銀河中心にある明るい He I 輝線星に対する定量的な赤外分光の結果を報告する。 He I と H の幅広の輝線は極端に若い星からの星風 (dM/dt = 5 - 80 × 10 -5 Mo yr-1 と 比較的遅い (V = 300 - 1000 km/s) 小さな 放出流が原因である。 | 星の有効温度は 17,000 から 30,000 K に渡り、光度は 1 - 30 × 105 Lo である。He/H が見出された。これ等の結果は星は進化した 青色超巨星であり、ウォルフ・ライエ星に近い進化段階にあると考えられる。 これ等の星は数百万年前に生まれた大質量星星団に属し、 銀河中心の 1 pc 領域にエネルギーを注入している。 |
He I 輝線星の星団は Krabbe et al 1991 により発見された。Najjaro et al 1994 は最も明るい星 (AF star) の He I 2.058 μm から AF star は高ヘリウムの 青色超巨星/ウォルフライエ星であることを明らかにした。これ等の星からのライマン 連続光が銀河中心 pc 領域の励起源である可能性があり、他の He 星も分光が 必要となった。 | この観測の結果、Krabbe et al 1995 は 7 百万年前を中心に約 4 百万年続いた 星形成バーストが存在したと結論した。また、視線速度の統計から中心ブラックホール の質量は 3 百万 Mo とした。この論文は 8 個の He 星の分光結果を述べる。 |
観測と減光補正 表1に減光補正後の観測結果を載せた。減光は、 A(K) = 1.53 E(H-K) A(λ) = A(K)(λ/2.2μm)-1.75 を仮定した。 He I ライン He I 2.112 μm ラインのみでは星に制限を付けるのは無理である。大きな理由は λ/$Delta;λ = 1500 の分解能で、 CIII/NIII 2.103 μm, CIII 2.108 μm, CIII 2.121 μm が分離できても、CIII/NIII 2.115 μm との分離は 出来ないからである。この結果、観測 He I 2.112 μm フラックスは上限と 見なされる。 |
![]() 表2.2.11 μm 近くの He I, C III, N III ライン. |
大気モデル 簡単に H/He のみからなる大気を考えた。レベルは H で 12, He I で 49, He II で 12 である。 右図は IRS 7W と IRS 13E1 のスペクトルである。 IRS 7W IRS 7W は最も熱く(Te=30,000 K)、しかし最も暗い星である。 半径 23 Ro は他の星の半分である。スペクトルは明らかに WN8 より晩期で、多分 WN 9 か WN 10 であろう。He/H > 500 で強い水素欠乏を示す。 IRS 13E1 かなり熱い Te=29,000 K. IRS 7W と同じく水素線は見えない。スペクトル型は WN 9 か WN 10 である。質量放出率は 8 &tomes; 10-4 M/yr と大きい。 図1.左:IRS 7W 実線=観測。破線=モデル。上から He I 2.058 μm, Bγ, He I 2.112 μm 右: IRS 13E1. |
![]() |
IRS 16 天体= IRS 16NE, C, SW, NW IRS 16NE, C, SW, NW は He/H = 1 で互いに近い。また、 Te と L も互いに 似ている。これ等の星は同時期に生まれたのではないか。 |
IRS 15 SW と IRS 15NE IRS 15 SW と IRS 15NE は Te = 25,000 K で IRS 16 天体より少し 高温である。しかし、それらは水素線を示さずおそらく純粋なヘリウム星であろう。 この 2 天体は transition 期にあると考えられる。 |
IRS 7W と IRS 13E K バンドスペクトルは強い N ラインを欠くために、ウォルフライエ星の同定は 困難である。しかし、Te = 30,000 K, 水素なし、高い "performance "数 η = 17(IRS 7W), 25(IRS 13E1) から両者は WN9 - WN10 であろう。 IRS 15Ne と IRS 15SW これらの進化段階の決定はやや問題がある。 水素線がないことはウォルフライエ 星を指し示す。しかし、他のパラメタ―は Ofpe/WN9 星に近い。WN9 - WN11 分類に する際の最大の問題点は有効温度が低いことである。 IRS 16 星 IRS 16 星たちには Ofpe/WN9 分類は保持する。それらの He 量や有効温度は AF 星 に近く、それらの星パラメタ―も既知の Ofpe/WN9 星に一致するからである。ただし、 He 量が高いこと以外ではそれらの R*, T*, L* は P Cyg のような LBV とも似ている。 7±1 × 106 年前の星形成バースト Krabbe et al 1995 は中心核星団を調べ、 7±1 × 106 年の古さを持ち減衰していく星形成バーストで 30,000 個の星が形成されたと 結論した。星団の光度は Lbol = 2.7 × 107 Lo で 輻射光度/ ライマン連続光光度 = 10 である。このモデルは 15 個の OB 星 (L ≥ 3 × 105 Lo), 30 個の晩期型ウォルフライエ星 (WNL, WCL, He I 星)、 2−4個の K-M 超巨星を予言する。さらに 1 SN/(4×104年) は Sgr A East の解釈に合致する。 108 年前の星形成バースト その上、中心 8″ 内にある、 約 10 個のかなり明るい晩期型星 (Haller,Rieke 1989)はおそらく 108 年前の星形成を示唆する。 これは、 Rieke,Lebifsku 1982 と Allen,Sanders 1986 が提案した、銀河中心 1 pc のエネルギーは高温度星の集団が供給しているという考えに合致する。この論文で 調べた 8 星だけで 3 × 1050/sec のライマン光子(電波連続光 から推定されたライマン光の 60 %) を出している。 |
![]() 図4. He I 星の位置。進化トラックは Schaller et al 1992 による Z = 2 Zo のもの。 高温度星集団からのライマン光子 結論として、高温度星集団からのライマン光子は銀河中心 1 pc を説明できる。 しかし、これらのどれも He I 連続光には寄与していない。IRS 13E1 でさえも、 Sgr A WEST 電離領域の He 電離に必要な光の 1 % しか寄与していない。したがって、 もっと高温の O 型星 と/または WR 星が必要とされる。Krabbe et al 1995 では 候補となりえる WC9 星が二つ検出された。IRS16 SE-1 と IRS16 SE-2 は 2.11 μm 輝線が幅広で C IV の 2.07, 2.08 μm もあり、 WC9 星と同じである。WR 星の 発見数は近年増加している。 |