NGC 2345 は数個の青色超巨星と赤色超巨星と高い割合の Be 星を含む、若く、 低メタルの散開星団である。この星団の全面的な理解を目指し、ubvy 測光、 分光観測に Gaia DR2 を合わせて解析した。中心から 18.7±1.2 arcmin 内に新しい赤色超巨星と 145 の Be 星を同定した。 これから推定される星団質量は 5200 Mo である。 | 太陽からの距離は 2.5 ±0.2 kpc で、銀河中心距離は Rgc = 10.2±0.2 kpc である。 等時線フィットからの年齢は 56±13 Ma となり、超巨星質量を 6.5 Mo 付近に絞る。Be 星の割合は 10 % で高い。分光解析から星団の平均 νrad = 58.6±0.5 km/s, [Fe/H] = -0.28±0.07 である。元素組成は銀河系薄い円盤のそれに合う。 結論として NGC2345 は銀河中心距離の割に低メタルである。 |
Moffat 1974 NGC 2345 は (RA, Dec)2000 = (07h08m18s, -13°11'36"), (l, b) = (226°.58, -2°.31) にある、あまり研究されていない星団 である。Moffat 1974 は UBV 測光と分光から、最も明るいメンバーの 2つは A 型、5つが K 型であることを見出した。また、 E(B-V) = 0.46 - 1.16 まで星団内で変化することを見出した。彼は距離を 1.75 kpc, 最も早期 型メンバーが B4 であることから年齢 60 Ma とした。 その他の研究 Mathew et al 2008 はスリットレス分光から NGC2345 は散開星団中 Be 星の 割合が最も高いことを見出した。Carraro et al 2015 は UBVRI CCD 測光から 年齢 63 - 70 Ma としたが、距離は Miffat(1974) の倍 3 kpc とした。 Holanda et al 2019 は Moffat 1974 の赤色巨星5個の分光解析から [Fe/H] = -0.3 を出した。これは星団位置からの想定値より非常に低い。 |
若い星団プロジェクト 太陽メタルモデルでは M > 10 Mo が SN となり、この境界は低メタルや 連星では下がるとされている。その場合 SN の数はこれまでより倍増する可能性 がある。そこで我々は t = 30 - 100 Ma の星団を系統的に調べることにした。 AGB/RSG 分化を統計的に決められるよう、若くて大きな星団を選んだ。 Nugueruela, Alonso-Santiago, Tabernero (2017) 今回の論文は NGC6067, NGC3105 に次ぐ3番目の論文である。 観測内容 ここではストレームグレン測光と分光を行った。青い巨星の分光は初めてである。 解析結果は Gaia DR2 を用いて確認した。 |
![]() 表1.INT 撮像観測ログ 2.1.測光観測WFC/INT でストレームグレン ubvy 撮像を行った。カメラは 2kx4k CCD 4枚 で 34.2' 角をカバーする。観測は 2011 年に行われた。2.2.分光観測2010 - 2016 に NGC2345 の 76 星の分光観測を行った。2.3.アーカイブデータ2MASS で U フラグの経っていない良質データと Gaia DR2 を使用。 |
![]() 表2.Be 星のスペクトル型と星団中心からの距離。 |
3.1.スペクトル型3.1.1.青い星青い星のスペクトルから、主系列ターンオフのスペクトル型を決めた。 スペクトル分類は Jaschek, Jaxchek 1987 と Gray, Corbally 2009 に従った。 A2 - A3 の A 型超巨星では CaII K 線が強い、バルマー線プロファイルは 光度が高いほどそのウィングが細くなるので、光度基準になる。 FeII 4233, FeII/TiII 4172 - 4178, SiII 4128-30 は超巨星で強い。B 型星に関しては、晩期になっていくと MgII4481/HeI4471 の比が上がる。 サンプル星は B3 - B4 である。この領域では、SiII4128-30/SiIII4553, SiII4128-30/HeI4121, NII3995/HeI4009, HeI4128/HeI4144 である。 最も早期型の星は B3V であった。 3.1.2.Be 星17 個の Be 星が同定された。その大部分は中心部 d < 5' にある。 表2には今回見つかった Be 星を示す。図4にはいくつかのスペクトルを 示す。3.1.3.赤い星7つの赤い星の高分散スペクトルと、前景星4つの低分散スペクトルを撮った。 分類には CaII 3重線付近の 8480 - 8750 A 領域を用いた。3重線は晩期型 になるにつれ弱まり、また低光度で弱くなる。その他に、 FeI 8514, 8621, 8688 A, TiII 8518 は晩期型ほど強まる。 TiII8518/FeI8514, TiII8734/MgI8736 も晩期に向かい増加するので有用である。図5には晩期型星のスペクトルを 示す。3.2.視線速度と回転速度 |
![]() 図4.NGC2345 Be 星の AAΩ スペクトル。マーク=バルマー線。 ただし S1009 はメンバーでない。 |
![]() 図7.メンバー星候補の [c1]/[m1] 図。黒線= Perry et al 1987 による B 型星の標準的関係。破線= B 型星。実線= A 型星。点線= F 型星。 ![]() 図8.メンバー候補星の V/c1 図 |
![]() 図9.Gaia による G/(GBP-GRP) 図。Gaia により 距離が NGC2345 に近い星を選んだ。測光から B メンバーらしいとされた 星は赤丸で示す。 |
![]() 図10.メンバー星らしい青い星の Mv/c1 図。 赤丸=分光した星。青丸=測光から選んだ早期型メンバー。黒線= Perry et al 1987 の標準線。 ![]() 図11.緑点= NGC 2345 領域内全星の V/(b-y) 図。灰色点=B 型星と思われ る。赤丸=分光観測ありの REG。シアン丸= A 型超巨星。青丸=青い星。 マゼンタ丸=Be 星。 |
![]() 図13.Gaia DR2 から選んだメンバー星の投影密度分布。赤丸=測定値。 青線=キングプロファイル。 |
![]() 表5.青い星で決めた元素組成。 |
![]() 図14.図12と同じ CMD であるが、オレンジ丸=セファイドと赤丸= 恐らく新発見の赤色超巨星、に焦点を当てた。 |
![]() 図15.メンバー星の Kiel 図。色とシンボルは図7と同じ。 黒線= PARSEC 等時線。 |
![]() 図16.銀河系における鉄存在比の勾配 Genovali et al 2013, 2014. 黒線=平均勾配 -0.06 dex/kpc. 緑十字=本論文のセファイド。 黒点=文献からのセファイド。マゼンタ三角=若い(< 500 Ma)散開星団 Netopil et al 2016。青丸=NGC 2345, NGC 6067, NGC 3105. 銀河系の 値は Genovali et al 2014 の Ro = 7.95 kpc, A(Fe) = 7.50 に準拠。 ![]() 表12.NGC 2345 内の 5 赤色巨星の Li 組成。 |
![]() 図17.[Si/H] - [Fe/H] 関係。星団内で組成が一様であることを示す。. ![]() 図19.Li 6707 付近のスペクトル。S50 = Li 巨星。S43 = Li 正常巨星。 |
星団パラメター NGC 2345 をこれまでになく深く調べた。得られた E(B-V) = 0.66±0.13, 距離 D = 2/5±0.2 kpc, 年齢 τ = 56±13 Ma は以前の研究 と合う。ただ、以前の研究と違い低メタル量でフィットしたので、少し若く なった。青い星の数から星団質量は 5200 Mo となる。星団には6つの赤色 (超)巨星がある。その初期質量は 6.5 Mo である。その一つ S1000 = IRAS 07055-1302 はこの研究で初めて同定された。星団ハローと思われる遠方に位置する TYC5402-1851 と TYC 5406-1302 は視差が星団と同じで、CMD 上の位置も 星団メンバーとして矛盾しない。 メタル量 NGC 2345 は NGC 3105 と似て、 Rgc = 10.2±0.2 kpc と銀河系周辺部 にあるが、メタル量 [Fe/H] = -0.28±0.07 は LMC と同程度である。 おそらく、これが高い Be 星の割合 > 10 % を説明するのだろう。 |
元素比 Li, O, Na, α 元素=Mg, Si, Ca, Ti, Fe グループ= Ni, s-元素= Rb, Y, Ba の存在比は銀河系薄い円盤の全体的な傾向に 一致する。メンバー中最も低温の S50 は A(Li) = 2.11 でリチウムリッチ 星である。 AGB/SN 区分 銀河円盤の星団のメタル量の差は星団年齢の推定に影響する。したがって、 その進化先端星の質量を研究する際にはメタル量を考えなくてはいけない。 それが中間質量星(AGB 星)と大質量星 (SN) の区分質量の決定に 重要である。 |
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