パロマ―・グローニンゲンサーベイのフィールド3 (PG3, l = 0, b = 10) にある 78 SRs の近赤外測光を行い、既知の領域内ミラ型星と比較した。 PG3 SRs は PG3 Miras と P-L, P-color 関係で同一系列に並ぶことが判った。 そこでは SRs は Miras の短周期側拡張と見える。 | フィールドと PG3 のミラは同じ P/(J-Ks) 関係に従う。しかし、SRsの場合は そうではない。PG3 のミラと SRs の双方共に Glass et al 1995 の Sgr I P-L 関係 に従う。それらは共に基本モードで脈動しているように見える。その金属量は intermediate から solar に分布している。 |
PG サーベイ 1950年代にバーデと Plaut は変光星探査のために4領域を選んだ。 Palomar-Groningen Variable Star Survey は6編の論文 (Plaut 1966, 1968ab, 1966, 1971, 1973) として出版された。 PG3 の 中心は銀河中心から 10° 南にあり、バルジの縁を掬い取っている。この 領域の重要性は、その &.5° x 6.5° という大きさと低い星間減光 にある。 Wesselink 1987 Wesselink 1987 は RR Lyr に重点を置いて PG3 の変光星を調べた。図1に BJ 乾板を撮った時期のフーリエスペクトルウインドウを示す。 これを見ると短周期側の分解能は良いが、周期 320 - 500 日の星は欠けている 可能性がある。三つの大きな偽ピークは 1年、1週間、1太陰月である。 |
![]() 図1.観測時期のフーリエスペクトルウインドウ。 |
2.2.SRsGCVS4 分類GCVS4 では SRV は振幅が V で 2.5 mag 以下という基準に基づいて定義 される。その周期は 20 - 2000 日に渡る。Plaut は SRa と SRb を分けたが Wesselink 1997 はその区別はしなかった。しかし、実際には大部分が SRa つまり、光度曲線の形はミラと似ている。 サンプル この論文では主に Wesselink 1987 の分類に従ってサンプルを選んだ。 2.3.近赤外測光1m 望遠鏡+InSb で行った。 |
2.4.込み具合2.5.星間減光Wesselink が RR Lyr のカラーに基づいて作った減光マップを使用した。2.6.比較星PG3 ミラ、既知の O-rich ミラ、フィールド SRs を用いた。2.7.測光システム変換 |
3.1.等級分布![]() 図2.実線ヒストグラム= PG3 内 SRs の K 等級分布。一点鎖線ヒストグラム=ミラ。 SRs とミラの等級差は円盤星の混入と言うよりは、固有光度が約1等違うためであろう。 |
3.2.周期分布![]() 図3.周期分布。上:SRs。斜線=PGS SRs。一点破線=フィールド SRs. 下:点ヒストグラム= PG3 ミラ。長破線=フィールドミラ。 PG3 SRs の周期は PG3 ミラの短周期尾っぽのあたりにある。また、フィールドの 「赤い」SRs (Kerschbaum, Hron 1992, 1994) と重なるが、平均周期はそれより長い。 フィールドと PG3 でミラの周期分布に差は見られない。 PG3 ミラで 300 日以上 がないが、おそらく BJ 乾板の感度の問題だろう。 |
3.3.P-K 関係図4は PG3 における P-K 関係を示す。PG3 SRs は PG3 ミラ P-Ko 関係 (Schultheis 1996) に従っている。この図は両者性質が共通である ことを物語る。図の直線はデータフィットではなく、 Sgr I にフィットした ものである。図4.三角=PG3 SRs 四角=PG3ミラ の Ko-P 関係。実線= Glass et al 1995 の Sgr I の関係。破線=バルジ星の境界。 |
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3.4.P-カラー関係LMC との比較図5は P-カラー関係を示す。実線は LMC での関係である。P/(J-K)o 関係は LMC から少しずれている。P/(J-J)o 関係では、ミラは少し下、 SRs は少し上にきて全体として周期に無関係になっている。P/(H-K)o 関係 を見ると、PG3 SRs は LMC 関係に従い、PG3 ミラはそれより上にある。 フィールド星 図6はフィールド SRs とフィールドミラとの P/(J-K)o 関係の比較である。 フィールドミラが LMC 関係に従っていることが判る。しかし、赤い (J-K)o では 0,03 mag 程度のずれがあるが確かでない。フィールド SRs は P-C 関係 がミラより平坦であるがもしかすると人工的な効果があるかも知れない。 ![]() 図6.(J-K)o - log P 関係。バツ=フィールド SRs. 黒点=フィールドミラ。 実線は LMC 関係。 |
![]() 図5.PG3 SRs とミラのカラー対周期関係。a: (J-K)o, b: (J-H)o, c: (H-K)o バルジ星と思われる星のみをプロットした。直線=LMC 関係 (Glass et al 1995) |
近赤外カラーへの変換が怪しい 図7に PG3 領域 SRs と ミラの Ko - (J-K)o 関係を Bertelli et al 1994 のモデル等時線と共に示した。彼らは Teff に対する SED を決めるのに、 Teff > 4000 K では Kurucz 1992 の大気モデルを使った。それより低温では 早期 M 型に対しては Lancom,Rocca-Volmerange 1992 の有効温度スケールを用い、 晩期 M 型に対しては Ridgway et al 1980 の有効温度スケールを用いた。非常に 赤い星の温度標準星がないために、近赤外カラーへの変換に制限が付き、 Z = 0.02 等時線が(J-K)o = 1.35 付近でサチってしまうという結果になっていた。 新しい Teff - (J-K)o 関係 そこで我々は経験的に新しい Teff - (J-K)o 関係を冷たい巨星の観測データから 導いた。詳しくは Ng et al 1998 to be submitted を見よ。 ( 結局 ADS には現れなかった。) 図7ではこの新しい Teff - カラー関係を使って等時線を描いた。 解釈 同じメタル、年齢の等時線に沿って並んだ星は同一種族と考えられる。 ( でもメタルと年齢が縮退している。) 変光に伴い (J-K) カラーはミラで 0.2, SR で 0.1 等変化する。 また 変化の方向は等時線に直交している。なのでデータ点のばらつきにはこの効果が効いている 可能性がある。 ( この近赤外観測は一回観測らしい。) 赤化 赤化の不定性は BJ では最悪で 0.17 mag ある。これは J-K で 0.03 mag 二しかならない。 メタル量と年齢 図7を見ると年齢で 5 Gyr 違っても (J-K)o では 0.04 mag しか動かない。 一方、 Z = 0.2 から 0.004 に変わると (J-K)o は 0.2 mag 動く。したがって、 メタル量の大きな差の存在は言えるが、年齢のばらつきの検出は難しい。 |
![]() 図7.PG3 SRsとミラの Ko - (J-Ks) 関係。三角= PG3 SRs, 四角=PG3 ミラ。 右側のエラーバーは変光の効果を表す。等時線は Bertelli 1994 モデルを 8 kpc においた。等時線のカラー (J-K)o は Ng et al 1998 による Teff - (J-K)o 関係 を用いた。 |
PG3 SRsを他領域の SRs と比較 図8では PG3 の SRs と ミラのカラーを他領域と比較した。 周期と振幅が PG3 SRsとフィールドの赤い SRs とで似ているので、 この図でも PG3 SRs は赤いフィールド SRs 領域を占めるかと思ったが、 もっと青い フィールド SRs の方に片寄っていた。また、LMC SRsよりも赤い。 フィールドと Sgr I ミラとの比較 PG3 ミラは フィールドミラよりも Sgr I ミラと似ている。ただし、PG3 ミラの (J-H)o は Sgr I ミラ程赤い方には伸びていない。これは、PG3 ミラが 周期 320 日以下を欠くことと関連するのかも知れない。 LMC との比較 (J-H)o < 0.65, (H-K)o < 0.5 は PG3 LPV が存在しない領域だが、 図8b を見ると LMC には存在している。これは後で述べるように年齢とメタル量の 複合効果である。 |
![]() 図8.PG3 領域内の SRs とミラの (J-H)o - (H-Ks)o 図。 a: フィールド星との比較。実線= Sgr I ミラ。点領域=フィールドミラ。 一点鎖線=青い SRs。破線=赤い SRs. b: 点領域=LMC の SRs. 実線= LMC ミラ |
4.1.ミラ:PG3 対 フィールド、 Sgr I, LMC各領域のミラ間に違いがある図8では、 PG3 ミラは LMC やフィールドミラよりも Sgr I ミラに似ている。 これは、Glass et al 1995 が P/(J-K)o 関係において Sgr I と LMC との間に 何の違いも見出さなかったことと対照的である。ただし、減光補正のためかも知 れない。 図5ではフィールドミラと LMC または PG3 との間に差があるかどうかはっき りしない。一方、 PG3 と LMC との間には差がある。しかし、図8ではフィールド ミラと PG3 ミラの間に差がある。 4つのミラグループ間の比較 (i)フィールド、LMC ミラは (J-H)o ≥ 0.90 mag にかたまっている。 ( 変だな。そうは見えない。) (ii) PG3 ミラは (H-K)o で、他グループより赤い方に伸びている。 (iii) LMC ミラのみが (J-K)o ≥ 0.75 まで達する。 LMC ミラの (J-H)o 青限界はわずか数個の星で定義されているに過ぎない。上の (iii) は見かけの差に過ぎないのかも知れない。 PG3 ミラの赤い (H-K)o PG3 ミラの赤い (H-K)o は高いメタル量が原因かも知れない。 ( あとごちゃごちゃ はっきりしない議論が続く。) |
4.2.SRs:PG3 対 フィールドと LMCPG3 SRs はフィールドの「赤い」SRs と、周期、振幅で似ている。ただし、 大きな違いは P-Ko と P-(J-K)o 関係である。PG3 SRsのその関係の勾配は PG3, LMC ミラと似ている。しかし、フィールド SRs はそうでない。 さらに、 PG4 SRs のカラーはフィールドの赤い SRs より少し青い。これは 単純には PG3 SRs が高温であるためと思われる。4.3.SRs 対 ミラ(基本振動と第1オーバートーン の話が書いてある。 ) 4.4.PG3 ミラと SRs の金属量 |
スケール高 フィールド SRs は KH92 によると、スケール高 230 pc である。これは IRAS 検出のある PG3 ミラのスケール高 260 pc (Bl92)より少し小さい。これらの 値は Habing 1988 が AGB 星に対して得た 250 pc と同程度である。これらは円盤 巨星のスケール高と合致する。 ( PG3 は円盤なのか?) IRAS と関係なく全てのミラのスケール高を求めると 300 pc となる。Ng らによる円盤の星種族の年齢とスケール高の研究によると、 フィールド SRs と IRAS 検出のある PG3 ミラの年齢は 4.5 - 7.0 Gyr、メタル量 Z = 0.008 - 0.015 となる。全 PG3 ミラの年齢は 4.5 - 7.5 Gyr で、 これは Harmon, Gilmore 1988 がバルジ IRAS 天体の 1.3 Mo より大きな星の 年齢に与えた 10 Gyr よりかなり若い年齢と合致する。しかし、 Whitelock et al 1991 は Harmon, Gilmore 1988 の与えた下限質量は逆に、大部分の星に対しての 上限値であることを示した。これは年齢の下限に 4 Gyr をつけ、スケール高と 合う。 年齢 メタル量に大きな幅があるので、年齢の推定は怪しくなる。 |
円盤密度 もし、銀河系中心方向の円盤密度が二重指数関数モデルより低かったら、 PG3 SRs とミラとは円盤種族ではないことになる。前で議論したように それらはまた、非常に古い低メタル種族ではない。年齢上限 8 Gyr と 合わせると PG3 ミラは Ng et al 1996 に述べたバー種族なのであろう。 |
PG3 SRs とフィールド SRs は違う PG3 SRs はフィールド SRs と同じではない。それらの P - (J-K) 関係は 異なる。それらの二色図上の位置も少し違う。 P-K, P-C 関係で PG3 SRs は ミラの短周期側の延長上にある。これは、 PG3 のミラと SRs は同じモード、多分基本振動、で脈動していることを示す。 フィールド SRs は倍音モードらしい。 |
メタル量 PG3 ミラと SRs のメタル量は中間から太陽の間に渡る。 年齢 年齢は 4 - 10 Gyr であろう。低メタル球状星団には LPV がないことから、 PG3 のミラと SRs は 10 Gyr よりは若いことが言える。バルジ IRAS 天体の 質量上限とバルジに炭素星がないことから年齢の下限は 4 Gyr である。 フィールドと PG3 のミラは同じ P-(J-K)o 関係に従う。両者は (J-H)o - (H-K)o 面でも同じ場所を占めている。したがって、両者のメタル量はほぼ 重なっている。PG3 のミラと SRs は Sgr I と同じ P - Ko 関係に従う。 これは、 Whitelock et al 191, Glass et al 1995 の PL-関係は異なる 環境で同一と言う発見を支持する。 |