MIRAC2 中間赤外カメラを IRTF と UKIRT につけて、PPN 候補星 66個 の撮像サーベイを行った。撮像は δλ/λ = 0.1 の狭帯 フィルターで行い、空間分解能は 1" である。17/66 個が空間分解された。 48/66 個は分解されなかった。1/66 個は検出されなかった。 幾つかの天体では、可視と赤外の位置の一致を確認した。 | サンプルは PPN 以外に extreme AGB 星、若い PNe, 超巨星、 LBV 星を含む。 T = 150 K 程度に冷たく赤外で明るい天体のダストシェルは 分解しやすいことが分かった。空間分解した 17 天体のうち 11 天体は 広がっており、その中間赤外画像から二つの形態クラス=コア/楕円体と 円環(トロイダル)に分かれる。コア/楕円体クラスは未分解のコアと その周りに薄く広がる低輝度星雲とから成る。円環(トロイダル)クラスは 両端が明るく、赤道面上の密度超過を示唆する。コア/楕円体型の方が 円環型よりもシェルの光学的厚みは大きい。 |
1.イントロダクションPPN 関連天体 66 個の中間赤外撮像を実施した。図1にその漫画を示す。 表1には観測天体の関連情報を載せた。14/66 天体は純正 PPNe ではなく、 若い PNe, 極端 AGB などである。2.観測とデータ処理2.1.MIRAC2MIRAC2 により IRTF, UKIRT で 52 天体の観測が行われた。アレイは 128x128 As ドープした Si で視野は 36" から 50" であった。 観測は標準的なチョッピングで行った。波長は連続光とバンド位置 とを選んだ。2.2.Beckcam14 天体は Beckcam により行った。2.3.フラックス較正 |
![]() 図1.PPNe の漫画。軸対称な内側領域は超星風期に形成された。 外側の球対称領域は AGB マスロス期に形成された。 図中の影領域が中間赤外放射が出る領域。 |
3.1.測定観測前後に点源の PSF を撮った。それを等輝度楕円にフィットする。 ピーク輝度の 50 % 等輝度線でサイズ、扁平度 EL, 位置角を決める。 EL = 1 - a/b である。3.2.可視天体と非検出可視天体の同定は、MIR 観測中に望遠鏡の光学ガイドカメラに写る可視像から 調べた。可視同定が確認されたのは、IRAS 00470+6429, IRAS 04386+5722, IRAS 19386+0155 可視候補が二つは、IRAS 22480+6002 明るい星が東西に 10" 離れて並ぶ。西側が対応天体と同定。 過去の同定ミスは IRAS 22036+5306 と IRAS 03119+5657 HD 235718 は IRAS 22036+5306 の対応天体ではない。 HD 20041 は IRAS 03119+5657 の対応天体ではない。 3.3.空間分解の基準基準天体と標準星のサイズ比を計算して、 1.3 以上は「広がった」、 1.1 - 1.3 を 「ギリギリ」、1.1 以下は「分解できず」とした。 17/66 天体が分解された。うち 11 は明らかに広がっており、6 個はギリギリ であった。表4に結果をまとめた。 SED 広がった天体は、 IRAS 06176-1306 を除き、F25 = (2-10) F12 である。 一方、多くの分解しない天体は F12 > F25 である。 |
![]() 図2.代表的な PSF 東西断面図の例。 (a) IRAS 02229+6208 = ギリギリ分解。形態不明。 (b) IRAS 16342-3814 = コア/楕円体 (c) IRAS 17436+5003 = 円環 |
3.5.1.コア/楕円体天体8天体がコア/楕円型である。IRAS06176-1036 (レッドレクタングル)は C-リッチだが、 他の7つは O-リッチである。IRAS 16342-3814 IRAS 16342-3814 は特に強いコア/楕円構造を示す。その広がりは南北方向 に伸びる。図2に見られるように主軸に沿った断面図には分解しないコアと 低輝度の広がりが明らかである。波長 12.5 μm から 20.6 μm にかけて 見かけサイズの増加がみられる。その主因は望遠鏡の回析効果である。 9.8 μm 画像 5つのコア/楕円型天体では 9.8 μm 画像は他の波長 8.8, 11.7, 12.5 μm でのサイズより大きい。それらすべては 9.8 μm 吸収帯を示す。 IRAS 06176-1036 = レッドレクタングル レッドレクタングルは上の O-リッチ天体と逆の動きを示す。それは 10 μm で隣の波長より小さい。広がった楕円部では PAH が強い。 |
3.5.2.円環天体3つの天体が円環型と分類された。IRAS 17436+5003 = HD161796 図2に示す HD161796 の断面図は高原状で、リムブライトニングの二つのピーク が分解限界のため融合した形を示す IRAS 22223+4327 IRAS 22223+4327 の形態は IRAS 17436+5003 と似る。 IRAS 18184-1623 IRAS 18184-1623 は明らかに中心星から離れたシェルを示す。8.8 と 12.5 μm 画像は中心星とそれを囲むリングが見える。リング上には中心星を挟ん で反対位置に二つのピークがある。IRAS 18184-1623 は LBV に分類される。 |
統計 文献から 8 天体が加えられる。総計 73 PPN サンプルとなる。 うち 24/73 = 33 % が分解された。面白いことに、分解されなかったうちの 二つ IRAS 10158-2844 = HR 4049 と IRAS 15465+2818 = R CrB は極端に 大きく冷たい(T=30K) 古い昔に放出されたダストシェルを持っているのだが、 MIR 画像にはそれらは写らず、ごく最近の小さくて高密度の 放出物しか見えない。 分解した 24 天体中、 7/24 はギリギリ、10/24 はコア/楕円型、 7/24 が円環型である。また 13/24 = C-リッチ、11/24 = O-リッチである。 コア/楕円型は大部分 7/10 = O-リッチ、円環型は多く 5/7 = C-リッチ である。 3つの証拠 コア/楕円型は円環型より光学的に厚いダストシェルを持つ事を示唆する 3つの証拠がある。 (1)円環型の中心星は可視で明るく、薄い星雲をまとう。コア/楕円型の中 心星は可視では見えないか、非常に暗い。見える可視光は星雲の反射光で ある。円環型の反射星雲の形状は様々である。一方コア/楕円型は双極反射星雲 を持つ。その向きは MIR 楕円星雲と同じである。ただし、可視星雲の方が大 きい。可視形状のこの差は、円環型が可視で透明であるが、コア/楕円型は 不透明と考えると理解できる。 (2)コア/楕円型は主に O-リッチで、深い 9.8 μm 吸収帯を示す。 9.8 μm 画像の大きさは 8, 12.5 μm より大きい。 分解できないほどに小さく、光学的に深いダストシェルと大きなサイズは 「ダスト光球」という考えで説明できる。9.8 μ ではダスト光球の浅い 深さまでしか見えない。そこは冷たいので、大きくて淡い星雲が見える。 一方連続光波長では、吸収が弱く、ダスト光球の深い箇所まで見える。そこは 小さくて高温なので、小さく高輝度の画像を得る。 |
(3)モデルは大きな差を証明した。 Meixner et al 1997 は IRAS07134+1005
をモデル化した。それは円環型で、C-リッチな PPN である。
彼らは円環の光学的厚み τ9.7 = 0.03, インクリネイション
= 45° を得た。つまり、 IRAS07134+1005 の中心星が見えるのは単に傾き角が大きい
だけでなく、光学的に薄かったからである。そのマスロスレートは
dM/dt= 6 10-5 Mo/yr であった。
それに対し、Skinner et al 1997 は AFGL2688 = C-リッチのコア/楕円型 PPN
をモデル化した。τ9.7 = 2.4 と光学的に厚いことを
見出した。コアが高密度で小さいことが推定される。モデルでは AGB を
離れる寸前 dM/dt = 4 10-3 Mo/yr であった。
マスロスレートの差が形態の差に 二つのタイプの間にあるマスロスレートの大きな差が形態の差を生じたのだ ろう。興味深いことにどちらの天体も AGB 終了間際にマスロスレートは 10-40倍も増加している。つまりどちらも超星風を経験したのである。 しかし、コア/楕円型では到達マスロスレートが非常に大きい。 そのため、超星風が作るダスト円環は光学的に厚くなるのである。 では、マスロスレートの差は何が生み出したのかという問題になるが、 未解決である。おそらく星質量だろう。 |