Dynamics and Stellar Content of the Giant Southern Stream in M31. I. Keck Spectroscopy of Red Giant Stars

  Guhathakurta, Rich, Reitzel, Cooper, Gilbert, Majewski, Osthemer, Geha, Johnston, Patterson
   2006 AJ 131, 2497 - 2513

 Keck/DEIMOS による M31 赤色巨星大規模分光サーベイの第1報告をする。 事前に行った中間帯域 DDO51 バンド、Mgb/MgH 吸収帯に合わせた、測光により、 赤色巨星候補が選ばれた。中心からの投影距離 31 kpc のジャイアントサザン ストリーム内の小領域を観測した。前景の銀河系矮星と背景銀河を除いた後、 68 個のきれいなサンプルが残った。Na II 二重線が表面重力による分離の点で 特に有用であった。

 M31 星のうち約 65 % がストリームメンバーで、残りは一般の楕円体成分星 であった。この領域の太陽中心平均視線速度は -458 km/s で M31 系統速度 に対して -158 km/s の青方変位を示している。この値はストリームに沿った 他の箇所で求まった視線速度とよく一致している。




図1.細長い箱=DEIMOS 分光スリットマスク。背景は Ferguson et al 2002 による高メタル RGB 星計数マップ。DEIMOS マスクは 16' × 4' である。 挿入枠= KPNO 4m モザイクサーベイ Ostheimer 2002 の a3 領域。今回のター ゲット選択はこのフィールドの DDO51-, M-, T2- バンド測光カタログ で行った。ジャイアントストリームのはっきりした北東縁が a3 領域の対角線 沿いに横切っている。このため a3 領域の南西半分、DEMOS マスク部分はストリ ーム内にある。


図3.M31 RGB と MW 矮星の DEIMOS スペクトル。スペクトルは 3A 箱型で 平滑化され、ゼロ速度に直している。右端の数字は (V - I)o である。大気 A バンド部分は 削除した。一番下は夜光スペクトル。TiO バンドヘッド、NaII二重線、Ca III 三重線はマークされている。TiO バンドはカラーと共に強くなり、A バンドに 重なる最も強いバンドの端は残ったスペクトルからも判る。 Na 線は重力に 鋭敏で、(V-I)>2 での巨星と矮星の区別に使われた(三角)。低温矮星は 強い NaII 線を示す。(Spinrad/Taylor 1969, Schiavon et al 1997)


図5.DDO51 による Pgiant 対 視線速度 v プロット。v > -150 km/s は前景 MW 矮星候補。残りは M31 RGB 星候補。破線= Pgiant > 0.5 で観測優先度を設定した。


図7.M31 RGB 星の視線速度に2成分ガウシャンフィットしたときの尤度。
(a) ストリーム平均速度を変える。(b) ストリーム速度分散を変える。 (c) 楕円体平均速度を変える。(c) 楕円体速度分散を変える。矢印がベスト パラメター。破線= 90 % confidence を示す。


図9.測光メタル量と Pgiant の関係。 Pgiant は メタル量により影響されないことが判る。


図11.足し算スペクトル。下=MW 矮星16個の足し算。その上5個は CaII 強度で分別してから足した M31 RGB 星。一番上はモデル、Teff=4000K, log g = 1.5, [Fe/H] = -0.3 (Schiavon/Barbuy 1999)。速度をゼロにずらし たので大気吸収線(8228A)が MW 矮星で 8231A M31 RGTB で 8250 A にずれた。

 ストリーム内の速度分散は 15+8-15 km/s (90 % レベル)である。Font et al による論文ではストリームの軌道、運動学的な 冷たさの意味、母衛星銀河に関する議論を行う。

この領域での一般楕円体星の運動学、メタル分布は M31 楕円体の他の領域 と比べて大きな違いを示す。これはおそらくバルジとハローの副構造の存在を 示しているのであろう。  ストリームは一般楕円体の ⟨[Fe/H]⟩ ∼ -0.74 と比べ高 メタル ⟨[Fe/H]⟩ ∼ -0.54 であり、分布巾も狭い。これは 母銀河が明るい矮小銀河であったことを示す。M31 RGB の CaII 三重線強度 は測光的(等時線フィット)に求めたメタル量と合致する。ストリームには 中間年齢星の存在を示唆する間接的な証拠もある。




図2.(a) DEIMOS スリットマスクが覆った領域内の全天体 CMD。ワシントン システムの M, T2 をジョンソン・カズンズ V, I に変換し (Majewski et al 2002) 減光補正 (Schlegel et al 1998) した。 実線 : パドヴァ 等時線 (Girardi et al 2000) t = 12.6 Gyr, [Fe/H] = -2.3, -1.3, -0.7, -0.4, 0.0 . 破線 : t = 6.3 Gyr, [Fe/H] = -0.7。すべて [α/Fe] = 0 で計算。
(b) DDO51-バンドパラメター Pgiant > 0.5 で RGB を事前 選択したサンプル。銀河を除くため、形態基準 chi < 1.3 と |sharp| < 0.3 を用いた。他は (a) と同じ。
(c) 四角=低 S/N で Vr 不定。三角=吸収線なし。バツ=矮星。丸=銀河。
(d) M31 RGB 星。五角形=多分ストリーム星。四角=多分一般楕円体星。 適当な等時線に囲まれている。9(?)星が RGB 先端、またはその上にある ことに注意。


図4.(a) - (c) 3つの DEIMOS マスクからの視線速度。括弧内の数は星数。
(d) 3 マスクの合計。実線=M31 RGB の2成分ガウシャン近似。 高くて狭い方=ストリーム。低くて広い=一般楕円体成分。84 星= 45 ストリーム + 23 一般楕円体星 + 16 前景矮星。


図6.Na I 二重線の等値幅対カラーのプロット。速度から M31 RGB(丸)と MW dwarfs (バツ)候補とされた星はマークしてある。 Teff < 4000K または、V-I)o > 1.8 で EW が二分化するのが判る。破線 =両者の分離線。


図8.位置と速度の関係。 Δr|| = a3 中心から南西方向に測る。 Δr = a3 中心から北東方向に測る。 破線=速度勾配。


図10.(上)CMD とモデル等時線から決めた測光メタル量と視線速度の関係。 点線より下はストリーム星が支配的。
(下)太い実線=ストリーム星のメタル分布。細い実線=RGB 先端より上の メタル量精度が不明の7星を加えた分布。破線=一般楕円体成分星。 ストリーム星は高メタルで分布は巾狭い。


図12.足し算スペクトルの CaII 三重線 EW をモデルと比較。