(第4回目)銀河学校2001


開催期間:2001年4月03日-05日
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  • 実習タイトル: 「対物プリズムを用いた天体の分光観測」

  • 解 説: 太陽からの光をプリズムに通すことによって、その光を虹の七色に分けることができます。これを「分光」といいます。分光は、波長によって屈折率が異なる、という光の性質を利用しています。そしてどの波長の光がどの程度強く放射されているかを調べることによって、天体の中でどのような物理現象が起こっているかを調べることが可能となります。

    また運動する物体から放射される光は、ドップラー効果によって、本来の波長からズレた波長で観測されることになります。したがってそのズレを測定することで、天体の運動状態を調べることもできます。

  • 実 習: 実習では「105cmシュミット望遠鏡+4度対物プリズム+可視光2K-CCDカメラ」を用いて超新星残骸M1(図1a,b)、惑星状星雲M57(図2a,b)、クエーサー3C273(図3a,b)の分光観測を行ないました。

    超新星残骸M1は牡牛座にあります。平安時代の貴族藤原定家が書いた「明月記」の中には、1054年にM1の元になった超新星爆発の記録が記されています。超新星はその発現過程の違いからI型とII型に分類できます。M1のスペクトルを調べることによって、M1の元になった超新星爆発がどちらのタイプであるかを調べることができます。

    (図1:[a] M1の分光スペクトル。[b] 波長ごとの強度で表したM1のスペクトル。)
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    惑星状星雲M57はこと座に存在します。太陽の8倍よりも小さい質量の恒星は、進化が進むと、自らのガスを周辺に放出していきます。やがて中心には白色矮星が残り、周りに吹き散らされたガスは中心星からのエネルギーを受けて輝き出します。これが惑星状星雲と呼ばれる天体の正体です。惑星状星雲からの光のほとんどは、鋭いスペクトル線によるものであることがよくわかります。

    (図2:[a] M57の分光スペクトル。[b] 波長ごとの強度で表したM57のスペクトル。)
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    前述した超新星残骸や惑星状星雲は、太陽系と同じく「天の川銀河」の内側に存在する天体です。クエーサーはそれ自体が、「天の川銀河」と同じような数千億個の恒星からなる銀河です。しかしその中心部分からのエネルギー放射は凄まじく、クエーサーの中心部には太陽質量の数千万倍から数億倍という超巨大ブラックホールが鎮座していると考えられています。3C273は乙女座にある最も我々に近いクエーサーです。

    現在の宇宙論によれば宇宙はどこでも均等に膨張しているため、互いに遠くの銀河ほどより早い速度で遠ざかっているように観測されます。そこで天の川銀河の外に存在する系外天体までの距離は、それがどの程度の速度で我々から遠ざかっているかを観測することによって見積もることができます。水素のバルマー系列の線スペクトルの波長のズレを調べることが一般的です。

    (図1:[a] 3C273の分光スペクトル。[b] 波長ごとの強度で表した3C273のスペクトル。)
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2001/12/28 18:28 revised by Nishiura, S.