TAO安全規則
 Japanese / English Last modified 2017/10/30

本安全規則は、TAO計画関連の作業を現地で行う際の 安全を確保することを目的とする。 現地でTAO計画関連の作業、調査を行う全ての者 (学生や直接雇用関係にある業者を含む) に適用される。

目次

 第1章 用語の定義
 第2章 渡航前
 第3章 車の運転
 第4章 サンペドロ(カラマ)滞在中
 第5章 サイト滞在中
 第6章 高山病
 第7章 緊急時
 参考

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第1章 用語の定義

  1. チャナントールサイトとは、TAO建設予定地のチャナントール山領域(麓から山頂まで)をいう
  2. アタカマサイトとは、アタカマ高原とその周囲の標高5000m地帯をいう
  3. サイトとは、チャナントールサイトとアタカマサイトの総称をいう
  4. 現地とは、カラマからサンペドロ、サイトまで含めた全領域をいう
定義された用語 場所
現地 サイト チャナントールサイト チャナントール山の麓から山頂まで(標高約5000〜5600m)
アタカマサイト アタカマ高原(標高5000m地帯)
カラマ・サンペドロ間(標高約2500m)
サンペドロ市街(標高約2500m)
サンペドロ・アタカマ高原間
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第2章 渡航前

  1. 現地へ行く人は、渡航前に必ず「TAO安全講習会」を受けること(講習会の開催は、安全管理者から通知される。)
  2. サイトで作業する人は、事前に健康診断を受診すること(定期健康診断で可)
  3. 各自で東京海上日動の海外旅行保険に加入しておくこと
  4. 現地での移動手段として、四輪駆動車(レンタカー)を手配しておくこと
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第3章 車の運転

  1. 現地での移動手段には、四輪駆動車を利用すること
  2. 各車両には下記を備えておくこと
    1. 燃料の残量1/2以上(必要に応じて、予備の燃料タンク)
    2. スペアタイヤ2本以上
    3. トランシーバ
    上記以外に、下記も用意するのが望ましい
       チェーン、地図、GPS、食料、懐中電灯、牽引ロープ、スコップ、救急箱、消火器、非常灯、フロントガラススクレーパー、発煙筒、
       ろうそく・マッチ・ライター、タイヤの空気圧力計、警笛、日焼け止めクリーム、サングラス、ヘルメット、革手袋
  3. サイトへは2台以上の車で移動すること。各車には2名以上乗車すること。但し、リモート観測時の緊急事態の場合は別に規程する(以下6節)。
      ただし下記の条件を全て満たす場合のみ、一台での移動を認める
    1. 天候が良く、安定している
    2. 未舗装路の移動が日中である
    3. 移動の目的地がASTEあるいはALMA調査用コンテナで、通常通りの道路を使用する
    4. 移動路にチャナントールサイトが含まれていない
    5. 往路の場合、2台以上の車からなるグループが先に上がっている
    6. 復路の場合、2台以上の車からなるグループが残っている
    7. 1台で移動することについて当事者間の合意が得られており、合流後速やかに安否を確認できる
    8. サイトの状況をよく理解したものが含まれている
  4. 夜間は、許可がない限り車を運転してはならない
  5. 往路、復路では休憩をとること
  6. リモート観測時対応
    1. リモート観測時あるいは観測終了時に望遠鏡やドームに不具合が生じた場合(特にドームスリットが閉じない場合を想定)、サイトへの移動は2台以上、3名以上での登頂を認める。
    2. 運転者は、登頂の前日前半夜までに作業(観測)を終えた者とする。同乗者はその限りではない。
    3. サイトへの移動は、午前6時(観測終了)以降とする。
    4. サイトへの道に積雪・落石等がなく、山頂へのアクセスが可能であること。
  7. TAOスタッフのみが車の運転を行うこと。ただし、夜間のホテル間の移動など、サンペドロ市内の移動は、院生や外部の人も禁止しない(運転技術も含めて個別に判断する)。
  8. その他の注意事項
    1. スタックした場合には、レンタカー会社に連絡を取り対応を依頼すること。
    2. 現地は国境に近いので、トラブルを避けるため、できるだけ既設道路外へ進入しないこと。
    3. 未舗装路では轍の上を走行し、車間距離を十分とること
    4. 制限速度は、舗装路では100km/h(日没後は90km/h)、未舗装路では40km/hとする。ただしALMAサイトを通行する際にはALMAの制限速度に従うこと。
    5. 同乗者全員がシートベルトを着用すること
    6. 安全のため、ライトをつけて運転すること
    7. 坂道では、上りの車は下りの車より優先する
    8. 特に標記が無い限り、重機が優先して通行する
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第4章 サンペドロ(カラマ)滞在中

  1. チリに到着した際には、カラマあるいはサンペドロにて半日以上作業を一切行わず休養すること(サイトの下見なども禁止)
  2. サイトでの作業前に、標高2500m程度のサンペドロやカラマなどで一泊以上すること。初めての人は第5章も参照のこと。
  3. サイトへは下記を携帯すること
    1. トランシーバ
    2. 飲料水
    3. 酸素ボンベ
    4. 血中酸素濃度計
    5. 暖かい衣服や毛布
  4. サイトへの出発前に下記の症状が見られる場合、出発を中止すること
    高山病の症状(第6章)、風邪などによる発熱、 血圧が高い、睡眠不足、空腹、止血を要する外傷、極度の不安感
  5. サイトの天気情報を確認しておくこと
  6. 満16歳未満、妊婦、心臓等に重大な疾患のある人はサイトへの訪問を禁止する
  7. 事件に巻き込まれるのを防ぐため、夜間、外での単独行動は禁止する
  8. 野良犬を含め野生動物に接触しないこと
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第5章 サイト滞在中

  1. サイトでは、必ず2人以上で行動すること
  2. チャナントール山頂では、必ず酸素吸入して作業すること
  3. サイトでは下記を禁止する
    1. 睡眠
    2. 飲酒
    3. 過度の喫煙(観測制御施設内は禁煙)
    4. 目、皮膚を長時間日光にさらすこと
    5. 事前の許可なく、サイト内から物(草、石も含む)を持ち出すこと
    6. 道路の外に出ること(がけ崩れや地雷があるかもしれない)
  4. 山頂に滞在できる時間を下記表のように定める。
    山頂訪問が初めての人は第5節を、見学者等の場合は第6節を参照のこと。

    山頂滞在時間の上限 備考
    山頂滞在1日目 4 時間 初めての人は第5節を参照のこと
    山頂滞在2日目〜 9時間 万が一9時間を超過した場合は、事後報告で良いのでレポートに報告する

  5. 山頂訪問が初めての人は下記を守ること。
    • 初めての人は、カラマ到着翌日以降、山頂訪問前に標高2500m程度のサンペドロあるいはカラマ等に原則として丸一日以上滞在すること。
    • 初めての人は、山頂滞在初日に作業を一切行わないこと。山頂への移動および山頂滞在中、高山病チェックシート(Excel/PDF)に基づき体調の把握に努めること。
    • ただし初めての人でも、同時期に標高5000m以上に2時間以上滞在し、高山病に問題がみられなかった場合には、山頂滞在初日に4時間作業して良い。

    レベル1アタカマ到着翌日に丸一日標高2500mに滞在した人翌日、山頂に4時間滞在可能に(作業禁止、高山病チェック) →レベル2へ
    レベル1.5レベル1の翌日以降、山頂には滞在しなかったものの、標高5000m以上に2時間以上滞在し、問題なかった人翌日、山頂に4時間滞在可能(作業してOK) →レベル2へ
    レベル2山頂訪問1日目に山頂に滞在(4時間以下)し、問題なかった人翌日、山頂に9時間滞在可能に →レベル3へ
    レベル3山頂訪問2日目に山頂に滞在(9時間以下)し、問題なかった人翌日以降も山頂滞在上限は9時間。次回の渡航から初日から4時間作業可能に

  6. 見学者の訪問の場合、山頂に滞在できる時間を下記表のように定める。
    見学者の訪問等の場合、標高2500mに丸一日滞在すること無く、2時間まで山頂滞在可能とする(チリ政府や他プロジェクトの方の見学訪問等を想定)。

    山頂滞在時間の上限 備考
    山頂滞在1日目 2時間
    山頂滞在2日目 4時間
    山頂滞在3日目〜 9時間 万が一9時間を超過した場合は、事後報告で良いのでレポートに報告する

  7. 山頂滞在可能時間フローチャート (下記画像をクリックするとPDFが開きます)
  8. サイトでの作業は7日以上連続して行わず、週に一日は休養すること
  9. サイトを訪れる予定の期間中は、天文センター三鷹と毎日連絡を取ること
    メールで、作業した内容や以後の予定について報告すること(サイト訪問を取りやめた場合にも連絡すること)。
  10. ALMAサイトを通行する際にはALMAの安全規則に従うこと
  11. その他の注意事項
    1. サイトの天気は変わりやすいため、常に天気の変化に気をつけること →第7章
    2. 火を使用する際には、出火しないよう注意すること(観測制御施設内は禁煙) →第7章
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第6章 高山病

  1. メンバーはお互いの体調を把握し、必要に応じて休息や下山などの措置を取ること。
    高山病の症状が出たら、必ずメンバーに申し出ること(症状が軽くても)。

    高山病3疾患 症状 対応
    軽症 山酔い(急性高山病)
    (AMS: Acute Mountain Sickness)
    1. 頭痛
    2. 軽いふらつき感、立ちくらみ、めまい
    3. 運動時の息切れ
    4. 胸の圧迫感
    5. 食欲低下
    6. 睡眠障害(寝付きが悪い、熟睡できない、何度も目覚める)
    その他の症状:
    倦怠感・意欲減退、寒気・眠気、耳鳴り、手足のしびれ、脈拍増加、 物忘れ、尿量減少、咳、吐き気・嘔吐、発熱、下痢、顔・手・足のむくみ など
    軽症:
    それ以上高度を上げず、安静にする
    (場合に応じて、頭痛薬の服用)

    中程度〜重症:
    速やかに低地に移動させる
    (場合に応じて、酸素投与などの応急処置)
    重症 高所肺浮腫(肺水腫)
    (HAPE: High-Altitude Pulmonary Edema)
    まず行動時の息切れが激しくなり、次第に安静時にも息切れがひどくなる。 数分間安静にして、息切れが治るかどうかで診断する。
    AMSの症状が現れていなかった人でも、突然発症する場合がある。 急速に悪化し、数時間以内に死亡することもある。

    その他の症状:
    空咳、皮膚・唇・爪が青くなる(チアノーゼ)、 全身脱力感・歩行困難、血たん、呼吸時の異常音、錯乱 など
    速やかに低地に移動させる
    (場合に応じて、酸素投与などの応急処置)
    高所脳浮腫
    (HACE: High-Altitude Cerebral Edema)
    AMSの症状が重くなったもの。 直線上を、かかと・つま先・かかと・つま先と交互に接触させて歩けるかどうかで診断する。 数時間以内に死亡することがある。

    その他の症状: 運動障害、錯乱、幻覚 など

  2. サイトでは激しい肉体労働や危険な作業を行わず、必要に応じて重機を手配すること
  3. 高山病の予防法
    1. 水分を沢山摂り、尿を出す
    2. 意識的に深い呼吸をする (有圧呼吸法:大きく息を吸い込み2秒ほど息を止め、胸に圧力をかけるように力を入れる。その後ゆっくり息を吐き出す。)
    3. ゆっくり行動する
    4. 血中酸素濃度を把握する
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第7章 緊急時

  1. 何か問題が起きた場合
    速やかに本部に連絡を取り指示を仰ぐこと。 必要に応じて、緊急電話番号に電話すること。必要に応じて、ALMAに連絡を取ること。

    電話番号トランシーバ
    東京海上日動、チリ サポートデスク 1230-020-2474
    Calama 総合病院 Clinica el Loa 55-2424-801
    San Pedro Urgencia (First aid station) 131 or
    (55)-2851-010
    Carabineros (Police) 133 or
    (55)-2755-283
    Bomberos (Fire Brigade) (55)-2851-074
    Emergencia Cespa (Electricity) 7-6685-185 (mobile)
    7-8784-038(mobile)
    ALMA OSF First aid station (55)-2467-6400 Channel 1 at OSF
    3 from Chajnantor
    AOS First aid station (55)-2467-6532 Channel 3 from Chajnantor
    EMERGENCY (55)-2467-6555 Channel 1 at OSF
    3 from Chajnantor
    Safety Officer on Duty (55)-2467-6409
    (55)-2467-6438
    (55)-2467-6512
    (55)-2467-6497
    Safety Manager (55)-2467-6531
    Security 2-755284
    Satellite Phones AOS
    881622412016

    Safety Officer
    881622412017

    Safety Manager
    881622427616
    ※ 携帯電話からかける場合、冒頭に 0 をつけること (131, 133 は除く)

  2. 火災が発生した場合
    1. 観測制御施設内の消火器で初期消火を試みる
    2. 消火できなければ安全な場所に避難し、消防隊や救急車を呼ぶ(トランシーバは、常に通話可能な状態にしておくこと)
  3. 雷にあった場合
    雷が近づいたら、速やかにサイトから避難すること。間に合わない場合は、建物や車の中に避難する。
  4. サイトの天気が悪化しそうになったら、すぐ下山すること
    天気の回復を待つために、サイトに滞在してはならない。
  5. 病気、怪我の場合
    東京海上日動のチリ サポートデスクに電話で相談の上、カラマの総合病院 Clinica el Loa に行くなど対応すること。
    野良犬に噛まれた場合、噛まれた当日のうちに必ずワクチン接種すること。
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参考

本安全規則は、ALMA、APEX、すばる望遠鏡の安全規則等を参考にして作成されている。