Red Giants in Open Clusters XII. Six Old Open Clusters NGC 2112, 2204, 2243, 2420, 2506, 2682


Mermilliod, Mayor
2007 AA 470, 919 - 926




 アブストラクト 

 6つの高齢散開星団中の 123 赤色巨星のメンバーシップと連星かどうかを 決め、赤色巨星枝の進化経路を研究した。 185 回の CORAVEL 分光観測と測光 観測を行った。視線速度から 93 赤色巨星の帰属が確定した。分光連星が7つ 確認された。加えて 11 星が連星の疑いがある。この連星率 19 % は平均値 より少し低い。  BaII 星 NGC 2420-174(D) と NGC 2420-250(X) の連星軌道要素が初めて 決定された。星団平均視線速度は大きく改善された。新しいメンバーシップ の確定とと連星の検出の結果、赤色巨星の進化経路が正確に決定された。 NGC 2506, 2420, 2204 の多くの星から AGB が決定されたが、その位置は モデルの予想位置と大きく異なっている。


 1.イントロダクション 

 メンバーシップの確定と分光連星の同定 

 星団 RGB/AGB 形態学には、星団メンバーシップの確定と分光連星の同定が 欠かせない。主星=赤色巨星と伴星=主系列星の合併カラーは、赤色巨星枝の星 を、赤色巨星進化経路からヘルツシュプラングギャップにまで動かしかねない。 従って、星団の CMD 解析には、連星かどうかの判断と視線速度によるメンバー シップ診断の二つが必須である。
 観測例が少ない 

 しかし、 M 67 を除くと、視線速度=RV の観測が揃っている星団は少ない。 さらに、速度精度が低く、メンバーシップや連星系の確定が難しい例も多い。 そこで、我々は高い精度の RV を得る観測を行った。


 2.観測 


表1.NGC 2112 赤色巨星の視線速度

 2.1.NGC 2112 

 1.5 m デニッシュ望遠鏡の限界で 6 星しか観測できなかった。 3星 #316, 401, 402, がメンバーと考えられる。#116, 216, 317 は非メン バーである。#318 は連星であるならメンバーの可能性がある。#416 は明ら かに非メンバーである。#401, 402 は連星である。今回は B = 15 まで だったが、 V = 14.5 までの観測でサンプル赤色巨星の数を増す必要がある。

 2.2.NGC 2204 

 V < 14.15 の 35 巨星の観測が行われた。サンプルにはクランプ巨星全て を含む。結果は表2に示す。
 #1129 は2回の観測から連星らしい。#1136, 3304, 4119, 4132 は星団 平均から 2 km/s 外れていて、連星運動かも知れない。

表2..NGC 2204 赤色巨星の視線速度




表4.NGC 2420 赤色巨星の視線速度

 3.5.NGC 2420 


図1.NGC 2420 の BaII 連星 #250 の視線速度曲線。

 NGC 2420 内 B < 14.6 の 31 赤色巨星の視線速度を測った。 表4に結果をまとめた。他の観測と合わせ、25 星はメンバーで 11 星はおそらく非メンバーである。既に連星と知られている #173, #250 に加え、 #34 が新たに確実な分光連星と分かった。 さらに平均速度との差が大きいことから 5 星が連星の疑いがある。

 3.3.NGC 2243 


表3.NGC 2243 赤色巨星の視線速度

図2.NGC 2420 の BaII 連星 #173 の視線速度曲線。


表5.NGC 2420 内の連星の軌道要素


 3.5.NGC 2506 


表6.NGC 2506 赤色巨星の視線速度  

 3.6.NGC 2682 


表7.NGC 2682 赤色巨星の視線速度  


 4.議論 

 4.1.連星の頻度 

 4.2.CMD 


図3.NGC 2204 の CMD.黒丸=メンバー。白丸=連星メンバー。十字=非メンバー。 実線= Girardi et al 2000a の Z = 0.08, log t = 9.25 等時線。 m-M = 13.28, E(B-V) = 0.07  

図4.NGC 2420 の CMD.黒丸,三角=メンバー。白丸=連星メンバー。 十字=非メンバー。点=COEAVEL 観測のない星。三角等級は写真測光。 実線= Girardi et al 2000a の Z = 0.08, log t = 9.30 等時線。 m-M = 12.15, E(B-V) = 0.04



図5.NGC 2506 の CMD.黒丸=メンバー。白丸=連星メンバー。 十字=非メンバー。点=COEAVEL 観測のない星。 実線= Girardi et al 2000a の Z = 0.08, log t = 9. 等時線。 m-M = 12.65, E(B-V) = 0.04  

図6.NGC 2682 の CMD.黒丸,三角=メンバー。白丸=連星メンバー。 十字=非メンバー。点=COEAVEL 観測のない星。三角等級は写真測光。 実線= Girardi et al 2000a の Z = 0.02, log t = 9.65 等時線。


 NGC 2420 

 図3−6は星団 CMD と Marigo et al 2000a モデルによるフィットを示す。 Teff から B-V への変換は上部巨星枝でモデルの方が青くなる結果となった。 NGC 2204 のレッドクランプは Girardi et al 2000b で解析された。 NGC 2420 の CMD はこれまでも Pols et al 1998, Castellani et al 1999 にモデルフィットに使われた。

 NGC 2682 

 NGC 2682 の CMD は特に細い RGB と良く定義されたクランプを示す。

 NGC 2506 

 NGC 2506 の AGB はモデルから外れている。観測 AGB はモデルより ずっと青いか明るい。

 疑問 

(1)クランプの上は AGB 系列と考えてよいのか?

(2)モデルは信頼できるのか?

図7.NGC 2204, NGC 2420, NGC 2506 の合成 CMD. 黒丸=メンバー。 白丸=連星メンバー。三角= AGBs.  


 5.結論 

 RV により星団メンバーシップを確定できることが分かった。 その結果、 93 の赤色巨星メンバーを確定した。メンバー星 CMD には、 赤色巨星枝、クランプ、連星効果が明らかに見える。  クランプより上では、観測星がモデルよりも明るいか青いという効果が 見られる。これは NGC 2506 で最もはっきりしている。その効果は NGC 2204, 2420, 6819 にも認められる。