現在、M31 ハローは複数の小マージャーにより形成されたと考えられているが、
そのマージャーはもっと複雑な可能性がある。そこで、GADGET2 シミュレーション
コードを用いて M31 が巨大マージャーを経験した可能性を探った。
![]() 図1.M31 周辺構造の時系列スケッチ。中央パネルで大きくて厚い円盤が長軸 4 ° (Ibata et al 2005 )に渡って横たわる。四角のフィールドはBrown et al 2006, 2007, 2008 が観測した。 ![]() 図3.シミュレーション開始後 5 Gyr におきた融合の 0.5 Gyr 後の新形成星の 分布。両銀河の質量比は 2.8:1, rper = 30 kpc, Gal1 incy = 65, Gal2 incy = -90 である。シミュレーション開始から 10 Gyr 後、新たに出来た 円盤の直径は 36 kpc に達し、厚みは 4 kpc となった。ここで、薄い円盤は x 軸 に沿って投影され、その角運動量は y 軸方向を向いている。 ![]() 図5.質量比 3:1, rpericenter = 24.8 kpc マージャーのシミュ レーション開始 9 Gyr 後の様子。上=薄い円盤の回転曲線を Carignan et al 2006 と比較。下=質量プロファイルを3成分に分解。10 kpc リングと薄い 円盤のスケール長 = 5 kpc が判る。 ![]() 図7.rpericenter = 30 kpc, 2.8:1 マージャーの例。角運動量分布。 ![]() 図9.ジャイアントストリームでの速度分布。 ![]() 図11.(左)図8と同じく潮汐テールから戻ってきた星の軌跡。(右) 全ての星の分布。上は 500K 個、下は 1M 個。 |
潮汐テールからは高エネルギーの降下星が継続的に供給されるので、最近 M31
外周部で発見されたような大きなループの存在が予言される。一回のマージャー
で円盤、厚い円盤、バルジ、ハロー中のストリームの強度、サイズ、形態、運動
特性が第一近似として説明される。
![]() 図2.質量比 3:1 の大マージャー (rpericenter = 24 kpc, Gal1 incy = 70, Gal2 incy = -110) の様々な時期の様子。スタートは 9.3 Gyr 以前 スタート(T = 0, z = 1.5) で最初の遭遇は 0.7 Gyr 後に起きた。緑 = 新しく 形成した星である。T = 4.5 Gyr には融合が起きた。最接近距離が大きかったので 遭遇から融合までの時間は長くなり、 3.8 Gyr も掛かった。第2遭遇 T = 4.2 Gyr の間に多数の新しく出来た中間年齢星を含む潮汐テールが形成される。後にこの テールは舞い戻って来てジャイアントストリームを形成する。このストリームは 5 - 8 Gyr 以前に作られた星に富んでいる。最後のパネル(T = 9.3 Gyr) には 結果としてできた銀河が M31 と比べられている。二つの銀河の角度差(?)が 共鳴角 180° に近かった場合のジャイアントストリームの形成、T = 4.2 Gyr で多くの衛星銀河星が剥ぎ取られる、を示す図も載せてある。幾つかの星は速度 不足で元の銀河に戻って行く。それらは T = 6.8 Gyr の図中矢印で示したループ 星である。ループは潮汐テールから落ちてくる星により補給を受けるので T = 9.3 Gyr 及びそれ以降も持続する。 T = 4.2 Gyr パネルの点線四角は潮汐テール 粒子がどう選ばれるかを示す。 ![]() 図4.図3と同じシミュレーション開始後 10 Gyr 時点での新しい銀河の成分構成。 青=融合後 0.5 Gyr 後形成の星。緑=第1遭遇(シミュレーション開始後0.5Gyr) から融合後 0.5 Gyr までの間に形成した星。赤=母銀河内にあった星。点線=薄い 円盤。破線=厚い円盤。左下=厚い円盤、右下=バルジの星。 ![]() 図6.3:1 マージャー、T = 9 Gyr のガスモデルと Braun et al 2009 の HI 観測 との比較。右上と左下は rper = 24.8 kpc, 主銀河の inc = 65°, 衛星銀河の inc = -95°。二つのモデルは戻り量が高い方から低い方へ 変わっている。共にバルジの超過ガスはない。それらの違いはinc角度が 5° 異なる点のみである。 ![]() 図8.rpericenter = 30 kpc, 2.8:1 マージャーの例。 黒点=薄い円盤。 赤点=衛星銀河 潮汐テールの軌跡。(a)融合直前、粒子が衛星から引きはがされる。 融合後(b)0-1 Gyr, (c)1-2 Gyr, (d)2-3 Gyr, (e)3-4 Gyr, (f)4-5 Gyr の軌跡。(g) 5.5 Gyr での分布。 (h) 5.5 Gyr (x,y)面。 ![]() 図10.(左上)Ibata et al 2005 の観測。(右上)2.8:1, rper = 30 kpc。 (左下) 3:1, rper = 25 kpc。(右下)右上の座標を逆転。 ![]() 図12.赤破線=ジャイアントストリーム中母銀河星の [Fe/H] 分布。 青実線=北ループ中の分布。 |