The Galactic Center Environment


Morris, Serabyn
1996 ARAA 34, 645 - 701




 アブストラクト

 銀河系の中央 0.5 kpc (= ±2°) は中心部の環境でしか見られない 珍しい現象が数多く存在する。ここでは銀河系のポテンシャル中心に流れ込む 物質流の観点から観測的な星間物質の構造を解説する。多くの散逸過程が半径 200 pc の中心分子帯 (CMZ) に強いガス集中を引き起こす。そこでは分子が 大きな密度、大きな速度分散、高温、強い磁場の環境に存在する。 このような ガスの物理状態と結果としての星形成は、銀河円盤の他の場所とは大きく異なる。 星形成で消費されなかったガスは、高温 X-線放射ハローに入って銀河風として 失われるか、さらに数 pc サイズの中心核円盤を経由して、ついには中心 1 pc 領域にまで落ち込むかである。そこでは、流入物質による星形成と星風による ガス放出とがリミットサイクルを構成し、中心電波源 Sgr A* は流入物質の ほんの僅かしか受け入れないようである。 







図1.CMZ。上:12CO J = 1-0. 下: IRAS 60 μm 放射。比較的 暖かいダスト。

 2.2.中心分子帯 (CMZ)

 ガス密度 

 4 kpc 分子リングの内側、数百 pc まではガス密度が低い HI/H2 混在層が多分傾いて存在する。しかし、半径 200 pc で主に分子からなる 高密度(n ≥ 104 cm-3)で高充填率 (f ≥ 0.1), 高温 (T = 30 - 200)、M = 5 - 10 107 Mo の CMZ へと変わる。 このような高密度は通常分子雲コアでのみ実現されるが、 CMZ においては 強大な潮汐力に対抗するため、このような密度が必要とされている。しかし、 高密度は要請される値としても高い面密度 (数百 Mo pc-2)や 大きな総質量は必要があるわけではない。したがって、質量の流入が想定される。

 ガス温度 

 CMZ の平均ガス温度は 70 K で、通常の分子雲や CMZ に共存するダストと 較べても高温である。これはガスの直接の加熱を示唆する。超音速の速度 散布度 15 - 50 km/s も又 CMZ の特徴である。これは乱流エネルギーの散逸 がガスの加熱源である機構を示唆する。

 180 pc 分子リング 

 CMZ の最外側に位置する。準連続的な構造。速度は 130 - 200 km/s. リングの速度と傾きはその外側にある HI 円盤と連続的につながっている。 この事実は 180 pc リングは HI/H2 遷移の境界にあることを 示唆するのかも知れない。
内側分子雲種族 

 CMZ の内側には、低速度 100 km/s の分子雲種族が存在する。 それらの分布は銀河面に密着しており、銀河中心円盤種族と呼ばれる。この円盤 種族には糸状の雲が含まれその速度は 30 - 100 pc に亘って次第に変わっていく。 これはダストレーンまたは潮汐力で引き伸ばされた雲の腕を示唆する。 これらの幾つかは総分子質量のかなりの割合を占める。銀河系内で最も大きな 分子雲である Sgr B2 は CMZ 分子質量の 5 % を占めている。

 50 km/s 雲 

 それらの分子雲の一つ 50 km/s 雲は、見かけ上銀河中心のすぐ脇にある。そ れは Sgr A 複合体を含んでいる。Sgr A は次の3成分から成る。
(i) Sgr A West = 中心恒星集団の中央にある HIIR
(ii) Sgr A East = 少し大きい非熱的電波源。銀河中心から離れているが、 見かけは Sgr A West を包み込む。
(iii) Sgr A* = 稠密な中心電波源 


 

 電離ガスと赤外放射の分布は分子より対称性が高い。これは分子雲に較べ、 加熱源の分布がより対称的であることを示す。特にダスト温度は 中心ピークから R = 200 pc での 23 K まで規則的に r-0.3 で 変化する。LFIR(CMZ) = 109 Lo である。


 2.3.熱い成分 

 2.4.磁気圏 


図2.Northern and Southern Threads の 20 cm 放射図。縦スケール=16.5 arcmin = 40 pc. Sgr A は中央下に見える。左上の電波アークは望遠鏡の 主ビームを外れているので弱い。

図3. HIIR G0.18-0.04 の 60 μm 偏光マップ。重ねて示したのは 6 cm 電波図。重ねた等高線は CS 短線の向きは電波ベクトルの位置角を示す。


 3.中心バー:銀河中心付近のガスの運動 

 3.1.バーポテンシャルによるガスの運動 


図4.12CO の l-v 図。基線は銀河面に 6° 傾き、 (l, b) = (2.5, -0.333) と (-2.0, 0.1333) を結ぶ。この傾きは  180 pc 分子リングの傾きに合わせた。

 3.1.1.強いバーの存在下での分子雲の運動 

 3.1.2.膨張分子リング対バー 

 3.2.中心核へのガスの内向き輸送 

 3.3.m = 1 波の証拠 


図5.X1, X2 軌道と衝撃波の位置を示す図。 衝撃波は最内側 X1 軌道と最外側 X2 軌道との交差に より起きる。


 4.星形成 


図6.G0.121+0.017 星団 Keck 2.2 μm 画像

 5.中心核周辺物質:円盤またはデブリ? 


図7.12.8 μm Na+ 輝線による Sgr A West HIIR



図8.中心核円盤の画像。(a): 90μm 連続光と HCN J = 1 - 0 輝線。 (b) 2 μm H2 輝線。(c) H2 輝線速度場。 最大速度は楕円状輝線主軸の端ではないことに注意。速度分布のノードは 短軸に沿っていない。

  


図9.Sgr A 複合。最外側白線= Sgr A East シェル。4番目の白線とその奥 = 圧縮された 50 km/s 雲層。グレースケール像と破線=膨張電波シェル。 黒線=中心核円盤。  

図10.Sgr A* の SED。  



図11.Sgr A* 付近の高分解 K バンド画像。