The VLT/VISIR Mid-IR View of 47 Tuc


Momany, Saviane, Smette, Bayo, Girardi, Marconi, Milone, Bressan
2012 AA 537, 2 - 15




 アブストラクト

 種族 II 赤色巨星の質量放出が開始される光度に関し論争が継続中である。VLT/VISIR による 47 Tuc の 8.6 μm 撮像を報告する。この天体は問題の中心として、多くの Spitzer 観測が行われてきた。VISIR 高分解能像は可視のハッブル画像ときれいな対応が付く。 特に、中心 1.15 arcmin 核部では巨星枝上部 3 等のブレンドなしのクリーンなデータが 得られた。
 我々の色等級図は暗い赤色巨星に赤外超過を認めなかった。近赤外と中間赤外 を組み合わせたグラフにもダストが存在する巨星の存在はなかった。ダスト RGB, AGB は長周期変光星に限られる。特に、RGB の場合ダスト星は先端から 1 等以内に限られる。 これは光度では 1000 Lo になり、以前からマスロス開始期として提唱されてきた値である。 この光度からは理論的等時線と実際の巨星カラーの間に差異が生じてくる。

 1.イントロ 

 Origlia et al 2007 の 47 Tuc で水平枝光度まで下の RGB に中間赤外超過を認めた という発見は、Boyer et al 2008, 2010 によりブレンディング効果として否定された。 しかし、それに対し Origlia et al 2010 は反論し、それに McDonald et al 2011 が 再反論するなどして未だに決着がついていない。

 47 Tuc を高空間分解能で中間赤外撮像して、ブレンディングの有無を明確に することが肝心である。そこで、8.6 μm 地上望遠鏡観測を行った。


 2.観測 

 2.1.VISIR 画像データ 

 VISIR は VLT/UT3 カセグレン焦点に設置され、N-バンド(8-13μm) と Q-バンド(16-24μm) の解析限界画像を撮る。今回は VISIR/PAH1, λ C=8.59μm, Δλ=0.42μm, を使用した。
一般には VISIR N8.6μm 画像は HST 可視対応天体を持つ。 図1上には 2MASS K-画像の上に VISIR 32″.5 × 32″.5 の 11 枠を重ねた。ポインティング#7 は星団中心に置かれた。モザイクの測光値は この画像の等級から重なった部分を用いてつなげていった。 図1下には #7 VISIR 画像を示す。HST 天体と 1 対 1 対応していることが判る。 2か所に限られるが、2′ 以内の二つの星は空間分解能が低いとブレンドする ことになる。

 2.1.VISIR 分光データ 

 明るい AGB 星 V8 の R=300 スペクトルを &lambdaC=9.8μm &lambda=11.4μm の二つ撮った。


図1.上:2MASS K-バンド画像上に VISIR-Mozaic 配置を示す。
下:中心(F#7)VISIR 8.6 μm 画像。赤丸=2″.0 径で潜在的な ブレンディング候補。丸十字=星団中心。四角=ポインティング #7 で 同定された天体。白班=チョッピングによる反転星像。




 4.HST/VLT 色等級図 



図5.可視 HST CMD から選んだ AGB 星を N8.6μm - (mF606W- 8.6μm) 色等級図上で同定した。


図6.RGB 固有巾の推定。左: RGB 平均線。 (mF606W-8.6μm) ≤ 1.5 は省いた。
右:真直ぐに引き伸ばした RGB 系列。






図7.可視-中間赤外色等級図上に t = 12.59 Gyr, Z=0.004 パドヴァ等時線を重ねた。 (m-M)o = 13.38, E(B-V) = 0.055 採用。破線=TRGB, 水平枝は N8.6 = 12.1 に期待。丸=LPV. 緑矢印= 1000 Lo



図9.左: SOFI による Ks-(J-Ks) 図(Salaris et al) 丸=VISR で同定。
右:VISR で同定された星のみの色等級図。破線= Origlia et al 2007 で色超過 とされた境界線。


図8.τ1μm = 0 と 1 とで、カラーと等級が どう変化するか?


 結論 

RGB マスロスの証拠はなかった。