INT/WFC の観測に CFHT/MegaCam による外辺ハローの深い画像を補足して、 M31 の 深いサーベイを行った。観測は内側 50 kpc 全域と南側四半域は 150 kpc までを カバーして、M33 の > 200 kpc 部分を含んでいる。これは広大な領域を眺望する 初めての試みである。低輝度の複数の大構造が発見された。それらには幾つかの ストリーム、二つの Mv &asimp; -9 矮小銀河、And XV, And XVI、 が含まれている。 内側ハローにはストリーム的構造が貫入してきたために生じたと思われる星種族 の大きな変動が検出された。これはこれまでの研究にあった混じり合い、時に対立 する結果に光を当てる意味で重要である。![]() 図1.INT/WFC による M31 観測フィールド。内側楕円は傾斜角 77° 半径 2°(27 kpc = HI 円盤の端) の円盤を示す。外側円盤は 55 kpc 半径, c/a = 0.6, 楕円で、短軸と長軸を描き込んである。このマップは 164 INT ポインティングから成っている。 ![]() 図3.減光マップ(Schlegel et al 1998) 上に重ねた観測領域。 ![]() 図5.(上) g0の測光不定性。(下) i0の測光不定性。 ![]() 図7.図6と同じだが、画像解析から銀河とされた天体。 ![]() 図9.MegaCam 観測内の衛星銀河色等級図。等高線は図8と同じ。 M33 に関しては 1° - 2° 円環内を使用。And II は 12'、And III は 6'、他の矮小銀河 は 12' 以内を使用。距離は 24.54 (M33), 24.07 (And II), 24.37 (AndIII), 24.47 (Amd XI, XII, XIII は M31 で代用) ![]() 図11.色等級図上、1.5 < (g-i)0 < 3.0, 15.0 < i0 < 19.5 の星の分布。 M31, M33 周辺は blue loop や AGB 星がこの範囲に入ってくるが、その外側では銀河系円盤矮星のきれいな サンプリングになっている。 ![]() 図13.銀河系円盤矮星と Besancon モデルとの比較。(データーモデル)/データ の分布。M31 2°, M33 1° 以内を除くと、差は平均して 2 % 以内である。 僅かな勾配 = 0.002±0.0006 deg-1 が認められる。 ![]() 図15.(a) Besancon モデルによる MegaCam 比較領域の色等級図。 (b) 観測。(c) 2.0 < (g-i)0 < 3.0 の高度関数。黒=観測。 灰=モデル。これから不完全度関数を決めた。(d) それでデータを補正した結果。 ![]() 図17.(a) 前景と背景(=六つの比較領域 93, 105, 106, 115, 120, 121 の和を 夫々の観測領域毎に適当にスケールする。) を差し引いた残りのヘス図。図4の領域の例。RGB がきれいに残っている。 (b) -2.3 < [Fe/H] < -0.7 等時線の間の光度関数。Bergbusch/Vandenberg 2001 のモデル通りに log スケールで直線フィットされている。MegaCam フィールド全体で 105 個以上の RGB 星が見つかった。 (というわけで、結局前景差し引きには Besancon モデル を使わず、周辺フィールドの平均を規格化して用いたらしい。) (c) -3.0 < [Fe/H] < +0.2 の星を含む 領域だけに刈りこんだ Matched Filter Weight Map 本文を読むと、(a)内の各ピクセルのシグナルを、 差し引きに使った参照フィールドの値で割ったものをウェイトとすると書いてある。 (ように読める。)しかし、(a) の値を元データ(=シグナル+前景+背景)で 割ったものをウェイトとすべきように思われる。 ![]() 図19.図18と同じだが、限界等級を INT に揃えて、i0 = 22.8 に統一した。人工的な模様は見えなくなった。等高線は表面輝度 Σv = 27, 28, 29 mag arcsec-2 。四角= Brown et al 2003 -2007 の HST/ACS サーベイ領域。 |
多くの副構造の下には、薄く滑らかで
150 kpc まで広がったハローが広がっている。それらの星は低メタルである。
このハローはスケール長 55 kpc の Hernquist model でフィットされることが
判った。この値は理論予想の 4 倍も大きい。
![]() 図2.CFHT/MegaCam のサーベイ領域。イメージ安定性が年毎に変わるので 観測年で色分けしてある。 ![]() 図4.MegaCam サーベイの合成色等級図。M33 に近い T5, T6 と M31 に近い H11, H13 は除いた。基準 RGB は左から NGC 6397([Fe/H]=-1.91), NGC 1851(-1.29), 47 Tuc(0.71), NGC 6533(-0.2) である。 (m-M)o=24.47 を採用。左下の四角=前景銀河系ハローサンプル領域。 右上の四角=前景銀河系円盤サンプル領域。点線: g0=23.5 は不完全性 が開始。g0=25.5 は限界等級。 ![]() 図6.MegaCam 色等級図。(a) フィールド 46. GSSの濃い箇所。 (b) フィールド 106. 外側ハロー。(c)Draco dSph 付近の比較領域. (d) CFHTLS フィールド D3. もう一つの比較領域。 -0.5<(g-i)0<1.5 の濃い集積は画像解析で 誤って星とされたコンパクト銀河。 ![]() 図8.フィールド 47 にパドヴァ等時線 t = 10 Gyr, [Fe/H] = -3, -2.3, -1.7, -1.3, -0.7, -0.4, 0.0, +0.2 を重ねた。実線= RGB, 破線= AGB 部分。 ![]() 図10.明るい星の補正技術の例。(左)&gzi; = -1.1°, η = -5.9° 付近の空孔が明るい星の周囲の低密度部分。(右)隣の領域からコピーして 持ってきた人工画像による埋め立て。(意味あるのか?) ![]() 図12.「広がった」と判定された天体の分布。密度の高い領域では 近接した星を銀河と判定している。 ![]() 図14.図6、7 に示したサンプル領域での、0.8 < (g-i)0 < 1.8 星の光度関数。黒線=観測。灰線=Besancon モデル。 (a) フィールド 46。ジャイアントストリーム の寄与が i0 > 21 で大きい。(b) フィールド 106。モデル とよく合う。 (c) Draco dSph 比較フィールド。モデルとよく合う。 (d)CFHTLS フィールド。かなりずれが大きい。 g バンドの限界等級 25.5 は 観測、モデル両方に同じように効かせている。 ![]() 図16.Besancon モデルの分布。斜線=比較領域の位置。 ![]() 図18.i0 = 24.5 までの matched filter map。選択は INT 限界等級 i0 = 22.8, MegaCam 限界等級 i0 = 24.5 -3.0 < [Fe/H] < +0.2 である。INT は MegaCam より浅いのでサーベイ境界 に明らかなエッジが見える。2003, 2004 データの PSF が細長かった ため、多くが銀河と判定されて失われた。保全の努力後も十分に回復せず、 横縞模様が現れた。 | |
![]() 図20.限界等級 i0 = 23.5, g0 = 25.5 の マッチフィルターマップ。(左)低分解(0.2° × 0.2°)。 (右)高分解(0.01° × 0.01° に3ピクセルのガウシャン平滑化) -1.7 < [Fe/H] < +0.2 の星のメタル量による分布の変化。 ![]() 図20(b).-0.7 < [Fe/H] < 0.0 の星の分布。 (1)軸比 0.5、長さ 5°(70 kpc) の不規則楕円形の集団。副構造が以前に (Ferguson et al 2002) 報告されている。Ibata et al 2005 で述べたように、 平均 [Fe/H] = -0.9±0.2 で回転している。この集団は円盤の先では 支配的であり、多分数 Gyr 昔の大きなマージャーの名残り(Penarrubia et al 2006) であろう。 (2)北西(ξ=1.5°, η=3°) 直径 1° の密度超過。恐らく 非拘束のデブリ。(Zucker et al 2004, Ibata et al 2005) (3)G1 クランプ(ξ=-1°, η=-1.5°) 。明るい球状星団 G1 を 囲んでいるが、物理的には無関係。Fergusonet al 2002. Fabia et al 2007 (4)ジャイアントストリーム。(Ibata et al 2001a, 2004) INT データでは M31 のごく近く ξ=1.5°, η=-3° から線上に伸びる構造。 MegaCam ではかなり幅広で ξ=3.5°, η=5.5° まで伸びている。 (5)ストリームに似た東の棚(eastern shelf) ξ=2°, η=0.5° (Ferguson et al 2002) (6)銀河西側のより淡いストリーム、西の棚(western shelf) ξ=-1°, η=0.5° 及び Irwin et al 2005 で ξ=2°, η=0.5° にも。双方共にカラーはジャイアントストリームと類似。 (7) ξ=4°, η=-1.5° から ξ=3°, η=-4° に掛けて、新発見のストリームが見つかった。ストリームCと呼ぶ。 (8)MegaCam 領域の南半分には星のない空虚な領域が広がる。 (9)淡くて拡散した成分が M 33 から 4° に認められる。 ![]() 図20(d).-2.3 < [Fe/H] < -1.1 の星の分布。図 20 (c)と似る。 違いは多数の密度スパイクが出現したことである。それらの中には新しく 発見された矮小銀河 And XI, XII, XIII (Martin et al 2006) がある。 図20eは最も低メタルな -3 < [Fe/H] < -1.7 星をあらわすが、そこでは ジャイアントストリームは殆ど消失している。一方ハローの密度勾配が認められる。 ![]() 図21.Besancon モデルによる差し引きの密度分布。(カラー版でないので よく分からない) ![]() 図23.主な構造の図解。丸点=衛星銀河、星=球状星団。 ![]() 図25.図24と同じ。天体=AndXVI ![]() 図27.ジャイアントストリームコアと外辺部のメタル量分布。メタル量はパドヴァ 等時線から決めた。二つの分布は完全に食い違っている。 ![]() 図29.前景除去後の(a) 主軸拡散領域,図21の緑 (b) ストリームA。図21の 青 ![]() 図31.短軸に沿った(図22の黄色)密度分布。矢印はピーク位置。ストリーム に対応しないピークがある。 ![]() 図33.図32の4領域のメタル分布。 ![]() 図35.背景除去後の表面輝度分布。(a) -3 < [Fe/H] < +0.2. (b) -3 < [Fe/H] < -0.7 (背景の影響を受けにくい) ![]() 図37.短軸沿いの輝度プロファイルの比較。 ![]() 図39.図38と同じだが、M31, M33 内側ハローを除いた。 ![]() 図41.図40と同じだが主軸拡散成分のみ。 ![]() 図43. -3 < [Fe/H] < -0.7 星の短軸プロファイル。その他は -7° < ξ < -1°, -1° < ξ < 2°, 2° < ξ < 7°。類似の低下は底に横たわるハロー種族 が存在することを示唆する。 ![]() 図45.ρ ∝ r-2.91 とした時に期待される距離指数の広がり。 ![]() 図47.M33 からの楕円座標距離による輝度プロファイル。 ![]() 図49.丸=Kalirai et al 2006、四角=Chapman et al 2006 の分光領域。 当時は種族情報が不足していた。今なら正しく解釈出来る。 ![]() 図51.黒点=Irwin et al 2005 の短軸 V バンドプロファイル。 8 kpc < R < 18 kpc はスケール長 3.22 kpc の指数関数で よくフィットする。2 kpc < R < 6 kpc 円盤領域のコブは渦状腕と 星形成リング。 |
![]() 図20(続き).-3.0 < [Fe/H] < -1.7 の星のメタル量による分布の変化。 (下)は -3.0 < [Fe/H] < 0.0 の分布であることに注意。 ![]() 図20(c).-1.7 < [Fe/H] < -0.7 の中間メタル量星の分布。 (1)内側の楕円体は巨大回転成分とされたが、このメタル量成分では形が より不規則で大きくなっている。形が不規則なのは大きくなってより遠方の ミクシング時間が長い領域を見ているためであろう。興味深いのは、形が より円形に近くなっていることである。扁平成分に隠されていたより丸い 成分が現れてきた可能性がある。 (2)楕円銀河 And II, III が明瞭に認められる。 (3)二つの強い集団 ξ=6.23°, η=-2.89° ξ=3.58°, η=-8.89° は新発見の矮小銀河である。 (4)淡い雲が M31 主軸の先 ξ=-5°, η=-7° まで検出される。 「主軸上拡散構造」(major-axis diffuse structure) と呼ぶ。 (5)ξ=3°, η=-1.5° と ξ=2°, η=-2.5° の 間にストリーム的構造がある。ストリームD と呼ぶ。 (6)ξ=6°, η=-6° 付近間に淡いストリーム的構造がある。 ストリームA と呼ぶ。 (7)M33 周辺の構造は強くなる。 (8)ξ<4°, η<-9° 領域は以前星が見えない。 ![]() 図20(f).-0.7 < [Fe/H] < 0.0 の星の分布。 全メタル量巾を重ねて感度が上がったため、短軸上に新たに (ξ=5°, η=-2.5°)から (ξ=3°, η=-5°)にかけて ストリーム的構造が見えてきた。ストリームBと呼ぶ。 ![]() 図22.-3.0 < [Fe/H] < 0.0 の短軸上マッチフィルターマップ。 黄色=短軸沿い密度プロファイル作成に使われた区域。赤=ストリームB, 緑=ストリームC,青=ストリームD。赤破線=ジャイアントストリームコア を調べた領域。青破線=ジャイアントストリームコア外辺部を調べた領域。 ![]() 図24.(a)And XV 周囲 ) 9'×9' の点源分布。平行線=CCD 境界。 (b) 2' 以内の星の CMD。破線=(c) に使う領域。 (c)破線内の星の空間分布。 (d)それの星の分布プロファイル。実線=Plummer モデル。破線=指数型。 一点破線=キングモデル。 ![]() 図26.(a)ジャイアントストリームコア(図22の黄色) (b) 外辺部(図22の青)。前景星は差し引いた。 ![]() 図28.メタル量毎の東西線に沿った密度プロファイル。-4.5° < η < -3.5° ![]() 図30.メタル分布。(a) 主軸拡散領域,図21の緑 (b) ストリームA。図21の 青 ![]() 図32.前景除去後のB,C,DストリームとB,Cストリーム間領域の色等級図。 ![]() 図34.フィールド14で二つの種族が併存していることを示す。 ![]() 図36.背景除去後の図35に示したハロー外周部。 ![]() 図38.(a)i0 = 23.5 までの MegaCam 星の密度 プロファイル。 (b) 全体のメタル分布。(c)対応するヘス図。 ![]() 図40.図39からジャイアントストリームを除いた。 ![]() 図42.低メタル星の密度プロファイル。黒ヒストグラムは低メタル 短軸プロファイル(図37参照)。R < 30 kpc は R1/4 ドボークループロファイルに支配されている。 30 kpc < R < 90 kpc はストリームにより大きく乱れている。これらを除いた 90 kpc 先の赤マーク は黒破線、スケール長 31.6 kpc の指数モデルでフィットされた。その他の フィットは図を見よ。 ![]() 図44。図42 と同じだが、前景星混入を最小に抑えるため図のような カラー制限を課した。 ![]() 図46.M33 周辺の -3 < [Fe/H] < 0.0 マッチフィルターマップ。 ![]() 図48.投影距離による輝度プロファイル。 ![]() 図50.赤= -0.7 < [Fe/H] < 0.0、緑= -1.7 < [Fe/H] < -0.7、 青= -3.0 < [Fe/H] < -1.7 ジャイアントストリーム、他のストリーム の色が他と異なるのに注意。4° 以内は INT データのみを使った。そこに は多くのストリームや構造が認められる。これらは前の論文で扱った。 ジャイアントストリームと二つの棚(shelves) のカラーが似ていることに注意。 他の構造、北の拡散構造や G1クランプは色が違う。 |