A Strudy of the Stellar Population in the Lynds 1641 Dark Cloud
I. The IRAS Catalog Sources


Strom, Newton, Strom, Seaman, Carrasco, Cruz-Gonzalez, Serrano
1989 ApJS 71, 183 - 217




 アブストラクト

 他波長での測光 
 Lynds 1641 (d ≈ 480pc) 範囲内の 63 IRAS 点源カタログ天体 123 個を同定した。パロマーシュミット乾板 B, R, I 乾板上で探した 結果、63 候補天体が見つかった。IRAS 点源の位置を近赤外測光した結果、 40 個に赤外天体が見つかった。内 16 個は可視では見えない。30 天体は IRAS バンドでのみ観測可能であった。個々の天体の SED を作った。

 クラス分類 
 SED の傾きから次の3クラス分類を行った:
クラス I : 平坦又は右上がり。
クラス II: クラス I, III の中間勾配
クラス III:黒体輻射と似る。


 L 1641 の性質 
L 1641 には近くの Taurus-Auriga 星形成複合よりもずっと多くのクラス I 天体が含まれる。L 1641 天体を特徴付ける赤外スペクトルの急な傾きは それらが高い光学的深さの「コア」に存在した結果と考えられる。 L 1641 のコアは Taurus-Auriga コアよりも深いのである。最新の理論によれば 重力が磁場を上まわり、星形成崩落が開始した箇所ではそのような大きな 光学的深さが達成され、磁場が重力を上まわる所では低い光学的深さの コアが形成される。これらの予想は L 1641 と Taurus-Auriga の磁場配列 と分子雲の形態、光学的深さの比較から生み出されたようである。

 HR 図 
 光学的に同定された IRAS 天体を HR 図に並べると、
(i) L 1641 内の星はほとんど 3 Myr より若いか、
(ii) より古い星に IRAS で検出されるような赤外超過がない
である。

図1a.破線=二つの箱領域。白丸=IRAS PSF より広い天体。白四角=非メンバー。 黒丸=可視同定あり。黒四角=赤外でのみ検知。

 1.イントロ 

L 1641 とは 
 L 1641 はオリオン星雲から 3° に渡り南東方向に伸びている。 距離は 470 pc, 投影大きさは 10 × 40 pc, 質量は 2 × 104 Mo である。磁力線がその軸を貫いている。磁場は L 1641 崩落の初期に大きな役割を果たしたらしい。

 L 1641 の星形成活動
 5つの分子流出(Fukui 1986)や 6 HH 天体の存在は最近の大規模星形成を示唆する。 北半領域での 139 Hα 天体の検出も星形成活動の証拠である。

 IRAS 点源 
 図1は二つの重なった四角い領域を示している。一つは RA = 5h31m - 5h40m, Dec = -6°18' から -8°33'、 もう一つは RA = 5h37m - 5h46m, Dec = -7°30' から -9°45'である。この中には IRAS 天体が 123 個 含まれている。それらの大部分は方位角 140° の細長い四角に沿って 分布している。これは L 1641 の伸びる方向でもある。この領域は 13CO マップの稜線に沿っている。

 IRAS 点源の性質 
 本論文はシリーズの第1論文で、IRAS 天体の性質に絞る。まず、可視、近赤外 での天体と同定し、SEDを近くの Taurus-Auriga 星形成複合の YSO と 比較する。最後に、光学同定された天体をHR図上にプロットし、 YSO の 質量と年齢分布を調べる。





図1b.13CO マップ上の IRAS 点源。







 II. 可視、近赤外での IRAS 天体の同定 

 初めにやる事(I): 可視での IRAS 天体の同定 
 KPNO Monet machine を用いて、POSS O, E 乾板から B = 21, R = 20 mag まで の位置と等級を測定した。その結果から 63 の可視天体を IRAS 天体と同定できた。 それらの内 15 個は Haro 1953, Parsamian, Chavira 1982 の Hα 天体カタログ と一致し、11 個は GCVS と一致した。

 初めにやる事(II): 近赤外での IRAS 天体の同定 
 Wyoming 2.3 m と IRTF により各 IRAS 天体の周囲を単素子で K バンド走査した。 限界等級は 14.5 等である。この結果、40 天体が IRAS と同定された。内 24 個は 可視でも同定がある。この結果 123-(63+40-24)=44 のはずだが、論文では、 37 IRAS 天体に可視でも近赤外でも同定がない。そこでこれら 37 天体の位置で 一次元の co-adds が調べられた。図2に示すように、16/37 個では強度 プロファイルが広がっており、L1641 周辺にあるガス/ダストの熱せられた 塊りと考える。これらは図1では白四角で示した。残った21天体は点源だが、IRAS でのみ検出された天体である。そこに、可視、近赤外同定組から詳しい調査の結果 除かれた 9 個を加え、 30 個が非同定天体となった。

 位置同定について 
 表1には IRAS 天体の位置情報を載せてある。図3には IRAS 位置と可視、近赤外 同定候補位置との差の分布を示した。図4a-j にはファインディングチャートを 載せた。





図3.IRAS 位置と可視、近赤外同定候補位置との差の分布。



図2.25 μm でのADDSCAN の Dec 方向で広がったと分類した天体の例。 最後の "40" は、比較のための点源例。


図4.L1641 IRAS 天体の可視同定候補のファインディングチャート。小丸は 近赤外天体検出位置を示す。大きな丸は IRAS でのみ受かった天体の位置。 図のスケールは a 図に示す。












 III. 可視・近赤外測光 

表2.L1641 IRAS 天体の可視・近赤外等級









表3.中間赤外測光も揃っている天体の赤外等級。


 IV. 可視同定天体の分光 

 分光観測 
 可視同定の得られた 41 天体の 5000 - 7500 A スペクトル (分解能 8A)を得た。決定されたスペクトル型を表4に示す。

 暗黒雲天体でない星の除去 
 以下の星は前景矮星か後景巨星として除いた。
(a) SEDが赤化した黒体輻射型で、
(b) Hα; 輝線を伴わない晩期型星スペクトル。



 93/123 天体が残った。 
 天体 1, 29, 45, 50, 65, 71, 88, 90, 92, 109, 110, 120, 122 がこの カテゴリーに入る。二つの 2MSS 天体は後景の巨星らしい。SAO カタログに あった 45, 65, 120 は雲本体からはずれ、Hα 輝線がない。前景矮星 であろう。この他に 112 は銀河であった。123 IRAS 天体の内、14 個は 前景、後景又は銀河であった。一方 16 個は広がったプロファイルを示し、 熱せられたダストの塊りである。 それらは L1641 の内部または表面に あるのであろう。こうして 93 天体が残った。

表4.L1641 IRAS 天体の分光データ



 V. 天体の特徴 

 YSO 分類 
 Adams, Lada, Shu 1987 は YSO の SED が進化段階に対応することを 示した。Lada 1987 による 1 μm > λ SED 分類は以下 のようである。

(a)クラス I
λFλ が平坦または長波長側へ上がる。

(b)クラス II
λFλ が長波長側へ下がるが黒体より緩い。

(c)クラス III
λFλ が赤化を受けた黒体輻射。

我々はこの分類法を IRAS 天体に適用する。

 クラス I
 クラス I スペクトルは YSO がまだ光学的に厚い原始星コアに囲まれて いる時期のものである。この時期、回転扁平化した原始星コアから降着円盤 への物質の落下、円盤から中心星への落下によりエネルギーが生み出される。 エネルギー分布の傾きは中心星、降着円盤からの可視、近赤外放射光と その吸収、吸収光で加熱された周辺ダストの再放射の結果である。
 クラス II 
 星風(低質量星)または輻射圧(大質量星)が原始星コアを 散逸させ、光学的に厚い円盤に埋もれた中心天体が現れる。この 時期の光度は中心星の重力収縮エネルギー、もしかすると重水素 燃焼、降着円盤からの放射による。スペクトルは λFλ ∼ &lambfa;-3/4 となる。

 クラス III 
 その後の前主系列進化の期間、円盤は中心星に降着するか、吹き飛 ばされるか、微惑星になるかする。円盤からの寄与は無視でき、前主 系列星からの黒体スペクトルが支配的となる。

 クラス III なし 
 図5に SED を載せた。L1641 IRAS 天体は全てクラス I か II であった。 これは、次の事情によるのであろう。

(a) サンプルは λ ≥ 12 μm で明るい
(b) 光球放射を IRAS で検出される前主系列星は L > 100 Lo
(c) L < 100 Lo で IRAS 検出には大きな赤外超過が要る。

図5では光度区間を4つに分けて示した。それは、L > 15 Lo, 15 > L > 7.5, 7.5 > L > 4, 4 > L である。図5lには 完全のためクラス III の SED を載せた。











 V a. クラス I 天体 

 (i) IRAS のみで検出された天体 

 SED は平坦か長波長側に上がっている 
 30/93 天体は IRAS のみで検出された。その全てで SED は平坦か 長波長側に上がっている。図5a), b) を見よ。2.2 μm フラックス は上限値である。

 総フラックスの積分 
 光度を求めるため、
(a) 12 - 100 μm の SED を積分する。
(b) Cohen 1973 の方法で長波長側からの寄与を評価する。
こうして求めた光度は明らかに下限値であるが、 1 - 224 Lo の間をとる。下限値という制限、及び降着エネルギーの寄与が大きく、 星固有の光度の範囲の議論はできない。

 (ii) 可視または近赤外測光のある IRAS 天体 

 可視スペクトル 
 平坦または右上がりの SED を有する天体中 32 星は可視または近赤外 の測光が行われた。その光度は 1 - 405 Lo に渡る。天体は非常に赤い ので、可視ではとても暗い。その結果分光が出来たのは 12/32 天体であった。 内 5 天体 (31, 76, 91, 97, 118) が強い Hα 輝線を示した。
4 天体 (12, 20, 35, 76) が既に前主系列星として同定されていた。 2 つ (11, 108) のスペクトルは全く正常の星に見える。 3 つ (12, 35, 98) は明らかに何かに包まれて見える。 2 つ (31, 91) は 強い [OI] 輝線を示す。

 Haro 13a
 2 つの最も明るいクラス I 天体は可視の対応天体を持つ。 Haro 13a = V883 Ori は IC 430 に随伴し、Haro 1953 が小さなアーク状星雲を伴うとして 注意した。Maffei 1963 はこの星が 8000 A で 14.8 - 15.6 の変光 をすることを見つけた。過去14年間この星は暗くなりつつある。 付随する反射星雲は星から南東方向にコーン状に広がって行く。 L1551/IRS5 に付随する HH 102 とよく似ている。Av = 20 mag の 早期型星としてモデル化するとこの星の光度は 4250 Lo となる。

 Re 50  
 Re 50 は Reipurth, Bally 1986 により星雲状天体として 認められた。可視星雲と近赤外像は 3" 離れており、可視の 明るい天体は反射星雲である。


 V b. クラス II 天体 

 23/30 天体のスペクトルが得られた。L1641 クラス II 天体の スペクトルは近傍の古典的 T Tau, Herbig Ae/Be 星と似ている。 実際、既にそれらとして分類されていた 13 星 (16, 17, 18, 28, 47, 49, 51, 54a, 69, 77, 83, 86, 123) はクラス II 天体に入っている。 二つの新しい Ae/Be 星(27, 34) と 4つの晩期型 Hα 輝線星 (58, 63, 100, 101a) が分光観測から同定された。実際、スペク トルを撮った内 Hα 輝線のないのは 3 つ (57, 82, 103) だけ だった。

 V c. クラス III 天体 

 このカテゴリーに入る 12/13 天体は前景 K-, M-矮星か背景 M-巨星 であった。背景巨星のうち 2 つ (1, 92) は Av > 5 の強い減光を 受けている。天体 1 (05331-0618)は L1641 とオリオン星雲の間の 隙間を通して直接見える。  13 番目の星 κ Ori (B0 Ia) はオリオン複合体に属しているが L1641 境界の外にある。