アブストラクトクエサー探査の副産物で始まるAPM 高赤方偏移クエサー探査の副産物として、幾つかの高銀緯遠方(20-100 kpc) N 型炭素星が見つかった。それから出発して、|b| > 30° の全天探査を 行った。この論文では分光追尾観測の第一結果を報告する。見かけが暗く高銀緯 にある炭素巨星(FHLC)はハロー外辺部の運動学構造を探るのに適している。そこで、 広い波長巾の分光測光と平行して、8000A 付近で CN の 1 A 分解能スペクトルを 取って 10 km/s 精度の視線速度を定めた。 矮小銀河の破壊かマゼラン流か? 6500 deg2 の初期探査で 1 N 星/200deg2 を見つけた。これはハロー CH 星の約 1/4 の表面密 度に相当する。中間年齢 N 型炭素星が他の星形成領域から離れて孤立して形成さ れることはありそうにない。したがって、可能性としては、(1)捕獲された 矮小銀河が破壊されて流れてきたか、(2)長い間探されてきたマゼラン流の 光学的対応天体であろう。 |
1.イントロ炭素星の種類Green et al 1994 によるとハローの炭素星は 1/50deg2 の頻度だが、 それらには3種類ある。 (1)AGB 星。大体 MR ∼ -3.5 (2)CH 型炭素星。連星の質量移送が原因と思われる。ハロー炭素星の大部分を 占める。巨星だが MR ∼ -2.5 (3)固有運動が大で近い。炭素矮星。連星中の質量移送が原因らしい。 これまでに見つかったハロー炭素星 これまでハローで見つかった様々な種類の炭素星を表1にまとめた。1 - 7 Gyr の 中間年齢炭素星は高銀緯では稀な天体である。そのような天体がハローの遠方で 見つかっている。それらはどこから来たのだろうか?可能性の一つは長らく探されて いたマゼラン流の星ではないかというものである。 FHLCs の数を増やす事は極めて重要である。明るい AGB 炭素星が多ければ遠方 ハローの研究に有用である。 |
合体の痕跡 銀河系に薄い円盤があることから少なくとも最近に大きな天体の合体は無かったろう。 しかし、小さな銀河の合体は銀河系進化の途中で起きたであろう。現在、 LMC/SMC系は合体の中間段階、サジタリウス銀河は合体の最終段階にある。 合体の仮定で矮小銀河は潮汐破壊される。そのかけらがデブリとして軌道に沿って 残る。 シミュレーション 崩壊シミュレーションによると、前方と後方に尾が伸びる。近銀点での崩壊は 急速で、銀河は軌道に沿って伸びる。横方向の広がりは遅いので、数回転分も 軌道に沿った痕跡を辿れる。Johnston et al 1996. 衛星銀河の軌道周期は 1 Gyr 程度であり、数 Gyr 以前まで軌道を辿れる。 |
痕跡の探索 実際、これまでに全天の 2/3 で矮小銀河探索が実施された。(Irwin 1993) Lynden-Bell 1976 は別の方法を提案した。なんかゴチャゴチャあって、小さな 衛星銀河は合体の残骸ではないか? 炭素星の利用 炭素星は衛星銀河全てに含まれる。だから、炭素星をプローブに使い、破壊された 衛星銀河のトレーサーに使うと良い。もし、矮小銀河が 1 Gyr 以前に破壊された としたら、炭素星はその追跡に最適である。 |
ケース低分散北天探査とミシガン大学プリズム探査 Case Low Dispersion northern sky survey : Sanduleal, Perch 1988 NGC 付近の 1000 deg2 University of Michigan Thin Prism survey : MacAlpine, Lewis 1978, Bothun et al 1991 SGC の 225 deg2 どちらも IIIa-J 乾板(λ < 5400 A)で 4737 A, 5165 A の C2 バンドを狙った。しかし、 N 型星は 5165 A バンドより 長波長側でしか見えない。このため、CH星しか見つからなかった。 CCD 探査 Green et al 1994 V=18までの2バンド測光から分光候補星を選んだ。 52 平方度から V = 17 の 炭素星を一つ発見。 |
Stephenson カタログ 1989 上のプリズムサーベイ+Sanduleak, Philip 1977, Westerlund et al 1986 の プリズムサーベイの結果をまとめた。表1にはそれらに IRAS で見つかった ダスティ炭素星を加えた。 APM クエサー探査 APM クエサー探査の途中で偶然 FHLC 星が見つかった。これは UKST BJ と R 乾板を使って、 BJ - R > 2.5, 16 ≤ R ≤ 19 天体を 探す試みであった。2500 平方度から 10 個以上の N 型星が見つかった。これらは 表1には載せず、表3に回した。 |
最近公表された APM 天体カタログ(Irwin, Maddox,McMahon 1994)は高銀緯の空を
大部分カバーしている。
4.1.乾板測定4.2.候補選択BJ - R > 2.4 は B - V > 1.9 となる。これは銀河系前景 混入星より赤い。これまで知られた FHLC 炭素星は 11 ≥ R ≥ 18 にあった。 以前の 2500 平方度サーベイの際には R = 19 までの赤い天体を探したが、R=16 より暗い星は一個しかなかった。したがって、今回のサーベイは R = 17 までに 限定した。これは普通の炭素星では 100 kpc に対応する。4.3.完全性 |
![]() 図1.候補天体がいかに少ないかを示す CMD. 黒丸が炭素星 |
5.分光観測40 炭素星を発見現在、δ > -18° の 南銀極まわり全部と北銀極まわり半分の分光 を終えた。その結果約 40 の FHLCs を発見した。観測は主に Isaac Newton 望遠鏡 で行った。 視線速度観測 7500 - 8500 A を 2 A 分解能 (1.2A/pixel) で観測した。速度分解能は 45 km/s/pixel に相当する。 低分散観測 4500 - 7500 A を 3.0 A/pixel で観測した。この領域で CH 型炭素星は 4300 A に CH の明瞭な G バンドを現わす。この特徴が N 型星と CH 型星を区別するのである。 6.データ整約6.1.初期整約と波長較正6.2.炭素星の選択6.3.大気減光補正 |
![]() 図2.観測スペクトルの例。上= N 型星。中= M 型星。下= K 型星。 |
7.視線速度7.1.エラー8.フラックス較正 | ![]() 図3.視線速度決定のためのクロス相関の例 |
9.結果観測予定現在 SGP 周りの探査は終わり、NGP 周りのいくらかも済んだ。今後はNGP周り の残りを観測して行く。さらに、SGP の δ < -20° にも拡大する 予定である。ここはマゼラン流の大部分が観測されている領域で特に興味深い。 これまでに 7000 平方度を探査し、41 個の炭素星を発見した。この探査の完全性は 80 % と見積もっており、1 N 型星/200 平方度 の密度である。 まとめの表 表3と4には探査の結果をまとめた。APM で選んだ炭素星の内 6 - 9 星は CH 星 であった。残りは N 型星である。ファインディングチャートを付けた。 9.1.他のサーベイ 表3を見ると分かるが、過去に見つかったハロー N 型炭素星は今回の APM 探査で 全て”再発見”された。今回測定した視線速度を表4に載せ、過去の結果と比べて いる。 9.2.タイプ タイプについては次の論文で論じる。コメントを述べると、 (1)N型星 34個。 ![]() | (2)異常に赤く、5000 A 以下ではフラックスが見えない。星周ダストによるもの であろう。内3つは IRAS カタログに載っている。表5にそれらを載せた。 0418+0122, 1013+7340, 1130-1020, 1225-0011, 2223+2548 ![]() (3)APM クエサーサーベイ中に撮られた低分散スペクトルが同様に赤かった星 以前調べられた 0854+1732, 1256+1656 と同様な調査が望まれる。 1429-0518 (4)CH/N 型の境界星。カラーが BJ ∼ 2.5 か、青部分で CH 吸収? 0351+1127, 0915-0327, 1339-0700 (5)CH 型。CH G バンドが 4300 A に見える。全体として青い。 強い C2 スワンバンドが 4283, 4737, 5635 A にある。 0123+1233, 0222-1337, 0316+1006, 0911+3341, 0939+3630, 1037+3603, 1123+3723, 1509-0902, 2111+0010, 2255+0556 (6)バルマー輝線のある N 型星。彩層の活動が活発かミラショック。 CH 星 1037+3603=CLS29 にも輝線がある。 0102-0556, 0713+5016, 1211-0844, 1523+4253, 2223+2548, 2259+1249 |
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9.3.空間分布エイトフ投影図現在知られている高銀緯炭素星を図4に示した。黒丸が我々の カラー、等級基準に合う炭素星である。 | 非ランダム分布? 図4を見ると、非ランダムな分布が見える。これは銀河合体シナリオから 期待される特徴である。しかし、北銀極サンプルが不十分なので結論を出す には早い。 |