アブストラクトV では O型星が最も明るくはない近傍銀河中、V で最も明るい星は 15 - 25 Mo の晩期 B- か早期 A-型星 である。輻射等級では最も明るい 85 - 100 Mo の主系列 O-型星は V では 数等暗い。あまりに高温の星では、観測カラーからは有効温度、輻射補正に ついての情報を得ることが出来ない。分光が必要である。大質量星の 子孫には LBV, WR, RSG が含まれる。それらを近傍銀河で検出する際の 選択効果を論じる。 大質量側の IMF 大質量側の IMF は, MW, LMC, SMC で同じ勾配 Γ ∼ -1.3 (Salpeter) を持ち、メタル量依存性は認められない。しかし、星形成域 からはるかに離れたフィールドにも多数の大質量星が見つかっており、 その勾配は Γ ∼ -4 である。星形成が活発な領域では大質量側 に重みがかかって星が生まれるらしい。 WC/WN 比とメタル量 大質量星の進化経路は LMC, SMC での星の HR 図上分布をうまく再現する。 局所群では WC/WN 比がメタル量とよく相関することが判った。”Conti" シナリオでは WC 星に進化するための光度、質量範囲は星がどのくらい 激しい質量放出を行うかに依存するが、観測された関係はこのシナリオに 合致する。例外は爆発的星形成銀河 IC 10 で、低メタルなのに WC/WN が 高い。しかし、これは激しい星形成の最中はガス温度が高く大質量星 の割合が高くなると考えると矛盾はない。 ウォルフライエ星になる質量範囲 単一年齢星団の研究からは ウォルフライエ星になる初期質量が どの巾になるかを調べられる。一方、年齢が入り混じった集団では WR 星になるための質量の制限値が分かる。銀河系赤色矮星の混入 による影響が NGC 6822, M31, M33 では見られる。そこで赤色超巨星 を分離識別する方法を述べる。M31 は WR 種族が豊富であるのに あかるい RSG を欠いている。これもやはり "Conti" シナリオでは メタル量が高いために適度に高質量の星が RSG に進まず WR 星に変わる と考えると理解される。 0.初めに観測の進展図1に明らかなように観測の進展は著しい。 銀河で恒星天文学をやる! 銀河系では赤化の影響が大きく、かえって銀河で観測する方が正確な 量が求まる。ただし、 Hanson 1995, 1997 が M17 でやったような K バンド分類が進めばその限りではない。しかし、より大きな理由は メタル量、年齢のようなパラメタ―の異なる環境での情報が 得られることである。 |
![]() 図.M33 OB88/89 領域 U 画像の変遷。(上) CFHT 乾板 1981年. (中)キットピーク 2.1 m RCA CCD 1986年. (下)HST WFPC2 1998 年 |
なぜ 晩期 B-, 早期 A-型星? 80年代初期、近傍銀河で最も明るい星のカタログが出てきたとき、 そこには 晩期 B-, 早期 A-型星ばかりが載っていた。なぜ O-型星がないの だろう?それはあまりに高温でエネルギーの大部分を紫外域で放出して いるから可視域では暗いのである。 (温度が高く、表面積も大きければ 可視域でも明るいはずではないか? ) 質量・光度関係 通常の質量の星は L ∝ M3.5 に従う。それで、主系列 寿命は τ ∝ M/L ∝ M-2.5 となる。これが 成立すれば 100 Mo の星の寿命は 10-5 × 1010 = 105 yr のはずで、そうなら我々がそれらの星を目にする 事はないだろう。しかし、大質量星では L ∝ M2.0 となり、 大質量星の主系列寿命は、少なくとも 2 Myr はある。 温度と光度 カラーから高温度星の温度を決める精度は大変低い。その上、 M33 の 例ではほとんど同じ Mv の星の光度が 10 倍も、質量では 3 倍違うのである。 名前 その上、名前の問題がある。 主系列星とは中心で水素燃焼を行っている 星という定義に従うと、O-,B-型超巨星は実際には主系列星なのである。 これが G-型星だと、話は違う。太陽は水素燃焼する G2 V 星である。また、 G III 星の大部分は水素殻燃焼期にあり、太陽より低質量の星である。 G I 星は He 核燃焼期にあるもっと大きな質量の星である。こういう訳で 星の進化屋さんは「主系列星」と「矮星」を交換可能な形で使用し、 「超巨星」は He 燃焼のために取っておくのである。 しかし、OB-型星では光度クラス I でもまだ 水素核燃焼している。SN1987A の 前駆星は He-燃焼の B-型超巨星であった。しかし、これは珍しい例である。 |
![]() 図2.Schaller et al 1992 の SMC メタル量の星の進化経路。水素核燃焼 は右へ水平に伸びる進化路が最初に折れ曲がるところまで続く。破線は 2 Myr 間隔の等時線。 |
大質量星 M > 10 Mo を大質量星とすると、これは Mbol < -5, Mo,bol = 4.75 とすると、大体 L > 104 Lo ということになる。 最高質量星では Mbol = -11 から -12 つまり、5 106 Lo に達する。 ZAMS 図2を見ると、ZAMS で大質量星の温度は 60,000 - 30,000 K の範囲 である。図3が示すように、この温度についてカラーからの情報は少ない。 分光測光等級 (spectrophotometric magnitude) 図4には黒体輻射のスペクトルを示した。ここで分光測光等級としている のは、 mν = -2.5 log Fν -48.60 Fν は cgs 単位。Johnson UBV は A0 V 星のカラー がゼロという少し異なるシステムである。 ![]() 図3.観測で分かる部分はレーリージーンズの尾だけで、怪獣本体は 分からない。Conti 1986 による。 |
![]() 図4.黒体輻射のスペクトル。 (上)F(λ) (下)規格化 m(λ) |
![]() 表1.黒体輻射の分光測光カラーとジョンソンカラーの温度変化。 カラーから温度が決まらない 表1を見ると、30,000 K 以上では実際上カラーから温度を判定 することが出来ないと分かる。これは星質量では 10 - 120 Mo に 相当する。そして、これは星の光度を知るには更なる情報が必要 であることを意味する。一般には、 Mbol = Mv + BC で、A0V で BC = 0 と決めた。 ( とんでもない! BC=0 は F3V のはず。ただし、図5を見ると、A0I では BC ≠ 0 になっている。グラフに使用した数字は正常 なのかも知れない。) O3V と B0 I の例 O3V と B0 I とでは Mv と B-V は同じくらいに拘わらず、BC(O3V) = -4.3, BC(B0I) = -2.8 と大きく違う。O3V は, log Te = 4.456, M = 85 Mo, Mv = -5.8, B0I は log Te = 4.456, M = 25 Mo, Mv = -5.8 である。従って、 Mbol(O3V) = -10.1, Mbol(B0I) = -8.6 で大きく差が付く。このように B, V では同じに見える星が実際には大きく異なる場合がある。 |
![]() 図5.超巨星の輻射補正と有効温度の関係。 ( 本文とは異なり、 A0 で BC ≠ 0 に注意。) (O3V というのは主系列の上 だろうから理解できる。B0I は質量まで決まるのは理解できない。色々な 質量の星が進化して半径が広がって行く途中、B0I を通り過ぎるのだと 思っていた。) |
![]() ![]() |
![]() ![]() 表3と図2をプロット。なぜ、ZAMS と 光度クラス V がこんなに 離れるのか?光度クラス III, I の進化経路上との関係はどうなのか、 さっぱり分からない図となった。 |
分光 この困難はスペクトルを撮って温度を決めれば解決する。温度が分かれば 大気モデルから輻射補正が分かる。そうすれば、Mv と合わせて、恒星進化 軌跡との比較から、星質量が推定される。 OB 星のスペクトル型はライン強度比で決める 図6には Walborn,Fitzpatrick 1990 から採った OB 星のスペクトル例を 示した。O-型星では主な分類基準は HeII/HeI のライン強度比である。特に He I λ4471 / He II λ4542 がよく使用される。早期 B-型星 では、Si IV λ4089 / Si III λ4553 比が、B2 の先では、 Si III λ4553 / Si II λ4128 比 が用いられる。最近 では B2 から A0 まで Mg III λ4481 / He I λ4471 を 使うことが多い。これらの比の良いところは、メタル量に依存しないこと である。これは同じ元素間(Mg/He を除き)のライン強度比を用いている からである。Mg/He は違うが、幸いなことに B2 より晩期ではUBV 測光で スペクトル型は分離する。 有効温度、輻射補正はメタル量にどう依存する? O9.5 III の Te は LMC と MW とで同じだろうか?表2は古い(Auer,Mihalas 1970) non-LTE モデル(Zo)の結果であり、その較正は Conti 1973 の O-型スペクトルに 基づいている。その後 Vocca, Garmany, Shull 1996 が新しいコードで 較正を試みたが、同じスペクトル型内での分散が恐ろしく大きく、もっと 徹底した研究が必要である。したがって、系統誤差の可能性は残るが、 現在でも古い値をメタル量に関係なく使用し続ける。 スペクトル型から諸量を求めた場合のエラー スペクトル型から諸量を求めた場合のエラーはどのくらい大きいのだろう? それを知るため、図7(上)には分類を(1サブタイプ、1クラス)間違えた 時の結果を示した。エラーバーが傾いているのは、有効温度が変わると 輻射補正に波及し、これが最も大きなエラー要素だからである。 1光度クラスのエラーは1サブタイプのエラーと殆ど同じ大きさの平行な効果 を生む。比較のために図7(下)には測光エラーが (U-B) と (B-V) で 0.02 mag の場合に HR 図にどう反映されるかを示した。この場合、質量に関し 大したことは分からなくなる。 |
![]() 図7.HRD のエラーを示す。(上)スペクトルから温度と輻射補正 を決めて、スペクトル型の1サブタイプと1光度クラスのエラー を仮定した。(下)測光から得た Q-値を使って HR 図上の位置を 決めた。測光エラーに 0.02 等を仮定した。 |
1.1."lluminous" と "bright" の違いまた、昔の疑問に戻り「熱い」星の初期の素晴らしいスペクトルはどうして皆 A-型や晩期 B- 型ばかりだったのだろう?図8には、SMC の星の HR 図を示す。私の考え ではこの図を見れば、多くの研究者が近傍銀河の研究で誤った方向に 進んだ理由が分かる。V バンドで最も明るい星は 15 - 25 Mo で log Te ∼ 4 の早期 A-型星なのである。確かに、 V ∼ 11 mag 線上には 40 Mo 付近の星が幾つか見える。しかし、より大質量の主系列星を見つける には、さらに2等暗い領域まで下がる必要がある。 なぜ 100 Mo の超巨星はないのだろう? じゃあなぜ 100 Mo の超巨星はないのだろう?その答えは やや微妙だ。主系列の先の寿命はみな短い。そして、当然 20 Mo のA-型超巨星は 100 Mo のそれよりずっと多い。70 - 120 Mo の星1つに付き 15 - 25 Mo の星 500 個はある勘定である。 1.2.学生のための練習問題(a) O-型星候補は?ある日、ボルダーで昼食の途中、 Dr "X" が NGC 6822 の O 型星 スペクトルを撮るつもりだと言った。丁度同じ計画を温めていた私は 不安になって尋ねた。「どうやって候補星を探すのですか?」 Dr "X" 、「POSS Sky Survey から明るくて青い天体を片端から候補に挙げる んだ。」Dr."X" は精々 B-V=0 を境に青い星と青くない星を見分けら れるくらいと仮定しよう。彼が見出すのはどんな星か? (b) スペクトル型と質量 天文学者は時々、スペクトル型と質量を同一視する。つまり、 O5 V 型はある一つの質量に対応し、 O5 I 型は他の質量の星を表す というような。しかし、これはある範囲内でのことである。表2の 数値と前に示した HR-図を用いて、O7III 星の質量がいくつに対応するか を定めよ。ヒント:質問は正確には、「 O7 III 星が対応する質量の 巾は何か?」であるべきだ。 |
![]() 図8.SMC の可視で明るい星が晩期 B- か A-型超巨星で、質量は まあまあの大きさであることを示す。 これらは非常に明るいわけでも極端に高温でもない。図の左側が欠けて いるのは SMC サーベイで V > 13 が不完全なためである。図は Massey et al 1995 から。 LMC についての類似の図は図18. (赤線= R 一定. A-超巨星は O-型星より大きいので V で明るい。当たり前か!) |
なぜ難しいか? (a). 輻射補正が大きいので最も光度が大きい星は最も明るくは見えない (b). カラーからは輻射補正を正しく決められない。 (c). 赤化。 良い点は、最近の観測装置特に HST の性能向上である。 V-(B-V) 図 高温度星の B-V は一定値に収束する。それで、V-(B-V) 図では若い (< 5 Myr) の集団はほぼ垂直に並ぶ。赤化はこの系列を右下方向に ずらす。図9(上)は η Car 星団 Tr14/16 の CMD である。黒丸は 分光で星団メンバーと確認された星であるが、垂直線には見えない。 図22にはこの星団の HR 図 を示す。 V-(U-B) 図 では、(U-B) を使ったらどうだろう? E(U-B) = 0.72 E(B-V) でやや小さく、 表1から分かるように(U-B) は(B-V) より温度に鋭敏 である。従って図9(中)に示すように状況は少し好転する。 Q = (U-B) - 0.72(B−V) 赤化相殺パラメタ― Q = (U-B) - 0.72(B−V) はさらによい。図9(下) を見ると上の二つより幅が狭くなっているのが分かる。ただ、この技が効くのは B5 より高温の場合で、それより低温側では Q に対応する温度が複数となる。 高温側では Q と友好温度 Te の関係は、Q < -0.4 で、 クラス V log Te = 4.055 + 0.041×Q + 0.6514× Q2 クラス III log Te = 4.342 + 1.105×Q + 1.4793× Q2 クラス I log Te = 4.342 + 1.105×Q + 1.4793× Q2 ( III と I が同じ式? ) より完全な式は Massey et al 1995 参照。ただ高温な個所 Q < -0.8 で 式の値自体をあまり信頼してはいけない。Q はしかし、高温天体候補を選択し て分光観測を行うには非常に有用である。 |
![]() 図9.η Car 星団 Tr14/16 の3つの CMD. (Massey, Johnson 1993) |
![]() 図10.M33 4000+ 星の測光結果 (B-V)-V 図。KPNO 0.9 m 使用。枠の中の数字は Ratunatunga,Bahcall 1985 モデルによる銀河系前景星の予想数。 例として、Massey et al 1996 で使用した M33 観測データを議論しよう。 この観測には Tektronics 20482 CCD/0.9m KPNO が使用された。 前景星 まず前景星がどのくらいあるのだろう? 図10の枠の中に Ratunatunga,Bahcall 1985 モデルによる銀河系前景星の予想数を示す。 いわゆる "blue-plume" 星は大部分が M33 に帰属するだろう。しかし、 もっと赤い方へ行くとそうではなくなる。 (U-B), Q の利用 図11には(U-B)-V 図、Q-V 図を示した。微分赤化の影響が軽減した ことがわかる。図9と比べると、主系列がしっかり現れてきたことが 見て取れる。 |
![]() 図11.(上):(U-B)-V 図。(下)Q-V 図。図10よりも主系列が はっきりと出ている。この図が図9(η Car)と似ていないのは 色々な年齢の種族が交じり合っているからである。 |
スペクトルの利用法 この先へ進むには、分光が必要である。その方法は、 (1).スペクトルから有効温度を出す。 (2).スペクトルから、固有カラーを出し、赤化補正量も導く。 (3).距離指数 MD が既知として、Mv = V-3.1E(B-V)-DM を導く。 (4).スペクトル型から輻射補正 BC も導く。 (5).Mbol=Mv + BC を導く。(これが最も大事!) Mbol が最も大事だと述べたのは、(図2を見ると分かるが)星の進化経路が 光度ほぼ一定のラインなので、有効温度はあまり星の質量に影響 しないからである。逆説的だが、しかし、スペクトル型の決定は、それは 有効温度を決めることになるのだが、光度を決める際にもっとも重要なの である。注意したいのは、以上の手続きで、光度クラスはあまり重要で ない。スペクトル型と光度クラスを合わせて有効温度と BC を決めるのに 用いるくらいである。 スペクトル適正等級 表4から M31 を例に取ろう。M31 の 10Mo ZAMS は B = 23.6 mag で あり、10 m 級地上望遠鏡でもよいスペクトルを撮るのは困難である。しかし、 10 Mo 星進化経路に沿って全スペクトルを撮るのは無理でも、 10 Mo 星のスペクトルを得ることが目標となれば A 型超巨星を使えばよい。 その場合、B バンドでは ZAMS より 4 等くらい明るくなるから B = 19.6 mag となり、4 m クラスでも現実的な話となる。この冬の学校での Monteverde et al 1997 は B-型超巨星を用いて M31 の O-量勾配を 決定した。 |
![]() 表4.近傍銀河での ZAMS みかけ B-等級と星質量の関係。 S/N と 分解能 私(Massey) は S/N 比 30, 分解能 3 A でかなりの確かさで星を分類でき る。何故 3 A かって? O-, B-型星の吸収線はかなり弱い。それで、めりはり の効いたスペクトルを得るには線幅と分解能が同じくらいであるのが良い。 O-型星の回転速度は、 v sin i = 150 - 300 km/s である。それで、 分解能 R < 1000 - 2000 ( B で > 4.4 - 2.2 A) だと、連続光と 吸収線部分の対比が弱くなる。B-型超巨星ではそれが 50 - 100 km/s に 落ち、R ∼ 3000 つまり 1.5 A スペクトルが必要となる。 ファイバー分光 我々は多天体ファイバー分光器 Hydra/WIYN 3.5 m を用いて2晩で M33 の UV 明るい星 131 個のスペクトルを得た。ただし、100 本のファイバーが 使えても 10 - 20 本はスカイに充てなければいけない。良いスリット 分光器に比べるとファクター 3 - 4 のロスがある。また、星雲光が 強いところではスリットの方がスカイ差引がうまく行く。 |
Conti シナリオ O-型星は星風で外側大気を吹き飛ばし、CNO-サイクル水素燃焼で形成 された He と N が露出して、 WN-型になる。トリプルアルファヘリウム 燃焼による C, O が露出すると WC 星となる。少し質量の小さい星は WN 止まりで WC まで行かない。もっと質量が小さいと WR 星になれず、 赤色超巨星になる。 シナリオの観測的証拠? (1)メタル量効果 高メタルだと放出率が上がり、 WC になる最低質量が下がる。WC/WN に メタル量効果が現れる。 |
(2)RSG と WR が同じアソシエイションに出現するか? Humphreys,Nichols,Massey 1985 は”No" と結論した。 "slash" 星 スペクトル型= Ofpe/WN9 = "極端" Of 型と WN 型の双方の特徴を持つ。 Walborn 1977, Bohannan 1979, Bohannan, Walborn 1989 発見。この星が 主系列 O 型星とウォルフ・ライエ星をつなぐ天体だろうか?しかし、Mbol ∼ -9 程度で、マスロスが 10,sup>-6 Mo/yr くらいの 40 Mo 星 にはその寿命 5 Myr の間に 5 Mo しか失えない。しかし、 H-リッチ層を 剥ぐには 20 Mo のマスロスが必要なのである。 |
ハッブル・サンデージ変光星 ハッブルとサンデージは 1953 年に M31, M33 に青くて明るい変光星を 発見した。それらは星種族として、 LMC の S Dor, 銀河系の η Car と 関係すると考えられた。これ等の星は最初ハッブル・サンデージ変光星と 呼ばれたが、現在は LBV で統一されている。特徴は短期間の大規模 質量放出とその期間に起きる等級とスペクトル型の変化である。 では、特に進化経路が低温側に 向いた時に、輻射圧と重力のバランスが崩れ、多分鉄の UV 吸収線に働く 輻射圧の結果、爆発的膨張を引き起こす。一つの可能性は LBV メカニズムの結果、O-型星が WR になるのに十分なほどの質量を放出する ことである。しかし、たった数個の天体例で可能性と呼べるだろうか? LBVs はいくつあるのか? 急激な増光だけで LBVs を探査する方法は氷山の先端を露わにするだけで、 背後にもっと多数の同様な天体が潜んでいるのであろう。その証拠は 図12に示すように、 スペクトルが LBV と同じ多数の星の存在である。 これらの星は単に明るくて熱いという理由で UIT = Ultraviolet Imaging Telescope の M 33 観測から選ばれたものである。 Massey et al 1995 は UIT 247 スペクトルは典型的な LBV である Var B と そっくりであると結論した。スペクトル変化は観測されているが、変光は まだ調べられていない。この星は静謐な LBV の候補である。 (よく分からない。O-型星 - slash 星 - LBV - WR という筋書が確定した? ) |
LBV が実際にはいくつあるか LMC の HDE 269858 = Ofpe/WN9 slash star は 1981 に S Dor 型の 爆発を起こした。この発見は LBV が実際にはいくつあるかについての 見方を完全に変えた。 LMC にはそのような星が 10 個知られている。M 33 では UIT サーベイの結果その種の星が 6 個見つかった。 M 33 の幾つかの 選択域で行われた WR 星探査はこのような星の検出に対して完全なはず であるが、銀河前面に対してはまだ完全でない。 M 31 の slash 星の例 図13では、M 31 で初めて分光的に同定されたそのような星の例を 示している。比較されているのは LMC の Pfpe/WN9 星 HDE 269927 で ある。 まとめると 以上をまとめると、 スペクトルは LBVs、例えば B324、とよく似ている に拘わらず、純粋の LBV と同じ進化状態にあるかどうかは立証されてい ず、また全ての slash 星が全て LBVs に進化するかどうかは分からないが、 短期間の爆発的質量放出のステージにあると知られている星の数がとても 不足していることは事実である。これら LBV 候補が見つかったのは偶然 によるもので、系統的な探査が必要である。 |
WR 星の分類法 図14(上)の WN 星の分類には N V λ4603, 19 to N IV λ4058 to N III λ4634,42 ライン比が使われる。 図14(下)の WC 星 では、C IV λ5806, C III λ5696, O V λ5592 の 比が用いられる。 グリズム法はあまりうまくない その強い輝線のため、ウォルフ・ライエ星の検出は容易に思える。 図15は NGC 6822 のグリズム像である。矢印はこの方法で見つかった 唯一のウォルフ・ライエ星を示す。この方法がうまく行かないのはどうして だろう?それは、(1)混み合い、(2)スカイの明るさ、である。 検出の重大問題 しかし、もし研究の目的が WC/WN の相対数比を正しく求めたいということ なら、もっと大きな問題がある。図16には WC、WN それぞれで最も強い輝線 の等値巾を示した。WC のライン強度は WN の約4倍大きい!図16を 解釈する際に念頭に置いて欲しいのは、WN 星の可視等級は WC と同じくらい ということである。従って、もし WN 星探査も WC 星と同じくらいの完全度を 目指すなら、 WC の4倍時間をかける必要がある。 狭帯フィルター WC, WN の検出と選別には、したがって、専用のフィルターセットを用意 する必要があった。この方法は NGC 6822, IC 1613, M 33 の 2 領域 (Armandroff,Massey 1985)で上手く働いた。Pierre Royer はさらに進めて サブタイプまで分類するフィルターセットを作った。 検出テクニック 輝線と連続光部分の適切なフィルター選択の先に、各画像ごとに混み合い フィールド測光を行い、エラーを評価した。こうして、選んだ候補星の 分光観測からスペクトル型を確定する。 |
![]() 図16.LMC と MW の既知 WR 星の輝線等値巾。 |
一様な赤色超巨星分布 私が Humphreys, Sandage 1980 の M 33 カタログを調べた時に不思議 だったのは、青い星の分布がこぶこぶなのに、赤い星はかなり一様な 分布を示していることであった。晩期 B-, 早期 A-型超巨星が M = 15 - 25 Mo で、赤色超巨星は M ≈ 15 Mo 星であることを考えると、 分布の差は理解しがたい。前景星の混入を調べるため、 Bahcall、Soneira 1980 の銀河系モデルを用いて、前景星の混入を見積もった。 矮星の混入 40 Mo RSG の Mbol = -10, 15 Mo RSG の Mbol = -7 とし、 M 33 の DM = 24.6, b(M33) = -31° とする。さらに、 BC(早期 K) = -1, BC(M5) = -3.3 とする。すると、 40 Mo RSG の V = 15.6 - 18.0, 15 Mo RSG の V = 18.6 - 21.0 と なる。一方、M 型矮星分布の高度スケール = 300 pc とすると 視線が銀河面を脱出するには 600 pc かかる。表5から、 K5 - M5 前景赤色矮星の混入は V = 15.5 で K5 - M5 星が可能 と予想される。V = 18.0 では、M0 - M5 星の混入が可能。しかし、 V = 20.5 では前景星の混入があり得るのは晩期 M 型矮星のみである。 |
![]() 表5.与えられた V 等級に前景星が到達するための距離(pc)。 対策 色々やって、他の人と同じ結論にたどり着いた:(B-V) - (V-R) 二色図は赤色超巨星と矮星の分離に有効である。 現在分光でその確認を行っている。 |
大質量星の IMF 大質量星の IMF の観測的研究は Garmany, Conti, Chiosi 1982 が 始めた。彼らは既知 O-型星のカタログを作成し、完全度をテストし、太陽 半径の内側と外側とでの IMF を計算した。彼らは IMF の傾きが銀河中心 距離に伴って変化すると結論した。その後の研究で、完全度は彼らが考えて いたほど高くなく、主系列星が大幅に脱落していた等の誤りが見つかった。 しかし、結論が誤っていてもその価値は失われない。この論文は問題点を 明らかにし、多くの課題をテーブルに載せた。 4.1.PDMFs, IMFs, γ, and Γ星形成の表現銀河円盤単位領域内で時間巾 dt 質量巾 dm で生まれる 星の数 = φ(m)ψ(m)dmdt ここに、 φ(m) は初期質量関数、ψ(m) は星形成史である。 初期質量関数 φ(m) = A mγ と仮定する。 Γ = γ + 1 とおく。Present Day Mass Functions n(m) は、 (1)爆発的星形成 t > 寿命の星は存在しない。t < 寿命の星の PDMF は IMF と同じ。 n(m) ∼ mΓ (2)連続的一定星形成 t > 考えている星の寿命範囲の最大値、の場合。寿命期間に形成さ れた星しか見えないから、考えている質量 m の 星の寿命を tms として、 n(m) ∼ mΓ×tms |
(
n(m) の定義が書いていないので文脈から PDMF のことと判断したが、
Γ でなく、γ の方ではないか?いい加減さが嫌だ。 ) 注意 Garmany et al 1982 が implicit に仮定していた重要な点は、 「サンプルが沢山の星形成域を含み、星形成域での星形成率は一定では なくても、十分に広い範囲のサンプルを平均して、様々な年齢の十分多数 の星形成域を含んでいるなら、(2)の式が成立する。」ということ である。 ( ここもよく分からない。多くのサンプルの星形成率の平均が、大質量星 の数Myr の寿命期間中に大きく変わるとは思えないからか? ) Scalo の ξ(log m) Scalo 1985 が導入した ξ は、n(m)dm = ξdln m で定義されるので、 ξ = m n(m) である。また、n(m) ∼ mΓ なら、 ξ ∼ mΓ+1 だから、 dlog &xi(ln m)/dln m = Γ ( ここもよく分からない。 Γ+1 じゃないのか?この 節はめちゃめちゃ。 ) |
4.2.実際にやると。LMC/SMC の IMFGarmany et al 1982 の IMF 勾配が銀河中心距離により変化する という示唆は、では低メタルの LMC/SMC での勾配はどうかという 問題を引き起こした。私は、Sandeleak (1969) の LMC カタログも、 Azzopardi, Vigneau 1982 の SMC カタログも HIIR を抜かしている ことに気付いた。したがって、LMC/SMC の全面を UBV 撮像するとこ ろから始める必要があった。幸い当時は CCD が導入された時期で、 撮像、続いて分光を10年に渡り CTIO 4m で続けられた。 銀河系への拡張 上と同様の観測を銀河系に対しても行うべきである。又も幸運なことに 当時 Tektronix 20482 CCD を Kitt Peak 0.9 m 望遠鏡に 付けることが出来た。また、私は 4m 用多体ファイバー分光器 Hydra の 据え付けに携わっていた。という訳で、銀河系への延長は可能となった。 ![]() 図17.NGC346/SMC 中央部。1985年 CCD 撮像。この星団の青い星 を分光しただけで、SMC 中の O-型星の数は倍以上になった。 |
4.3.マゼラン雲と天の川の初期質量関数マゼラン雲と天の川の観測結果表6にマゼラン雲と天の川の OB-アソシエイションの初期質量関数、 最大星質量、年齢を載せた。データは Massey et al 1995b,c である。 まず分かるのは、勾配がアソシエイション、SMC, LMC, MW の間で共通であり、 大質量星もどの銀河にも見出されることである。グレインに働く輻射圧の ため、高メタルでは大質量星が形成されないというようなことは起きていない。 メタル量がファクター10違うに拘わらず、目立った違いはない。 NGC 346 #1 の質量 表6の NGC 346 最大質量星は 70 Mo で、このスクールで Kudritzki が 示した 100 - 200 Mo と異なる。私は表2の輻射補正値を O3 に対しても 用いた。これは有効温度の決定にかかっている。 ![]() 表6.マゼラン雲と天の川内の OB アソシエイションに対する、年齢、 最大星質量、IMF 勾配 Γ. (Massey et al 1995b ) |
4.4.フィールド星太陽近傍 O-型星の半数はアソシエイションに属さない?Garmany, Conti, Chiosi 1982 は太陽から 3 kpc 以内にある O-型星の分布を示した。今では、このサンプルが不完全である ことが分かっているが、それでも約半分の O-型星が OB-アソシエ イションのメンバーでないフィールド星とされているのは興味深い。 マゼラン雲のフィールド星 HR 図 そこで、マゼラン雲のフィールド星 HR 図を作ってみることにした。 Churchwell 1991 は Zuckerman 1973 のオリオンでの研究を引用して、 母分子雲から典型的には3 km/s の速度で離れるとした。これは 10 Myr で 30 pc, LMC 距離では約 2′ になる。しかし、そこで必ず出る 質問はフィールド O-型星は "runaway" 星ではないか、というものである。 そこで、「極端」フィールドとして、横向き速度 100 km/s × 3 Myr = 300 pc = 20′ という基準を設けた。このサンプルには O3, O4- 星が 8 個含まれている。 完全度補正 図18はこれらフィールド星の HR 図 (Masssey et al 1995c)である。 完全度補正のため、Curtis Schmidt で LMC 2 領域の UBV 画像を撮った。 その最も青い星のスペクトルを CTIO 4m 望遠鏡で撮った。この完全度 テストの結果は図19に示した。この図は最も熱く、最も明るい星が 見逃されていたことを確かに示している。M = 25 Mo まで信頼できる補正 が行われたことが確認された。 (図18と19はどうしてこんなに 違うのか? ) |
(1)進化経路との一致 ジュネーブ進化モデルと比べると、同じ質量帯の中で 2 Myr 区間内の 星数が同じになっていて、一致が良い。主系列の巾も正しい。"blue loop" 星の証拠は見られない。これは Chiosi の講義とは異なるが、彼は 不完全な既知 OB-星サンプルを用いている。 (2)フィールド星の IMF IMF はアソシエイションとフィールドとで大きく異なる。フィールドでは、 Γ(LMC) = -4.1±0.2, Γ(SMC) = -3.7±0.5 であった。 Garmany, Conti, Chiosi 1982 フィールド星データをジュネーブ進化経路を 用いて再解析した結果(Maeder, Meynet 1988)、 Γ(MW) = -3.2±1.4 であった。 (3)最大星質量 最大星質量は O3 星の存在から分かるように、フィールドとアソシエイション で差が認められない。ただ、より低質量の星と比べ相対数が異なる。これは ガス温度と分裂質量の関係から予想されていたことである。 4.5.学生への問題図18で V = 一定ラインが与えられている。それから V-光度関数を 作ったら IMF に関し何が言えるか?V = 11.0 - 11.5 の間にはどんな 質量の星が含まれるか?それから信頼度を持って IMF までたどれるか? |
WR 星とは何か? 1976 年の Liege コロキウムで Conti が新しい説を発表するまで、WR 星の 起源は大質量連星のロシュローブが原因で外層物質が系から放出されて、核燃焼 物質が露出したものと考えられてきた。コンティシナリオでは、単独の大質量星 が星風によって WR 星になる。この場合、 WR 星は大質量星のある進化期を指す 言葉となる。 1996 年にその後の20年間で何が判ったかを検討するカンフェランスが開かれ、 私は "Numbers and Distribution of Wolf-Rayet Stars in Local Group Galaxies" という題で話した。ここではその時の話を次の4つに分けて述べる。 WC/WN 比 マゼラン雲の WC/WN は天の川より低いことが知られていた。それはメタル量に 起因すると考えるのは自然で、Massey, Conti 1983 は M33 では WC/WN に動径 勾配があり、そのセンスに合うことが示されている。新しいサーベイの結果は この相関を確認したが例外もある。 |
WR 星を含む星団のターンオフ質量 最近の研究は OB アソシエイションの星の年齢が極めてよく一致していることを 示している。これから、様々なサブタイプ毎に WR 星の母星質量を直接に決められる ようになった。 未進化の大質量星と WR 星との数の相対比 最近の研究の結果ようやく > 40 Mo の星の数が LMC, MW, NGC 6822, M 31, M 33 で決定された。標準理論では年齢が混在している系の N> 40 Mo/ NWR = 10 だが、実際には ∼ 3 であった。これは、WR 星の中には 未だ水素核燃焼を行っているものがある(Conti 1995)か、もっと低質量 ∼ 30 Mo の星が WR 星に進化しているかであろう。観測された N> 40 Mo/ NWR 比の値はほぼ一定で、決定精度内ではメタル量効果はない。 赤色超巨星と WR 星 M31, M33, NGC 6822 での RSG サーベイは間もなく終わる。探査の結果と 大質量星進化との関連を論じる。 |
5.1.1.M 33 の WC/WN 比乾板では特に WN 星の検出度が低いMassey, Conti 1983 は 干渉フィルター+image tube photography に よる M 33 像をブリンクコンパレータ―で調べて WR 探査を行い、候補星を Mayall 4m で分光して、79 WR 星のカタログを作った。その結果、 WC/WN 比に明らかな勾配を認めた。数年後、CCD で M 33 の 2 領域に 同様な観測を行い、既知と同じくらいの数の新しい WR を見つけた。つまり、 そこでの写真乾板による探査完全度は約 50 % であった。最近 M 33 中心部 5′×5′ の観測を行い、129 WR 候補を見つけた。うち 94 はかなり確かである。47/94 は写真で発見済みで、以前の検出率が 50 % で あることを示す。新しい WR の 75 % は WN であった。 実際、中心方向に多数の WN 星が新しく見つかった。WC/WN 比に勾配がある という結論は変わらなかったが、値は大分変化した。 ![]() 表7.M33 中心距離 ρ 区間での WC, WN の数。 ρ は 25′ で規格化。左側の星数が小数になっているのは、検出確度で "winner" と "loser" の重みを付けたからである。 |
UV Imaging Telescope で "Super WN" を発見 現在行っている UIT データの解析では、所謂 "super WN" 星が M 33 巨大 HIIR NGC 604 中に発見された。これは R 136 の穏やか版と言うべき天体である。さらに 6つの Ofpe/WN9 型星を発見した。 ![]() 図20.M 33 において、WC/WN の中心距離 ρ による変化。 |
5.1.2.メタル量と WC/WN の関係![]() 表8.局所群銀河の WC/WN 比。WR 表面数密度と O-組成も示す。 近傍銀河のサーベイの完全度は? 表8と図21には WC/WN 比がメタル量と非常に良い相関を持つことが示さ れている。NGC 6822, IC 1613, IC 10 は完全なサーベイが行われた。 M 31 は 8 領域での探査が行われた。LMC, SMC もほぼ完ぺきである。 太陽近傍の検出率は WC/WN に影響しない? M 33 の3点に関して相関は良い。しかし太陽近傍のデータ点は少し 離れているし、SMC から NGC 6822 にかけての逆転も気に入らない。 太陽系の WR 探査が主に対物プリズムサーベイで行われてきた(HDカタログ) ことを考えると、 3 kpc 以内のサーベイの結果は WC/WN 比の上限を与え ていると看做すべきであろう。減光がなければ、HD カタログを使って、WNE 星 Mv = -3.8 だと 3 kpc で V = -3.8 + 5 log 300 = 8.5 は探せる。 しかし、実際には OB アソシエイション 10 個の平均は E(B-V) = 0.75、 Av = 2.3 であった。したがって、典型的な WNE 星は 11 等で見つかる。 そうなると、HD カタログに載っている可能性は低い。つまり、近傍銀河で WN に比べ WC の方が見つかり易かったのと同じように、太陽近傍でも WN 星 の探査は難しい。 |
![]() 図21.WC/WN 比はメタル量と非常に良い相関にある。例外は IC 10 で 現在爆発的星形成の最中のようである。 NGC 6822 と SMC の逆転は? NGC 6822 では WC = 0, WN = 4 に対し、 SMC では WC = 1, WN = 7 なのに、 NGC 6822 の方が高メタルである理由は何だろうか?もちろん、ポアッソンノイズ の効果は考慮すべきであるが、メタル量にも問題がある。Massey et al 1995 は B-型超巨星の Si 線が弱いことから、NGC 6822 は従来考えられていたより低 メタルではないかと述べている。 コンティシナリオを支持? このように、WC/WN とメタル量の相関はタイトで、コンティシナリオを支持して いるように見える。しかし、IC 10 の問題がある。 |
5.1.3. IC 10: 爆発的星形成銀河多数の WR を発見した。IC 10 は 1 Mpc 離れた不規則銀河である。Massey, Armandroff, Conti 1992 は WR 探査を行い、22 候補星を見つけた。その距離と赤化の大きさを考えると、 これは驚きであった。分光から 15 個を確定、これは銀河規模の大きさで WR/kpc ,sup>2 として活発な星形成領域の値に匹敵する。これは Hα 強度 からの推察、 IC 10 が不規則銀河中でも最高度の星形成率を持つ、を裏付けている。 |
分子雲と星間領域とで異なる Γ OB アソシエイションでは Γ = -1.3 のサルピータ値だが、大質量星は アソシエイションから離れた所にも見つかり、そこでは Γ = -3 ≈ -4 である。従って、星形成が活発になると、OB-アソシエイションの比率が上がり、 大質量の方に重みがかかり、 WC/WN が高くなるのであろう。 この説明の欠陥 この説明の欠陥は LMC のアソシエイションとフィールドを比べると、 Γ が違うのに WC/WN はほぼ同じなことである。どうも上の説明は 間違っているらしい。しかし、ではなぜ IC 10 は高い WC/WN を持つのだろう? 他の額初的星形成銀河ではどうなのだろう? この問題の解決は極めて重要に思える。 |
「ある火曜日」、一斉に生まれた Hillenbrand et al 1993 は NGC 6611 を研究して、「ある火曜日、最大 質量の星たちが同時に生まれた。」、と結論した。Massey et al 1995 も 全く同じ発言を、銀河系 9 つの OB アソシエイションの研究で述べた。 「ある火曜日」と述べた時のエラーは ±1 Myr であり、時に全体の 10 Myr 以前に生まれる大質量星もある。 ターンオフ質量 したがって、星団またはアソシエイション中の WR, LBV, RSG の質量は そのターンオフ質量と考えてよい。図22には Tr 14/16 の HR 図を示す。 この星団は典型的 LBV η Car を含んでいる。この図で η Car の 有効温度には Davidson et al 1986, 光度には Westphal, Neugebauer 1969 を用いた。ただし、 L は新しい距離 Massey, Johnson 1993 で補正した。 HD 93126 (WN7+abs) には BC = -4 mag, Te = 45,000 K をあたえてある。 LBV と WR の位置 図22で最も驚くべきは、η Car の位置である。それはぴったりと予測 通りの点にある。進化年齢は 3 Myr である。これは最大質量の星が LBV に 進化するという観測的証拠の最も鮮やかな例であろう。 次に興味深いのは WR 星が一般に考えられていたより暗いことである。これは Humphreys, Nichols, Massey 1985 が WR を含む星団の HR 図を調べた時にも 遭遇した状況である。 ( 結局 WR は暗いのか、BC が悪いのか、 不明。) WR 母星質量 WN7+abs の母星、それに η Car それ自身の質量は > 120 Mo と 考えられる。この数字は、 (a) Chlebowski, Garmany 1991 の BC を適用し、 (b) ジュネーブ進化経路にフィットして 得られた。 |
表9を見ると、メタル量の差は WR 質量に影響していない。明らかにある
WC 星は > 70 Mo である。もっと低い質量の WC 星はないのだろうか?
ある MW WN7 星は > 100 Mo である。もっと低いのはないのか?最後に、
ある MW WN4.5-5 星は 40 Mo という低い値を持つらしい。しかし、 LMC
WN はもっと高い質量を示す。これはメタル量効果なのだろうか?
![]() 図22.Tr 14/16 の HR 図。図9と比べよ。Massey, Johnson 1993 より。 |
進化定常流の仮定 十分に広い領域からサンプルを取り、そこでは数百万年の間平均 星形成率が一定であったと仮定する。次に、そこにある 40 Mo 以上で、 水素核燃焼=主系列にある星を数える。そしてそれを WR 数と比べる。 (1)もし全ての > 40 Mo 星が WR に進化するなら、この数は二つの 進化時期の長さの相対比を与える。 (2)WR の相対寿命、例えば 10 % を与えて、その値に達するにはどの 質量範囲にすべきかを求める。 未進化大質量星の観測 問題は、O-型星の数ではなく、水素核燃焼を行っている星を探す必要が あることだ。それは実際には大変困難で、例えば Smith(1988) と Maeder (1991) では答えが 2 桁異なっている。Massey et al 1995c は LMC/SMC で 25 Mo まで 達する深い探査を行って、検出度補正を正確にし、未進化大質量星の 探査を行った。HR 図を作るために数百の星のスペクトルが撮られた。似たような 研究が Massey et al 1995a により、 NGC 6822, M31, M33 の OB アソシエイション で行われた。この場合も多数のスペクトルが得られたが、仕事の大部分は UBV 測光でなされた。したがって、その数値の信頼度は低い。 "O/WR" = 3 ! 表10の結果を見て驚くのは (1)その比が一定値である。 (2)比の値が標準モデルの予言する 10 でなく、3 である。 ことだ。メタル量が影響しているとしても、まだそれが現れる感度には達していない。 |
![]() 表10.N>40Mo = 40 Mo 以上の OB 星。M33 以外は Massey et al 1995a から。M 33 は新。 何故だろう? 一体どうなっているのだろう? (1)N>40Mo には He 燃焼期の青色超巨星が多数混入している。 そうかも知れない。しかし、Massey et al 1995c の LMC フィールドでは 等間隔等時線で綺麗に等分されていた。つまり星は主系列にあるように見える。 (2)もっと低質量の星が WR になっているのか?もし WR 母星が 30 Mo まで下がる なら、比を 10 にできる。Massey et al 1995c 参照。 (3)ある種の WN 星は実は水素燃焼しているのかも知れない。 これらの幾つかが複合しているのかも知れないが、原因は不明である。 |
赤色矮星の混入 3.2.1.節で述べたが、M 33 の赤い星カタログを見て、どれが M 33 の RSG でどれが MW RD かを区別できない。スペクトルを撮ればよいが、その場合 600 - 800 星が必要で、その場合でさえ低メタルの赤色超巨星を赤色矮星と 区別することは難しい。 (B-V) - (V-R) 二色図で超巨星と矮星を区別できる しかし、 (B-V) - (V-R) 二色図で超巨星と矮星を区別できることが判った。 同じ (V-R) カラーで比べると、矮星の (B-V) は超巨星よりも小さいのである。 図23には、M 33, NGC6822, M 31 の二色図を示す。黒丸=近くの比較領域の 前景星。白四角=M 33 方向の前景星+ RSG. 実線=前景星と RSG の境界。 Mv = -6 付近でサンプルをカットした。たしかに NGC 6822, M 33 領域からは 多数の前景星が見つかった。それらの上に分布するのは赤色超巨星である。 M 31 では分離しない。 しかし、 M 31 ではそのような星がない。もっと暗い星まで下げると 超巨星が現れてくる。したがって、 M 31 には明るい超巨星が存在しない。 しかしこれは、Humphreys et al 1988 による RSG サーベイの結果と次の2点で 異なっている。彼らは Mv = -8 の明るい赤色超巨星が存在すると主張して いる。しかし、その数は予想ほどでなく、その原因は大質量星の形成率が 低いためとした。しかし、 (1)我々は少数でなく、一つも見つけなかった。 (2) WR 星は大質量星が形成されていることを示す。その密度は表8に 見る通り正常である。 明るい赤色超巨星が無いのは星形成ではなく、星進化の問題らしい。 高メタル量の効果? これは何を意味するのだろうか? 高メタル量の大質量星は赤色超巨星でなく WR 星へと進化するのだろうか? |
![]() 図23.NGC 6822, M 33, M 31 選択域での赤い星の二色図。 データは Mv = -6.1 でけられている。 |
WC/WN はメタル量と相関する WC/WN はメタル量と相関することは、個々の銀河の中でも比の勾配として、 また、メタル量の異なる銀河間の比較でも確認された。高メタルになると WC/WN が大きくなる。IC 10 は例外である。その意味の理解が求められる。 OBアソシエイションのターンオフ質量 OBアソシエイションの大質量星がほぼ同時期に生まれたことを使い、その ターンオフ質量をそこに見られる様々な天体の母星質量と定められる。 その結果、 (1)MW と MC の間に WC 母星質量の差は見つからない。 (2)ある WC 母星質量は > 70 Mo (3)MW のある WN7 星の母星質量は > 100 Mo (4)MC のある WN4-5 星の母星質量は低く 40 Mo (5)しかし、ある早期型 WN 星の母星はもっと重い。 |
O/WR 比 未進化大質量星と WR 星の数の比 O/WR は、MW, MCs, NGC 6822, M 33, M 31 である程度信頼性のある値が出ている。ここでは "O”として > 40 Mo を採った。得られた値は O/WR ∼ 3 で標準理論から予想される 10 と異なる。解決案として (1)多くの WR がまだ水素核燃焼期(主系列星)にある。 (2)想定より低い質量の星(30 Mo)も WR 星に進化する。 RSG 探査 OB 探査を行った領域で RSG 探査を続行中である。少なくとも M 31 では 明るい RSG が抜けていることが判った。 M 31 中 WR 星の面密度は NGC 6822, M 33 と同じくらいあり、その原因を星形成率が低いためとするわけにはいかない。 これは、メタル量が大質量星の進化経路に影響し、低質量星が RSG でなく、WR 星になるためではないか? |
可視で最も明るい星が最大光度ではない大質量星の進化は殆ど光度一定の経路を辿る。したがって、光度は 質量と看做せる。カラーから輻射補正を決めるのは困難で、 どれが銀河内の最大光度星かを探すのは難しい。分光が必要。進化した大質量星LBVs銀河内で LBV が見つかるのは大抵、華やかな増光がきっかけである。 これは、大質量星が進化の途中、不安定で大規模質量放出を行う領域を 通過中なのであろう。 WRs 局所群では WRs の探査はかなり完全に行われた。ライン強度が弱い WN 星の探査にはやや注意が必要である。 RSG 局所群での RSG 探査は一般に信じられているほど完全ではない。これは、 前景 K-, M-型星の混入の問題が大きいからである。(B-V)-(V-R) 二色図 の助けで矮星と超巨星の分離が可能である。 アソシエイションの IMFMW, LMC, SMC 内 OBアソシエイションの大質量星 IMF は、メタル量が ファクタ 10 違うに拘わらず、似たような 勾配(サルピータ値 Γ = -1.3 )と最大質量を示す。 |
フィールド OB-星OB-アソシエイションから遠く離れた星間空間に多数のフィールド OB-星が 見つかっている。それらの年齢構成は均等と看做せ、大質量星進化を 探る良いサンプルを提供する。IMF 勾配はアソシエイションより急 フィールド大質量星の IMF 勾配はアソシエイションより急で、MW, LMC, SMC では、 Γ = -4 である。これは、大質量の星が相対的に少ないことを 意味する。そうであっても、フィールドに O3, O4 星が見出されるので、最大 質量は同じくらいらしい。 進化モデルとの対応 MCsの HR 図は進化モデルとよく一致し、等時線、主系列寿命に関しては よく理解されていると看做せる。 局所群銀河の研究から分かったことWC/WNWC/WN はメタル量の関数で、コンティシナリオに良く合う。そこでは、 質量放出率の大きな星のみが WR に進化できるとされる。 IC 10 問題 IC 10 は上の相関から外れる。星形成が盛んだと IMF の大質量側に 重みが増すのではないか。 M 31 に明るい RSG が欠ける M 31 には明るい RSG が欠ける。これもコンティシナリオで理解は可能。 |