Searching for Heavily Obscured post-AGB Stars and Planetary Nebulae
I. IRAS Candidates with 2MASS PSC Counterparts


Ramos-Larios, Guerrero, Suarez, Miranda, Gomez
2009 AA 501, 1207 - 1257




 アブストラクト 

 非対称 PNe の大部分は高質量 AGB 星の末裔ではないかと言われている。 これらの AGB 星は厚いダスト層を持つ post-AGB 星、PNe に進化すると 信じられているので、そのような post-AGB 星と PNe のデータ収集は非対称 PNe の形成を理解するうえで欠かせない。
 そこで、多数の post-AGBs, PNe の赤外域の性質を調べ、可視減光の度合い を評価する。改善された位置は将来のより詳細な観測を可能にし、可視、赤外 のデータからスペクトルの性質が分かる。
 2MASS, Spitzer GLIMPSE, MSX, IRAS を用い、ダストに覆われていると看做 される post-AGBs と PNe 候補 165 星の近赤外対応星を探した。また、DSS 赤画像からそれら近赤外同定天体を可視同定した。1 - 100 μm SED の性質 を2色図を使って解析した。その結果、 119/165 IRAS post-AGB, PNe の近赤 外同定に成功した。それらの座標が改善されたので 59/119 で可視同定が得ら れた。こうして可視で見えない post-AGB, PNe の数を 60 にまで減らした。 80/119 のみが、 2MASS PSC で紛れない同定とされる。それらは、可視で見え るかどうかに従って、MIR, FIR カラーが同じでも J-バンドを入れた二色図 では分離することが分かった。


 1.イントロダクション 

 球対称 AGB から非球形 PN への変換 

 post-AGB = AGB から PN への移行期天体は球対称な AGB ダスト層から非球 形の PN にどう変化するかを理解する上で重要である。

 可視スペクトル 

 post-AGB 星は強い FIR 放射が特徴で、 IRAS 二色図上で容易に見分けられ る。最近 Suarez, Garcia-Lario, Manchado, Manteiga, Ulla, Pottasch (2006) は post-AGBs, 若い PNe で可視光で見える星の広範な可視スペクトルアトラス を作った。
 高質量の PN は厚いシェルの中? 

 深く埋もれた post-AGBs, PNe はまだ星周シェルの膨張が進んでいない段階 を表している。その上、最も高質量の post-AGB 星の急速な進化はダストシェ ルが光学的に薄くなるまでの時間を与えない。その良い例は IRAS 15103-5754 で可視では観測が出来ない。深く埋もれた post-AGB 星は高 質量 PNe の親星の進化を探る絶好の天体である。

 第1、第2論文の目的 

 シリーズ第1論文のここでは埋もれた post-AGB, PNe の赤外特性を調べる。 用いるのは Spitzer GLIMPSE, MSX, 2MASS で IRAS の候補天体を同定する。 同定された天体の 2MASS 位置は、更に可視候補の探索に使われる。 第2論文ではより深い近赤外観測で、 2MASS で同定できなかった天体の 近赤外同定を試みる。


 2.サンプル 

 選択基準 

(i)測光精度   
    FQ(1) ≥ 1
    FQ(2) = 3
    FQ(3) = 3

(ii) カラー
    Fν(12)/Fν(25) ≤ 0.5
    Fν(25)/Fν(60) ≥ 0.35

(iii)FQ(4) = 3 の場合にのみ、以下の基準を採用。
    Fν(60)/Fν(100) ≥ 0.6

(iV)低変光度      VAR ≤ 60

(v)Simbad で若い星とされていない。

(vi)既知の星形成領域の境界近くにない。

 SED からは YSO を post-AGB, PNe と区別することは難しい。一方、 Herbig Ae/Be 星は特徴的な SED ダブルピーク、可視で明るいことから 見紛れることは少ない。上の基準で選んだ領域は他種との混ざり合いが 小さい。

 個別天体の先行研究  
IRAS Authors  
15452-5459 Sahai et al 2007  
17150-3224 Kwok et al 1998, Hrivnak et al 2004
13356-6249 van de Steene et al 2000
13529-5934  
15144-5812   
17009-4154   
17088-4221   
17516-2525 Siodmiak et al 2008
18135-1456   
17404-2713 van der Veen et al 1989
17487-1922   
17516-2525   
18071-1727   
19374+2359   
17540-2753 Oudmaijer et al 1995  
18135-1456   

図1.IRAS 2色図上のサンプル位置。細実線=天体区分境界。太実線= Bedijn 1987 の AGB 星。OH/IR 星 (Sivagnaman 1989, te Lintel Hekkert et al 1991), T Tau, Herbig Ae/Be 星、CHIIR の範囲を示す。それらは post-AGB, PNe と 重なる。カラーの定義は [A]-[B] = 2.5 log[Fν(B)/ Fν(A)]


 3.データ 

 2MASS 

 J, H, Ks 画像は 1"/pixel で像分解能は 5" である。 10σ 検出限界 は J = 15.8, H = 15, Ks = 14.3 mag である。

 MSX 

 MSX は |b| ≤ 5° の帯で、A(8.28μm) = 160 mJy, C(12.13μm) = 1200 mJy, D(14.56μm) = 1000 mJy, E(21.3μm) = 3000 mJy である。
 GLIMPSE  

 GLIMPSE は b = [-1, 1], |l| = [10, 65] を 3.6 μm = [0.5, 439] mJy, 4.5 μm = [0.5, 450] mJy, 5.8 μm = [2, 2930] mJy, 8 μm = [5, 1590] mJy で観測した。



図2.上段:IRAS17359-2902 の 左=2MASS (J+H+Ks) と右=Spitzer 3.6, 4.5. 8.0 μm を組み合わせた同定例。
下段:IRAS17010-3810 の 左=2MASS (J+H+Ks) と右=MSX A = 8.24 μm を 組み合わせた同定例。


 4.同定 

 感度と空間分解能 

 夫々のサーベイは感度と空間分解能、それに空間カバー域に特徴がある。 それを組み合わせて最適な位置同定を行った。

 同定画像 

 119/165 天体の位置には 2MASS 画像上に天体があった。そして、 80/119 天体の 2MASS 同定は確実と考えられる。表1にある 同定の確実な 80 天体は 表2にその座標、J, H, Ks 等級を載せた。図3にはそれらのファインディング チャートを示す。2MASS と IRAS の座標差は通常 5" 以下である。それを越す 同定の場合は GLIMPSE か MSX 画像による同定を間に挟んでいる。
 39 未同定天体 

 39/119 天体は赤外源はあったが、 2MASS 画像が広がっていたらり、混入 の問題が合ったりして、2MASS PSC には載っていなかった。 それらのリストは表3に示す。それらの(非)同定チャートは図4 に示す。

 近赤外に無しの 46 天体 

 最後に 46/165 天体は 2MASS 上に天体が見つからなかった。それら を表4に示す。それらの大部分は MSX で、多くは GLIMPSE で見えているが、 近赤外で見えない。IRAS 16245-3859, IRAS18385+1350, IRAS21537+6345 のみが GLIMPSE でも MSX でも見えなかった。


 5.議論 

 5.1.IRAS 天体の減光度 

 半数は可視で見えた。 

 DSS 赤乾板を調べた結果、59/119 天体が確認された。これ等の事実に基づ いて、サンプルを次の3つに分類した。

 (1) タイプ-m  

 2MASS でも DSS でも見えない。mid-IR 天体。

 (2) タイプ-n 

 DSS では見えないが 2MASS では検出される。

 (3) タイプ-o 

 DSS, 2MASS どちらでも見える。
 後に伸ばす天体は  

 タイプ-m 天体は、つまり表4に載っている天体である。この天体の研究は 後の論文で扱う。また、 2MASS の空間分解能のために同定が不確実な表3 天体の研究も後に伸ばす。

 ここで扱うのは 

 ここでは表2に載っている、つまり 2MASS PSC 上で同定が確認された 天体を扱う。


 5.2.表2天体のスペクトルの性質 


図5a.黒丸=タイプ-n と 白丸=タイプ-o 天体の(J-H)-(H-Ks) 二色図。

 (J-H)-(H-Ks) 二色図を見ると、大部分が (J-H) = [0.3, 3], (H-Ks) = [0.2, 3] の範囲にある。ただし、いくつかは、H-Ks = 5 に達している。DSS で検出された タイプ-o 天体は (J-Ks) = [1, 2.5] で、一方タイプ-n 天体は (J-Ks) ≥ 2.5 である。

図5b.黒丸=タイプ-n と 白丸=タイプ-o 天体の Ks-(J-Ks) 色等級図。

 この違いは IRAS14521-5300 (タイプ-o)のスペクトルを IRAS14104-5819 (タイプ-n)と較べれば明らかである。



図6a.MSX [8.3-14.7]-[J-8.3] 二色図。黒丸=タイプ-n、白丸=タイプ-o J-[8.3] = 10 の縦点線が n-, o- の分離線になっている。

 タイプ-o と -n の分離は図6の MSX-J 二色図でも明らかである。この図では (J-8.3) = 10 が良い分離線となっている。対照的に MSX 二色図は両者 をあまり良く分けない。

図6b.MSX [14.7-21.3]-[8.3-12.1] 二色図。黒丸=タイプ-n、白丸=タイプ-o 縦横の二本の線が、異なるタイプの星を分けている。

 興味深いことに MSX 二色図では post-AGB と PNe 星は YSO 領域に 近づかない。



図7a.IRAS 二色図。黒丸=タイプ-n、白丸=タイプ-o . OH/IR 星、CHIIR, YSO 領域も示す。

図7b.J-[25] で分けた3領域では タイプ-o からタイプ-n への 遷移がみえる。


 5.3.GLIMPSE 画像でのサンプル星 

 2MASS PSC で同定された IRAS post-AGBs, PNe で GLIMPSE 画像のある星 を図8に示す。殆どの星は点状 FWHM = 2.1" である。 例外は

IRAS18229-1127 4IRAC バンドで FWHM = 3" である。

IRAS18454+0001 8 μm バンドでのみ FWHM = 2.4" (点源 1.9")である。
IRAS18576+0341 3.6, 4.5, 5.8 μm バンドで FWHM = 5" (点源 2")である。 8 μm はサチっているので分からない



 図8:タイプ-n, -o 天体のSpitzer GLIMPSE 画像 











 6.まとめ 

 IRAS post-AGBs, PNe 候補天体の 2MASS, MSX, GLIMPSE 対応天体 165 天体を調べた。119/165 で NIR 対応天体が見つかった。内、 80/119 は PSC に載っていて同定が確実である。それらの 1 - 100 μm SED を与えた。  2MASS PSC 同定のある 80 星の半分は DSS 赤乾板でも見えた。 そこで、サンプルを -m, -n, -o の3タイプに分類し、それらが 2色図上で分離することを確かめた。


 表1:IRAS post-AGBs, PNe 候補リスト 









 表2:2MASS PSC で同定された IRAS post-AGBs, PNe







 表3:2MASS で見えるが PSC にはない IRAS post-AGBs, PNe  





 表4:2MASS で見えない IRAS post-AGBs, PNe  





 表5:2MASS PSC で同定された IRAS post-AGBs, PNe の Spitzer, MSX フラックス 





 図3:2MASS PSC 同定された IRAS post-AGBs, PNe 候補天体の 2MASS 画像と SED 

























































 図4:2MASS に見えるが PSC にない IRAS post-AGBs, PNe 候補天体の 2MASS 画像