CISCO スリットユニット不調の原因と修理結果報告


1. 現象

1.1 発症

2004年1月11日の観測時にCISCOのX軸スリットが細く閉じなくなった。SSのあおけん氏から来た連絡のメールは以下の通り。
To: kmotohara@ioa.s.u-tokyo.ac.jp (Kentaro Motohara),
   iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp
Subject: CISCO's Slit
CC: kaoki@naoj.org
Date: Mon, 12 Jan 2004 16:59:12 JST
From: Kentaro Aoki 

本原様、岩室様、
青木です。

ハワイ時間1月11日のCISCOでの分光観測を始めようとしたところ、CISCOのスリットが
細く閉まらなくなりました。
messiaを立ち上げ直したり、モータドライバの電源OFF/ONをしても状況は変わりませんで
した。
まったく、動かないわけではなく、SLITX=10よりXを小さくしても
画像で見る限り、閉まらないというものです。
広げる方も、SLITX=135にしても、全開にならなくなりました。
幅が800-900pix で止ってしまいます。
SLITX=50でスリット幅が749 pix
SLITX=10で420pix
SLITX=0.1でも420 pix
でした。
私の感想では原点がずれてしまっているという印象です。

ハワイ時間12日に直したいと思いますので、また、お電話します。

1.2 目視チェック

2004/1/27にナスミス台上でCISCOのデュワーを開き、駆動チェックを行った。
どうやらスリットユニット内部で何かがかんでいるよう。スリットユニットを取り外し、内部をチェックすることにした。
CISCOのスリットユニットはIRラボが製作/調整して送ってきたときの状態のままこれまで使ってきており、 我々も取り外すのは初めての経験だった。

2. 原因

2.1 破損状況

スリットユニットを開いたところ、以下のようになっている。
取り外したスリットユニット。
スリットユニット内部

X軸スリットのレールを見たところ、上写真で左側のレールが下のように壊れていることが判明した。
さらにスリット板を取り外し、レールを引っ張ったところ簡単に外れた。 内部からはレールの部品やベアリングに使われていたサファイアベアリングが 割れた破片が出てきた。
壊れたガイドレール。銅板が飛び出している。
バラバラになったレール。

2.2 レールの構造

回収されたレールの部品を下写真に示す。

このレールはIRラボの手作りの品のようで、以下のような構造になっている。
今回の破損は、 という順序で起こったものと考えられる。
正常なレール。

3. 修理

レールがIRラボ内製のため、交換部品がすぐに入手できる見込みはない。
使われていたサファイアベアリング22個のうち7個が無傷で残っていたので、 片側3個ずつだけ入れてレールを組み立て直した。
ただこれには信頼が置けない。 幸いにもY軸スリットの使用頻度は低く、こちらのレールが破損しても観測への 影響はほとんどない。そこで、下写真のようにY軸のレールの一方を 今回組み立て直したレールと交換してこの場はしのぐこととした。

Last Updated 2004/1/29
kmotohara@ioa.s.u-tokyo.ac.jp