ガイア BP, RP と MASS J, Ks から二つの Wesenheit 関数 WRP, BP-RP, WKs, J-Ks を作り、次に、 (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks を作った。 この図上では様々な LPVs が異なる位置を占める。 | O-リッチ星と C-リッチ星が分離することを示す。また、低質量、中質量、 大質量 O-リッチ赤色巨星、さらに極端 C-リッチ星を同定した。進化モデル を援用して、この図の天体分類力を示す。 |
Gaia により AGBs の研究が大きく深化する。 | ここでは手始めに LMC の星を扱う。 |
![]() 図1.LMC LPVs の (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks 図。 実線=O-リッチと C-リッチの境界。破線=サブグループの境界。境界線の定義は 付録。 マッチング LMC 内の ガイア LPVs 11,022 星に対して、2MASS と 1" でクロスマッチ して、7 星以外の全てでマッチングを得た。 ウイーゼンハイト関数 赤化フリー等級 WKs, J-Ks = Ks - 0.686(J-Ks) は Soszynski05, Trabucchi17 などで使われている。 |
![]() 図2.図1と同じだが、(J-Ks) カラーで色分けした。 ガイア等級に対しては、 WRP, BP-RP = GRP - 1.3(GBP-GRP) を用いる。 (WRP-WKs) - Ks 図 図1には、 (WRP-WKs) - Ks 図を示す。 この図が CMD と違うことを強調したい。青い天体は図の中央に位置し、 両側に行くにつれ赤くなる。 |
分類力が強い理由 (1)炭素星は M-星より J-Ks が赤い。(WRP-WKs) - Ks 図において、これは炭素星が (WRP-WKs) = 0.8 の右側、O-リッチ星が左側に分かれることを意味する。 (J-Ks が赤いことと W-W が赤いこと がどう関係するのか分からない。 ) (2)炭素星になる Mi にはある巾に収まる。このため異なる種族の星が (W-W) -K 図上で異なる領域に固まるのである。 C-リッチグループ 図1、2に示されているように総計で6つのグループが存在する。内二つは 炭素星で、それらは (WRP-WKs) = 1.7 で分断される。 そこで左側を C-リッチ、右側を極端 C-リッチと呼ぶ。「極端」の用語は Blum06 SAGE で NIR カラーが非常に赤い星を指して使った。したがって、 二つの 「極端」は異なる星種族を指している可能性がある。 O-リッチグループ RGB と暗い AGB 集団は TRGB 付近の RGBs と早期 AGBs を合わせたグループ である。その上の星は、進化計算との比較から、低質量、中間質量、大質量の O-リッチ AGBs である。 |
![]() 図3.初期質量によるモデル種族分類。モデルは TRILEGAL(Girardi05)使用。 Marigo13, 17 の AGB の詳細な進化モデルを使用してシミュレイションを 行った。a, b, c, d は進化の主要な枝分かれを示す。内枠では Mi = 1.45 - 3 Mo で, 炭素星に変わる直前の点 Mi を変えて結んだ線を示す。Z = 0.006 である。三角= HBB 星。 |
![]() 図4.LMC の Gaia DR2 LPVs の 2MASS (J-Ks) - Ks 図。印の色は図1に同じ。 質量と種族 図3には種族合成モデルによるシミュレイション結果を示す。 図1とよく似ており、図中のサブグループが初期質量による区分けに対応する ことを明らかにする。対応の結果は、 (a) Mi = 0.9 - 1.4 Mo の低質量 O-リッチの早期 AGBs と TP-AGBs である。 AGB 進化末期には W-W が負の領域に達する。(a) 領域の上辺付近には 1.4 - 1.8 Mo で炭素星に変換する直前の O-リッチ星が分布する。 (b) Mi = 1.4 - 3.2 Mo の炭素星。右側は "extream carbon stars" で、 シミュレイションでは強いマスロスを伴う炭素星である。数が少ないのは タイムスケールが短いためである。 (c) 中間質量 O-リッチ AGB 星である。下辺部は Mi = 2 - 3.2 Mo 星で 炭素星になる前の O-リッチ星が分布する。(Mi = 1.8 - 2 Mo 星は炭素星に なる前に (c) に移動はしない。) 炭素星に変わると (b) へ移るのである。 (b) 上辺部は M = 3.2 - 6 Mo 星で炭素星にはならない。そこには HBB 星 も含まれる。進化最終末期、マスロスが非常に高い短期間にこれら中間質量 AGB 星が図の右側、極端炭素星領域に混入する可能性がある。 |
![]() 図5.図3と同じシミュレイションだが、印の色は C/O 比で分けた。 HBB 星はマゼンタとした。 (a) と (c) との間の間隙は縮退核の形成が原因である。図3内枠に 炭素星になる直前位置を Mi を変えて示す。その線が間隙部を取り囲む ことが分かる。二本の曲線の下側の方は低質量 1.4 - 1.8 Mo で, 主系列後 He 縮退核を形成した。上側は中間質量 1.8 - 3 Mo で縮退核を持たなかった。 その境目 Mi = 1.8 Mo 星は 最小コアマスでヘリウムが着火し、つまり最も 暗い、現在の TP-AGB モデルではこの質量が炭素星に転移する時の最小光度 を持つ。 (d) 主に Mi ≥ 8 Mo の RSGs で占められている。しかし Mi = 6 - 8 Mo 星, Siess10 の super-AGBs, と Mi = 5 - 6 Mo の高質量 AGB 星も含まれる。 C/M 分離 図1、2を見ると O-リッチ星と C-リッチ星の間には空隙が存在する。 これは図5でより明白に示される。(a) の上辺部と (c) の下辺部では C/O が 1 に近いことが分かる。これらはs S-型星に対応するに違い ない。HBB 星は低い C/O 比、高い N 組成、低い 12C/ 13C で特性付けられる。 |
(W-W) - K 図は ガイアデータによる進化した星の研究で大変有用である ことが分かった。この図は星の 質量、C/O 組成、進化段階を非常に うまく取り出す能力を有す。 | われわれはこの道具を用いてより広範囲な研究を計画している。次回では 他の恒星種族の解析を行い、LPVs の変光の研究に使う。 |
成分分解図 WRP-WKs = (GRP-Ks) + 0.686 (J-Ks) - 1.3 (GRP-GKs) であり、3つのカラーで構成されている。 そこで図A.1. に各成分を横軸にした図を描いた。 低質量 O-リッチ星 低質量 O-リッチ星の場合 WRP-WKs は主に (GBP-GRP) で規定される。(GRP-Ks) と (J-Ks) は単に一定値を加えるだけである。BP(330-680 nm) と RP(640-1050 nm) 波長帯では TiO, VO, ZrO バンドが存在し、その強度は低温度ほど強い。 Aringer16 にこの波長帯のモデルスペクトルが載っている。 しかし RP バンドの長波長側では分子吸収の影響は弱い。このため、 (GBP-GRP) は低温になるとどんどん赤くなる。つまり WRP-WKs = 0.5 から -1.5 への変化は低温度化を示して いるのである。 |
中間質量 O-リッチ星と高質量星 中間質量 O-リッチ星に関しても似た状況が起きる。それに対し、高質量 AGB 星や超巨星では、カラーの変化が小さい。これはそれらの星が比較的高温で分 子帯が強くないためである。その結果、これらの星では WRP-WKs がほぼ一定値となる。 炭素星 炭素星では J-Ks 以外の二つがキャンセル する結果、WRP-WKs は J-Ks にほぼ一致する。 |
図B1.=進化経路 図B.1. には LMC LPVs の点の上に, Z = 0.006, M = 1.3, 1.6, 2.6, 4.4 Mo の進化経路を描いた。どの質量の星 にも熱パルスが見える。 1.3 Mo 1.3 Mo 経路は (a) 領域を代表する。この星は炭素星にはならない。 1.6, 2.6 Mo 1.6, 2.6 Mo モデルは O-リッチで始まり、C-リッチで終わる。興味深いのは、 C/O が 1 以下の時には、左向きに進化していることである。 1.6 Mo と 2.6 Mo 経路の間には間隙が生じている。左向き進化は C/O が 1 を超えたと ころで終わり、(b) 領域へ飛ぶ。炭素星最末期には強いマスロスを起こし極端炭素星と なって終わる。 |
4.4 Mo 4.4 Mo 星は HBB を経験する。この星の早期 AGB 時代は (WRP-WKs) は一定値を保つが、 TP-AGB 期になると、 (c) 領域を左上方へと進化する。HBB 星はほぼ垂直に立つ RSGs の基部付近を 埋めている。 12、20Mo 図の右下には 12, 20 Mo, X = 0.008 進化を示す。二つの線は (d) の下側と上側を走る。 |
種族合成の道具立て 種族合成光度: TRILEGAL (Girardi05) IMF: Kroupa01 SFH: Harris,Zaritsky09 等時線:PARSEC, COLIBRI Bressan12, Marigo12 LPVs の数 Gaia deha Ks = 13.7 mag より明るい LPVs は 11,022 星である。一方、シミュレイ ションが予想する LPVs の数は 1.69 10 5 星であった。モデルで の超過 LPVs は変光振幅が小さすぎて観測で変光と検知できない星である。 しかし、現在簡単な星パラメターから振幅まで予想できるモデルは存在しない。 |
別の方法 星の力学振動数と音波振動数の比 &nu: は振動の成長率を示し、成長率が 大きいと振幅も大きくなりそうである。 ν = (R Teff/M )1/2 ν = 8 - 10 当たりを限界値として、モデルから変光星を選ぶと、ほぼ 観測と合う数の変光星となった。 |