Chemical Equilibrium in AGB Atmospheres: Successes, Failures, and Prospects for Small Molecules, Clusters, and Condensates


Agundez, Martinez, de Andre, Cernicharo, Martin-Gago
2020 AA 448, ArXiv 2004.00519v2




 アブストラクト 

 M-, S-, C-AGB 星大気の化学平衡を計算した。一般的に、化学平衡の結果は 星周外層中の組成観測結果をよく説明する。しかし、平衡予測に比べ数桁も多く 観測される分子もある。例えば、M-型星では HCN, CS, NH3, SO2, S-型星で H2O, NH3, C-型星で H2O, NH3, SiH4, PH3 などで ある。
以前の研究と同じく、C-星大気で最初に現れる凝結物質は C, TiC, SiC であり、 O-リッチ流出流中では Al2O3 である。C ダストのガス 前駆分子はアセチレン C2H2 と C 原子、それに/または、 C3 である。
 SiC ダストの前駆分子は SiC2, Si2C である。TiC (タイタニウムカーバイド)ダストに関しては、大気内部で最も豊富 な原子 Ti が TiC ダストに対する主要供給源であろう。しかし、化学平衡計算は TiC 凝結が予想される領域では、原子 Ti の代わりに Ti8C12 や Ti13C22 のような タイタニウム・カーボンクラスターが Ti の貯留体となることを予想する。これは 大きな TixCy の集合が TiC ダストの最初の凝結核の 形成と関係することを示唆する。Al2O3 ダストに関し ては、原子 Al と Al-O 結合を含む AlOH, AiO, Al2O が最有望な ガス前駆体である。


 1. イントロダクション 

 2.化学平衡計算 


表1.元素組成  




図1.AGB 星の広がった大気の温度(上)と圧力(下)分布。黒破線=位相 0.0、 青破線=位相 0.5 の 1D モデル ( Bladh et al. 2019 の図1). 緑破線=ダスト輻射圧あり、青破線=ダスト輻射圧なしの3Dモデル。 (Freytag et al 2017) 黒点線=IRC+10216 のプロファイル (Agundez et al 2012). 下枠の細線=AGB 星の電波連続波(Reid, Menten 1997)、ミラの SiO と H2 (Wong et al 2016), CO (Kouri et al 2018), Mira, R Leo, W Hya, R Dor のサブミリ連続波 ALMA 観測 (Vlemmings et al 2019) マゼンタ太線=この論文で採用した AGB 大気構造線。  

 3.母分子:化学平衡の成功と失敗 




表2.観測で求まった主要分子種の H2 に対する組成(CO は除く)




図2.化学平衡組成の計算結果と四角=観測結果の比較。四角の位置は見やす さのため、異なる半径に置いた。塗りつぶし四角=計算結果との違いが大きい 分子種。斜線四角=かなりのズレ。




図3.S 型星大気での化学平衡組成の計算結果。斜線部は C/O = 0.98 から 1.02 に対応。計算はガスのみを考慮。




図4.CO に取り込まれていない C (左枠) と O(中枠)の割合。ガスのみの平衡 計算。右枠=SiO、 CO のどちらにも取り込まれていない O の割合。CO に取り 込まれなかった O の大部分は SiO に取り込まれる。

 4.検出可能性のある分子 


表3.AGB 大気中で検出の可能性がある分子。  

 5.固体凝結 


表4.AGB ダストの候補物質。



表5.M-星と C-星における元素ごとのダストの候補物質。





図5.ダスト出現の上横軸=温度と下横軸=半径。




図6.M-星(上枠)と C-星大気において出現が予想される固体凝結。縦軸= 可能な最大量。マゼンタ丸=検出された物質。 上横軸=温度と下横軸=半径。灰色帯= Ramstedt et al 2008 による ダスト /ガス比。

 6.ダストの前駆ガス分子 


図7.ダスト前駆体の可能性があるガス分子組成の半径による変化。左上= カーボンダスト前駆分子。右上=TiCダスト。左下= SiC 用。 右下= Al2O3 ダスト(M-星)。計算はガスのみを考慮。