(第5回目)銀河学校2002
開催期間:2002年3月25日-27日
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- 実習タイトル: 「多色撮像による諸天体の色分布の研究」
- 解 説: 宇宙には多くの天体が存在し、それぞれが様々な色で鮮やかに輝いています。単純に考えれば、青く見える天体は波長が短い光を強く放射していて、赤く見える天体は波長が長い光を強く放射していることになります。ある天体がどの波長の光を強く放射しているかは、分光観測を行ってスペクトル・データを調べればすぐにわかります(銀河学校2001参照)。しかし分光観測でなくとも、様々な波長帯での撮像観測を行なうことによって、少し大雑把ですが同様の議論を行なうことが可能になります。
そして何よりも、ある天体がどの波長帯の光を強く放射しているか、という理由は天体によってそれぞれ異なっているのです。
- 実 習: 実習では「105cmシュミット望遠鏡+可視光2K-CCDカメラ」を用いて散光星雲M42(オリオン大星雲)、散開星団M35、M81銀河群の多色撮像観測を行ないました。主な観測波長帯はBバンド(4400Å帯)、Vバンド(5500Å帯)、Rバンド(6600Å帯)、Iバンド(8000Å帯)です。
散光星雲M42はオリオン大星雲の呼び名で有名です。この分厚い雲の中では今でも多くの恒星が次々に生まれ出ています。3つのスペクトルのうち、特に左端のスペクトルは非常に青いことを示していますが、これは生まれたての恒星が発する紫外光によって水素ガスが電離され、強力な輝線放射が行なわれているため、と考えられます。
(図1:[a] M42のBVRバンドの疑似3色合成画像。[b] M42各領域における簡単なスペクトル。スペクトルの横軸は波長帯[左が青く、右が赤い]、縦軸は相対的な光の強さを表す。)
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M35はふたご座に存在する散開星団です。一般に散開星団は若い恒星の集団ですが、それに対して球状星団は古い恒星の集団です。この二つの星団に属する恒星に対してヘルツシュプルング・ラッセル図(略してHR図)と呼ばれる色-等級図を作ると、その概形は大きく違ったものになりました。この違いは、若い恒星の色が青く古い恒星の色が赤いということに起因しています。[ちなみに球状星団のデータはりょうけん座にあるM3のものです]
(図2:[a] 散開星団M35のRIバンドの疑似2色合成画像。[b] 散開星団M35の恒星の色-等級図。[c] 球状星団M3の恒星の色-等級図。色-等級図は横軸が色[左が青く、右が赤い]で、縦軸が相対的な等級[上が明るく、下が暗い]を表す。)
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系外銀河M81、M82は、これにさらにNGC3077を加えて一つの銀河群を形成しています。その形態からM81は渦巻銀河、M82は不規則銀河として分類されています。一般に渦巻銀河は中心部が赤く、外側が青い色を示します。これは渦巻銀河の外側ほどガスが多く、それを原料として次々と新しい恒星が生み出されるためです。この傾向はM81でも確認出来ました。またM82の色分布は、部分的に青くなったり赤くなったりしていて、非常に不規則です。暗い部分では特に物質の密度が高くなっていると考えられます。ここで青い光に比べて赤い光の方が透過力が強いことを考えると、M82では中心付近ほど色が赤く、中心部の物質密度が非常に高くなっていると考えられます。この銀河群に属する3つの銀河は互いに衝突していることが確認されており、M82の不規則な形態をつくる要因になったと考えられます。
(図3:[a] M81のBVRバンドの疑似3色合成画像。[b] M81の色分布図。横軸のゼロ点は銀河中心、縦軸は色[上が青く、下が赤い]を表す。)
(図4:[c] M82のBVRバンドの疑似3色合成画像。[d] M82の色-半径図。横軸のゼロ点は銀河中心、縦軸は色[上が青く、下が赤い]を表す。)
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2002/05/09 00:00 revised by Nishiura, S.