局所群の起源と進化の新しいモデルを提案する。このモデルではマゼラン雲の 形成とその天の川銀河の周りの大きな角運動量も自然に説明できる。基本アイデアは 10 Gyr 昔に M31 と天の川の原始銀河同士が中心がずれた流体力学的衝突を起こし、 ハローガスを圧縮して、マゼラン雲を含む局所群矮小銀河を作り出したというもの である。これら新しく生まれた矮小銀河は二つの巨大銀河の軌道面上に分布する。 | 我々は局所群銀河の2次元分布を再調査し、以前のアイデア、すなわちそれらが 二つの大円上に並んでいることを確認した。これらの円が載る平面は近似的には 太陽―銀河系中心の線に直交する。我々はそれらの分布マップを作成し、 はっきりした有限厚み平面を発見した。LMC, SMC の良く調べられた銀河系周りの 運動を再現するように M31 の運動を決めた。期待される固有運動は、 (μl, μb) = (38±16 μasyr-1, -49±5 μasyr-1) である。 | |
![]() 図1.天球上の局所群銀河分布。データは Mateo 1998 より。銀経、銀緯の線は 敢えて載せない。銀河の分布がランダムでなく、銀河系中心方向の 4 銀河を除くと 大きな円弧に沿っていることを強調するためである。黒丸=銀河系グループ、灰色 丸= M31 グループ。白丸=独立銀河。サジタリウス矮小銀河からの尾にも注意。 ![]() 図2.図1と同じだが、銀経、銀緯を入れた。点線=天の川グループ(黒丸)を 結ぶ大円。破線= M31 グループ(白丸)を結ぶ大円。実線= Gardiner et al 1994 によるマゼラン雲の天の川周りの前回の回転軌道。これら3つの円は近似的には 天球上で同じ領域を占めていて、局所群メンバーがリング状の空間分布をしている ことを示唆する。ただし、円同士には最大で 30° のずれがある。 ![]() 図3.局所群銀河の3次元分布。(l, b) = (296°, -11°) 方向から見た図。 これは天の川銀河と M 31 の軌道面を横向きに見た図である。黒丸=天の川グループ。 灰色= M31 グループ。白丸=独立。丸のサイズが明るさを示す。局所群銀河は厚み 50 - 100 kpc の板内にある。 ![]() 図4.図3と同じだが、(l, b) = (206°, -11°) 方向から見た図。 これは天の川銀河と M 31 の軌道面を正面から見た図である。天の川グループ、 M 31 グループ、 独立系が全体として千切れ千切れのリングを成している。独立系の いくつか、 Pegusus, DDO 210, ag DIG, NGC 6822 図3の面から 16 - 730 kpc 離れている。これは面の厚みに較べると大きいが、局所群サイズ ∼ 1 Mpc に 比べると小さい。したがって、これらの銀河も我々の面構造モデルには含ませた。 ![]() 図5.宇宙の局所膨張の中での局所群メンバーの力学進化。局所群円盤の正面図で、 図5c が図4に対応する。 (a) 12 - 10 Gyr 昔。ガスに富んだ原始銀河が接近し、中心のずれた衝突により互いの ハローガスを圧縮する。その高密度領域は図中濃い灰色で表わされる。 LMC, SMC はこの時に生まれた。 (b) 8 Gyr 昔。新しく生まれた銀河が軌道面上に散らばる。この時期から 4Gyr 後に 両銀河は遠銀点に達し、その後は最接近し始める。矮小銀河の幾つかは既に天の川 グループとアンドロメダグループに仕分けられている。 (c) 現在。M31 は 770 kpc 離れ、視線速度 12o km/s で接近中。 | ||
![]() 図6.M 31 の直交速度 (Vl, Vb) 図。白丸と黒丸 は図 5a の灰色部で LMC/SMC が形成されるような軌道を再現する。直線に 付けた数字(角度)は M31 の軌道角運動量と銀河系(?)北極との角度。 黒丸だと M31 軌道面は局所銀河群面と一致する。二重丸が最適解で (Vl, Vb) = ( 140 km/s, -180 km/s) つまり、 (μl, μb) = (38 μasyr-1, -49 μasyr-1) である。 扇状域は |
![]() 図7.天の川から見た、局所銀河群面上での M31 と LMC/SMC の軌道。視線方向は 図4と同じ。軌道に付けた数字は現在から逆向きに測った時間(Gyr)。灰色領域は LMC/SMC 形成箇所。LMC/SMC がこの灰色領域に入る前の軌道はこの論文と関係ないので 点線で示した。(灰色で形成じゃないのか?) | |
![]() 図8.過去 10.4 Gyr の M31, LMC, SMC の軌道を (l, b) 面に投影。図7と 基本的には同一。LMC/SMC の形成箇所は (l, b) = (278°, 45°), 破線の端は M 31 の形成方向。 | ||
![]() 図9.ドラコとサジタリウス矮小楕円銀河の軌道。 |
![]() 図10.図6に同じ、ただしドラコに対して。 | |
![]() 図11.ドラコとサジタリウス矮小楕円銀河の軌道を (l, b) 面に投影。 | ||
![]() 図12.図9と同じ、ただし NGC 185 と NGC 205 に対し。 | ||
![]() 図13.M31 - MW 軌道面上での局所群銀河の軌道。 ![]() 図14.図13と同じだが、横から眺めた図。 ![]() 図15.衝突時の原始ハローの漫画。 |