アブストラクト中帯域フィルターで210星、50星団、56銀河を測り、以下の量を調べた。C(35-38)=バルマー不連続 C(38-41)=4000A付近のラインブランケッティング不連続 C(41-41)=紫CN吸収 C(42-45)=Gバンドブレーク このバンドシステムはUBVシステムを補完して、赤化を受けた星のスペクトル型 と光度を決めることを目的とする。さらに、個々の赤化を受けた星の紫外超過を 決めることも可能である。 観測は球状星団のメタル量パラメターを決めるのに使われた。高いメタル量が NGC 5927, NGC 6304, NGC 6352, NGC 6441 で見出された。 矮小楕円銀河のCNは巨大楕円銀河より弱い。これは矮小楕円銀河中の星が 低メタルであると解釈される。得られている結果では巨大銀河の核は高メタルで、 低メタルのハローに囲まれている。 本論文の5中帯域フィルター観測を Wood の 12 色測光と合わせ、M 32, M 31, M86 の種族合成モデルを作った。 van Herk の RR Lyr 星絶対等級較正を用いて、銀河中心までの距離を 7.8 ± 1.0 kpc とした。 |
1.イントロ2.観測フィルター北半球の観測は DDO 188cm 望遠鏡に Johnson の2チャンネル測光器をつけて、 南半球は CTIO 41cm 反射望遠鏡の光電測光装置で行われた。 フィルターの性質は下の表1にある。セットAが劣化して、真ん中あたりから セットBに変わった。南半球の観測はセットCで行われた。 ![]() |
フィルター透過率を図1に示す。 カラー指数 次の指数を定義した。 C(35-38)=2.5log [I(38)/I(35)] C(38-41)=2.5log [I(41)/I(38)] C(41-42)=2.5log [I(42)/I(41)] C(42-45)=2.5log [I(45)/I(42)] ここにIは大気吸収補正後のカウントである。 カラー指数の性質は以下の通り。 C(35-38) バルマー不連続を測る。温度と光度の双方に鋭敏。 C(38-41) 4000A付近のラインブランケッティング不連続を測る。 C(41-42) 4216 A の短波長側で CN 吸収を測る。光度とメタル量に鋭敏。 C(42-45) G バンドブレークを測る。温度と光度の双方に鋭敏。 ![]() 表2 北半球観測の内部平均エラー ![]() 表3 北観測と南観測の差の標準偏差 |
![]() 図1 35, 38, 41, 42, 45 フィルターの透過率 エラー 表2に内部エラーを載せた。図2は DDO と CTIO の観測の差を較べた。図から 系統誤差は認められない。 ![]() 図2 同じ星への南北観測の差:CTIO−DDO。系統誤差は認められない。 |
星の選択 210の観測星の選択には以下の基準が用いられた。リストは表4にある。 (a) 出来るだけ明るい。 (b) O9 - M6 に渡る。 (c) 高メタルと低メタルの両方。52星は[Fe/H]が既知である。 (d) 異常星を幾つか含む。 赤化フリー色指数の定義 多くの星で赤化は不明である。従って赤化フリー色指数の利用が望ましい。 C∗(35-38) = C(35-38) - 0.306(B-V) C∗(38-41) = C(38-41) - 0.318(B-V) C∗(41-42) = C(41-42) - 0.066(B-V) C∗(42-45) = C(42-45) - 0.234(B-V) 図3−6はこれら指数とスペクトル型の関係をプロットしている。 C∗(35-38) 図3は C∗(35-38) がスペクトル型G,K, M型で矮星と巨星 をまあ良く分離することが判る。どのタイプでもこの指数はメタル量の影響は少ない。 F型付近でこれは光度に著しく敏感である。 C∗(38-41) 図4は C∗(38-41) が F, G 型矮星でメタル量に鋭敏なことを 示す。4000 A 不連続を測る指数なのでこれはある程度予期されたことである。 F,G型では、巨星と超巨星を分離するある程度よい指数である。 C∗(41-42) 図5は C∗(41-42) が CN の 4216 A バンド強度を測っている ことを示す。この指数は、晩期型星で光度クラスの分離に有用である。しかし、この 指数のみでは矮星と非常に低メタルの巨星を区別できないことを強調しておく。どち らもCNが弱いのである。μ Leo や α Ser のように CN が異常に強い巨星 はこの指数で容易に検出できる。 C∗(35-38) 図6は C∗(42-45) が K5より早期の星のスペクトル型を 良く表わすことを示す。 |
![]() 図5 C∗(41-42)は 4216 A より短波長側のCN吸収を測る。 光度により大きく変化することが判る。高速度星は指数が弱い。 赤化フリー色指数の応用 赤化フリー色指数を実際に使用した3例を以下に示す。星のデータは、
HD 12929 C∗(42-45) = +0.71 から、この星が光度クラス III-V ならスペクトル型は K2 ±1, 光度クラス Ib ならスペクトル型は G9 ±2 である。CN 強度指標の C∗(41-42) = +0.16 から 光度クラス IIIである。C∗(35-38), C∗(38-41) も K2 ±1 の分類と合致する。したがって、K2III である。 HD 166 C∗(42-45) = +0.57 から、この星が光度クラス V, III ならスペクトル型は G8 ±2, 光度クラス Ib ならスペクトル型は G4 ±2 である。CN 強度指標の C∗(41-42) = -0.01 から 光度クラス V が示唆される。 C∗(38-41)はメタル量が正常である ことを示す。したがって、G8 ±2 V である。この結論は MK タイプ K0 V で 紫外超過 δ(U-B) = 0.00 と一致する。 HD 103095 = Groombridge 1830 C∗(42-45) = +0.54 から、この星が光度クラス V ならスペクトル型は G6 ±2, 光度クラス III ならスペクトル型は G7 ±2, 光度クラス Ib ならスペクトル型は G3 ±2 である。CN 強度 指標の C∗(41-42) = -0.05 から Ib は除外され、正常 V か、 非常に低メタルの巨星を示唆する。C∗(35-38) は G7 ±2 は合わないことがわかる。 したがって、G6 ±2 である。このスペクトル型 だと、C∗(38-41) = +0.36 はこの星が大きな紫外超過を持つ ことを示す。したがって、最後の結論は sdG6 ±2 である。MK タイプ G8Vp で紫外超過 δ(U-B) = +0.17 と一致する。 |
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図3 C∗(35-38)はバルマー不連続を測る。高速度星 はクロスで示す。 | 図4 C∗(38-41)は 4000A 付近のブランケッティング 不連続を測る。通常矮星と高速度矮星(クロス)がはっきり分離している。 | 図6 C∗(42-45)はGバンドブレークを測る。この 指数は特に温度に鋭敏でスペクトル型の良い指標である。 |
赤化フリー紫外超過指数 δ∗(38-41) 図7は F5 - K2 主系列星の C∗(38-41) と C∗ (42-45) をプロットした。黒点は -0.02 ≤ δ(U-B) ≤ +0.03 の高メタル 星、クロスは +0.13 ≤ δ(U-B) の低メタル星である。図は、両者がはっきり 分かれることを示す。図の実線は、 δ(U-B) = 0.0 を表わす。この線との 縦方向の差を、赤化フリー紫外超過指数 δ∗(38-41) と 定義する。この指数を通常の δ(U-B) と較べたのが図8である。 観測精度の範囲内で、図8の関係は δ∗(38-41) = δ(U-B) と表わせる。 ![]() 図7 F5 から K2 までの主系列星の C∗(38-41) と C∗(42-45) -0.02 < δ(U-B) < +0.03 の紫外超過星は黒点、 +0.13 < δ(U-B) の低メタル星はクロス。 メタル量による分離は明らか。 | ![]() 図8 赤化フリー紫外超過指数 δ∗(38-41) と 通常の δ(U-B) の比較。星は近傍の赤化なし星。 |
この論文で扱う巨星の大部分は赤化を受けていないので、これらの巨星の
C∗(42-45) と (B-V) を表5に載せた。低メタル星は系統的に、
この関係から少しずれる。光度クラス Ia, Ib, II が III からずれている証拠は
ない。したがって、表5のデータは晩期型巨星・超巨星の赤化を決めるのに使える。
FitzGerald 1967 が与えたスペクトル型 - 固有カラー関係と、 C∗
(42-45) から決めた E(B-V) を図9に示す。
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