と赤化の双方が既知の場合を調べた。明らかに年齢の 決定は完全である。




図12.メタル量が太陽と判っている場合



図13.減光を規定してメタル量と年齢のみを変数とした


図14.メタル量と赤化の双方が既知の場合

 間違ったパラメター値を既知とした場合の結果 

 様々なメタル量の星団を、誤って Z = Zo と仮定して解析した場合の結果を 図15、16に示す。Zo を仮定すると、メタル量の低い星団ほど若く見積もって しまう。


図15.様々なメタル量の星団を、誤って Z = Zo と仮定して、UBVRIH で解析。


図16.様々なメタル量の星団を、誤って Z = Zo と仮定して UBIH で解析。
 様々な赤化の星団を、誤って E(B-V) = 0.1 と仮定して解析した場合の結果を 図17、18示す。


図17.様々な赤化の星団を、誤って E(B-V) = 0.1 と仮定して、UBIH で解析。


図18.様々な赤化の星団を、誤って E(B-V) = 0.1 と仮定して、UBVRIH で解析。

 4.結論 

表1.NIRが入る場合、最もよいバンドの組み合わせ。  

年齢 重要な
フィルター
良い組み合わせ 悪い組み合わせ

≤数Gyr U, B UBIH, UBVH BVIH, RIJH
≥数Gyr U,B,V BVIH, UBVI UVIH, UBIH

表2.NIRが入らない場合、最もよいバンドの組み合わせ。  

年齢 重要な
フィルター
良い組み合わせ 悪い組み合わせ

≤数Gyr U, B UBRI, UBVI BVRI, UVRU
≥数Gyr U,B,V UBVI UVRI, UBRI



  




図.



図.


図.







Schlegel et al. 1998 先頭へ