高齢散開星団候補の CCD 測光サーベイから、実際に高齢の星団が見つかった。 幾つかは最高齢であった。良く知られている二つの形態学的年齢指数がある。 一つは主系列ターンオフと水平枝の光度差、もう一つはターンオフと巨星枝 のカラー差である。この二つから散開星団を年齢順に並べた。 | 我々のデータに以前他で発表された星団測光データを合わせると、ヒアデス と同じ又はより高齢の星団が 72 個、内19個は M67 (5Gyr) と同じか 高齢であった。特に高齢は Be 17, Cr 261, NGC 6791, Be 54, AM 2 である。 Be 17 と他の高齢星団 Lynga 7 は最も若い球状星団と同程度に高齢である。 高齢星団が多く生き残っていることは、円盤初期には星団形成が中間期より も活発であったことを意味する。 |
ハローと円盤は共に生まれたのか? Wingler et al 1987 は最古の白色矮星は 9 Gyr とした。Garnovich et al 1993, Meynet et al 1993 は NGC 6791 の年齢を同じくらいと定めた。 もし、それが円盤の年齢を表すなら、ハローの形成と円盤進化の開始が 同時期に起きたことになる。なぜなら、最も若いハロー球状星団は 9 Gyr より少し歳を取っている Chaboyer et al 1992 と考えられるからである。 これは、ハローの形成と円盤の成長の間に何らかの連続性があることを 示唆する。しかし、 Carney et al 1990 の観測からは、円盤とハローは 切り離されているという印象を受ける。 星団年齢分布 問題は最古の円盤星を見出すことである。信頼できる年齢が得られる天体は 星団である。球状星団 135 個に加え、1200 の散開星団が知られている。 その 1/3 程度に年齢その他のパラメタ―を決める測光が行われている。 Spitzer 1958 は分子雲との力学作用による散開星団の破壊タイムスケール を 数億年と見積もった。Janes 1988 は年齢が測られた星団の年齢中間値は 1 億年であるとした。 |
高齢星団候補リスト 年齢数十億年を生き延びた散開星団の数は数個しかなく、その大部分は 外側円盤に位置し、かつ円盤から外れていた。King 1964 は POSS 上で 外見が古そうに見える星団のリストを発表した。彼の基準は、巨星の比率が 高い星団は古い、である。今ではリストの大部分が観測され実際ヒアデスより 古いことが判っている。Janes, Adler 1982 同じ手法で少し広げた高齢星団 候補のリストを発表した。 古い星団候補 Janes, Phelps 1990 は Lynga 1987 の "Lund Catalog of Open Clusters" を基に星団を体系的に調べた。彼らは角直径 10 arcmin 以下でトランプラー リッチネスクラス "r" か "m" の星団に限定した。我々はそれに習い、 星の数が多く、フィールドから明らかに分離していて、同じくらいの明るさの 明るい星が多数存在する星団を選んだ。 |
主題 現在では Janes, Phelps や Janes, Adler リストの星団の多くが観測済み である。本論文では残りのほぼ全てにたいする我々の観測を過去の観測と共に 報告する。星団の多くは暗く、混み合った領域にあるが、 1 m クラスの望遠 鏡+CCDで主系列まで届く。 望遠鏡 KPNO と CTIO の 0.9 m 鏡と KPNO 2.1 m 鏡が使用された。研究目的は どの星団が実際高齢かを選別し、大体の年齢を確認することなので、観測 は他の高精度観測に向いていない時のすき間を用いることが多かった。 |
データ処理 IRAF/CCDPROC パッケジが使われた。標準星には Landolt 1983 と Graham 1982 E 領域を用いた。Montgomery 1993 の M67 系列も標準星とした。 しかし、観測の幾つかは条件が悪く、標準 BVI システムへの変換が難しい。 しかし、その場合でも平行移動とカラー変換ファクターを除けば CMD 上の 形は同じである。 ゼロ点の問題 Bolts 1992 が注意しているように、CMD 形態を見出すには等級、カラー のゼロ点は分からなくともよく、カラー変換の係数で十分である。 表1には観測の情報と星団をまとめた。個々星の測光結果を載せないことに したのは、データ量が膨大になるせいもあるが、いくつかでは等級が 装置等級のため不必要な誤解を招くおそれがあるからである。 |
形態学年齢 形態学年齢という概念は Anthiny-Twarog, Twarog 1985 が導入した。 彼らは(水平枝と主系列ターンオフ間の等級差)と(ターンオフと巨星枝間 のカラー差)との比を計算した。散開星団で水平枝に対応するのはクランプ である。そこで、我々は第1年齢パラメタ―として、 δV = ターンオフとクランプの等級差を取り上げた。 ターンオフ等級の定義 観測的にはターンオフ等級は CMD 上で最も青い点の等級である。しかし、 星団星の系列はその付近でほぼ1等級の間垂直に立つ。散開星団の場合、 それに加え、球状星団よりずっと少ない星の数、多くの散開星団には連星に よる第2系列が見られるという問題がある。もっとよい方法は、 CMD 上 ターンオフと巨星枝基底との間での変曲点の等級をターンオフ等級とする ことである。このパラメタ―は測光精度が悪い場合でもよく定義され、 連星系列が存在する場合でも、フィールド星が多数あっても決められる。 今後はこの変曲点等級をターンオフ等級と呼ぶ。ターンオフ等級を決める δ1 もう一つの年齢パラメタ―は δ1 で、その定義は、主系列上ターン オフ等級での最も青い点とターンオフ等級より1等明るいところでの巨星枝 とのカラー差である。このパラメタ―はクランプがはっきりしない星団にも 使えるので特別に有用である。ただし、若い星ではターンオフより1等以上 明るい巨星枝を持たないので、 1.5 - 2 Gyr より若い星団には適用不能である。 BDA =散開星団情報データベース 図1には δV と δ1 の決定を図示した。我々はこのやり方で 得た CMD から年齢を決めて行った。表1には我々が観測した新しい CMD の 観測を示す。文献中の星団に関しては、その多くを BDA =散開星団情報 データベース (Mermilliod 1992) からのデータを用いた。 |
![]() 図1.Montgomery et al 1993 の M67 観測データからの δV と δI 決定の図示。大きな十字=主系列ターンオフ。小さい十字=クランプ。 両者は δV 測定に使用された。主系列ターンオフより1等明るい巨星枝 上の点は δI 決定に使用された。 |
δ の測定の実際 表1の新しい観測 CMD に対しては、Phelps と Janes が独立にターンオフ 点等を定め、比較した。いくつかではカラーで 0.02 mag, 等級で 0.2 mag 以上の差が出た。それは再検討して適正な値を決め直した。その多くは 星の数が少なくてクランプが決めにくかったことが原因である。 表3=クランプのない若い星団 表2には高齢星団と判断されたものを載せた。いくつかの星団はクランプ がなく、若いと判断した。それらを表3に示す。 ![]() 表3.クランプのない「若い」星団 |
表4=周りが込み過ぎた星団 いくつかの星団の周りは混み合い過ぎていて年齢が決められなかった。 それらを表4に載せた。それらは高齢の可能性が残されている。 Phelps と Janes 年齢の差 Phelps と Janes 年齢の差は年齢決定不定性の指標になる。39 星団に対する 差の rms は δV で 0.1 mag, δ1 で 0.02 mag であった。 ![]() 表4.周りが混み合い過ぎていて年齢未定の星団 |
![]() 図2.BV CMD から決めた δV と δ1 の関係。曲線= 最小二乗フィット。 図3= δV(VI) と δ1(VI) の関係 フィルターの組合わせで BV セットと VI セットができる。それぞれから δV(BV), δV(VI), δ1(BV), δ1(VI) が得られる。 図2にδV(BV) と δ1(BV) の関係を示す。最小二乗フィットの 式も図中に示した。図3には δV(VI) と δ1(VI) の関係を示す。 最小二乗フィットの式も図中に示した。 δV 精度 表5にはこうして δ1 から計算した δV を載せてある。 CMD が最もしっかりしている星団には "a" を付与した。δV の評価 が困難な星団は "c" である。δV 精度は "a" で 0.1 mag だが "c" では 0.2 mag に落ちる。 |
![]() 図4.測定した δV と δ1 から図2、3の近似式を用いて 計算した δV の比較。黒点=BV セット。バツ= VI セット。 直線はフィットでなく、原点を通る勾配1の線。 ![]() 図3.VI CMD から決めた δV と δ1 の関係。曲線= 最小二乗フィット。 |
一貫した年齢推定 表5には δV はヒアデスと同じか、それより大きい72星団を載せた。 少なくとも 19 星団が M 67 と同じかより高齢である。今回初めて、銀河円盤 の進化を議論できるほどの数の高齢星団が得られた。また、我々の体系的な 年齢付けは個々の星団の年齢に関してこれまでに生じた論争の処理に役立つ。 M67, NGC 188, NGC 6791 年齢の混乱 この3つは球状星団の形成と円盤の形成時期が重なるかどうかに関して 重要な星団であるが、年齢の合意がまだない。NGC 188 を例に取ると、 VandenBergh 1985 NGC 188 は 10 Gyr A-Twarog,Twarog 1985 NGC 188 CMD が NGC 6791 と類似。 A-Twarog,Twarog 1989 NGC 188 は M 67 (3.5-6 Gyr) と 2 Gyr ずれない。 Demarque 1992 NGC 188 は NGC 6791 より 1 Gyr 若い。 Friel, Janes 1993 高メタルなら NGC 188 は NGC 6791 より高齢。 Demarque et al は独自の等時線を用いて、 M 67 = 4 Gyr, NGC 188 = 6.5 Gyr, NGC 6791 = 6.5 - 9 Gyr とした。 形態学年齢 Buananno et a; 1989 は形態学年齢は等時線フィットに較べ、メタル量効果 を受けにくいので、相対的年齢順位付けに向いているとした。我々の δV で見ると、M67 = 2.3, NGC 188 = 2.4, NGC 6791 = 2.6 である。 新しい高齢星団 表6に最高齢星団を示す。新しく加わったのは Be 17, Cr 261, NGC 6791, Be 54, AM 2 である。 Be 17 は δV = 2.8 でおそらく最高齢星団 であろう。最近 Ortonani et al 1993 が研究した Lynga 7 は若い高メタル 球状星団か、最高齢散開星団かが議論を呼んでいる。彼らの CMD から δV を測ることは難しいが、星団が非常に高齢であることは CMD 全体 の様子から分かる。 |
![]() 表6.最も古い星団。 球状星団と散開星団形成時期のギャップ が埋まる? このように高齢星団の数が増したので、円盤形成の議論が深まる。 以前最高齢と考えられていた NGC 6791 9 Gyr が球状星団の年齢には 届かなかった Chaboyer et al 1992 のに対し、Be 17 は若い球状星団と 同じ年齢で、おそらく Lynga 7 も同程度と考えられる。これは、 球状星団と散開星団の形成時期の空隙を埋める発見である。 |
図5=高齢散開星団の δV 頻度
図5には高齢散開星団の δV 頻度を示す。Garnovich et al 1993 の 得た NGC 6791 (δV = 2.6) 年齢= 9 Gyr を仮定すると、 10 Gyr 昔にかなりの星団形成があったことになる。散開星団寿命の典型値が 1 億年 (Janes 1988) であることを考えると、 δV = 2.3 付近に ピークが残っていることは驚くべきことである。 星団形成ピーク δV = 2.3 は年齢 5 Gyr に対応する。これは平均寿命の 50 倍である。 銀河系の初期に広範な星形成が起きたことを示唆する。δV = 1.6 - 2 のギャップは t = 3 Gyr に相当し、Noh, Scalo 1990 が主張した星形成 ギャップに合致する。詳細は論文2述べるが、少なくとも円盤の星形成が 一様でないことは分かる。 |
![]() 図5.δV 頻度分布。 |
![]() 図7.King 5 の VI CMD. |
![]() 図9.NGC 1798 BV 機械等級 CMD. |
![]() 図11.Be 20 の VI 機械等級 CMD. |
![]() 図14.NGC 2192 の BV CMD. |
![]() 図15.Be 28 の VI CMD. |
![]() 図20.NGC 2627 の VI CMD. |
![]() 図21.NGC 2671 の BV CMD. |
![]() 図22.NGC 2849 の VI CMD. |