H2O Masers Associated with IRAS Sources in Regions of Star Formation


Wouterloot, Walmsley
1986 AA 168, 237 - 247




 アブストラクト

 ボン 100-m 望遠鏡により、 分子雲中の IRAS 点源での H2O メーザー探査を行った。CO, OH マッピングデータをガイドに、オリオン L1630, L1641, ケフェウス分子雲の中にあり、S(12) < S(25) 天体を観測した。 その結果、ケフェウスで 11, オリオンで 2 個のメーザー源を発見した。 それらの メーザー源で OH 1665/1667 MHz 観測を実施したがゼロ検出であった。メーザー源 方向の H2CO 観測から、新たに見つかったメーザー源は分子雲に付随 すると結論した。  また、メーザー源に付随する FIR 天体は IRAS 二色図上で特定の領域を占めて いることを見出した。100/60 - 60/25 図上でそれらは黒体ラインの近くに現れる。 そのカラー温度は T100/60 = 45 K, T60/25 = 55 K, T25/12 = 130 K であった。 20 < LFIR < 106 Lo の間で H2O 光度は LFIR に比例する。この研究の 副産物として、オリオン、ケフェウス方向の IRAS 天体の光度関数は IMF から 期待されるそれと一致することが分かった。


 1.イントロダクション 



 H2O メーザーは FIR 源に付随する? 

 Jaffe et al 1981 は M17SW 分子雲の観測から、 50 - 100 % の H2O メーザーは FIR 天体に付随すると結論した。ただ、彼らは LFIR = 104 - 104 Lo のサンプルしか扱っていない。

 確かに。 

 IRAS カタログと既知の H2O メーザーを対比したところ、非常に混んだ 領域を除いて、全てで対応が付いた。そこで、 L1630 と L1641, ケフェウスの暗黒雲 内の 265 FIR 天体で H2O メーザーを観測した。

 2.観測 

 観測はボン 100-m 望遠鏡で行った。表1に結果を載せる。


表1.観測天体リスト


 3.観測天体の選択と観測結果 

 IRAS 点源と CO マップとの一致の条件 

 色々な制限を IRAS にかけて、L1641 の CO マップ (Kutner et al 1975) との相関 を調べた。その結果、 S12 < S25 < S60 か、 S25 < S60 (S12 が上限の時) がよいとなった。

 観測天体 

 観測天体は表1に載せた。メーザーが検出された天体の性質は表2に載せた。 赤外光度は 6 < λ < 400 μm の積分から得た。外挿 SED は放射率 が ν に比例と想定して得た。

 メーザースペクトル 

 メーザースペクトルは下の図1に示した。図1b には S152OH のスペクトルを 示す。

H2CO 観測 

 水メーザーが検出された天体方向で H2CO 観測を行った。結果を表3に 示す。
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表3.H2CO 観測 /b>



表2.検出天体の位置とラインの性質。


 メーザースペクトル 






図1b.S152OH のスペクトル。


 4.個々の天体(略) 

 5.IRAS と CO マップの関係 

 図2a, b オリオンの方ではIRAS 天体の位置と分子雲の相関は極めてよい。 ケフェウスは二つの雲が重なっている。 HIIR の大部分はペルセウス腕の 分子雲に属する。


図2b.L 1641 の分布。

図2a.L 1630 のメーザー源(目玉印)と非検出 IRAS 天体(バツ印)分布。 実線=分子雲の外郭。


図2c.ケフェウス。実線=ペルセウス腕中の分子雲の外郭。破線=前景の Cep OB3 分子雲。(Sargent 1977) 四角= HIIR 位置(Blitz et al 1982)





図3.丸=水メーザー検出 IRAS 天体。バツ=非検出。三角=12μm が上限(3a,3c) か 100μm 上限(3b, 3d). 各フレームの上と右の軸はκ∝ν のカラー温度。 3e と 3f は他観測で、バツ=水メーザー、四角=T Tau 星。

 6.IRAS 二色図上での水メーザーの位置 

 図3= IRAS 2色図

 図3a, b にはオリオン、図3c, d にはケフェウスでの水メーザーの IRAS 二色図上での位置をプロットした。

 水メーザーの位置 

 図3を見ると、水メーザーは長波長では低温、短波長では高温の位置に固まっている ことが分かる。

 他観測 

 図3e, f には他観測での水メーザーと T Tau 星(水メーザーはなし)の位置を プロットした。ただし、 OH/IR 星は除いた。それらは、 log(S25*12/S12*25)=[-0.1, 1.0], log(S60*25/S25*60)=[-1.0, -0.1] である。
( Rij の定義が間違っている。逆。)


 図3a, d を見ると、分子雲に含まれる IRAS 天体が二つに分かれることが分かる。

1.水メーザー検出天体、またはそれと似たカラー。
R12 = log(S25*12/S12*25)=[0.2, 0.8],
R23 = log(S60*25/S25*60)=[0, 1.3],
R34 = log(S100*60/S60*100)=[-0.3, 0.3]

2.T100/60 の低い天体は水メーザーが検出されない。それらは、 12 μm - 100 μm の間で、 νS(ν) が一定である。

この2グループの境界は、R34 = 0.261 + 0.227*R23

T Tau 星の2色図上の位置。 

  T Tau 星は、メーザー源の外側にある。図3f では高温側で等温線に近いところ を占めている。似た傾向が牡牛座暗黒雲に埋もれている低光度で NH3 放射を示す天体にも見られる。したがって、水メーザーと同じカラーを持つ低光度 天体が水メーザー非検出であるからという理由で T Tau 星であろうと推測するのは 間違っている。
 これらの水メーザー非検出天体は T Tau 星より厚い星周ダストをまとい、 T Tau 星の前段階にあるのであろう。従って、図3b, d 上での進化は右から左へである。 これは SED ピークが短波長側に移ることに対応する。

 モデル 

 グループ1(水メーザー的なカラー)はモデルスペクトルでよく近似される。 しかし、グループ2は未だである。





図4.FIR 光度の分布。影はメーザー検出かどうか。

 7.FIR 光度分布 

 図4に観測天体の LFIR 分布を示す。Genzl, Downes 1979 は 水メーザー光度と FIR 光度との間に関係があるとした。図5にその関係を プロットした。


図5.水メーザー光度と FIR 光度との関係。


 8.質量分布 

 Appenzeller 1980 の中間質量星(∼ 3 Mo) モデルによると、進化の かなりの期間中光度は一定である。そこで、FIR 光度を質量に変換して 質量分布を調べた。質量光度関係には表4にある ZAMS を使った。 結果を図6a, b に示す。グループ1の質量は広い範囲に及ぶが、グループ2 は小中質量 M < 5 Mo に集中していることがわかる。グループ1の 質量関数は Miller-Scalo IMF に驚くほど良く似ている
















図6a.ペルセウス腕天体の累積質量関数。十字=メーザー源。 丸=グループ1天体。三角=グループ2天体。四角=全天体。 バツ= Miller-Scalo 1979 IMF.

表4.ここで使われた質量光度関係。


図6b.オリオンと Cep OB3 雲の累積質量関数。


 9.結論 

メーザー探査 

 オリオンとケフェウス分子雲中の冷たい IRAS 天体を対象に H2O メーザー探査を行った。赤外カラーによる天体分別がメーザー源の検出には 有効であることが分かった。込んで不明瞭な領域を除き、全てのメーザーは IRAS 天体に付随していた。

 グループ 

グループ1
 T100/60=45 K. 水メーザー検出率=10 - 35 % で高い。
 時期を変えて観測すればほぼ全てはメーザーあり?

グループ2
 T100/60=25 K だが、 短波長ではグループ1より高温。
 メーザーは検出されず、分子雲の濃い部分に随伴しない。
 進化早期で、広がった低温外層と熱いコア?


 光度 

 メーザー検出率は FIR 光度大ほど高くなる。グループ2は低光度が多い。