アブストラクトAPM ハロー炭素星サーベイで見つかった炭素星の固有運動測定の結果を報告する。 測定は POSSI, POSSII, UKST 乾板を用いた。APM 炭素星に対しては有意な固有運動 を検出しなかった。これらのサンプルには炭素矮星は含まれていないと結論した。 既知の炭素矮星3個に対しては固有運動が検出された。SAAOにおけるNIR観測 の結果も提示する。炭素矮星は特異なNIRカラーを有し、これは将来矮星と巨星を 区別するのに使えるだろう。幾つかの既知ハロー炭素星の固有運動測定とNIR 測光結果は CLS 29 が炭素矮星である可能性を示唆する。 |
1.イントロAPM サーベイは 11 ≤ R ≤ 17, BJ - R ≥ 2.4 の 48 炭素星 を |b| > 30° に見つけた。これらは潮汐作用で捕獲銀河から剥ぎ取られた 星であろう。しかし、炭素矮星の混入の可能性もある。そこで固有運動の測定が 重要となる。 |
乾板 POSSI は 1950 年代に撮られ、POSSII と UKST は 1980 年代後半に撮られた。 時間間隔は 30 - 40 年間である。 それらは APM により既に測定済みである。 2.1.手続き2枚の乾板の星位置リストを線形変換=平行移動、回転、スケーリングにより、 3 σ クリッピングを行いながら逐次近似で重ね合わせて行く。固有運動は 重ね合わせが完了した位置リスト上で、炭素星の位置の差を時間間隔で規格化して 求める。2.2.結果表2に測定結果のリスト、図1にそのプロットを示す。既知炭素矮星3個を除く 全てが 3 σ 以内に収まっている。2.3.炭素矮星PG 0824+2853 は図1で 3σ リミットのすぐ外側に位置する。この値は 円盤種族炭素矮星という分類に合う。CLS 50 は図の端に位置する。また、 G 77-61 は図の外側にはみ出てしまった。これらは以前の測定と合致する。2.4.新しい炭素矮星0748+5404 二つの星が 3σ リミットの外にある。その一つ 0748+5404 は明るい CH 星で Stephenson 1989 の低温炭素星カタログに載っている。この星は回析パターンが強く 出ていて中心決定精度が悪い。これはおそらく炭素矮星ではない。 1037+3603 1037+3603 = CLS 29 は Sanduleak, Pesch 1988 が発見していて APM で再検出 された。図2が 39 年間隔での2つの画像である。明らかに移動しているのが判る。 この星も円盤星であろう。 |
表2.APM炭素星の固有運動![]() |
炭素矮星は赤外カラーが特異 Green 1992 と Westerlund 1995 は炭素矮星は重力が大きく、低メタルなため 水素が結び付きやすく、Hバンドでのオパシティを低下させるので、カラーが 特異になることを指摘した。 炭素矮星の赤外カラー SAAO での JHK 観測結果が表3にある。図3には二色図を示す。N 型星、 CH 星、 炭素矮星が区別されている。 Totten, Irwin 1989 で分類が怪しい星 Totten, Irwin 1989 で分類が怪しかった星を近赤外二色図で分類すると、 0351+1127 と 0936-1008 は N 型星、1339-0700 は CH - N 境界である。 ![]() 図3.FHLCsのJHK二色図。白丸=N 型星。黒丸=CH 型星。白丸点=炭素矮星 | ![]() 表3.SAAOで観測した FHLCs の近赤外測光 |
3.1.距離較正衛星銀河の炭素星文献から衛星銀河炭素星の赤外等級を集め、SAAO システムに変換してから van den Bergh 1989 の距離を使って、絶対等級に直した。図4はその図である。 FHLCs の絶対等級 ハロー炭素星の年齢もメタル量も不明であり、変光の可能性もある。しかし、 図3の炭素星も似たような年齢とメタル量の広がりを含んでいる。したがって、 図4の ±0.5 等の巾は現実的なエラーと看做してよいだろう。これは距離 にして ±25% に相当する。 図4のフィット線は、 log(MK+9.0) = 1.14 - 0.65(J - K) である。 FHLCs の赤外距離と可視距離の比較 Totten, Irwin 1998 は MR = -3.5 と仮定して FHLCs の距離を 求めた。図5に両者を比較した。ダスティな星では星周シェルの影響が見られるが それ以外では良い相関がある。距離は 100 kpc に及んでいる。幾つかの赤い星は おそらくミラで距離精度が低い。これらの変光観測は将来の課題である。 ![]() 表4.衛星銀河のパラメター |
![]() 図4.局所群銀河炭素星の結合色等級図。フィット実線を FHLCs の絶対等級に 用いた。 ![]() 図5.距離(R) と距離(JHK) との比較。 |