Late Stage of Stellar Evolution II. Mass Loss and the Transition of AGB Stars into Hot Remnants


Schonberner
1983 ApJ 272, 708 - 714




 アブストラクト 

 0.8 Mo と 1.0 Mo AGB 星がマスロスの結果約1000 年で外層を失い、 0.565, 0.533, 0.546 Mo の残骸星になる転移を計算した。残骸星は HR-図を横切り、 惑星状星雲中心星となりえる。その時間変化速度から、惑星状星雲を形成する 下限は Mc = 0.55 Mo, L = 2500 Lo であることが分かった。  計算から、最終熱パルスが進化の途中のどこで起こるかが重要であることが 分かった。最終熱パルスが FG Sge 型星の急速な進化に関与している可能性が 強い。また最終熱パルスは中心核の付近に高濃度ヘリウムを含むガスが存在す る惑星状星雲の原因かも知れない。


 1.イントロダクション 

 Harm-Schwarzschild シナリオ

 Harm, Schwarzschild 1975 は最終ヘリウムフラッシュによって、10-3 Mo/y クラスのマスロスが起き、水素外層が一気に失われて、 0.65 Mo の惑星状星雲中心星を残すと考えた。遷移時間は 3000 - 7000 年である。 このモデルでは最初はヘリウム次いで水素燃焼がエネルギー源になる。星が 103 Lo の高光度星でいる期間はしかし既知 PN の寿命より長い。
(PN 寿命はそんなに短い? )
post-AGB モデルの外層質量はコア質量が大きくなるほど小さくなるので、 高質量の残骸でのみ、 PN 期間中に 100 Lo 光度にまで暗くなれる。

 静謐期遷移シナリオ 

 残骸星が (30,000K, 4000Lo) から PN を通過して (100,000K, 100Lo) への 遷移は PN 寿命の 3 - 4 104 年かかる。ただし、AGB 離脱時間は 長い。 3000 K から 5000 K になるまで 105 年掛かる。
(さっきの話はどうなる? )
この問題を回避する方法として高マスロスが考えられる。高マスロスの存在は 惑星状星雲自体が証拠となっている。
 静謐期水素燃焼による PN 形成 

 前論文で、 PN 中心星の大部分は 0.55 - 0.65 Mo post-AGB 星の進化モデル で説明できると述べた。それらは静謐期水素燃焼を行っている。これはつまり PN 形成は二つの熱パルスの中間期に起きていることを意味する。、

 M < 0.6 Mo 再計算 

 ただ、前論文では M < 0.6 Mo のモデル計算は外挿で済ませた。また、 レイマーズのマスロス則を採用し、超星風の効果は考慮しなかった。 そこで、本論文では M <: 0.6 Mo post-AGB 星の進化を再計算することにし た。


 2.計算 

 超星風開始はいつ? 

 初期(ヘリウム中心核燃焼期?)質量 0.8 Mo と 1.0 Mo、X=0.739, Y=0.240, Z=0.021 の進化を計算した。Mc = 0.6 Mo に対応する(多分パチンスキーの 関係式?)光度 6300 Lo に達する以前から超星風マスロスを適用する。 (これも多分だが、)超星風開始は 0.8 Mo モデルでは L = 1400 Lo, 1Mo モデルでは 4500 Lo の第5熱パルスから回復した時とした。

 マスロス式 

 図1に適用したマスロス率を示す。Teff < 5000 K では dM/dt = 2 - 4 10-4 Mo/yr を使用した。log Teff = 3.7 から 3.75 に掛けて マスロス式をレイマーズ則に着地させた。図1を見ると 超星風が核質量増加率に比べ 104 倍の大きさで外層質量を減少 させていることがわかる。超星風は約 103 年で外層質量をほぼ ゼロにする。PN 中心星 (Teff > 30000K) に対し、レイマーズ則による質 量変化は水素燃焼による中心核質量増加の 1/10 以下であり、進化に影響しな い。

図1.実線=仮定したTeff - dM/dt 関係。破線=水素燃焼による dMc/dt. 線のラベル=初期(ヘリウム中心核燃焼期?)質量。



図2.HR-図上の進化。X=0.739, Y=0.240, Z=0.021 を仮定。数字=単位 千年。時間原点は log Teff = 3.7 で設定。太線=マイナス時間は超星風 期でそのために進化速度が非常に速い。

 熱平衡の回復 

 図2は HR-図上の進化を示す。熱平衡の小さな歪みで、初期に L が落ちる。 低下量は小質量星ほど大きく 20 % になる。高マスロスが 1000 年続いた後、 100 - 1000 年で星は熱平衡構造に戻る。最終質量 0.546 Mo と 0.565 Mo は 実際上超星風終了時のそれである。

 水平進化 

 その後は前論文と大体同じである。初期は水素燃焼で AGB 期と同程度の 光度を維持して、 HR-図上を水平に進む。水素燃焼が消えると、光度が かなり早く低下する。最後に白色矮星冷却期に入ると進化速度は遅くなる。

図3.post-AGB 星が青い方に進化する際の Teff と Menv の関係。 比較のため前論文の結果も示す。縦斜線帯=図1で示された dM/dt 急落期。

 少しの質量差が進化速度に大きく効く 

 図2を見ると、 PN 中心星が暗くなる速度は質量に極端に依存することが 分かる。二つのモデルは僅かに 0.019 Mo しか違わないが、大きい方の進化 速度は 20 倍も速い!0.565 Mo モデルは PN 寿命の間に 100 Lo まで暗くな る。一方、 0.546 モデルは PN 寿命時間の間には 3万度にさえ達しない。
(PN 寿命って一定値=4万年? )
その理由は質量と共に光度が急上昇し、逆に燃料となる外層質量が急減少する からである。
 図3に、有効温度による外層質量とコア質量の変化を示す。例えば、0.546 Mo モデルは 10,000 K から 100,000 K の間に 0.644 Mo モデルと比べ、8 倍多い 水素を1/6 の光度で燃やす。


 3.議論と結果 

 マスロス強度 

 観測されるマスロス率は仮定した値の 1/10 で 10-5 Mo/yr 程度である。ただし、高マスロスは短期間になり、探しにくいのかも知れない。
高マスロスは遠くまで受かるが。
仮定した値より低いマスロス率が Kwok78 の「星風相互作用モデル」では仮定 された。このモデルでは 10-5 Mo/yr のマスロスの後に、高温度 中心星からの高速星風が吹き、赤色巨星星風を掃き寄せて高密度の PN シェル を形成する。このモデルでは、熱パルスと無関係に自然に PN 形成を説明する。

 "lazy”remnant 

 超星風がいつ終わるかはより微妙な問題である。我々は log Teff = 3.7 - 3.75 の間にそれが起きるとした。図3から、この仮定が重要と分かる。さも ないとあまりに多くの外層が残り、その結果モデル星は AGB 近くに長期間留 まる。これは Renzini 81, Iben83 のいう "lazy”remnant である。

 脈動停止時期 

Tuchman79 の流体力学計算では、脈動が停止するのは外層質量が 0.001 Mo に なった時である。同様の結論が Haarm75 でも得られている。Mc = 0.6 Mo の 星の場合、それは 5000 K に対応する。図3を見よ。図はまた、この温度で post-AGB 星の挙動に変化が生じることも示す。5000K 以下では有効温度は 外層質量にあまり依存しない。逆に 5000 K 以上では極めて鋭敏に反応する。 この変換点の位置はコア質量が高くなっても動かない。
 post-AGB マスロス 

 したがって、マスロスを強化するどんなメカニズムでも、外層構造に根源的な 変化を起こさない限り、引き続き有効である。このマスロスは外層質量を減少 させて、星を青い方へ押しやる。ついには外層質量が超星風を維持できなくな る。このシナリオでは "lazy" remnant の入り込む余地はない。その上、ある 種の「正常な」星風が超星風期後にも生き延びる可能性がある。PN 中心星で さえも IUE が示すように 10-8 Mo/yr かそれより低いレベルの マスロスを行っている。

 いつ「超星風」が止むのか 

 いつ「超星風」が止むのかは分からない。しかし、それは外層質量が 10 -3 Mo まで減少する以前ではなさそうである。その後は、「正常」 な星風と水素燃焼が一緒になって、AGB 残骸星を PN 中心星へと急速に変換 させるだろう。我々は 5000 K を超星風停止時期と定める。それが前論文の 結論と合い、かつ上に述べた議論とも合うからである。

 PN 中心星の下限 

 以前に 0.546 Mo モデルの進化が遅すぎて 3000 K に達する時には既知の PN の年齢を超してしまうと述べた。マスロスは進化を速めることができる。 しかし、そのためにはこの星の場合、dMc/dt =10-7 Mo/yr の 10 倍ぼマスロス率が必要である。この値は 1400 Lo の星にしてはあまり に高すぎる。したがって、我々は PN 中心星の下限として、 0.55 Mo, 2500Lo を採用する。それに関連して、この限界に近い低質量 PN では 進化が遅く、明るい中心核と大きな星雲を説明することを指摘する。


 4.熱パルスの役割 

 PN 形成時期のタイミング 

 PN 形成が二つの熱パルスの間でランダムに起きると仮定すると、残骸星が 最終熱パルスをいつ起こすかの確率は、post-AGB 水素燃焼期間が熱パルス間隔 と比べてどのくらいかに依存する。熱パルス間隔はコアマスが小さい内は、 70,000 年(Mc=0.56Mo) から 104 年(0.57-0.58Mo) と次第に長く なる。その先は逆に、Paczynski75 が示すように、Mc-Δtpulse 関係に従って短くなって行く。我々の 0.565 Mo モデルでは、H 外層の post -AGB 寿命/熱パルス間隔 = 0.15 である。 しかし、もしフラッシュ後の光度低下が高マスロスを、例えばパルス間隔の 1/3 の期間、抑えるなら、この比は 0.25 にまで上がる。

 論理が掴めない。 
0.55 Mo の PN 中心星ではほぼ 100 % の確率で post-AGB 期間中に熱パルスを 起こす。より大きい Mc > 0.6 Mo ではこの確率は大体 15 % で安定する。 PN 中心星はほぼ全て 0.55 Mo 以上であるから、全体としては約 20 % の確率 で熱パルスを引き起こすと考えてよいだろう。この確率は中心星の質量分布に 依存する。 Iben83 は 10 % とした。

 ループ例 

 図4は 0.553 Mo post-AGB 星 (L = 2500 Lo) の進化経路を示す。この星は PN になる直前、Teff = 40,000 K, マスロス停止後 12,900 年後、に熱パルス を経験した。パルスが弱い(L(He)=6.3 104 Lo) に拘わらず、モデ ルは巨大なループを描いた。その期間は 2000 年である。その後は、次第に 光度を下げながら PN 領域に入り、10,000 年間ヘリウムを燃やす。そこで、 水素が再点火し、光度は 20,000 年間上がる。0.598 Mo に対する類似のループ が Schonberner79 に示されている。Harm, Schwarzschild 1975 も参照。 これらのモデルではフラッシュは 107 Lo まで達する。

 1/100 の割合で見つかる! 

 フラッシュ後に高光度を保つ時間は水素燃料の量により、それはフラッシュが いつ起きるかに依存する。  図3に見るように、初期質量が大きく、有効温度が高いほど、 ヘリウムフラッシュが起きる時の外層質量は小さい。 こうしてある場合には、水素再点火ごの進化が静謐期進化とほぼ同じで、検出が 出来ない。しかし、巨星状態へ戻りまたそこから離れる急速な進化= PN 寿命 の 1/10 程度を観測することができる。poat-AGB モデルの 20 % で熱パルスが 起きることを考えると、結局、PN 中心星 100 個中 1 個かそれ以下の割合で そのような急速進化を期待できるだろう。実際、文献にあるそのような天体は 1個しかない。

図4.図2の Mi(He-燃焼) = 1Mo と同じだが、 Mc = 0.553 Mo の進化。 違いはこちらでは、黒丸=青方向の遷移中、にヘリウムフラッシュが起きたこ と。そのピーク光度= 6.3 104 Lo である。logTeff = 4.7 の非 常に小さなループは第2の小ヘリウムフラッシュ L(He) = 1.8 103 Lo による。

 FG Sge 

 それは FG Sge で、距離は知られており、光度 L = 4000 Lo は 0.6 Mo の post-AGB 星として適当である。この星は急速に有効温度低下中で、最終熱パ ルスが原因と考えられる。 PN の膨張年齢は 5000 年、その電離からは中心星 が 100 年前には 55,000 K であったと思われる。したがって、この星は PN 形成が熱パルスの直前に起こったと考えられる。熱パルス間隔は 10 万年で ある。

 A30, A78  

 問題が面倒になるのは、ヘリウムフラッシュが水素燃焼低下期 Teff ≥ 105 で起きる場合である。Fujimoto77 はフラッシュによる対流層 が水素外層にまで侵入すると予言した。そのような場合の例が A30, A78 のよ うな中心核周りに高ヘリウムのガスが存在する星なのかも知れない。


 5.結論 

 AGB 星が高マスロス(PN 放出)により熱平衡を崩さずに残骸星に進化する ことを示した。残骸星は Mc ≥ 0.55 Mo ならば、 PN 中心星期を PN 寿命 = 30,000 - 40,000 年の間に通り抜ける。水平方向の進化の間中水素燃焼は活 発である。  Schonberner81 の外層計算は正しかったことが分かった。重要なのは PN 中 心星の質量に下限があることで、観測との対比が望まれる。それは 0.55 Mo, 2500 Lo である。PN 星の 20 % は最終熱パルスの影響を受ける。それらが FG Sge, A30, A78 現象を説明する。