ボン 100-m 望遠鏡により、 分子雲中の IRAS 点源での H2O メーザー探査を行った。CO, OH マッピングデータをガイドに、オリオン L1630, L1641, ケフェウス分子雲の中にあり、S(12) < S(25) 天体を観測した。 その結果、ケフェウスで 11, オリオンで 2 個のメーザー源を発見した。 それらの メーザー源で OH 1665/1667 MHz 観測を実施したがゼロ検出であった。メーザー源 方向の H2CO 観測から、新たに見つかったメーザー源は分子雲に付随 すると結論した。 | また、メーザー源に付随する FIR 天体は IRAS 二色図上で特定の領域を占めて いることを見出した。100/60 - 60/25 図上でそれらは黒体ラインの近くに現れる。 そのカラー温度は T100/60 = 45 K, T60/25 = 55 K, T25/12 = 130 K であった。 20 < LFIR < 106 Lo の間で H2O 光度は LFIR に比例する。この研究の 副産物として、オリオン、ケフェウス方向の IRAS 天体の光度関数は IMF から 期待されるそれと一致することが分かった。 |
1.イントロダクションH2O メーザーは FIR 源に付随する? Jaffe et al 1981 は M17SW 分子雲の観測から、 50 - 100 % の H2O メーザーは FIR 天体に付随すると結論した。ただ、彼らは LFIR = 104 - 104 Lo のサンプルしか扱っていない。 確かに。 IRAS カタログと既知の H2O メーザーを対比したところ、非常に混んだ 領域を除いて、全てで対応が付いた。そこで、 L1630 と L1641, ケフェウスの暗黒雲 内の 265 FIR 天体で H2O メーザーを観測した。 |
2.観測観測はボン 100-m 望遠鏡で行った。表1に結果を載せる。 |
IRAS 点源と CO マップとの一致の条件 色々な制限を IRAS にかけて、L1641 の CO マップ (Kutner et al 1975) との相関 を調べた。その結果、 S12 < S25 < S60 か、 S25 < S60 (S12 が上限の時) がよいとなった。 観測天体 観測天体は表1に載せた。メーザーが検出された天体の性質は表2に載せた。 赤外光度は 6 < λ < 400 μm の積分から得た。外挿 SED は放射率 が ν に比例と想定して得た。 メーザースペクトル メーザースペクトルは下の図1に示した。図1b には S152OH のスペクトルを 示す。 H2CO 観測 水メーザーが検出された天体方向で H2CO 観測を行った。結果を表3に 示す。 |
<![]() 表3.H2CO 観測 /b> |
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![]() ![]() 図1b.S152OH のスペクトル。 |
図2a, b オリオンの方ではIRAS 天体の位置と分子雲の相関は極めてよい。
ケフェウスは二つの雲が重なっている。 HIIR の大部分はペルセウス腕の
分子雲に属する。
![]() 図2b.L 1641 の分布。 |
![]() 図2a.L 1630 のメーザー源(目玉印)と非検出 IRAS 天体(バツ印)分布。 実線=分子雲の外郭。 ![]() 図2c.ケフェウス。実線=ペルセウス腕中の分子雲の外郭。破線=前景の Cep OB3 分子雲。(Sargent 1977) 四角= HIIR 位置(Blitz et al 1982) |
図3= IRAS 2色図 図3a, b にはオリオン、図3c, d にはケフェウスでの水メーザーの IRAS 二色図上での位置をプロットした。 水メーザーの位置 図3を見ると、水メーザーは長波長では低温、短波長では高温の位置に固まっている ことが分かる。 他観測 図3e, f には他観測での水メーザーと T Tau 星(水メーザーはなし)の位置を プロットした。ただし、 OH/IR 星は除いた。それらは、 log(S25*12/S12*25)=[-0.1, 1.0], log(S60*25/S25*60)=[-1.0, -0.1] である。 ( Rij の定義が間違っている。逆。) |
図3a, d を見ると、分子雲に含まれる IRAS 天体が二つに分かれることが分かる。 1.水メーザー検出天体、またはそれと似たカラー。 R12 = log(S25*12/S12*25)=[0.2, 0.8], R23 = log(S60*25/S25*60)=[0, 1.3], R34 = log(S100*60/S60*100)=[-0.3, 0.3] 2.T100/60 の低い天体は水メーザーが検出されない。それらは、 12 μm - 100 μm の間で、 νS(ν) が一定である。 この2グループの境界は、R34 = 0.261 + 0.227*R23 T Tau 星の2色図上の位置。 T Tau 星は、メーザー源の外側にある。図3f では高温側で等温線に近いところ を占めている。似た傾向が牡牛座暗黒雲に埋もれている低光度で NH3 放射を示す天体にも見られる。したがって、水メーザーと同じカラーを持つ低光度 天体が水メーザー非検出であるからという理由で T Tau 星であろうと推測するのは 間違っている。 これらの水メーザー非検出天体は T Tau 星より厚い星周ダストをまとい、 T Tau 星の前段階にあるのであろう。従って、図3b, d 上での進化は右から左へである。 これは SED ピークが短波長側に移ることに対応する。 モデル グループ1(水メーザー的なカラー)はモデルスペクトルでよく近似される。 しかし、グループ2は未だである。 |
図4に観測天体の LFIR 分布を示す。Genzl, Downes 1979 は 水メーザー光度と FIR 光度との間に関係があるとした。図5にその関係を プロットした。 |
![]() 図5.水メーザー光度と FIR 光度との関係。 |
Appenzeller 1980 の中間質量星(∼ 3 Mo) モデルによると、進化の
かなりの期間中光度は一定である。そこで、FIR 光度を質量に変換して
質量分布を調べた。質量光度関係には表4にある ZAMS を使った。
結果を図6a, b に示す。グループ1の質量は広い範囲に及ぶが、グループ2
は小中質量 M < 5 Mo に集中していることがわかる。グループ1の
質量関数は Miller-Scalo IMF に驚くほど良く似ている![]() 図6a.ペルセウス腕天体の累積質量関数。十字=メーザー源。 丸=グループ1天体。三角=グループ2天体。四角=全天体。 バツ= Miller-Scalo 1979 IMF. |
![]() 表4.ここで使われた質量光度関係。 ![]() 図6b.オリオンと Cep OB3 雲の累積質量関数。 |
メーザー探査 オリオンとケフェウス分子雲中の冷たい IRAS 天体を対象に H2O メーザー探査を行った。赤外カラーによる天体分別がメーザー源の検出には 有効であることが分かった。込んで不明瞭な領域を除き、全てのメーザーは IRAS 天体に付随していた。 グループ グループ1 T100/60=45 K. 水メーザー検出率=10 - 35 % で高い。 時期を変えて観測すればほぼ全てはメーザーあり? |
グループ2 T100/60=25 K だが、 短波長ではグループ1より高温。 メーザーは検出されず、分子雲の濃い部分に随伴しない。 進化早期で、広がった低温外層と熱いコア? 光度 メーザー検出率は FIR 光度大ほど高くなる。グループ2は低光度が多い。 |