スケール高 1 kpc の厚い円盤内にあり、軌道が厚い円盤の運動と整合する RR Lyrae を発見した。この RRL 星は太陽から 1 kpc のところにあり、V = 11.3 mag で、これまでに知られた最も明るい 100 個の RRLs に入るが、 銀河面の真ん中 b = -1° にあるためこれまで殆ど調べられてこなかった。 | その 0.91 - 1.32 μ スペクトルにはパッシェン系列以外の吸収線が殆ど ない。これは [Fe/H] < -2.5 を意味する。これは軌道が厚い円盤に属する RRLs のなかでは最も低メタルである。これは内側銀河における星形成に 重要な手掛かりを与える。 |
ストリームと副構造 Gaia によりストリームと副構造の存在が確立した。(Helmi 2020). また Matteucci 2021 は 高分散分光により銀河系種族の特徴を明らかにしつつある。 低メタル星 低メタル星は銀河系初期の進化研究に重要である。Frebel, Norris 2015. 低メタル星の発見に多大な努力が投じられている。(Starkenburg et al 2017. Da Costa et al 2019.) Sestito et al 2020 による銀河系円盤中の低メタル 星の発見は特に重要である。 円盤中の低メタル星 円盤中の低メタル星の特性は銀河系円盤の形成と進化に手がかりを与える。 例えば、銀河系形成初期の強いマージャーは円盤を引き裂いたも知れず、マー ジャー時期に存在した低メタル星は、重力ポテンシャルが十分に深く星をしっ かり捕まえていた内側銀河系以外では、円盤的な運動学特性を失ったであろう。 |
マージャー Gaia から明らかになった Gaia Enceladus または Sausage と呼ばれるハロ ー星の運動に刻まれた特徴からそのようなマージャーが 10 Gyr 前に起き、 厚い円盤の発生を促した(Gallart et al 2019, Helmi 2020)ことが分かる。 Sestito et al 2020 は [Fe/H] ≤ -2.5 で円盤軌道を持つ星はマージャー 以前に存在した星の残存であると考えている。厚い円盤がこのようにしてでき たことを確実にするためには、そのような星を広いメタル量にわたり探す、同じ 空間体積内にあるハロー星の特性化と共に重要である。 円盤 RRLs この論文では円盤ないにある古い低メタル星を調べるためにRRLsを取り上げる。 Layden 1995, Prudil et al 2020, Zinn et al 2020 は円盤種族の RRLs を調べた。 ハロー RRLs との決定的な違いはメタル量分布である。円盤 RRLs は[Fe/H] ≥ -1 であるが、ハロー RRLs はより低メタルである。 |
![]() 表1.対象星の特性 ![]() 表2.平均等級 特性 KWFC は 0.946"/pixel で 2.2° 四方の視野を有する。 KISOGP は 2012 より 80 KWFC 視野で l = 60 - 210 の Ic バンドモニターを 行った。 |
![]() 図1.HD331986 の変光曲線。縦破線は WINERED による観測時期。 RR Lyrae 星 HD 331986 変光探査の際に明るいが殆ど調べられていない RRL を発見した。 (HD 331986 が RRL であることを発見 したのか、それとも登録されている RRL であるが殆ど調べられていないのか? ) 表1にその特性をまとめた。 周期解析 周期決定は3項フーリエ級数を用いる VanderPlas 2018 の方法を用いた。 そのピリオドグラムの最高値から周期 P=0.371197 を出した。 (プラスマイナスは?観測回数と数値の桁数に 違和感。 ) |
過去の同定 対象星は Kinemuchi et al 2006 が Northern Sky Variablity Survey (NSVS) データを用いて RRL 候補星とされた。Hoffman et al 2009 は NSVS データの 自動変光星分類においてこの星を RRL としている。Clementini et al 2019 の Gaia DR2 においても RRL とされ、Chen et al 2018 の WISE 変光星カタログ でも RRL となっている。しかしながら、詳しい追研究はなされておらず、運動 学的および元素組成の研究を行う必要がある。 近傍星の影響 図1に見えるように 10" 離れて同じくらいの明るさの星がある。 NSVS の ピクセルサイズは 14.4", ASAS-SN は 8" であり、コンタミが厳しかったろう。 Gaaia DR2 以外には公開された変光曲線はない。 |
NEIWISE NEOWISE の WI, W2 時系列データに3項フーリエ級数フィットを行い、 表2にその結果を示した。 (NEOWISEは4バンドだったか? ) |
PLZ 関係 Neeley et al 2009 は 55 RRLs の DR2 データを用いて、 [Fe/H] = [-2, -0.07] の範囲で次の PLZ 関係を得た。 Mλ=a+b(logPF+0.30)+c([Fe/H]+1.36) ここに logPF=logP+0.127 for RRcタイプ、は "fundamentalized" 周期である。我々の天体では logPF=-0.303 となる。 |
![]() 図3.「見かけの」距離指標 μλ(上)と「真の」距離 指標 μ0(下)。 |
![]() 表3.4本の水素線 |
![]() 図4.Pa η からPa β までの4本の水素線の WINERED スペクトル。縦線=大気内静止波長。各線の波長は平均視線速度 -85.5 km/s を差し引いてある。合成スペクトルは log g = 2.6dex, [Fe/H]=-2dex、 幾つかの Teff に対するもので、表2の vi と平均 速度を考慮している。 |
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![]() 図5.表3、4で決めた[X/H] 上限 |
![]() 表5.対象星の運動学特性 位置と運動 パッシェンラインから得た視線速度と Gaia の距離と固有速度を合わせると 位置と速度の6次元情報が得られる。Vasiliev 2019 の 銀河系運動 AGAMA パッケッジを用いて対象星の軌道と位置情報を得た。そこでは Rgc=8.2 kpc, LSR の速度 vLSR=232 km/s, LSR に対する太陽運動 (Uo, Vo, Wo) = (-11.1, 12.24, 7.25) km/s とした。 我々は Bovy 2015 の galpy library から得た MWPotential2014 を使用した。 これは指数関数的カットオフ付きの球形べき乗則バルジを3つの軸対称ポテン シャルと Navarro-Frenk-White ハローポテンシャル、それに Miyamoto-Nagai 円盤からなる。 モンテカルロ計算 我々は位置と速度のエラー分布から 10,000 サンプルを選び、時間の前方向 に 100 Gyr 軌道計算し、平均パラメターを決定し表5に示した。 (起動計算の不安定性は? ) 軸回転速度 vθ と角運動量 Lz は円盤回転方向を正とする。 銀河面高度最大値 zmax = 1.18 kpc なので、軌道は厚い円盤の 範囲内にあると言える。Bland-Hawthorn, Gerhard 2016 によると厚い円盤の スケール高は 0.9 kpc である。 既知 RRLs との比較 図6と図7では対象星と既知 463 RRLs (Zinn et al 2020) の性質を比較した。 ただし、既知 RRLs の位置と速度は Gaia EDR3 の Bailer-Jones 距離 と Zinn et al 2020 の視線速度を組み合わせて、 X, Y, Z, vR, vθ, vZ を計算し直した。使用ポテンシャルが異なるので、総エネルギ― には系統的な誤差がある。 明るい低メタル RRLs 図6には V < 13 mag の 360 RRLs が含まれる。我々の星は V 11.322 mag である。明るい低メタル [Fe/H]≤-2.3 の 8 RRLs を赤丸で示す。内3つ V338 Pup, X Ar, UY Boo は RRab = 基本振動モード、残り5星は対象星と 同じ第一励起モード星である。Beers et al 2014, Sneden et al 2017, Andrievsky et al 2018, Chadid et al 2017, Zinn et al 2020 はそれらの メタル量を定めた。No 1-4 の明るい RRLs は D = 0.4 - 0.6 kpc と近く、 暗い4星は D = 0.95 - 1.3 kpc と遠い。我々の対象星の距離は遠い方の グループに属し、メタル量はそれら 8 星と同じくらい低い。 |
![]() 図6.青=対象星とバツ=既知 RRLs (Zinn et al 2020)の [Fe/H} - V mag 図。 明るく低メタル RRLs サンプル=赤丸。 (よく分からない。 ) Toomre 図 図7の (a) は Toomre 図を示す。図中の半円は 特異速度=LSR に対する 相対速度 vpec= 75 と 150 km/s を示す。 図7を見ると、vpec が小さい星は高メタルと分かる。図7 (d) を 除いて、ハロー星は vθ と Lz 分布が対称的で、対象星付近で はハロー星と円盤星が混じり合っている。明るく低メタルの RRLs はハロー 種族に領域内にある対象星の運動は LRS の運動から 116.6 km/s 離れていて、 運動学的には厚い円盤の星と区別できない。それにもかかわらず、対象星が ハロー種族で、その運動が銀河系回転方向の分布の尾にあるかも知れない。 二つの明るい低メタル量 RRLs, V338 Pup と V701 Pup は半銀河回転側の同様な 位置にある。 zmax - rmax 関係 パネル (c) は軌道計算から求めた zmax - rmax 関係を示す。対象星の軌道は厚い円盤内に留まる。明るい低メタル RRLs の 4つの軌道も厚い円盤内にある。ただ、その3つは半銀河回転であるが。 加えて、それら4つの星の離心率は 0.53(V338 Pup), 0.60(V701 Pup), 0.79 (TV Boo), 0.83(X Ari) と大きく、対象星の 0.39 に比べ大きい。 Etot - Lz 関係 図7 (d) は Etot - Lz 関係を示す。Zinn et al 2020 は Helmi stream の ような運動群に属する RRLs に加え、さらに二つの群、すなわち「円盤」RRLs と Lz ∼ 0 の 「噴煙」RRLs が存在することを示した。これら二つの主要 群の分離は Prudil et al 2020 と Iorio, Belokurov 2021 によっても 報告されている。ハロー星の噴煙構造は Dinescu 2002 により発見され、 Gaia データは非常にはっきりした構造 Gaia Enceladus (Belokurov et al 2018) または ソーセージ (Helmi et al 2018) を明らかにした。この明らかな構造は 降着銀河に起因し、それが多くの球状星団を含むハロー星を産み出したと考え られる。Zinn et al 2020 は噴煙 RRLs には [Fe/H] < -2 の星が少ないことを 見出した。8つの明るい低メタル RRLs のうち図7(d) の噴煙領域に属するのは UY Boo ただ一つである。 低メタル円盤種族 対象星は噴煙には属さないが、円盤種族には属するかすぐ近くにいる。厚い 円盤に低メタル星が存在することを支持する証拠 (Di Matteo et al 2020, Sestito et al 2020, Limberg et al 2021) が集まりつつある。後者二つは 1000 星以上の低メタル候補星を用いてある割合の ("that" が変 ) 星が 円盤軌道 zmax < 3 kpc かつ rapo = [6, 13] kpc で、[Fe/H] < -2.5dex であることを見出した。我々の対象星はそれらと 同じ種族に属する可能性が高い。 低メタル円盤の形成シナリオ 低メタル円盤の形成シナリオはいくつか考えられる。それらは 10 Gyr 昔に 噴煙を作った大規模マージャー以前に存在した古代円盤を形成しているのかも 知れない。古代円盤星の形成はそこで起きたかも知れないし、外部で形成され たのかも知れない。外部形成の場合、それらは 10 Gyr 以前のマージャー(Gomez et aal 2017, Karademir et al 2019) の後でさえも、静かに円盤に降着した のかも知れない。厚い円盤への帰属が確立されたら、対象 RRL 星は低メタル 厚い円盤種族を示すユニークな天体となる。さもなければ、それは ハロー星の円盤種族への混じり込みに対する警報となるだろう。 |
低メタル 対象星が低メタル RRL であることを発見した。 WINERED スペクトルに 金属線は検出されず、[Fe/H] 上限 -2.5 を得た。 この値は PLZ 関係から決まる -2.56 と合致する。 厚い円盤 この星の位置と速度は厚いこの星が厚い円盤種族であることに整合する。 [Fe/H] ≥ -1 の RRLs は円盤種族に多く、低メタル RRLs はハロー種族と 考えられている。最近 Sestito et al 2020, Limberg et al 2021 は厚い円盤 中に低メタル星を発見した。この発見は銀河系形成の理解に大きなインパクト を与えた。対象星 RRL の起源を発見することは銀河系早期の歴史を理解する 為に大きな洞察を持つ。 |
可視域の分光によりより強いラインの観測を行い、元素分布を決めることは 重要である。 |