The Optical Gravitational Lensing Experiment. Cepheids in the LMC. IV.
Catalog of Cepheids from the LMC


Udalski, A., Soszynski, +5
1999 Acta Astr. 49, 223 - 317




 アブストラクト

カタログの内容 

 LMC 4.5 平方度内セファイド 1333 個のカタログを提示する。これらの星の総計 3.4 × 105 観測が OGLEII マイクロレンズィング探査から得ら れた。カタログには周期、BVI測光、位置、Iバンド変光フーリエ分解の R21, φ21 が載せられている。
セファイドの内訳 

 カタログの大部分は古典セファイドである。残りは種族IIセファイドと脈動様変光 を示す赤色星である。重なった領域での完全性テストの結果は検出率 96 % 以上で あった。セファイドを含む食連星の変光曲線を載せた。全データはインターネット から得られる。



 1.イントロ 

これまで 

 1997 年から OGLE のマゼラン雲 BVI 観測が始まった。2年間で良いデータが 溜まった。このシリーズでは SMC の二重モードセファイド Udalski et al 1999a, SMC 第二倍音モード13星の発見 Udalski et al 1999b, SMC, LMC の PLR, PLCR 解析 Udalski et al 1999c を報告した。今回はカタログの方向を行う。

カタログの内容 

 LMC セファイドカタログは 1333 星を含む。領域は 4.5 平方度である。大部分は 古典的セファイドで、いくらかの種族IIセファイド及びセファイドに似た光度 曲線を持つ赤色巨星が加わる。
二重モードセファイド 

 LMC で見つかった二重モードセファイドは加えていない。それらは SMC のと 一緒に別に論じた。

セファイドの統計 

 LMC セファイドの基本パラメターについても統計を取って示す。フーリエ分解 した係数も。食連星セファイドが3つありその重要性を指摘する。

データアクセス 

 ここでのデータは多くの目的に使える。そのためその公開をここに行ったのである。前データは WEBから取れる。



 2.観測 

観測概容 

 観測は ラスカンパナスの 1.3 m ワルシャワ望遠鏡に SITe 2K CCD (24 μm /ピクセル、または 0.417 arcsec/pixel)ドリフトスキャン で行われた。ここでは 1997 年1月 - 1999 年 6 月観測の結果を示す。バンドは 標準的 BVI が用いられた。主に I が使用された。有効露出時間は I, V, B で 125, 174, 237 秒である。


図1.DSS Sky Image に重ねたOGLE-II フィールド。点はセファイド。
観測回数 

 観測回数は I で 120 - 360, B,V で 15 - 40 回である。現時点で B 測光が少し 遅れている。画像は OGLE データパイプラインを通して処理した。


表1.観測領域中心の座標。



 3.セファイドの選択 

周期 

 変光星平均等級の限界は I = 19.5 等である。周期は AoV アルゴリズム (Schwarzenberg-Crerny 1989) で求めた。周期範囲は 0.1 - 100 日である。 周期精度は 7 10-5 P である。

選択 

 セファイド候補は光度曲線の眼視検査と色等級図上の位置 I < 18.5, 0.25 < (V-I) < 1.3 で選択した。大きな赤化でこの範囲の外に出た 天体やカラー情報
はないが光度曲線から明らかにセファイドである星は 選択に含めた。総計で 1500 以上のセファイド候補が見つかった。

重複領域内のセファイド 

  重複領域内のセファイドは両方の測定を独立に載せた。それによって、データの 精度を判断できる。それら 105 星に対してはクロスレファレンスを付けた。



 4.候補星の基本性質 

 4.1.光度平均等級 

平均等級の求め方 

 平均等級は等級から光度に直した変光曲線を5次までのフーリエ級数に 分解してその定数項を等級に戻して求めた。その精度は I バンドで 0.001 - 0.005 等、サンプル数の少ない B,V バンドで 0.01 等である。

ウェゼンハイト指数 

 8領域 LMC_SC1 - LMC_SC8 の星に対しては完全な BVI 測光データが得られている。 残りは B バンドが平均等級決定には不足である。次シーズンにはそれも終了する。 各天体に対し、減光フリーな ウェゼンハイト指数 (Wesenheit index)

        WI = I - 1.55 × (V-I)

を求めた。(Madore, Freedman 1991 PASP 103, 933) 係数 1.55 は Schlegel, Finkbeiner, Davis 1998 と同じ減光曲線から決められた。

 4.2.星間減光 



OB 星の代わりにレッドクランプを利用する 

 LMC 内の減光はデコボコしている。(Harris, Zaritsky, Thompson 1998 AJ 114 1933) 数百万の星の測光データが手元にあるので減光を様々な方向で決められる立場にある。 しかし、 U バンド測光値が欠けているため、若い OB 星を使って赤化を決めること が出来ない。代わりに、我々はレッドクランプ星を用いることにした。ただし、 恒星分布から言えばセファイドの減光決定には OB 星の方がレッドクランプ星より 適していることを注意しておく。ただ、 LMC はほぼ正対しているのでその差は小さい であろう。

レッドクランプの平均等級を減光指標にする 

 Udalski 1998a Acta Astron 48,113, 1998b Acta Astron 48,383 でレッドクランプ の平均 I 等級は年齢 2 - 10 Gyr ではほぼ一定で、僅かにメタル依存が存在する ことが示されている。今回フィールド環境は一様と 考えられ(Bica et al 1998)、後者の補正については重要でない。
一様なら年齢依存があってもよいのか?
こうして、レッドクランプの平均等級を減光の指標にした。Stanek 1996 ApJ 460 L37 は類似の方法でバーデの窓における減光マップを作成した。
バーまたは円盤の傾きを考えるとカラーを使用すべきでは?


2048 × 2048 ピクセル副領域での減光 

 84 視線方向の減光が決められた。まず 2048 × 8192 ピクセル領域を 4 つの ず 2048 × 2048 ピクセル副領域に分割した。(例えば y=1 - 1024 が  第1副領域とか)。次に各副領域内でレッドクランプ 星の平均 I 等級を定めた。そのやり方は Udalski et al 1998a Acta Astron 48, 1 と同じである。観測 I 等級の差は AI の差と看做す。E(B-V) = AI/1.96 (Schlegel et al 1998) で色超過に変換した。
副領域1,2,3,4のどっちが北か? 例えばの後の 文章からは第1が下(南)か?
以前の決定との比較 

 赤化マップのゼロ点は以前に決められた 3 方向での減光量に基づいた。
ゼロ点って何?ーー>減光ゼロの時の IRC
3 本の内 2 本は OB 星を使用している。それらは、NGC 1850 (E(B-V)=0.15±0.05, Lee 1995 UBV 測光に基づく), NGC 1835 (E(B-V)=0.13±0.03, Walker 1993 RR Lyr に基づく)、食連星 HV 2274 (Udalski et al 1998c OB 星に基づく) である。これらの値は全て我々のマップと 数0.001 等の範囲で一致した。

結果:48 減光測定 

 我々はチェックのため、今回の減光マップで減光補正したレッドクランプ星の I 等級を LMC ハローにあって減光がないと思われる星団中のレッドクランプと 比べた。結果は良い一致を示した。マップの誤差は 0.02 等くらいだろう。
比較からマップ誤差を出す方法が判らない。
表2には 84 方向の色超過 E(B-V) を載せた。減光量は Schlegel et al 1998 に 従い次の式で与えた。

         AB = 4.32 E(B-V)

         AV = 3.24 E(B-V)

         AI = 1.96 E(B-V)



表2.LMC 領域の色超過 E(B-V)





  表2をエクセルで色マップにした。左の分子雲領域はさすがに赤いが、それを 除くと、右側が暗く、左が青い。これはやはり円盤の勾配を表わしているのでは ないか?

この減光マップを使うと、円盤の傾きが消えてしまうから注意が必要である。





 4.3.天体位置 

 位置の精度は 0.15 arcsec で、DSS 座標系の系統誤差を考が 0.7 arcsec ある。

 4.4.光度曲線のフーリエ分解 

 各天体に I バンド光度曲線をフーリエ級数に分解し、R21 = A2/A1. φ21 = φ2 - 2 φ1 を求めた。ここに Ai, φi は (i-1) 次調和項の振幅と位相である。パラメター R21 と φ21 は脈動変光星の解析でしばしば用いられる量で、異なる脈動モードを区別 するのに有用である。例えば、殆ど完全なサインカーブで第一調和項の振幅が殆ど ない場合には R21 = 0 で φ21 は決まらない。

 4.5.分類 

周期光度関係 

 吸収不感性 WI と周期の関係に基づき、天体を基本振動 (FU)、第1 倍音振動 (FO)、 FO より明るい(BR)、FU より暗い(FA) に分けた。 FU と FO との分離は顕著である。


図2.LMC セファイドの吸収不感性 WI と周期の関係。境界線は 基本振動 (FU) と第1倍音振動 (FO) を区別している。小さい点がセファイド と分類された星で、大きい点はセファイドより明るい、または暗いのでセファイド ではない。
振幅比と位相差によるチェック 

それにも拘らず、我々は分類された天体を R21 対 log P, φ21 対 log P 関係で調べた。この図で FU と FO が分離することは Alcock et al 1999, Udalski et al 1999a などで良く知られている。図3上で FU, FO 系列は一般には良く分かれている。しかし、 R21 対 log P では 0.6 < log P < 0.8 領域、φ21 対 log P 関係では0.2 < log P < 0.4, 及び log P ≈ 0.75 で重なり合いが見られる。再チェックし た結果、8星では FU モードであったのに他の星と混ざってP−L図で FO 系列に 移っていた。逆に11 星は赤化や他の星の影響で FO 星が FU 星に分類されていた。


図3.R21 対 log P, φ21 対 log P 関係. 青丸は FO, 赤点は FU.



 5.LMC セファイドのカタログ 

二重モードセファイド の分離 

 第3章で述べた基準をクリアしたのは LMC で 1402 星であった。そのうち 二重モードセファイド 70 星は分離され、別論文で扱う。他は表3に示された。

カタログの内容 

 第1列=星の名前、第2列からは順に、RA, Dec, P, 最大光度日、 I, V, B, WI, E(B-V), R21, φ21, 脈動モードが載っている。カタログには重なり領域をまとめると 1333 星が 載っている。表4にはクロス同定が載っている。付録A-U には全セファイド の光度曲線を載せた。チャートはウェブサイトから取れる。既知セファイドとの 同定は時間がかかるのでやっていない。ただ第6章に述べるように検出はほぼ 完全と思われる。ただし、CCDのサチュレーションのため周期の長い方では log P ≈ 1.5 付近にリミットが掛かる。

表3.LMC セファイドカタログ



 6.カタログの完全性 

検出率 

 23の重複画像領域を利用して検出度を調べた。重複域に 217 セファイドが 存在した。内 210 天体は共に検出された。したがって検出率は 96.8 % で ある。しかし、幾つかの星はポインティングの揺れの結果観測数が少なくて 変光星の規定の 50 観測を満たさなかったために排除されていた。たの場合には 振幅が小さいため食連星にされていた。
パイプラインの検出率 

 今述べた完全性テストは OGLE データパイプラインによる検出の完全度を 考慮していない。そのようなテストは行われていないが、SMC での似た程度の 混み具合の場所ではセファイドくらい明るい星では検出度は 99 % を越える。 したがって、全体としては我々のカタログの完全度は 96 % より大きいだろう。



 7.議論 

セファイド位置の特徴 

 図1でセファイドの分布を見ると一様でないことに気づく。多くが南東側、 領域番号 16, 17, 18 に集中している。表5にはLMC 領域毎の I = 17.5 より 明るいセファイド数を載せた。注意しておくが、セファイドの多くが星団付近で 見つかっている。それらが星団メンバーである可能性は高いが確認はされていない。 次の論文では星団メンバーセファイドのリストを公開する。


表5.LMC 領域毎のセファイド数




色等級図 

 P-L 及び P-L-C 関係は Udalski et al 1999c で研究した。図4には領域2内の 2副領域に E(B-V)=0.120 の赤化補正を施した CMD を示す。大きい丸はこの副 領域内のセファイド、抜け丸は他領域のセファイドである。

図4.LMC 領域2内の2副領域のCMD。小点は全体の 20% をプロットした。 青は FO, 赤は FU セファイド。抜け丸はFA(青)BR(赤)セファイド。



BR 天体の性質 

 BR, FA 天体の色等級図、周期ーWI 関係図上の位置から これら天体の性質は以下の通りと考える。BR 天体は分解できない他の星の混入が 原因で光度が上がり、光度曲線に変化が生じた古典的セファイドである。SMC の 場合と違い、それらの中に第2倍音振動の星はまだ見つかっていない。

FA 天体の性質  

FA 天体には二つのグループが存在する。図2を見ると一つは古典的セファイドの 2等暗い下にある種族IIセファイドで明瞭な系列を成している。もう一つは 0.8 < log P < 1.8, WI ≈ 15.9 にある塊りで赤色巨星 だが、はっきりした系列は成していない。 変光曲線は似ているが、脈動が原因 ではないのかも知れない。幾つかは LMC 前面にあって距離指標が 1 - 1.5 小さい RR Lyr 星かも知れない。

V-I 分布 

 図5は FU, FO セファイドの V-I 分布である。(V-I)oの平均値と分散は



図5.LMC シングルモードセファイドの (V-I)o 分布。ビンは 0.03 等巾。
FU で (0.604, 0.08), FO で (0.509, 0.08) である。V-I 分布の形はガウシアン で良く近似されるが赤い方に超過がある。これは一部は平均より大きな赤化を 受けたセファイドのためである。これは図4のレッドクランプでもその形が赤化 の方向に引き延ばされている点に現れている。もう一つの理由は不安定帯が 明るく赤いほうに曲がっているためである。

周期分布 

図6は LMC FU, FO セファイドの周期分布である。FU の典型的周期は 3.2 日、 FO の典型的周期は 2.1 日である。FU モードの分布は長い方にテールを引いている。 逆に 2.3 日より短い方は殆ど存在しない。FO モードの最長周期は 6.4 日で、 最短周期は 0.4 日である。

メタル量は LMC で [Fe/H] = -0.3, SMC で [Fe/H] = -0.7 (Luck et al 1998) であるが、この差が変光曲線をフーリエ分解した時にその成分の分布の差となって 現れる。その解析はセファイド変光曲線のメタル量依存性を明らかにするだろう。



図6.LMC シングルモードセファイドの周期分布。



食連星セファイド 

 3つの食連星セファイドが知られている。内最初の2つは既に MACHO グループ が発見していた。これらは星の半径と質量を知る上で貴重なサンプルである。 LMC_SC7 239698 は種族 II セファイドである。LMC_SC21 40876 は FU, LMC_SC16 119952 は FO である。

食連星セファイドの変光曲線 

 図7には変光曲線を示した。左側はセファイド周期に合わせて 折りたたんだもの、右側はセファイド変光を除去した後の食連星変光曲線である。 LMC_SC7 239698 と LMC_SC21 40876 では連星周期で折りたたんだ。LMC_SC16 119952 は食がまだ1回しか観測されていない。

二つのセファイドが重なった 

この他、LMC_SC6 330185 は二つのセファイドが重なったような変光曲線、 共にFO で P=2.48, 1.96 日を持つ。星が偶然重なりあったか実際に関係している かは不明である。

データ 

 データはウェブで取れる。アドレスは

http://www.astrouw.edu.pl/~ftp/ogle

ftp://sirius.astrouw.edu.pl/ogle/ogle2/var_stars/lmc/cep/catalog/


図7.3つの食連星セファイドの変光曲線。左側:セファイド周期に合わせて 折りたたんだ。右側:セファイド変光を除去した後の食連星変光曲線。