円盤には当たり前な大きな超新星残骸


Weaver
1979 IAUS 84, 295 -





 l = 330° を中心とする観測事実とモデル 

 l = 330° を中心とするスカイ 
 l = 330° を中心に両側 80° に渡って伸びるアーチが HI で 観測される。このパターンは近傍星の可視偏光ベクトルの位置角にも表れる。 HI フィラメントと偏光ベクトルは互いによく揃っている。アーチの中心は (l, b) = (331°.3±1°.3, +14°.0±1°.4) である。フィラメントに付随する偏光を受けた星の距離から、この構造は 距離範囲にして 20 - 400 pc であると分かる。

 ループ I 
 ループ I は大きな SN シェルで、シンクロトロン放射で強く見える。 ループ I は HI アーチと重なっている。ループ I の縁は半径 55°.5、 中心 (l, b) = (336°.0, +24°.0) の球の投影として極めてよく 表現できる。アーチとループの中心位置の差は両者が有意に異なることを 示す。ループ I は HI フィラメントや可視偏光として観測される空間密度の 構造を作った原因ではないのである。

 Sco-Cen アソシエイション 
 Sco-Cen アソシエイションは HI フィラメントに重なっている。その中心は (l, b) = (330°, +15°) でフィラメント曲率中心に近い。 Sco-Cen は  170 pc 離れていて、35個以上の 10 - 20 Mo 星を含む。年齢は 1 - 2 × 107 yr である。このアソシエーションが HI フィラメントに 関与しているに違いない。
 バブルモデル 
 1 - 2 × 107 yr 前に Sco-Cen アソシエーションが形成 された。その周りには大量の星間物質が取り残されていた。それらは銀河系 微分回転の影響で糸状になり、磁場もその中に織り込まれた。
 アソシエーション内に生まれた多数の大質量星が強い星風を起こし、 SCo-Cen を中心とするバブルを生み出した。

 バブル距離 
 バブルの太陽側はそれの張る角度が 170° であることから推定すると 太陽に相当近い。

 ループ I 
 このモデルではループ I は Sco-Cen アソシエーションの星が作った超新星 爆発のシェルである。この爆発自体はバブル内部で起きた。爆発が広がる 媒質は熱く一様な低密度ガスであった。バブル内部は星風で掃き寄せられた 後だからである。このため超新星シェルは現在見られるように大きく球に近い 形を維持する。このシェルは今ちょうど HI バブルの内側表面と接触しようと しているところである。したがって、超新星シェルがバブルと相互作用して いる個所では高速成分、50 km/s 程度、のガスが見える。



 l = 130° を中心とする観測事実とモデル 

 速度擾乱 
 l = 130° を中心とする HI 低密度領域で目立つのは l = 60° - 220° で速度擾乱が大きいことである。この擾乱は 視線速度 -50 km/s から -60 km/s のシェル的な構造であることが 分かった。

 ループ II と III 
 ループ II と III は今述べた HI シェルに重なるシンクロトロン放射天体 である。これらループは z = 100, 200 pc の高さで爆発した超新星により 形成されたと考えられている。それらの近傍には星団もアソシエーションも 明るい早期型星もない。これら二つが銀河面の北と南でほぼ同時期に爆発した のは奇妙なことである。
 密度分布 
 太陽は低ガス密度の「穴」の中に位置する。この穴の性質は Hat Creek HI データを見るとよく分かる。ガス密度の極小領域が l = 130° - 140° にある。しかし、第2象限(l = 90° - 180°) で 距離 175 - 200 pc を越すと密度が急に上昇する。僅かな距離の間にガス密度は太陽近傍の一桁 上になる。局所星間空間のこの特徴は可視観測家にはよく知られていた。

  l = 130° 領域のモデル 
 負速度ガスは全体としては規則的で二つに裂けたシェルを作る。観測された 速度分布は二つの中心からの膨張(二つのSN、ループ II, III)では 説明できない。銀河面近くの単一の中心からの膨張が必要である。
 我々のモデルでは l = 130° 付近の銀河面上で単一の超新星爆発が 起こった。密度が銀河面で最も大きく上と下方向で薄いために二つに裂けた 構造が生じた。この単純なモデルでは爆発星は α Per アソシエーション に属していたと考えられる。